【事例あり】サテライトオフィスとは?メリットと導入時の注意点

サテライトオフィスとは、本社など企業・団体の拠点から離れた場所にあるオフィスのことです。新型コロナウイルス感染拡大や働き方改革により、普及したテレワークの一環として広く活用が進んでいます。

本記事では、活用のメリットや事例、費用や導入を検討するときの注意点を分かりやすく説明します。

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経営・人事の皆様のご参考になれば幸いです。

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目次

サテライトオフィスとは

サテライトオフィスとは、本社など企業・団体の中心的な拠点から離れてはたらく場所のことです。衛星(サテライト)のように本拠から離れているオフィスという意味で、このように呼ばれています。

働き方改革やコロナ禍によるはたらき方の多様化が進むにつれテレワークが普及、改めてオフィスのあり方が問われるようになりました。サテライトオフィスは、自宅・オフィスに次ぐ「第3のワークプレイス」として注目されています。

支社・支店との違い

サテライトオフィスと従来から存在する支社・支店とは、どう違うのでしょうか。

支社・支店は企業の業務を円滑に進めることを目的に設けられてきました。エリアごとに適切に支社・支店を置けば、顧客開拓や営業効率がアップするからです。

これに対し、サテライトオフィスは従業員の多様なはたらき方を実現することを目的としています。本社や支社・支店に戻って仕事をするよりも、自宅に近いサテライトオフィス勤務ができれば、従業員にとってはたらきやすい場を提供しているといえます。

はたらく場所に関する意識は、かつてなく高まっているといえるでしょう。世界でも、2010年代から「ABW(アクティビティ・ベースト・ワーキング)」という考え方が広がってきています。これは、1人で集中したいときは個室や閉じられた空間で、ブレインストーミングをしたいときはアイデアが出やすい開放的な空間ではたらく、というようにアクティビティに応じた空間を利用する、という考え方です。

日本でも、都市部の大企業が地方へ本拠を移したり、サテライトオフィスを設置したり、あるいは地方・郊外の各拠点内部に社内サテライトオフィスを整備したりといった動きを進めています。

「都市型」「郊外型」「地方型」

サテライトオフィスは「都市型」「郊外型」「地方型」と3つに大別できます。それぞれの違いはどこにあるのでしょうか。

都市型
都市部に設置されるサテライトオフィスを指します。

地方に本社がある場合や、営業活動など移動中の業務拠点として活用することが主な目的です。外出先からオフィスまで行き来する距離と時間を短縮し、効率的な業務実現をサポートします。

郊外型
主にベッドタウンの駅周辺に設置されるサテライトオフィスを指します。

都市部にオフィスがある企業が従業員の「職住近接」を主な目的として設置する場合が多いようです。通勤時間の短縮や、育児・介護と仕事との両立を図ることで、フルタイムではたらけない社員の多様なはたらき方をサポートします。

地方型
本社が都市部にある企業が、地方に設置するサテライトオフィスです。

国としても、地方創生やオフィス分散化の流れを受け、地方におけるサテライトオフィス開設・誘致に取り組んでいます。こうした国の取り組みは「おためしサテライトオフィス」と呼ばれます。その狙いには、地方の雇用促進、地方への情報の流れの促進、都市部への機能一極化による災害リスク回避などがあるようです。

サテライトオフィス普及の背景

働き方改革やコロナ禍に対応するため、企業はテレワークを導入し、その定着を図ろうと企業はさまざまな策を講じています。その一つがサテライトオフィスの導入です。

働き方改革も、オフィス分散化の一環としてサテライトオフィス設置の流れを後押ししています。従業員のワーク・ライフ・バランスの実現をサポートしたいと考える企業が、サテライトオフィスの設置を検討・実施しています。

サテライトオフィスが自宅から遠くない場所にあれば通勤時間が短縮でき、育児や介護をする従業員にとっても便利です。緑溢れる地方にサテライトオフィスを設置し、従業員が家族といっしょに移住するケースも出てきました。

サテライトオフィスは、企業の働き方改革を加速させる有効な手段の一つとなっているようです。

オフィスコスト削減にも期待

一般的にオフィス賃料は、郊外や地方に比べて都市部の方が割高であるのが通常です。このため、都市部のオフィス見直しなどにより賃料を削減し、より賃料の安価な地方や郊外にサテライトオフィスを設ければ、固定費削減が期待できます。

これだけではありません。サテライトオフィスによって、従業員に支払っている交通費や、残業代などの人件費を削減することも期待できます。

テレワークの進展などによって、従来ほど広いスペースが必要なくなった都市部のオフィスよりも、より賃料の安価なサテライトオフィスを設けてコストを削減し、オフィス面積の効率的な運用を考えるのは自然なことだといえるでしょう。

