2026年03月05日
2040年問題とは、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となり、社会活動を担う現役世代が激減することで、生活基盤の維持が困難になる一連の課題を指します。
本記事では、2040年問題が社会や企業にどのような連鎖的課題をもたらすのか、その構造を解説しつつ、企業が今から講じるべき具体的な対策と、2040年問題に備えた企業の取り組みを紹介します。
【お役立ち資料】2040年問題の前に訪れる「2030年問題」への備え
2040年問題では、日本の労働力不足がさらに深刻化するといわれていますが、この変化は2040年に突然起こるものではありません。2030年前後から、人材不足や組織運営の課題が顕在化すると予測されています。2040年問題に備えるためにも、2030年に向けた組織づくりや人材戦略を考えることが重要です。
「2030年問題に備えておきたい」「人材不足を解消するノウハウを知りたい」という方に向けて、「組織づくり」と「人材マネジメント」それぞれの観点から企業が今から取り組むべき施策についてまとめた資料を公開しています。
2030年問題への具体的な影響や対策を知りたい方、人材不足にお困りの方はぜひご活用ください。
目次
2040年問題とは、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となる2040年頃を境に、現役世代の減少が加速し、従来の社会システムを維持できなくなる恐れがあるとして注視されている問題です。
国立社会保障・人口問題研究所が2023年(令和5年)に発表した「日本の将来推計人口」によると、2040年には65歳以上の高齢者比率が約35%に達する一方で、生産年齢人口(15~64歳)は2025年比で約1,100万人も減少すると推計されています。これまでも人口動態に関する懸念は指摘されてきましたが、その深刻さは2040年に一つのピークに達するとみられ、社会を支える労働力不足の加速により、社会保障制度やインフラ、医療・介護などの維持が困難になると予測されています。
ただし、この問題の本質は2040年に突如として危機が訪れることではありません。超高齢化社会の進行に伴って、介護と仕事を両立する「ビジネスケアラー」が増加し、一人あたりの提供可能な労働時間が制限されることなども相まって、社会全体の労働力不足がグラデーション的に深刻化していく点にあります。
2025年問題は、団塊の世代(約800万人)が全員75歳以上の後期高齢者になることで、医療や介護ニーズが爆発的に急増する問題を指します。これに対し、2040年問題は、高齢者人口の増加だけでなく、それを支える現役世代が今まで以上に激減する点が特徴です。2025年は医療・介護の需要急増が焦点でしたが、2040年は高齢者を支える現役世代が1,000万人単位で減少する構造的な人材不足のピークと言えます。
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2030年問題は、生産年齢人口比率が60%以下にまで低下し、推計では約644万人に上る労働力不足が顕在化し始めると予測される時期です。
一方、2040年問題は、この不足がさらに数百万人単位で拡大する可能性が指摘されており、単なる労働力不足に留まらず、地方自治体の機能維持の困難化や、社会インフラの老朽化への対応限界など、国家機能の継続性が問われる一段上のフェーズへと移行していくとみられています。
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2035年問題は、団塊の世代が85歳以上の超高齢層に達し、さらに65歳以上の高齢者比率が約33.4%にまで上昇すると見込まれている問題です。この時期に懸念される影響は、要介護認定率や認知症リスクの飛躍的上昇だけではありません。パーソル総合研究所が実施した「ケア就業者に関する研究」によれば、就業者のおよそ6人に1人が、育児と仕事を両立する就業者や、介護をしながらはたらく「ビジネスケアラー」になると予測されています。
