2024年10月28日
厚生労働省が公表した「令和5年度雇用均等基本調査」によると、日本の企業で課長相当職以上の管理職などに占める女性の割合は12.7%で、令和になってから横ばい状態が続いています。
本記事では、女性管理職が少ない理由と企業が女性管理職を増やすためにすべきことを解説します。
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政府の会議で決定された「女性版骨太の方針2025」では、プライム市場上場企業に対し、2030年までに女性役員比率30%以上の達成に向けた取り組みの加速が求められています。しかし現状では、多くの企業で女性役員候補となる女性管理職層の不足が課題となっており、短期的な登用だけでなく、将来を見据えた人材パイプラインの構築が急務となっています。
そこで、パーソルグループは企業規模別の女性管理職比率の実態と女性管理職比率アップのための取り組みについて調査し、 女性管理職比率の高い組織から見る、女性活躍推進のためのポイントをレポートにまとめました。女性活躍推進に課題をお持ちの経営・人事部門の皆さまはぜひご活用ください。
目次
2020年12月の閣議では、第5次男女共同参画基本計画において、「2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す」と閣議決定されました。
その目的に到達するための前段階として、政府は「2020年代の可能な限り早い段階に、指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指す」という目標を設定しました。
しかし、日本の女性管理職の割合は30%には程遠く、世界と比べて後れを取っている状況です。
女性管理職比率の目標として掲げられた30%は、ハーバード大学の社会学者であるロザベス・モス・カンター氏が提唱する「黄金の3割」理論に基づく数字です。この30%は「クリティカル・マス」と呼ばれる比率で、多様性が尊重される組織文化を醸成する閾値と考えられています。
例えば、組織の中で女性の割合が15%に満たない場合、女性は一個人としてではなく女性全体の代表と見なされてしまいます。その言動や結果も「女性だから」と性別に関連づけて評価されることで、女性がプレッシャーを感じて発言を控えがちになってしまいます。
ところが、組織の中で女性が3割を占めるようになると、女性という属性ではなく個人として評価されるようになります。女性が意見を言いやすくなり、意思決定に影響を及ぼすなど、組織に変革がもたらされます。
株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」では、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した女性は12.3%。男性は20.4%(いずれも2024年の調査)。男女で約8%の差がついており、女性の昇進意欲が低いことが分かります。
中でも20代の若手社員は性別を問わず低い傾向にあり、2021年の36.4%から下がり、2024年は28.2%にまで低下しています。これらのことから、「女性」かつ「これから活躍が期待される若い世代」ほど、「管理職になりたくない」と考える傾向があることが見て取れます。
女性管理職の割合を30%にするという目標を達成するためには、管理職を目指す女性を増やすことが不可欠です。

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【関連記事】管理職になりたくない社員がなぜ増えるのか|原因と対策を解説

「管理職になりたくない」と考える女性が多い理由に、環境要因が挙げられます。どのような環境が影響しているのか、女性管理職が少ない理由から見ていきましょう。
前提として、管理職登用制度は、時間的な制約がない人をベースに整えられてきました。管理職には、その枠組みの中ではたらくことができる男性を起用することが多く、女性の場合、管理職になる適正年齢の段階で長時間はたらくことが可能な一部の社員に限られています。
