企業の未来をつくる、テレワーク時代の人材育成とは?

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新型コロナウイルスの感染拡大は、暮らし方、そしてはたらき方を大きく変えました。人材育成についても、従来のような対面指導が難しくなってきています。この記事では、制約や変化に対応しつつも、効果的な人材育成を行っていくために考えるべきポイントや事例を紹介します。

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目次

ますます重要になる人材育成。その理由は?

「人財」という言葉があるように、人的資源は企業の生命線といえます。そして今、人的資源の質を高めるための人材育成への考え方、あり方は変わりつつあります。2019年3月に経済産業省が発表した「変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言」では、「日本型人材マネジメントのアップデート」がうたわれています。

日本型人材マネジメントとは、日本企業の特色であった、長期安定雇用を前提としたマネジメントを指します。日本企業は、社員の高い集団的能力により、経営競争力を強化してきました。しかし、少子高齢化によるマンパワー不足、またデジタル化の進展による変化の中で、日本企業の競争力は低下しつつあります。

こうした中、能力の均質化よりも多様化、イノベーション力の向上などが経営課題として挙げられるようになってきました。経営課題が変化すれば、人材育成やマネジメントの優先事項も変わります。何を目的に、どのような結果を求めて、どのような方法で行うのか。多くの企業が、人材育成をアップデートすべき時期に来ているといえるでしょう。

経営課題と人材マネジメント上の課題の結びつき

 

【出典】経済産業省「変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言~日本企業の経営競争力強化に向けて~」

人材育成の現状と、多くの企業が感じる課題

人材育成のための取組状況

 

【出典】厚生労働省「平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて-」

厚生労働省のデータによると、入社3年程度までの若年層への主な人材育成の取り組みは、「定期的な面談(個別評価・考課)」「計画的・系統的なOJT」「企業が費用を負担する社外教育」が多くなっています。

管理職層を除いた中堅層では、「計画的・系統的なOJT」「指導役や教育係の配置」や「企業内で行う一律型のOff-JT」が多くなっています。しかし、中身を見てみると、入社ガイダンスや安全衛生研修、コミュニケーションや個人情報保護に関する研修など、全社員対象の取り組みが多く、中堅層にターゲットを絞った人材育成の割合は低いといえます。

また、非正規雇用の労働者への研修も少なくなっています。

早期選抜者に実施している育成メニュー

 

【出典】厚生労働省「平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて-」

将来の管理職や経営幹部候補の育成については、育成を計画的かつ効果的に行うために、早期選抜を実施する企業も見られます。では、管理職や経営幹部候補の人材育成としてはどのような取り組みがなされているのでしょうか。

「多様な経験を育むための優先的な配置転換(国内転勤含む)」「特別なプロジェクトや中枢部門への配置等重要な仕事の経験」「経営幹部との対話や幹部から直接、経営哲学を学ぶ機会」が多く挙げられています。いずれも、内部育成に相当する取り組みといえます。

人材育成上の課題

 

【出典】厚生労働省「平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて-」

企業が感じる人材育成の課題として多く挙げられたのは、「業務が多忙で育成の時間的余裕がない」「上長等の育成能力や指導意識が不足している」「人材育成が計画的・体系的に行われていない」でした。

これらは若年層より中堅層の人材育成において課題として挙がっており、新人はもちろんのことながら、中堅層の人材育成に頭を悩ませる企業が多いことが見えてきます。

コロナが変える人材育成。成功のポイントは?

多くの会社が標準的に実施している人材育成の取り組みはOJTではないでしょうか。しかしコロナ禍で、以前のように現場に同行させ、目の届く範囲で業務に当たらせるのは難しいのが現状です。

だからといって、人材育成ができなくなったというわけではありません。育成の目的に立ち戻ることが重要です。

何のための人材育成? 目的を思い返すことが重要

自社の人材育成プログラムを毎年見直している場合は少ないかもしれません。企業によっては、何年も同じプログラムで、ルーティン的に行われている場合も少なくないでしょう。何の研修をするのか、どこに集まって、どういう形態で行うのかといった観点から考えがちです。

しかし、効果的な人材育成を行うには、まず「自社がどうなっていきたいのか」「社員が何に困っているのか」「社員にどうはたらいてほしいのか」をスタートに考えていくことが重要です。

「最近の流行だから」「多くの企業が取り入れているから」という理由で新しい研修を加えるのも要注意です。目新しさもあり一見効果的に見えますが、目的が明確でない研修は、企業にとっても、教育対象となる従業員にとってもコストと時間の無駄になってしまいます。迷ったときは、「この研修を行った結果、何がもたらされ、自社と従業員にとってどういう魅力があるのか」という問いに立ち戻りましょう。

誰に向けての教育なのか? 対象は明確に

新入社員、中堅層、管理職といった階層や部署、職種などで、カテゴライズして研修を行うことは多いのではないでしょうか。カテゴライズしての研修は一定の効果がありますが、大勢いる受講者の一員となるので、当事者意識が芽生えにくいという面もあります。対象者を明確にし、何を目的としているのか社員にしっかりと意識させることが重要です。