サテライトオフィス活用のメリット

 
企業にとってサテライトオフィスを活用するメリットはどこにあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

移動コストの削減

サテライトオフィスを活用することで移動コストの削減が期待できます。移動コストとは、従業員の通勤交通費だけではありません。営業活動に要する交通費なども含まれます。

従業員の移動時間の削減も可能になるでしょう。例えば、営業社員の移動時間が削減できれば、その分、稼働時間が増えることになります。営業スタッフの稼働時間が増えれば、収益アップも期待できます。

育児・介護による離職の防止

サテライトオフィスを設置すれば、育児・介護などの理由で、これまでは退職・休職しなければならなかった従業員の「職住近接」を実現し、離職を防止することができます。

育児・介護や看護、通院などが必要であるために、はたらきたくても離職せざるを得なかった従業員にとっても、また優秀人材の退職・休職を防止し、引き続きはたらいてもらいたい企業にとっても、サテライトオフィス設置は有効な対策となるでしょう。

地方にいる優秀人材の確保

サテライトオフィスを設置すれば、地方に在住する優秀人材の採用・確保が可能になります。これまでは当該地方に支社や支店を置かないと、これらの人材確保は難しいとされてきました。こうした課題の解決が期待できます。

日本の労働力人口減少が続くなか、企業にとっても大きなメリットとなるでしょう。

BCP(事業継続計画)対策

本拠地以外の地方にサテライトオフィスを開設しておけば、BCP(事業継続計画)対策としても活用できます。

もし本社が被災したときサテライトオフィスが遠隔地にあれば、事業を続けることができます。従業員の安否確認を行うなど、被災時の対応もできるでしょう。

サテライトオフィスの事例

では、実際に企業はサテライトオフィスをどのように導入し、どのような効果をあげているのでしょうか。都市型、郊外型、地方型に分け、事例をご紹介します。

都市型|株式会社ブルックスホールディングス
本社は郊外。サテライトオフィスを都心部に

コーヒーやお茶類の通信販売などを行う株式会社ブルックスホールディングス。神奈川県横浜市青葉区に本社を構えています。

同社では、従業員の遠距離通勤といった移動時間の削減という課題がありました。そこで、自社のサーバールームだった東京都大田区の事業所に業務スペースを確保し、サテライトオフィスに転用しました。

開設を検討する段階では、サテライトオフィスについて全社的な理解には至っていなかったとのこと。そこで、テレワークについての啓蒙とトライアルを兼ね、事前研修などを実施。社内の理解だけでなく、サテライトオフィスを利用する具体的なイメージ共有、利用ルールの確認につながったそうです。

業務情報の共有はスケジュールやタスクの進捗管理が行えるクラウドサービスを活用。ウェブ会議システムやチャットも活用して、通常のオフィス出社時と同様のコミュニケーションが取れるよう業務環境を整備しました。

上記取り組みが奏功し、サテライトオフィスでも従来と同じように業務を行えることが確認できたそうです。

  • スケジュール・タスク、業務状態の「見える化」により従来同様の業務遂行と管理ができた
  • サテライトオフィスが使用可能な時間内に勤務を終えることができるよう意識するため、より集中して仕事ができる

【出典】総務省「テレワーク導入支援事例集」(平成28年3月)

郊外型|ひばりテラス118
郊外団地再生とテレワーク拠点整備のコラボレーション

首都圏初の大規模住宅団地として、昭和34年度に入居が始まった西東京市にある「ひばりが丘団地」。完成から長い年月が経過して建物の老朽化が進む同時に、住民の少子高齢化によるコミュニティの停滞が懸念されていました。

上記課題を解決するため、住民・事業主・地権者などが協働して、まちづくりに取り組むための組織を立ち上げ、ひばりが丘団地の「118号棟」を改修して「ひばりテラス118」は完成しました。

「ひばりテラス118」には6つのコミュニティスペース、仕事だけでなく趣味にも使える個人的スペース、飲食ができるカフェなどが設けられています。子育てやテレワークのスキルアップに関する情報交換の場として活用されていますが、今後は団地に住まう遠隔通勤者、起業を目指すシニアや主婦などのサテライトオフィスとしての利用拡大を図っていくそうです。

  • コミュニティスペースには常に人々が集い、安心感のある仕事場・スペースとなっていてコミュニティ形成に役立っている
  • コミュニティ新聞やウェブサイトで地域情報を発信、幅広い世代が参加するイベント開催などにより、世代を超えた交流ができる