一方の2040年問題は、こうした健康寿命の限界とビジネスケアラーの増加による影響が社会全体に波及し、一人あたりの労働可能時間も大幅に減少し、労働力の人数だけでなく「提供可能な労働時間」までもが枯渇し始めるフェーズだと見込まれます。日本経済や社会保障制度、生活インフラなどの継続性が問われる、まさに正念場を迎えると言えるでしょう。

2040年の社会は、これまで当たり前だった公共サービスや経済活動が維持できなくなる社会へと変貌するリスクを抱えています。人材不足だけでなく、社会を支える物理的なリソースや機能の縮小も懸念されており、私たちの生活基盤への影響がさらに深刻化していくとみられています。
ここでは、2040年までにみられる社会への具体的な影響や課題を解説します。
高齢者人口がピークを迎える一方、はたらく世代が急減するため、医療・介護の現場では圧倒的な人材不足が生じる見込みです。厚生労働省の推計によると、2040年度には約272万人の介護職員が必要になるとされていますが、現状のままでは需要に対して大きなギャップが生じることは避けられないでしょう。
2026年現在でも、地方を中心に認知症患者の受け入れが困難になるといった兆候が表れ始めており、今後は必要なサービスを十分に受けられない「介護難民」の増加がより深刻な現実味を帯びてくるでしょう。
高度経済成長期に集中的に整備された道路や橋、水道などの公共インフラは、2040年頃にかけて建設から長期間が経過した施設の割合が大きく増加します。自治体の財政的な制約や、維持管理を担う技術者の不足も重なり、すべてのインフラをこれまで通りの規模で維持していくことは、徐々に難しくなると見込まれています。
老朽化によるリスクへの対応が遅れる懸念も指摘されており、中長期的には、地域のインフラ網の再編や自治体機能の集約など、生活環境の維持に向けた難しい選択を迫られる可能性も想定されています。
現役世代が減少する一方で、医療費や年金給付額は膨らみ続けます。厚生労働省が発表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」によると、2040年度の社会保障給付費は、2018年度の約1.5倍にあたる約190兆円に達すると予測されており、現役世代一人あたりの負担は限界に近づいています。制度の持続可能性が問われる中、現在の社会保障システムをどう維持し、あるいは再構築していくかが、国全体の大きな課題となります。
国内市場のパイが縮小することで消費が停滞し、経済成長率が著しく低下します。労働力の絶対数が不足することに加え、ビジネスケアラーの増加などによって「一人あたりの提供可能な労働時間」までもが削られることで、企業の生産活動はさらなる制約を受けるでしょう。
また、人材不足から生じる物流網の停滞や物価高騰が影響し、生活水準の低下を招く恐れもあります。
労働市場の変化により、企業にとっても従来のビジネスモデルや組織運営の在り方が問い直されることになります。2040年問題は、人材不足や採用難の延長ではなく、経営の存続にかかわる重大な局面となり得ます。
ここでは、2040年問題によって企業が直面する具体的な課題を解説します。
2040年に向けてあらゆる業種で労働力不足が深刻化する見込みです。特に、若年層の採用は極めて困難になり、既存のビジネスモデルを維持できなくなる企業が増えるでしょう。
人材不足の本質は、はたらく人材の減少ではなく、一人あたりの労働時間の減少にあります。2023年には就業者数が過去最多を記録しながらも深刻な人材不足が生じたように、育児・介護との両立による時短勤務やショートワーカーの増加から労働時間が低下し、企業の運営を困難にしています。現場のオペレーションを維持するためのリソースが物理的に不足することで、サービス品質の低下や、最悪の場合は事業縮小・倒産を余儀なくされるケースも不可逆的に進行していくでしょう。
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組織の中核を担う40代から50代の従業員が、親の介護を理由に離職せざるを得ない「介護離職」が急増します。前述の通り、パーソル総合研究所の推計によれば、2035年には、420万人が介護と仕事を両立するビジネスケアラーになると予測されており、2040年に向けてその影響はさらに拡大していくでしょう。