人材育成において、注目を集めているのが、「1on1ミーティング」です。上司と部下の間で行われるものに評価面談がありますが、評価面談は主に上司が部下に向けて話すのに対し、1on1ミーティングは情報交換・共有のために行われるため、上司と部下は対等に話すことが多くなります。また、評価面談は期末など、年に1〜2回程度であることがほとんどですが、1on1ミーティングは週1、月1、または必要に応じて行うなど、スパンが短く回数も多いのが特徴です。

コロナ禍でコミュニケーションの取り方に制約が生まれ、報告や相談を目的としたオンラインでの1on1ミーティングが増えました。最初は必要に迫られて行っていたものが、話し合いの機会が以前よりも増え、コミュニケーションの質が上がったケースも出てきています。

1on1ミーティングには、個々の考えや思いに触れることができるため、一人ひとりに合った教育、指導ができるという特徴があります。個別の丁寧な指導により、成長促進、信頼関係の構築、企業への定着率アップが見込めます。指導する側にとっても、的確な指導ができ、指導後のモニタリングもしやすいというメリットがあります。コロナ禍を逆手に取り、オンラインでの1on1ミーティングを人材育成の手法として取り入れてみるのもよいかもしれません。

覚えておきたい、人材育成の手法6つ

主だった人材育成の手法をまとめて紹介します。それぞれの特徴を捉え、自社の体制や業務環境に合わせて、組み合わせながら取り入れるのがおすすめです。

1. OJT(On the Job Training)

OJTは、実際の業務を通じて、業務遂行の能力を高める育成手法です。

OJTを行う上で重要なのは、単に作業手順を教えるのではなく、指導者が手を離しても一人で業務に当たれるように育成するということです。やってみせるのはもちろんですが、「なぜこの作業をしているのか」「別のケースであればどう対応するのか」など、それぞれの業務が持つ意味とあわせて説明することが必要です。

また、実際に業務を任せる場合には、「やらせて終わり」にならないことが重要です。どれくらいまで理解しているのかを聞き取り、必要に応じてさらなるフィードバックをすることで、知識と技術を定着化することができます。

テレワーク下でも、内容によってはOJTが可能です。業務をタスク化して指導することで、個々の業務や作業について、対面時以上に丁寧な指導ができることもあります。

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2. Off-JT(Off the Job Training)

Off-JTは、実業務以外に学びの機会を設ける育成手法です。スタートアップとしての社会人教育、管理者研修、コミュニケーション力向上研修、接遇研修などが該当します。社内で行うほか、社外での研修とし、プロから指導を受けるなどさまざまな方法があります。

集合研修が行いづらい現在、オンラインセミナーなどで研修を提供している教育機関もあります。ライブ形式のほかにアーカイブ動画を使ったオンデマンド形式で研修を提供しており、業務状況に合わせて、好きな時間に好きな場所で研修受講が可能です。

最近では多くの教育機関がオンラインセミナーに対応しており、オンラインを想定した指導の工夫もしているので、上手に活用すると、自社の社員が研修を行うよりも、高い効果を得られることがあります。

3. メンター制度

直属の上司とは別に、比較的年齢の近い先輩社員が新入社員の専属メンターとなり、プライベートも含めたさまざまな相談に対応する育成・管理手法です。メンタル面でのサポートにおいて効果的で、メンターとなる社員にとっても成長の機会となります。組織の結びつきを強める効果もあります。

4. MBO(Management by Objectives)

経済学者のドラッカーが提唱した、評価と結びついた育成手法です。最初に部下と上司が話し合い、達成目標を定めます。そして、定めた目標の達成度合いで評価を決めるという流れになります。目標までの道筋、やるべき事柄が明瞭になるので、意欲を持って業務に当たることができます。MBOでは、中間目標を定め、評価者である上司と部下がすり合わせを行います。

テレワークにおける悩みの一つは評価軸をどのように定めるかですが、MBOの場合、達成すべき目標がはっきりしているので、部下は上司に確認しなくても業務を進めることができます。さらに、上司は勤務態度が見えない状況でも部下の評価がしやすくなり、評価への納得感も高まります。

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5. 1on1ミーティング

前述のとおり、上司と部下が1対1でミーティングを行います。主な話し手は部下であり、話す内容も部下の話したいことを話させます。上司は傾聴や質問で部下の考えや思いを引き出し、探している答えを本人自身が見つけるサポートをします。あまり時間をあけず、週1回などの頻度で行うことで効果を発揮します。

