パーソルグループでは、グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」を実現するため、派遣スタッフを含む多様な人材が、“はたらくWell-being”を体現し、価値創造を推進する組織を目指しています。中期経営計画においては、事業成長のエンジンの一つとして人的資本を位置づけ、3つの構成要素(“はたらくWellbeing”の体現、テクノロジー人材の拡充、多様な人材が活躍する基盤の構築)を定めて取り組みを加速していきます。
パーソルグループは、人的資本を価値創造の源泉として捉え、「はたらいて、笑おう。」の実現と中長期的な企業価値向上に向けた人的資本経営を推進しています。AIの進化により、仕事の進め方、求められるスキル、人が価値を発揮する領域は大きく変わろうとしています。中期経営計画FY2028における人事戦略では、変革をけん引する経営チームと経営リーダーづくり、人材ポートフォリオの変革と労働生産性の向上、管理職の役割変革と社員のスキル開発の支援、社員や派遣スタッフのはたらくWell-beingの持続的向上、人事の機能とあり方の変革、という5つの戦略テーマに取り組みます。これらは個別の施策ではなく、AI時代において企業価値向上を実現するための一連の変革であり、経営陣、管理職、メンバーすべての階層を対象としています。

人事戦略に基づく人的資本投資が、社員や派遣スタッフのWell-being、社会価値、経済価値にどのようにつながるのかを可視化し、検証していくために、人的資本インパクトパスを用いています。エンゲージメント向上が売上成長率の向上に遅行してつながる可能性や、エンゲージメント自体が向上するためのメカニズムなど、データ分析を通じて一定の示唆が得られています。→「人的資本インパクトパスにおける検証内容」を参照
中期経営計画FY2028では、人材ポートフォリオ変革指標とエンゲージメント指標を、人事戦略の進捗を測る主要指標として位置づけています。人材ポートフォリオ変革指標は、AI時代に必要な人材・スキルへの転換が進んでいるかを捉え、エンゲージメント指標は、AIが進展する中でも、はたらく一人ひとりが変化を前向きに受け止められる状態をつくれているかを捉えます。
これらの指標を設定して人事戦略の進捗を確認し、人的資本経営の側面から社会価値・経済価値創造への貢献を目指しています。
価値創造への道筋:人的資本インパクトパス

パーソルグループでは、社員エンゲージメント指標に、Gallup社と共同開発した“はたらくWell-being”指標を組み入れた5つの項目をグループ重要指標(「はたらいて、笑おう。」指標)と位置付け、毎年エンゲージメントサーベイで状態を把握しながら向上に取り組んでいます。
このサーベイ結果を用いて、次の点について検証を行っています。
・社員エンゲージメントと事業成長はどのように関係しているか
・社員のエンゲージメントや“はたらくWell-being”は、どうすれば高まるか
| 設問項目 | 設問内容 |
|---|---|
| はたらく"Well-being"指標 | 私は、日々の仕事において喜びや楽しみを感じている(仕事の体験) |
| 私は、自分の仕事は人々の生活をよりよくすることにつながっていると思う(仕事の評価) | |
| 私は、仕事や働き方について、多くの選択肢から、自分で選べる状態にある(仕事の自己決定) | |
| エンゲージメント指標 | 私にとって自分の仕事は、やりがいを感じるものである(仕事エンゲージメント) |
| 私は、所属組織に対して、積極的に貢献したい(組織エンゲージメント) |
「はたらいて、笑おう。」指標に関して、2021年度から4期分のサーベイ結果を用いて、エンゲージメントの各要素が事業成長とどのように関係するかを探索しました。目的は、因果関係の証明ではなく、人的資本と事業成長の関係性を探索し、今後の検証に向けた仮説を得ることです。分析の結果、社員が自らの仕事を人々の生活や社会への価値提供と結びつけて認識する「社会的意義の認識」が、事業成長(売上成長率)との関係において相対的に重要な要素として確認されました。また、エンゲージメントと事業成長の関係は一律ではなく、企業規模などの企業の状態によって、重視すべき要素が異なる可能性も見えてきました。
今回得られた示唆は、人的資本投資が社員のエンゲージメントや“はたらくWell-being”の向上を通じて、顧客価値の創出や事業成長につながるプロセスを検証していくうえでの第一歩です。今後も、社員の意識や行動の変化と事業成果のつながりを検証し、人的資本経営と価値創造の関係性を探求していきます。
| 得られた主な示唆 | ・売上成長率を目的変数として、エンゲージメントサーベイ(ES)の回答と事業成長との関係性を探索 ・従業員数成長率などの事業構造要因を統制変数として考慮したうえでも、ES回答スコアは売上成長率に対して一定の説明力を示した ・ESの項目では、「仕事の評価」(私は、自分の仕事は人々の生活をよりよくすることにつながっていると思う)が、売上成長率との関係において一貫して重要な要素として確認された ・企業規模や事業フェーズ等によるセグメント分析においても、「仕事の評価」は多くのセグメントで重要な要素として確認された。一方で、企業の状況によっては、「仕事の体験」や「組織エンゲージメント」など、事業成長との関係が強いエンゲージメント要素が異なる可能性も示唆された ・これらの結果は、エンゲージメントを総合的に高めることに加え、社員が自らの仕事の社会的意義を実感できる状態をつくることが、事業成長にとって重要な観点となる可能性を示唆している |
| 対象データ | ・2021年度~2024年度の社員エンゲージメントサーベイ結果(Asia Pacific SBUを除く) |
| モデル構築のアプローチ | ・社員エンゲージメントと財務成果の非線形な関係を捉えるため、機械学習モデルを活用 ・財務指標(探索過程では売上成長率以外も検証)を目的変数とし、ESの各設問および財務・組織関連指標を説明変数としてモデルを構築 ・社員エンゲージメントの影響が時間差を伴う可能性を確認するため、1年遅れ・2年遅れの変数を作成 ・説明可能AIを用いて、各説明変数がモデルの推測値にどの程度寄与しているかを可視化 |
研究で得られた示唆(イメージ図)

