優秀な営業人材を獲得できない・育成に時間がかかってしまっている・営業リソースが足りないなど、営業部門にさまざまな課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
そのような中、注目を集めているのが営業アウトソーシング です。自社の営業活動において外部リソースを効果的に活用することにより、採用や育成にかかるコスト削減や営業部門の拡大といったメリットが得られます。
本記事では、営業アウトソーシングとは何かといった基礎知識や注目を集める背景、導入のメリット・デメリット などについて解説します 。
営業プロセスにおける課題別 成功ストーリー集をご覧いただけます
今、法人営業の現場では、「相見積りのケースが増えた」「クロージングが長期化している」といった課題を感じているケースが多いのではないでしょうか。その原因のひとつは、法人営業を取り巻く環境の変化です。 こうした中で効率的に売上げ増大を実現する「案件創出型営業プロセス 」の実践方法を分かりやすく解説した資料を公開しています。ぜひご活用ください。
営業アウトソーシングとは
営業アウトソーシングとは、自社の営業活動の一部もしくはすべてを外部に委託すること を指します。
自社の営業リソースを補填する・営業の業務効率を向上させる・コストダウンなど、さまざまな目的で営業アウトソーシングを導入する企業が増えています。 アデコ株式会社が2020年にアウトソーシング導入企業に実施したアンケート によると、約4社に1社にあたる27.1%の企業が「営業代行」としてアウトソーシングを活用中あるいは活用検討していることが明らかになりました。
【参考】アデコ株式会社「【アンケート結果】アウトソーシングの導入状況・メリット・デメリットなど」
営業アウトソーシングのサービス形態
営業アウトソーシングは、さらに2つのサービス形態に大別されます。それぞれのサービス内容や得られる成果の違いを確認しておきましょう。
営業代行
営業代行は、文字通り営業活動を代行するサービスのことを示します。営業部門の人材不足などの場合に活用され、営業のプロフェッショナルの力を借り、成果を上げることを重視したい企業に適しています。
SPO
SPO(Sales Process Outsourcing:セールス・プロセス・アウトソーシング)とは、営業代行と同様に営業活動を代行するサービスです。営業代行と異なる点は、自社の営業チームと分業・協業しながら同じチームとして業務を行うことです。また、営業部門や営業プロセスなどの課題解決も行うことができるため、「成果を上げるだけでなく営業活動の過程の見直しをしていきたい」といった際にも適しています。
営業派遣との違い
営業職の人材派遣は、派遣会社と雇用関係にある派遣スタッフがセールス業務を行うサービスです。営業アウトソーシングと外部人材を活用する点は似ていますが、「誰が業務指示や指導を行うのか」という点が異なります。
▼指揮命令権の所在
・営業アウトソーシング…アウトソース先の責任者 ・営業派遣…派遣先の担当者
そのため派遣された人材は、自社が行って欲しい業務の指示にしたがって営業活動を行います。
営業アウトソーシングの対象領域
営業アウトソーシングのサービス領域は、ブランドや商材の認知拡大からリード獲得といった「マーケティング領域」から、商談〜受注・CS(カスタマーサクセス)といった「セールス領域」まで、一連の営業フローを網羅したもの になっています。 これらの営業フローの中から、自社にとって必要な領域の支援を受けることができます。
データ活用コンサルティング
データ活用コンサルティングとは、営業部門でデータ活用をするために、データ収集〜分析基盤の構築や分析を支援 します。
▼活用ケース例
・社内に点在するデータを活用するための仕組み作りをしたい ・蓄積されたデータを活用したいが、どう進めればよいかわからない
具体的には、使用するツールの選定やデータ設計・分析要件の定義が済んだ後にダッシュボードを作成し、データを基にした適切なPDCAサイクルによるデータ活用を進めるために分析〜提案をサポートします。
リードジェネレーションサービス
リードジェネレーションサービスとは、Web広告やWebサイトを用いてオンライン上で顧客獲得するための戦略設計や運用を支援するサービスです。
▼活用ケース例
