2020年10月22日
2022年02月01日
新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、テレワークが一気に加速。会社に行かない毎日にも慣れてきて、ふと「部下の育成や指導、評価はこのままで良いのだろうか」と不安を感じたことはありませんか?
日常的な対面交流をはじめ、場所・時間の共有が少なくなった今、マネジメント層の方が抱えるプレッシャーは小さいものではありません。将来的にも、多様なはたらき方の選択肢としてテレワークが定着する可能性は非常に高いと言えるでしょう。
本記事では、いま改めて学ぶべき「テレワークでのマネジメント」について考えてみたいと思います。
目次
実は日本でテレワークの導入が推奨され始めたのは1990年~1991年頃のことです。そこから長らく企業は導入に消極的でしたが、今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、テレワークへ舵を切らざるを得なくなりました。いわば「半強制的」にテレワークは加速したのです。
とはいえ、テレワーク導入の実施率は業種や職種によって大きく異なります。緊急事態宣言下と宣言解除以降で実施率を比較した調査データにより、従業員のテレワークの継続について、今後の意向も浮き彫りになりました。
この調査データからは、テレワークが「新たな日常(ニューノーマル)」となりつつある現状が見えてきます。
「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」は、東京都の緊急事態宣言が解除された後の2020年5月29日~6月2日に実施されました。緊急事態宣言が出された直後である4月10日~4月12日に実施された第二回の調査データと比較すると、「テレワークがスタンダード」となりつつある職種と、そうでない職種の差がはっきりと見えます。
エッセンシャルワークを始めとする対面・現場での業務が代替できない職種は、緊急事態宣言の解除後、もともと低かった実施率がすぐに下がったのに対し、比較的テレワークになじみやすい職種は緊急事態宣言解除後も、実施率が増加しているのが特徴です。
※調査データでは、「テレワーク(情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟なはたらき方)」の実施率について集計しています。
次に、新型コロナ収束後のテレワーク継続希望率をご紹介します。
テレワーク実施中の正社員による新型コロナ収束後のテレワーク継続希望率は69.4%でした。4月は53.2%だったため、大きく上昇しています。特に、これからを担う「若い年代」や「女性」の継続希望率が高く、20代女性では79.3%にも及んでいます。
新型コロナウイルスの影響に関わらず、テレワークというはたらき方に従業員から一定の支持があることが分かりました。このデータを見る限り、従業員の働き方改革や満足度向上の一環として、テレワークというはたらき方を取り入れる、社内の体制や制度を変革していくことが会社側に求められていると言えます。
このように、多くの従業員が希望しているテレワークですが、不安や課題を感じていないわけではありません。不安・課題についても、4月と5月で比較調査しています。
中でも注目すべきは、
・上司から公平・公正に評価してもらえるか不安
・成長できるような仕事を割り振ってもらえるか不安
・将来の昇進や昇格に影響が出ないか不安
・社内異動の希望が通りにくくならないか不安
といった、社内の評価・キャリアへの不安が高まっている点です。
物理的なテレワークへの対応から、上司と部下の関係性で生じる「マネジメントの在り方」へと問題は変化しはじめているのです。
では、私たちは「テレワーク時代のマネジメントの在り方」をどのように模索し新たなスキルを獲得しなくてはいけないのでしょうか。
残念ながら、「コロナ禍ならではの、テレワークに特化したマネジメント手法」というものは存在しません。
テレワーク環境下で、個々のマネジャーと組織のマネジメントをめぐる課題が顕在化しただけなのです。ここでは「テレワーク下のマネジメントの失敗事例」を2つピックアップしました。
・部下が一生懸命、仕事に取り組んでいるか、顔を合わせて判断したい
・実際に業務に取り組んでいるかどうか、テレワークでもきちんと把握したい
いずれもテレワークで管理者からよく出される要望です。しかし、環境によってはメンバーに強いストレスがかかる状況を招いてしまう場合があります。
勤怠管理の代替案として、zoomを1日中つないだ状況で顔を表示させたままにし、マネジャーが音声を使って指示を出す