重要なのは、仮に離職に至らなかったとしても、介護に伴う時短勤務や突発的な対応によって一人あたりの労働時間が減少すれば、企業への影響は避けられないという点です。熟練したスキルを持つ人材の労働力を十分に活かせなくなることは、企業にとって大きな損失であり、生産性や組織力の低下を招く深刻なリスクとなるでしょう。
前述の通り、少子高齢化や人材不足により、企業は限られた労働力を奪い合う形となり、採用コストが高騰します。今後は大手企業のみならず、中小企業においても「選ばれる会社」としての魅力がなければ、一人も採用できないという事態が起こり得ます。賃金水準の向上はもちろんのこと、ビジネスケアラーが無理なくはたらき続けられる柔軟な制度設計や、企業の存在意義(パーパス)に基づいた職場環境を整備することが、企業が生き残るための条件となります。
人材不足や少子高齢化による影響を乗り越えるためにも、企業は今から構造的な変革を始める必要があります。もはやこれまでの延長線上にある対策では通用せず、限られた労働リソースをいかに最大化し、維持していくかという視点が不可欠です。
ここでは、2040年問題に備えて企業が取るべき対策について解説します。
AIやロボット、IoTなどの最新テクノロジーを導入し、徹底した省人化と生産性向上を図ることが欠かせません。これまで人が行っていた定型業務をデジタルに置き換えることはもちろん、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用によってノンコア業務を外部化し、自社の貴重なリソースをより付加価値の高い業務へ集中させる業務の最適化が求められます。
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男性中心・若手中心の採用モデルから脱却し、女性やシニア層がその能力を最大限に発揮できる環境を整備しなければなりません。例えば、定年後の再雇用制度の拡充や、シニア世代の経験を活かすための役割の再設計、短時間勤務制度の導入などにより、多様な人材が活躍できる組織への転換を急ぐ必要があります。
【関連記事】女性活躍推進の企業事例10選│共通の取り組みと成功要因を解説
人材獲得競争の中で優秀な人材を惹きつけ、定着させるためには、選ばれる理由としての企業価値を抜本的に高める必要があります。企業価値向上のための主な施策は、以下の2点です。
企業に義務付けられている法定福利厚生以外にも、ビジネスケアラーへの支援制度やリスキリング支援など、従業員のライフステージの変化に寄り添った独自の福利厚生が差別化の鍵となります。特に、介護リテラシーを高めるための情報提供や相談窓口の設置は、将来的な離職リスクを抑える戦略的な投資となるでしょう。
テレワークやフレックスタイム制の導入、副業支援など、時間や場所に縛られないはたらき方を柔軟に推進することが重要です。多様なはたらき方を支援することは、ビジネスケアラーが仕事と家庭を両立し、キャリアを継続するための強力なセーフティネットとなります。貴重な人材の流出防止にも有効なだけでなく、企業の生産性向上や副業による従業員のスキルアップなども期待できます。
国内の若手人材のみをターゲットにするのではなく、外国人材の積極的な受け入れや、地方在住者をリモートで雇用するなど、ターゲットを抜本的に広げる戦略が必要です。副業人材の受け入れやスポットワークの活用なども含め、多様なバックグラウンドを持つ人材を柔軟に組織へ組み込むダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進が、労働力不足を補うための鍵となります。
【関連記事】DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは?施策例・ポイントを解説
既存の従業員が新しい技術や変化する業務に適応できるよう、学び直し(リスキリング)を企業が主導して支援することが不可欠です。労働人口が不足する中で、一人ひとりの専門性を高めて生産性を向上させ、より付加価値の高い業務へシフトさせる人的資本投資こそが、企業の競争力そのものとなります。
【関連記事】リスキリングとは?注目される背景や導入するメリット、事例を解説
2040年問題の本質が、人口だけでなく、育児や介護による「提供可能な労働時間の減少」にある以上、企業には従来の雇用形態に縛られない柔軟な支援モデルが求められます。