・デジタルマーケティングを始めたいが何をすべきか分からない ・Web経由のコンバージョンを増やしたい
具体的には、マーケット調査や顧客分析を行った後に、予算やリソースに応じて活用するデジタルマーケティング施策や、Web広告の媒体を選定します。実際の運用サポート・クリエイティブ制作・レポーティング、将来的なインハウス化に向けた教育支援などを行います。
リードナーチャリングサービス
リードナーチャリングサービスとは、獲得したリードを最終的に商談や受注につなげるために、リードとのコミュニケーション設計や施策実行〜運用を支援するサービスです。
▼活用ケース例
・顧客の状態にあった施策が打ち出せていない ・MAツールの運用に十分な時間を確保できていない
MA(マーケティング・オートメーション)やカスタマーエクスペリエンス、BIといったマーケティングテクノロジーの導入支援、業務設計やKPI設計に基づいたインサイドセールスの立ち上げをサポートします。
セールスコンサルティング
セールスコンサルティングとは、セールスとマーケティングを統合し一気通貫型の営業活動を支援するサービスです。
▼活用ケース例
・属人化している営業プロセスを可視化し、安定した営業組織を築きたい ・営業活動がExcel管理になっているため、CRM/SFAを導入し効率化したい
営業課題を的確に把握した後に、業務アセスメント・戦略構築を実行します。また、組織の立ち上げや見直しを行い、組織の成果最大化に向けた変革を実現します。
セールスアウトソーシングサービス
セールスアウトソーシングとは、フィールドセールス及びセールスサポート(営業事務)の支援を行うサービスです。
▼活用ケース例
・営業リソースが足らず、新規だけではなく既存顧客へのアプローチも薄くなっている ・営業同行が可能なシステムエンジニアの人員が不足している
営業フレームワークを用いて顧客の課題や要件を引き出し、営業担当では対応しきれない要件定義等を技術部門へ引き継ぐことで、円滑な案件遂行を実現します。
カスタマーサクセスサービス
カスタマーサクセスサービスとは、顧客の満足度向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化を目的としたサービスです。
▼活用ケース例
・サービス導入後の解約率や継続率が芳しくない ・顧客ロイヤルティを上げたいけれども、どうすればいいかわからない
カスタマーエクスペリエンス(CX)の設計や、直接顧客の声に耳を傾けることで、最適な顧客とのコミュニケーション方法を設計します。また、具体的な業務に落とし込むことや、アップセル・クロスセルに向けた施策の戦略を立案〜実行をサポートします。
営業アウトソーシングが注目を集める背景
営業アウトソーシングが注目を集める背景として、少子高齢化に伴う労働人口の不足が挙げられます。特に営業職では、ノルマ達成やクレーム対応といったイメージがあり、求職者から敬遠されがち、また離職率が高い職種でもあります。
実際に、日本労働調査組合が2021年に全国の営業職を対象に実施したアンケートでは、「あなたは退職を考えている、もしくは考えたことがありますか?」という問いに対して、全体の約8割が「はい」と回答しています。
【参考】日本労働調査組合「営業職の退職動機に関するアンケート調査」
このように人材の獲得や定着が困難な営業において、人材をいかに確保して営業力を維持・向上するかは多くの企業が直面している課題 であり、その解決策の一つとしてアウトソーシングが活用されています。
営業アウトソーシングを活用し、営業部隊のデジタル化を推進
また、営業のあり方そのものの見直しが進んでいます。それが顕著にあらわれているのが、営業部隊における「デジタル化の促進 」です。
限られた営業人材で生産性を維持・向上させるために、SFA(営業支援ツール)やCRM(顧客管理システム)、BIツール(ビジネス・インテリジェンス)などITツールを積極的に活用しようという流れが加速 しています。
一方で、これらのツールを導入し効率的に活用をするためには、社内に点在するデータを集約・名寄せする仕組みや、運用体制の構築、データの分析・レポーティング能力を有した人材を必要とします。そのため、「導入を検討しているが、現状で社内に推進できる人材がいない」といった理由で、導入が後回しになっている企業も多 いのが実情です。