注記:企業価値指標や財務指標の予測では、市況、業種特性、マクロ環境、M&A等の外部要因の影響が大きいため、Out-of-sample R²が0.10以上で一定の説明力、0.20以上で実務上有用な説明力を有する水準の目安と考えられる。本分析では、売上成長率を目的変数としたモデルにおいて、Out-of-sample R² ≈ 0.23 となり、探索分析として一定の説明力を有することが確認された。なおモデル内の説明変数には、従業員数成長率など社員エンゲージメント項目の寄与を上回る変数が含まれているが、社員エンゲージメント項目についても限定的ながら一定の寄与は確認された。モデルの推測値と実績値の平均的な誤差の大きさを示す RMSE はおよそ15パーセントポイントであった。
「はたらいて、笑おう。」指標に関して、同様に2021年度から4期分のサーベイ結果を用いて、社員のエンゲージメントや“はたらくWell-being”が高まるメカニズムを研究し、「社員エンゲージメント向上モデル(以下、モデル)」を構築しました。想定していた通り、社員自身のキャリア意欲を高めることが重要であること、そのために自信や充足感など社員のポジティブな気持ちを高める必要があることが分かりました。社員の自信と充足感は、グループ理念体系への共感や理解によってもたらされる側面があります。また、役員や上司のふるまいによって、社員の自信と充足感、グループ理念体系への共感・理解が高まることも分かりました。
モデル内での理念体系への共感・理解・行動の位置付けは、当社において、社員が組織内でアイデンティティを醸成し発揮することの重要性を示唆しています。この研究成果を「社員エンゲージメント向上モデル」として、理念浸透やキャリアオーナーシップ向上などの施策検討に活用しています。
| 得られた主な示唆 | ・役員や上司の取り組み、ふるまい、態度が出発点となって社員の自信や充足感、グループ理念体系への共感・理解が高まる ・グループ理念体系への共感・理解は、理念体系に基づく行動につながるとともに、社員のキャリア意欲を高める ・社員の自信や充足感は、理念体系に基づく行動や社員のキャリア意欲の向上につながるだけでなく、直接的に社員エンゲージメントや“はたらくWell-being”の向上につながる ・理念体系に基づく行動や社員のキャリア意欲の向上が社員エンゲージメントや“はたらくWell-being”の向上につながる |
| 対象データ | ・2021年度~2024年度の社員エンゲージメントサーベイ結果(Asia Pacific SBUを除く) |
| モデル構築のアプローチ | ・理論に基づくモデル探索 ・データドリブンのモデル探索 ・理論とデータドリブンを統合した「統合モデル」の作成 ・統合モデルの実証的な検証(モデルが実際のデータに合っているかを確認) |

注記: 個人レベルと所属レベルの双方の要因を同時に捉えるマルチレベルSEMにより、上司・役員の影響が「社員としての自信と充足」や「グループ理念体系」を介してキャリアに作用し、最終的にウェルビーイングとエンゲージメントに至る構造を検証。適合度指標はいずれも良好な水準を示し、本モデルはデータへの適合性が高く、想定した関係構造が支持された。