女性の多くは、出産・育児などのライフイベントが起こると時間的制約の中ではたらかざるを得なくなります。しかし、職場にはたらき続けられる環境が十分に整っていないことから仕事と家庭の両立が難しく、管理職を諦めるケースもあります。このような障壁が、女性の昇進への意欲低下をもたらしていると考えられます。
出張や転勤、難易度の高い仕事に挑戦する機会を与えられないなど、「子育て中の女性社員への配慮」のつもりで行っていることが、女性のスキルアップの機会をなくしています。
この過剰な配慮により、女性がキャリア形成に必要な経験を積むことができず、管理職への意欲の減退につながってしまいます。「挑戦するチャンスを与えられない=会社から期待されていない」と受け取るケースもあります。
女性が結婚や出産をしてもキャリアを諦めずにはたらき続けるには、自身に近いはたらき方をしているロールモデルの存在が重要です。
しかし、管理職が、男性または長時間勤務が可能な一部の女性に限られてしまうと、自身のキャリア形成におけるロールモデルを見つけることが難しくなります。仕事と家庭を両立しながら管理職としてはたらき続けるイメージを持てず、相談できる相手もいないため、管理職になることをためらってしまいます。
企業で女性管理職が増えるメリットとして、代表的な4つを紹介します。
「管理職になりたくない」と考えるのは、女性ばかりではありません。管理職にかかる負担の大きさから、男性・女性共に管理職を目指す社員は減少傾向にあり、管理職不足の課題を抱える企業も少なくありません。
その中で、社内制度の見直しや管理職にかかる負担の軽減など、管理職に前向きでない傾向にある若手の女性社員に向けた対策を行うことは、管理職のハードルを下げることにつながります。若手の女性社員に限らず、ほかの社員の昇進意欲を高めることにつながるため、管理職希望者の底上げも期待できるでしょう。
男性主体で考えられていた組織に女性が加わることで、さまざまな視点が生まれます。意思決定の場でのダイバーシティが推進され、イノベーションの創出につながる可能性もあります。
また、育児と仕事の両立支援を行ったり、管理職の業務量を見直したりすることで、多様なはたらき方の実現や労働環境の改善も図れるなど、誰にとってもはたらきやすい環境を構築できるでしょう。従業員のエンゲージメントが高まり、組織の活性化の促進も期待できます。
自社に女性管理職が増えることで、「女性のはたらき方を考え、真剣に取り組んでいる」と顧客や求職者などに良い印象を与えることができます。
また、ESG投資における機関投資家は、企業が発するメッセージや今後女性活躍をどのように推進していくかを中長期的な視点で分析・評価しています。内閣府の「ジェンダー投資に関する調査研究」によると、投資家の多くは投資判断において女性役員比率や女性管理職比率を重要視していることが明らかになっています。
女性管理職の数が増えると、時間的制約の中ではたらく女性など、管理職にも多様性が生まれます。自身に近いはたらき方をしているロールモデルが生まれることで、出産・育児などで制約を抱えた女性でもはたらき続けるイメージを持つことができるようになります。
また、女性が活躍する組織として認識されることで、優秀な女性人材が集まりやすくなります。
女性管理職を増やすために、企業が取り組むことができる施策を紹介します。
女性管理職を増やすには、採用を強化し、母集団を増やすことが重要です。さらに、自社の採用ページに女性の写真を使用する、女性社員のインタビューを掲載するなどのイメージ施策もあわせて行いましょう。
女性を採用した際、「活躍してほしい」と企業側の意思をはっきりと伝えることが肝心です。企業から期待をかけられることで、女性社員が長くはたらき続けたいと考えるようになるほか、昇進意欲の向上にもつながります。
時間的な制約の多い女性は、どうしても学ぶ機会が少なくなってしまい、自身の可能性を広げるなど新たな挑戦に目を向けにくくなります。
組織が積極的にスキル開発の機会を設け、女性に経験を積ませることが重要です。社内の選抜研修に意識的に女性を選出するほか、企業が費用を負担して外部講座を受けてもらうなど、さまざまな方法があります。職場を離れ、異なる環境に身を置く越境体験をすることで新たな刺激を得られ、キャリアに対する前向きな考え方ができるようになるでしょう。