そこで、営業アウトソーシングを活用し、外部の知見を取り入れることでITツールの導入をはじめとするデジタル化を進める企業が増えています。
営業アウトソーシングのメリット
ここからは、具体的に営業アウトソーシングを導入するメリットについて見ていきましょう。営業アウトソーシングのメリットは、大きく分けて以下の4つです。
1. 採用・教育コストの削減
自社で営業人材を採用する場合、求人に伴う媒体費や人件費がかかります。また、一連の営業フローやセールストークを学ぶために座学やOJTといった教育にも時間がかかります。
営業アウトソーシングを活用することで、営業経験を有したスタッフを、必要な時に必要なリソース分確保することが可能になります 。このことで採用や教育にかかるコストを削減することができます。
また、営業ノウハウや経験が豊富なプロのスタッフを間近で見ることができることも大きなメリットになります。顧客の新規開拓・アポイント・クロージング・提案資料作成・顧客リスト作成など、さまざまな業務ノウハウを学ぶことで、営業組織全体のスキルアップにも繋がります 。
2. 営業部門の拡大
新規事業の立ち上げや自社拠点のない地域で営業活動を展開したいと考えた時に、営業アウトソーシングは有効な手段です。例えば、事業拡大のために都市部だけでなく、新たに地方でも営業活動を展開するとなると、店舗やオフィスの確保や既存の営業リソースの分配が必要になります。
そうしたときに営業アウトソーシングを活用することで、 既存の営業体制を大きく変更せずに、新規事業の立ち上げや自社拠点のない地域で営業活動を開始することができます 。
3. 繁忙期における営業部門の強化
季節や時期によって需要が異なるサービスや製品を扱っている場合、繁忙期は営業人員が不足し、閑散期は逆に営業人員が余ってしまうといった問題が発生します。営業アウトソーシングは、営業人員が必要な時にスポットで委託することが可能です。
そのため、閑散期には自社のセールスパーソンのみで、繁忙期には外部リソースを活用することで、需要に合わせて柔軟にリソース調整がおこなえます 。
4. リモート営業に関するノウハウや知見の活用
近年はリモート営業の需要が高まっています。一方で、今までオンラインを活用した営業を展開していなかった企業は、社内にリモート営業に精通した人材がいない、またリモート営業に関する経験やノウハウの蓄積がありません。
そこで外部企業に委託することで、リモート営業を新たに開始することができると共に、外部企業と連携してリモート営業を行うことで将来的に自走する足掛かりになります 。
営業アウトソーシングのデメリット
続いて、営業アウトソーシングのデメリットについてみていきます。
1. 情報漏洩リスクの増加
委託する業務内容によっては、外部スタッフが自社の顧客情報や機密情報を扱うことになり、情報流出のリスクが高まります。そのため、秘匿価値の高い情報・商材は、アウトソーシングを導入すべきか慎重に検討すべきでしょう。
また、どの情報が機密情報にあたるのか、誰が機密情報にアクセスできるようにするのか、機密情報にアクセスする場所や時間など、情報の取り扱いに関して、委託先の企業との間で明確なルールを設けるようにしましょう。
2. 委託先への依存
委託先への依存度が高まることにより、自社にノウハウが蓄積されないというデメリットがあります。中長期的に営業部門を自社で自走させたい場合には、委託先への依存度をコントロールすることや、業務を丸投げするのではなく協業しつつ自社にも知見やノウハウを蓄積する仕組みが求められます。
委託先を選ぶ際におさえるべき3つのポイント
委託先を選定する際には、支援が必要な業務範囲を明確にすることや、委託先の料金形態、過去の実績などを十分に検討する必要があります。ここからは、最適な委託先を選ぶための3つのポイントについて解説します。
1.自社の営業活動のどこで支援が必要か
委託先を具体的に選定する前に、具体的に現状の営業活動においてどの業務で支援が必要なのかを明確にしましょう。
営業プロセスの構築(マーケティングとの連携含める場合もあり)
営業活動の前段階のインサイドセールスの強化(商談率向上)
テレアポ強化/ 商談フロー作成など
営業活動における提案サポート業務(受注率向上)
営業方針や戦略の策定(全体戦略)