【出典】国土交通省「地域を元気にするテレワークセンター事例集」

地方型|静岡市・株式会社IPG
東京のIT企業が静岡市にサテライトオフィスを開設

静岡市では「『仕事は』そのまま。『住まい』は静岡市へ!」をコンセプトに、「お試しテレワーク体験事業」を2018年度から実施しています。テレワークを活用し、静岡市への移住を促すためです。

この事業をリモートワークの実証事件に活用し、2019年8月、静岡市にサテライトオフィスを開設したのが、日本最大の電子番組表サービス「Gガイド」などを運営する株式会社IPGです。

同社は静岡市郊外の海に近い用宗地区にサテライトオフィスを開設しました。水産品加工を行っていた倉庫をリノベーションし、変身させました。立地の決め手となったのは、東京駅から新幹線で1時間というアクセス可能という立地の良さ。静岡市の対応がスムーズだったことも後押しになったそうです。

コロナ禍のような状況下であっても、同社では業務を混乱なく行うことができていました。というのが、従来から東京と静岡2拠点で業務連携する体制が構築できていたためです。これが功を奏し、コロナ禍にあってもスムーズに業務を行うことができているそうです。

東京都内と比較して、オフィスを借りる際のコストを抑えることができたこと、環境にも恵まれて十分な広さを確保できたことなど、数多くのメリットを享受できているようです。

  • 静岡市の窓口が一本化、迅速かつ親身に対応してもらえた
  • 東京と静岡間の情報伝達時に情報の抜け落ちや細かな意図の伝達の難しさを踏まえたコミュニケーションを心掛けたことによって、今では顔を出して進捗確認をする必要も少なくなるなど、新しい働き方のノウハウを学ぶことができた

【出典】静岡市 https://www.pref.shizuoka.jp/soumu/so-450a/zirei1.html
https://shizuoka-seikatsu.jp/slifewp/wp-content/uploads/2019/07/102abda303ac992a9654e4dce076b435.pdf

サテライトオフィスの導入コスト

都市型は家賃形式。設備費用も必要に

都市型のサテライトオフィスを開設する場合、賃料に加え、デスクやキャビネットなどの設備費用がかかります。つまり、オフィスをもう一つ新規に開設するのと同じコストがかかるわけです。

都市型の料金プランは「家賃形式」が主体です。契約期間は1年〜2年で、賃料のほかに保証金が3〜6カ月分必要となる場合が多いようです。例えば東京都の新宿区内にサテライトオフィスを構える場合、3坪弱で月額12万円(税別)、7坪強で月額28万円前後(税別)が相場のようです。

郊外型、地方型は自治体のサポートが見込める場合も

サテライトオフィスを郊外や地方に置く場合、一般的に賃料は都市型よりも安く済みます。自治体のサポートが見込める場合もあります。例えばサテライトオフィスを地方に置こうとする際には、空き家や空き店舗を活用したり、古民家をリノベーションしたりするケースが少なくありません。

このような場合、自治体ではサテライトオフィスを誘致することで地域の活性化や関係人口の増加、雇用が見込めることなどから、資金面などのサポートを行うことがあります。

その結果、さほどコストをかけずにサテライトオフィスを開設することが可能になります。

サテライトオフィス導入検討時の注意点

サテライトオフィスを導入する際、どのようなポイントに留意すれば良いのでしょうか。

会社と従業員とが共通の認識を持つ

会社と従業員とのあいだで認識の違いが起きないよう、あらかじめ次の項目について納得の行くまで話し合い、文書にして保存しておくのが望ましいでしょう。

・導入の目的
・従業員の範囲
・対象となる業務
・テレワークの方法 など


【出典】厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」

以上の項目を明確にすることで、サテライトオフィスでの業務を効率的かつ円滑に行うことが可能になります。これはサテライトオフィスに限らず、テレワークを導入する際にはおしなべて留意すべきポイントです。

まとめ|働き方改革とコロナ禍により普及するサテライトオフィス。導入の目的を明確化・共有してメリットを享受しよう

サテライトオフィスとは、企業が本拠地とは異なる場所に設ける拠点のこと。働き方改革の進展、新型コロナウイルス感染拡大を背景に広く普及するようになりました。

大きく都市型・郊外型・地方型に分けられ、オフィス費用の削減、移動費の節約、育児・介護による離職防止、地方の優秀人材確保、BCP(事業継続計画)の推進が見込めます。

検討する際には、はたらく人とよく話し合い、導入の目的、対象となる従業員・業務の範囲などを明らかにしたうえ明文化しておくことが望まれます。

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