このときに気を付けたいのが、「あの人は時短勤務だから外部講座を受けるのは難しいだろう」などと企業側が無意識の思い込みで結果的に機会損失となってしまうような判断をしてしまうことです。オンライン受講の選択肢も提示するなど、女性社員に「私にもできるかもしれない」と思ってもらうことが肝心です。
女性が学びを通じてさまざまな経験をすることで時間的制約を抱えていても高い生産性ではたらけるようになり、組織の活性化にもつながります。
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研修では、ライフイベントでキャリアが分断してしまう女性に対し、はたらき続けることや管理職を目指すメリットを伝えましょう。ライフイベントが訪れる前の早期に実施することが大切です。
自身のキャリアイメージができて活躍するビジョンを抱くことができれば、仕事をセーブせざるを得ないライフイベントが訪れても、キャリアを諦める選択を迫られずにはたらき続けることが可能になります。
リーダーシップ研修は「自分にはリーダーは向いていない」などの先入観を持ち、リーダーになることに消極的な女性に対して行います。1回限りの研修にするのではなく、数カ月かけて継続的に実施することが重要です。
具体的には、まずこれまでのキャリアや経験を棚卸しし、自身が気づいていなかった適性の掘り起こしをします。同時に、男性の画一的なリーダーシップだけでなく、多様なリーダーシップ像があることを理解します。このような取り組みで、管理職になる自信を醸成していきます。
また、組織課題について考えたり、プレゼンテーションスキルやロジカルシンキングを身に付けたりし、最終的には組織に向けて提言する機会も設けます。研修を通じて、自身で気づいていなかった適性の掘り起こしをしたり、マネジメントへの興味を持てたりすることが、仕事への意欲にもつながるのです。
【関連記事】リーダーシップ研修とは?目的やカリキュラム例・得られるスキルを解説
とはいえ、「女性管理職を増やすことにつながるから」と施策をやみくもに取り入れることは避けたほうがよいでしょう。「なぜ女性管理職を増やすのか」「女性管理職を増やすために何をすべきか」を明確にすることで、自社にとってどのような施策が必要かを見極めることができます。
【関連記事】女性活躍を推進したい企業が取り組むべき6つの施策│事例を交えて解説

実際に、女性管理職希望者を増やすことに成功した企業の事例を紹介します。
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2017年に女性活躍推進の取り組みを始めた読売エージェンシーは、女性管理職比率を20%にすること、女性の副部長を1人以上にすることを目標に設定しました。従業員の意識を知るために女性管理職の登用に関するアンケートを実施し、課題を抽出することから始めました。
「男性中心の職場である」という認識を踏まえ、女性の登用を積極的に行う必要があると役員会で提言しました。
また、自治体の研修動画を活用し、女性社員にキャリア形成支援研修を継続的に実施しています。女性管理職の割合は目標の20%には達していませんが、2023年度は2017年度と比べて副課長・主任級の女性比率は32%から52%に上昇しました。
銀行のバックオフィス業務を受託する三井住友トラスト・ビジネスサービスは、従業員の9割が女性です。しかし、以前は管理職のほとんどをグループから出向した男性が占めるケースが多かったそうです。
2012年に会社が合併したことを機に女性管理職を育成する取り組みを始め、階層別の研修を充実させました。スタッフ社員が正社員に転換できる制度を導入。年齢の上限を設けず、キャリアアップを目指す従業員を後押ししています。
子どもが小学3年生を終えるまでは柔軟に勤務時間を変更できるなど、女性のキャリアをサポートするための両立支援も整っています。
同社の課長以上の女性管理職の割合は、2021年9月末で62%に。また、リーダー以上の22人は短時間勤務制度を利用しています。周囲が支える風土が醸成されることで、多様なはたらき方を実現でき、若手社員が今後のキャリアを描きやすくなっています。
日本初の医薬品開発の受託研究機関である新日本科学は、女性活躍を推進するに当たり以下の3つの目標を設定しました。