ここでは、ビジネスケアラーが安心してはたらき続けられる環境整備や、欠員による労働力不足を補完する企業の取り組みを紹介します。
三井住友海上火災保険株式会社は、出産・育児を職場全体で支える風土を醸成するため、2023年より「育休職場応援手当(祝い金)」を創設しました。これは、社員が育児休業を取得する際、その職場の人数規模に応じて、育児休業取得者を除く職場全員に3,000円から最大100,000円の一時金を給付する制度です。
生産年齢人口が減少する中、次世代を担う社員が気兼ねなく仕事と育児を両立できるよう、休業者個人への支援に留まらず、会社全体で育児を応援するポジティブなサイクルを生み出しています。
大和リース株式会社は、育児休業を取得した職員の業務を代替して支えた同僚に対し、賞与を再分配する「サンキューペイ制度」を導入しました。本来、育休職員へ支払われる予定であった賞与原資を、実際に実務を担った同僚やチームへ分配することで、職場全体の納得感を高める仕組みです。
育休取得者にとっては周囲への気兼ねが和らぎ、支える側の従業員にはその貢献に報いる手当が支給されるため、男性・女性問わず育児休業の中長期取得を促すとともに、多様な人材が活躍できる強い組織づくりを実現しています。
株式会社レナウンでは、子育てをしながら店頭ではたらく販売員を支える同僚に対し、「ほほえみサポーター手当」を支給する制度を導入しました。これは、育児休職から復帰した販売員が短時間勤務やシフト調整を利用する場合、同じ店舗ではたらく同僚に月額3,000円の手当を支給する制度です。
短時間勤務者の増加に伴い、どうしても特定の同僚に負担が偏りやすいという現場の声に真摯に向き合った施策であり、2040年に向けてビジネスケアラーが急増する中、職場全体のワーク・ライフ・バランスと定着率を向上させるための効果的な施策と言えます。
2040年に向けた労働力不足の問題は、一企業の努力だけでは解決が難しいケースが増えています。パーソルグループでは、従来の人材派遣や紹介だけでなく、ビジネスケアラーが活躍できる職場づくりや、外部人材を活用した労働力の強化、テクノロジーによる省人化支援まで、企業の課題に合わせた包括的なソリューションを提供しています。
変化する時代を共に乗り越え、持続可能な組織運営を実現するパートナーとして、ぜひご相談ください。
2040年問題は、日本社会全体が直面する極めて大きな壁です。しかし、この問題は2040年に突如として危機が訪れるのではなく、すでに始まっている人材不足が、ビジネスケアラーの増加などによる「提供可能な労働時間の減少」を伴いながら、グラデーション的に深刻化していきます。
今からICTの活用やはたらき方の多様化などにより企業の意識改革を進めることで、その影響を最小限に抑え、新たな社会の形を構築することは可能です。まだ先のことと捉えず、2040年という未来から逆算して、今できる対策を具体的に実行に移していくことが、企業が生き残る鍵となります。
【お役立ち資料】2040年問題の前に訪れる「2030年問題」への備え
2040年問題では、日本の労働力不足がさらに深刻化するといわれていますが、この変化は2040年に突然起こるものではありません。2030年前後から、人材不足や組織運営の課題が顕在化すると予測されています。2040年問題に備えるためにも、2030年に向けた組織づくりや人材戦略を考えることが重要です。
「2030年問題に備えておきたい」「人材不足を解消するノウハウを知りたい」という方に向けて、「組織づくり」と「人材マネジメント」それぞれの観点から企業が今から取り組むべき施策についてまとめた資料を公開しています。
2030年問題への具体的な影響や対策を知りたい方、人材不足にお困りの方はぜひご活用ください。

株式会社パーソル総合研究所
シンクタンク本部シンクタンク部リサーチグループ
中俣 良太
首都大学東京大学院 観光科学域 博士前期課程 修了。
大手市場調査会社にて、金融業界の調査・分析業務に従事した後、2022年8月より現職。人と組織に関する多様なテーマについて調査・研究を行う。現在の主な調査・研究領域は、労働力不足や働き方の多様性(副業、スキマバイトなど)。
著書に『これからの人手不足にどう立ち向かえばよいのか』(阿部正浩との共著・一般社団法人金融財政事情研究会)。