2024年07月29日
2025年05月30日
営業DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITを活用して営業業務の自動化や効率化を図ることです。日本全体でDXが幅広い業務領域で進む中、営業分野でもDXは注目を集めています。一方で、中小企業基盤整備機構の調査によると、全国の中小企業経営者や経営幹部(個人事業主を除く)1,000社のうち、DXを推進できているのはわずか31.2%に留まっているのも現状です。
DXは効果的な導入によって、営業業務にも効率化をもたらします。営業DXの概要やデジタル化との違い、営業DXのメリットや進め方について解説します。
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従来の営業活動は、顧客先に直接訪問して対面で商談を行うのが主流でした。しかし近年は社会情勢の変化やインターネットの普及に伴い、企業にもDXの波が押し寄せ、ITを活用した営業活動の機会が増えています。
営業DXが急速に広がった背景には、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行があります。これまで当たり前だった対面での商談が制限され、代わりに「オンライン面談」が主流となりました。
オンライン商談は、対面での商談に必要だった移動時間や交通費などが削減できるメリットがあることからも、多くの企業で急速に広まりました。こうした効率化への需要が営業DXの普及を後押ししています。
DXと似た用語に「IT化」が挙げられますが、この2つの違いはその目的にあります。
IT化とは、アナログ手法で行っていた業務をデジタル手法に移行することです。一方、DXは業務プロセスそのものを変えることを意味します。
また、DXと関連した概念として「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」があげられます。厳密な区分が難しい部分もあるものの、それぞれの違いについても見ていきましょう。
| 意味 | 例 | |
|---|---|---|
| IT化 | 主に、これまでアナログで行っていた業務などに対して、部分的にデジタル技術を導入すること | ITツールを導入し、これまでホワイトボードや紙で行っていた情報共有をツール上でできるようにする |
| デジタイゼーション | アナログ・物理データをデジタルデータ化すること | ITツールを導入し、生産ラインの情報を自動かつリアルタイムに取得できるようにする |
| デジタライゼーション | 個別の業務・製造プロセスに対して、デジタル技術を活用すること | 作業員が手作業で行っていた組み立て作業をロボットで代替し、生産を自動化する |
| DX(デジタルトランスフォーメーション) | 主に、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルなどを変革すること | ITツールで取得したデータやロボットなどを活用して、製造プロセスを変革し、コストカットや生産効率の向上を図る |
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既存のアナログ業務を、ITツールを活用してデジタルに置き換えるプロセスです。業務の形式は変わらず、単純に効率を高めることを目的としています。従来のFAXでのやり取りを、電子メールに置き換えることで、通信コストを削減し、やり取りを迅速化する取り組みは、営業IT化に該当します。
アナログ情報をデジタルデータとして保存・管理することで、業務プロセスを効率化する取り組みです。データ活用の第一歩としての位置付けです。紙の営業メモをOCR(光学文字認識)でデジタル化することで、情報検索を簡単にし、保管や共有の手間を削減する取り組みは、営業デジタイゼーションの代表的な取り組み例と言えるでしょう。
営業デジタイゼーションと似た言葉ではあるものの、意味合いは異なります。営業デジタライゼーションは、ITツールやデジタル技術を活用して業務プロセス全体を見直し、効率化や最適化を図るプロセスです。業務の進め方が根本的に変わる点が特徴と言えるでしょう。
顧客データや商談履歴をCRM(顧客管理システム)で一元管理し、リアルタイムで状況を把握する取り組みは、営業デジタライゼーションのひとつです。これにより、迅速な意思決定が可能となります。
デジタル技術を活用して、営業活動そのものを根本的に変革し、ビジネスモデルを進化させる取り組みです。単なる効率化にとどまらず、新しい価値を創出することを目指します。オンライン商談や電子契約ツールを活用して、営業活動を場所や時間の制約から解放する取り組みは、営業DXに含まれます。