Web会議ツールなどを使うことでテレワーク下でも実施しやすく、注目を集めています。

6. コーチング

コーチングは、質問などで本人の中にある思いや成長の意欲を引き出す育成手法です。

コーチングにおいては、上司は基本的に部下に答えを示すことはありません。問いを投げかけ、部下の思考を促します。時間はかかりますが、自分自身で考えさせることで、確実な成長を目指します。コーチングには一定のスキルが必要なので、取り入れる際はコーチ役となる上司への研修が必要です。1on1ミーティング時に行われることも多いようです。

テレワーク時代における人材育成の事例

人材育成において、属性別の研修は一定必要です。効果的な研修実施のヒントになる事例をまとめました。いずれの場合も、テレワークをはじめ自社の勤務体制にあわせて、取り入れる方法を柔軟に考えていくことがポイントです。

新入社員向け

社会人経験がない新入社員に対しては、仕事そのものや自社について幅広く理解する機会を設けたり、慣れない環境での精神的なフォローを行ったりすることが重要です。テレワーク下では、仕事の基本的な進め方や、社内外のコミュニケーションに関する悩みが多く発生することが考えられます。指導時以外でも、Web会議ツールを活用した雑談の機会などを作っていくのがよいでしょう。

・職場全体で行うOJT
それぞれの社員への指導者は決めつつ、指導者を統括するリーダーを設定。育成の負荷を個人に負わせるのではなく職場で分け合い、オンライン日報なども活用して状況も共有することで効果的なOJTを実現し、組織の結束も高める。

・自社の案内パンフレット作成を課題に
新入社員研修の一環として、学生向けの採用パンフレットを作成させた。経営理念から実業務まで、幅広く自社を理解することにつなげる。

・単発ではなく、年間の研修計画を策定
若手社員全員のスケジュールを年間で把握し、可能なタイミングで研修スケジュールを組み込み「できるときに受ける」ではなく、研修をしっかり受けられる環境を整える。

・VR研修
主に技術職に有効。VR用アプリケーションを使い、一人称視点でベテラン社員の動きを学ぶ。新入社員一人で学習が可能で、接触機会を避けることができる。

中途入社社員向け

自分なりの仕事の方法を確立している人材が多いため、相手を尊重しながら擦り合わせる方法を探すことが重要になります。テレワーク下では仕事の進め方を逐一確認しづらく、すれ違いに気づかない場合も少なくありません。慎重な擦り合わせを意識しましょう。

・自社の仕事の進め方を理解してもらうための説明機会を設ける
思い込みや誤解でトラブルが生じないよう、自社の業務フローや慣行を説明。また、自社で重視される評価項目や社風も共有する。テレワークの場合もWeb会議ツールを利用し、説明機会を豊富に用意する。

・新たなスキル習得のための研修
同業種で転職した場合であっても、仕事や取引先によっては必要な知識が不足していたり、技術革新で新しいスキルが必要になったりすることは少なくない。オンラインでの研修も含めて、個別教育や自己啓発の支援を実施し、新たなスキル習得を促す。

次世代リーダー向け

資質や本人の意思を見極め、自社における次世代リーダー候補とした場合、別途人材育成のプログラムを組む場合もあります。著名な経営者や専門家の講演が場所を問わないオンラインで行われる機会も増えている今は、自社を担う人材に多方面の知見を吸収してもらうのに良いタイミングともいえるでしょう。

・優れたリーダーの経営を学ぶ機会を作る
さまざまなリーダーの経営スキルやノウハウを学ぶ外部研修で、社内研修だけでは得られない広い視野を獲得させる。

・経営課題への提言をまとめる
リーダーシップに関する学びののちに、ワークショップを開催。課題を提示し、経営課題に対する解決策を考えさせ、役員会ヘの提言までをまとめる中でリーダーとしての資質を高める。

人材育成の制度づくりの注意点

人材育成の制度をつくるときには、まず課題を明確にすることから始めましょう。課題を基に自社に適した手法を選びましょう。さまざまな事例がありますが、そのまま取り入れる必要はありません。目的に照らし合わせ、自社に合うかたちにカスタマイズするのがおすすめです。

人材に求めるハードルが最初から高すぎると、成長の妨げになることもあります。育てたい人材の力量や状況を把握・想定し、それに適した取り組みにすることが大切です。実施後は必ず効果を検証し、改善・レベルアップを図りましょう。人材育成においても、PDCAを回していくことが重要です。

社員の成長とやりがいを企業成長の原動力に

コロナ禍で、多くの企業がテレワークでの人材育成という課題に直面することになりました。しかし、その状況下でもやり方次第で育成は可能であり、ときに従来よりも育成効果が上がることも分かってきました。社員の成長は、社員自身の人生の充実につながります。

近年では、はたらき方が多様化しています。業務状況に応じ、非正規雇用労働者への教育も視野に入れる必要が出てくるかもしれません。コストとの兼ね合いもありますが、手法によってはローコストでスタートできるものもあります。経営戦略に照らし合わせ、実現可能な方法を取り入れてPDCAを回していくことが、企業の成長の可能性を高めていくともいえるでしょう。

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