具体的な取り組みとして、まずは社長がダイバーシティ推進を宣言。朝礼などの場で女性活躍に関するメッセージを伝え続けることで、職場の意識変革を図りました。
女性活躍の推進には、採用拡大や職域拡大などさまざまな取り組みがあり、その一つに女性の管理職登用があります。キャリアステージごとに次のキャリアアップにつながるスキルを習得できる機会を提供しました。
取り組みが功を奏し、課長クラスに占める女性割合が2016年度の20.8%から2018年度には23.3%まで上昇。2017年6月には、同社初となる女性執行役員も誕生するなど、女性管理職比率の増加が進んでいます。
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政府の会議で決定された「女性版骨太の方針2025」では、プライム市場上場企業に対し、2030年までに女性役員比率30%以上の達成に向けた取り組みの加速が求められています。しかし現状では、多くの企業で女性役員候補となる女性管理職層の不足が課題となっており、短期的な登用だけでなく、将来を見据えた人材パイプラインの構築が急務となっています。
そこで、パーソルグループは企業規模別の女性管理職比率の実態と女性管理職比率アップのための取り組みについて調査し、 女性管理職比率の高い組織から見る、女性活躍推進のためのポイントをレポートにまとめました。女性活躍推進に課題をお持ちの経営・人事部門の皆さまはぜひご活用ください。
「女性管理職を増やしたいけど、どのようにアプローチすればよいのか分からない」という企業に向けて、パーソルグループは多様な社員研修サービスを提供しています。
女性が管理職になることの自信を醸成し、スキルアップを図ることが目的です。
これまでのキャリアや経験の棚卸しを踏まえて、自身が気付いていなかった適性の掘り起こしをします。同時に、多様なリーダーシップ像があることを理解し、自分らしいリーダー像について考えます。
研修では、職場におけるコミュニケーションスキルやプレゼンテーションスキル、ロジカルシンキングなど、管理職に求められるスキルを磨きます。
これまでのキャリアを振り返り、自身の強みを認識するなど自己理解を深めます。さらに、自身のキャリアビジョンを描き、実現のために自分が何をするのかを明らかにします。
女性の帰属意識を高めたり、主体性を育むことを目的として実施します。これまでのキャリアやはたらき方を振り返るほか、組織の課題解決を行うなどさまざまなアプローチがあります。
異なる業界や環境ではたらく女性たちとプロジェクトワークを行う越境体験の場を設けます。マッチング方法や参加企業の数、業種などは研修ごとに異なりますが、越境体験を通じて女性が新たな刺激を得られ、能力開発のきっかけになるでしょう。
メンター・メンティの信頼関係の構築を目的として行います。研修を通じて、相手とのものの見方の違いや考え方の違いを認識し、多様性を認め合うことができます。さらに、双方のコミュニケーションの姿勢やスキルの向上も見込めるでしょう。
育休復帰前の女性社員は、仕事と家庭の両立や復帰後の配属先配属先、ブランクを経てはたらけるのかなど、さまざまな不安を抱えています。1年間を振り返り、自身にできることや育休復帰前の不安感を整理することで具体的な備えを明確にします。参加者の情報交換の機会も設けるなど、複数のアプローチから女性の不安解消を図ります。
女性管理職養成研修と女性社員キャリア開発研修を組み合わせて複数回行うなど、企業の女性活躍方針や風土に合わせてカスタマイズしています。
女性管理職を増やす取り組みを進めることが組織の活性化につながるなど、企業にとっても良い影響があることが分かりました。本記事で紹介した事例も参考にしながら、自社の課題に即した施策に取り組んでみましょう。

株式会社パーソル総合研究所
トレーニングパフォーマンスコンサルタント
射水 和香子(いみず わかこ)
大学卒業後、化粧品メーカーの美容部員を経て、大手人材サービス会社にて人材派遣、総合受付業務委託、海外人事HRテック導入等の法人営業およびプロジェクトマネジメントを経験。約3年間営業チーム長として15名のマネジメントも行う。
主に女性、若手社員のキャリアを支援すべく、社内研修や個別面談を多数実施。キャリアカウンセリング学習者の育成にも携わっている。
保有資格