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営業DXは、単なる営業プロセスの効率化にとどまらず、顧客との接点や営業活動全般をデジタル技術で革新する取り組みです。そのため、営業DXが適用できる業務は多岐に及びます。営業プロセスを見直し、デジタル技術の積極的な活用によって、自社の競争力を強化していきましょう。
顧客情報の管理と分析は、営業DXの中心的な対象業務です。CRM(顧客管理システム)を活用することで、商談履歴や購入履歴を一元管理し、顧客ニーズを深く理解できます。また、蓄積したデータをAIやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールで分析することで、次のフェーズのアクションを科学的に決定できるでしょう。
オンライン商談ツールの導入は、営業DXを象徴する事例のひとつです。ZoomやTeamsなどを活用することで、移動時間や交通費を削減しながら、効率的に商談を進められるでしょう。また、商談中にリアルタイムでデータや資料を共有し、顧客のニーズに即した提案ができる点も、営業DXによって得られる恩恵です。
リードジェネレーション、つまり新規リードの獲得も営業DXによって大きく変わります。従来の電話や飛び込み営業に代わり、MA(マーケティングオートメーション)ツールやSNS広告を活用することで、効率的に見込み客を集められるようになります。また、AIを活用したターゲティングにより、より精度の高いアプローチが可能です。
顧客の抱える課題を深く理解するための調査も、営業DXの対象です。デジタルアンケートやオンラインインタビューを通じて、迅速かつ的確に情報を収集できます。さらに、AIを活用して収集データを自動的に分析し、課題を特定することで、より的確な提案が可能となります。
顧客の満足度やフィードバックを得るためのアンケートも、営業DXによって効率化できます。オンラインフォームや自動配信システムを活用すれば、アンケートの作成や配信、回答回収が迅速に行えるだけでなく、結果をリアルタイムで分析することも可能です。
オンラインセミナーやウェビナーの開催は、営業DXの一環として重要な役割を果たします。従来の対面型セミナーに比べて、場所や参加者の制限が少ないため、より多くのリードを獲得できるでしょう。また、参加者の興味関心をデータとして収集・分析することで、効率的なフォローアップにもつながります。
企業が営業DXに取り組むメリットとしては、営業活動の効率化や営業スキルの標準化、マネジメントの生産性向上が挙げられます。それぞれのメリットについて具体的に説明します。
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社の調査によると、営業DXを実施した56.6%の企業が「業務効率や生産性が上がった」と回答しています。
従来の営業活動はセミナーや対面による商談など実際に足を運んで実施する必要があり、移動時間や交通費などさまざまなコストがかかっていました。
営業DXを実現できると、Webサイトやリスティング広告など、オンライン経由で顧客を獲得しやすくなり、営業活動を効率化できます。ほかにも、MAやSFAなどのツールは顧客情報を一元管理できるため、管理コストを抑えられます。このようなツールの活用によって適切なタイミングでの顧客フォローもがきるため、成約につながりやすいメリットもあるでしょう。
【関連記事】営業プロセスとは?可視化の目的やステップ、ポイントを解説
営業DXによって、社内の営業スキルを標準化できるメリットが挙げられます。
営業活動を個人のスキルや経験だけに頼っている場合、業績が優れている営業メンバーが退職した後に、これまでの業績を維持することは容易ではありません。また、営業メンバーのスキルの差が大きいと、業績が伸び悩んでいるメンバーのモチベーションが下がり、組織全体の営業力に影響が出る恐れもあります。
DXによって営業スキルを標準化できれば、組織全体の営業力の底上げが可能となるため、これらの問題解決が期待できるでしょう。
【関連記事】営業に必要なスキルとは?スキルアップや可視化する方法を解説
営業DXにより、メンバーに都度ヒアリングをしなくてもリアルタイムで商談の情報を取得できるようになります。商談状況の確認やフィードバックに費やす工数が減るため、マネジメントの生産性が上がることも営業DXのメリットです。
【関連記事】営業マネジメントとは|役割や身に付けるべきスキルについて解説
営業DXを効果的に進めるためには、段階的かつ計画的なアプローチが必要です。導入だけで完結するものではなく、現状の課題の洗い出しや組織全体のプロセス改革、そして継続的な改善が求められます。段階的な取り組みを通じて、競争力のある営業組織を構築しましょう。
まずは、営業DXで達成したい目標を明確にしましょう。目標を立てる際には、「収益の○%増加」「生産性の○%向上」というように、具体的な数値を設定することが重要です。