一見、効率が良さそうに見えますが、絶えず「監視」されていると意識せざるを得ない環境となっています。部下を信頼し、その信頼に部下が応える関係性の構築は、どんな組織においても基本となるマネジメントスキルのひとつです。
・自宅でのテレワーク。PCがセットできるのは生活感があふれるリビングだけ
・1人暮らしのワンルームマンションで、ベッドをソファ代わりに作業している
急遽、テレワークの「場所」を用意することになったメンバーの中には、非常にプライベートな空間で仕事をせざるを得ない方もいるでしょう。
そのような状況の中、Web会議中の背景を変更できるツールを禁止したり、本人が嫌がっているにもかかわらず映り込む自宅や家族について話題にしたり、というケースが発生しています。
関係構築や情報共有を密にしようと意識した結果、メンバーを疲弊させたり生産性を落としてしまったりしては、本末転倒です。新しい環境に置かれた部下の仕事の仕方や健康面に配慮する、マネジメントの基本姿勢を大切にしましょう。
テレワークは決して悪いことばかりではありません。企業にとって、テレワークが次のようなメリットをもたらしていることがパーソル総合研究所の調査でわかっています。
・感染症のリスク軽減
・通勤や移動の時間削減
・通勤や移動のストレス軽減 など
それでは、どうすればテレワーク下のマネジメント課題を解決し、推進できるのでしょうか?ここではマネジメントを成功させるためのポイントを3つご紹介します。
テレワークでは従業員同士や上司とのコミュニケーション不足になりやすいため、オンラインでのコミュニケーション環境を整備することがポイントです。
このような課題解決に有効とされるコミュニケーションツールには次のようなものがあります。
・Web会議システム
距離や場所といった物理的な制約を超え、インターネットを通じて従業員同士が顔を見ながらミーティングを行えるツールです。資料や画面を共有しながら効率良くコミュニケーションを取ることができます。Zoomなどが代表的です。
・ビジネスチャット
SNSのような操作性や利便性を兼ね備えた、ビジネス用のコミュニケーションツールです。メールとは異なるレスポンスの早い手軽なやりとりができます。業務連絡だけでなく、アイデア会議なども気軽に行うことができます。
通常のオフィス勤務と比べて自宅やサテライトオフィスなどで勤務するテレワークは、情報漏洩のリスクが高まります。
総務省が公表している「テレワークセキュリティガイドライン第5版(令和3年5月)」には次の対策例が挙げられています。
・テレワーク用端末にセキュリティ対策ソフトを導入し、最新のバージョンが適用されるよう更新を行う
・電子メールに添付されたオフィス文書等を安易に開かない
・電子メール等の誤送信による情報漏えいに対応するため、外部に添付ファイル等を送信する際には二重チェックを実施する
・誤送信防止用のアプリケーションを活用する など
また、日頃から従業員に対して情報セキュリティに関連する教育・啓発活動を実施し、意識的にセキュリティ対策に取り組むことも重要です。
テレワークになるとオフィスに出勤せずに仕事をする勤務形態になるのでタイムカードなど物理的な勤務管理方法が利用できず、不明瞭になりがちです。
そこで役に立つのが勤怠管理ツールです。最近では、クラウド型勤怠システムの活用が主流となっています。はたらき方に関わらず勤怠管理が可能なので、テレワーク導入に合わせて勤怠管理システムの入れ替えも検討すると良いでしょう。
・コロナ禍の影響で、長年マネジャー研修を依頼していた外部の集合研修が中止になってしまったが、今こそ力を入れるべきだと考えている
・マネジャーから、管理手法に不安を感じているという声が上がっている。なんとか対応していきたい
パーソルグループでは、そんな新しいはたらき方に一丸となって取り組まれる組織の「今だからこそマネジメントの基礎をしっかり身につけたい」というご要望にお応えする、さまざまなコンテンツをご用意しています。
一人ひとりが見えない状況だからこそ、メンバーと向き合うための基礎的なスキルやスタンスを学びなおしてみてください。
・管理職のためのテレワーク・マネジメント研修
・チームを強くするテレワーク仕事術シリーズ
・管理職向けメンタルヘルス研修
・より良い成果を出すための「聴く・訊く技術」強化講座
「強いリーダーシップ」「高機能な人材管理システム」「フラットな組織」…これらのいずれも、マネジメントの本質ではありません。
しかしその「機関」もまた人であり、機能を果たすための能力開発が必要不可欠です。(マネジメントとは)組織をして成果を上げさせるための道具、機能、機関である
【引用】P・F・ドラッカー『明日を支配するもの 21世紀のマネジメント革命』(ダイヤモンド社・1999年)