営業人材の育成、研修・データ入力などの事務作業補佐
テレアポ代行に強い企業・営業プロセスの立案や改善に強い企業など、営業アウトソーシングを提供している企業でも、それぞれ提供しているサービスや得意分野に違いがあります。最適な委託先を選定するためにも、まずはどの業務を委託するのかを明確にすることが大切 です。
2.営業アウトソーシングの料金形態
営業アウトソーシングの料金形態には、主に以下の3つのタイプがあります。
固定報酬型
成果報酬型
複合型
固定報酬型は、毎月一定額の報酬を支払うタイプ です。報酬があらかじめ決められているので、予算の調整がしやすいのがメリットです。その反面で、いざ委託してみたが思ったような成果が得られなかった場合では、損失を生む可能性があります。
一方で、成果報酬型では、委託先が獲得した顧客数や売上で支払う額が変動 します。委託先が成果を得られなかった時は余分な報酬を支払う必要がなくなります。その反面、大きな成果を得た時は、支払う額が大きくなり、予算の調整が難しくなります。
複合型は、これらの固定報酬型と成果報酬型を組み合わせた料金形態 です。支払う報酬のうち、一定額は固定にするものの、残りはインセンティブのような形で成果によって支払いが行われます。
3.自社ニーズにマッチした実績があるか
営業アウトソーシングを提供する企業では、営業に関するプロを多く有していますが、業種・業界によって得意不得意があります。委託先を選定する際には、過去にどのような実績があるのかを必ず確認する必要があります。
確認するポイントは、以下のような点です。
・過去に担当した業種や業界 ・取り扱っている企業の規模感 ・案件の平均継続期間 ・一案件に派遣するスタッフの平均人数 ・オンラインを活用した営業の実績はあるか
営業アウトソーシングの活用事例|ビッグローブ株式会社様
中堅・中小企業を中心にSIM・回線等の通信サービスやクラウドサービスを提供するビッグローブ株式会社様では、もともとWeb経由の顧客獲得に強みを持っていたものの、顧客のニーズや悩みに即したサポートといった点で営業活動に課題を抱えていました。
そこで、2007年に直販営業部隊の企画が立ち上がった際に、パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)に営業アウトソーシングを委託しました。
具体的にはWebからの顧客のお問い合わせに対して、顧客の属性やお申し込みの内容によって「コンタクトセンター対応」と「営業対応」の2つのサポート体制を用意しました。顧客のニーズや悩みを汲み取った上で、最適なサポートをすることで高い顧客満足度を実現 しています。
また、パーソルP&TとビッグローブのWebマーケティングチームが連携することで、顧客から拾い上げた問い合わせ内容やVOCをレポートし、Webサイトの改善につなげています。また、ビッグローブのWebマーケティングチームでは、営業負担を軽減するためにWeb上で見積もり取得できるように改修を加えるなど、顧客サポートを充実させるために双方がサポートする体制を構築しています。
結果的に、パーソルP&Tが支援を始めた2007年以降、モバイル回線サービスでは、月間の新規申込のうち、約7割が追加購入に至った上に、Webサイト経由の売上は、昨対比超えを3年間連続で達成 しています。
【参照】パーソルプロセス&テクノロジー株式会社「導入事例」
まとめ
本記事では、営業アウトソーシングの導入を検討している企業に向けて、営業アウトソーシングの基礎知識やメリット・デメリット、具体的な活用事例について紹介しました。
営業アウトソーシングを導入する際には、「コスト削減」「営業部門の強化」など、何を目的として導入するのかを明確にすることが大切です。その上で、委託先に業務を丸投げするのではなく、綿密な連携を取ることで自社へのノウハウ蓄積や、情報流出のリスクを抑えていきましょう。
営業プロセスにおける課題別 成功ストーリー集をご覧いただけます
今、法人営業の現場では、「相見積りのケースが増えた」「クロージングが長期化している」といった課題を感じているケースが多いのではないでしょうか。その原因のひとつは、法人営業を取り巻く環境の変化です。 こうした中で効率的に売上げ増大を実現する「案件創出型営業プロセス 」の実践方法を分かりやすく解説した資料を公開しています。ぜひご活用ください。