目的設定ができたら、営業プロセスやシステム、データなどの現状を詳細に評価し、課題を整理します。この段階で、現状の問題点や改善の余地を可視化する必要があります。
次に、自社の目的に応じたツールやプラットフォームを選定・導入します。
CRM(Customer Relationship Management)は、既存顧客との関係維持や売上向上のプロセスを管理するツールです。営業やマーケティング担当者が顧客情報を収集し、その情報をもとに販促戦略を立てたり、特定の顧客にアプローチしたりするのに役立ちます。
【関連記事】「CRMとは?基本機能や選定・比較方法、メリットを分かりやすく解説」を読む
商談開始から成約までのプロセスをカバーするSFA(Sales Force Automation)は、顧客情報を管理するためのツールです。営業担当者が顧客とのやりとりを記録し、営業プロセスを効率化できます。
【関連記事】「SFA(営業支援)ツールとは?機能やメリット、導入ステップについて解説」を読む
MA(Marketing Automation)は、マーケティング活動を自動化するツールです。見込み顧客の属性やWebサイトへのアクセス頻度、閲覧ページを記録して見込み度合い(確度)を判別し、営業部門へ最適なリードを提供することで、見込み顧客への最適なアプローチが可能になります。
【関連記事】「MA(マーケティングオートメーション)ツールとは|機能や選び方をわかりやすく解説」を読む
オンライン営業ツールは、非対面でコミュニケーションを取れるツールです。代表的なツールとしてZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどが挙げられます。商談先へ向かう移動時間や交通費を削減でき、生産性の向上につながるため、多くの企業で活用されています。

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IT技術を用いることで効率よく顧客にアプローチして数字を作っていく「セールステック」に注目が集まっています。
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ツールやプラットフォームを導入したら、読み込ませるデータを整理しましょう。信頼性の低いデータや重複した情報はツールのパフォーマンスを低下させるため、営業DXによって十分に活用するためには、正確で信頼性の高いデータである必要があります。データの入力ミスや重複、表記の揺れ、古い情報を整理することで、ツール活用の精度も向上します。
マーケティング部門や人事部門などでは、すでにデータが十分に蓄積されていることが多く、DXを推進しやすい傾向があります。一方で営業部門はデータの蓄積が不十分であり、個人の経験則や主観に基づいて業務が行われているケースも多いため、そもそもDXを推進しづらいのが課題と言えるでしょう。
そのため、営業部門におけるDX推進には、メンバーへの研修が欠かせません。研修では、営業DXの基本知識や最新のトレンド、ツールの活用方法などの具体的なレクチャーによって、日常的な業務に適用できるスキルを習得させます。
属人化した営業プロセスは、営業DX推進の障害となります。個人の経験則や主観ではなく、データを根拠とした営業プロセスの標準化によって、生産性の高い営業組織を実現しましょう。
また、営業DXの導入前後を比較し、商談数や成約数などにどれくらい変化が見られたか効果測定を行うことも重要です。成果が思うように上がらない場合には、その要因について仮説を立て、改善策を考え実行することで、営業活動の最適化が可能となります。

営業DXを成功させるには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。「目的の明確化」「DX理解の浸透」「効果の測定・改善」の3つのポイントを解説します。
営業DXを推進するためには、目的の明確化が欠かせません。「収益を○%増加させる」や「営業プロセスの生産性を○%向上させる」といった具体的な数値目標を最初に設定した上で、その目的を実現するための手法を検討しましょう。
ただし、営業DXはあくまで手段であり、最終的な目的は営業活動の改善です。ツールやプラットフォームの導入が目的にならないように注意しましょう。
また、定めた目標については、営業スタッフ間であらかじめ共有をしておきましょう。足並みをそろえてDX推進に取り組むことが、営業DX成功の近道になります。
営業DXは、営業部門だけではなく複数の部門が関わるプロジェクトとなるため、各部門が連携を取りDXに対する理解を浸透させる必要があります。営業部門の意見だけではうまく進まないため、ITに強いエンジニア部門を主体として、複数部門の意見をまとめるのがDXを円滑に進めるポイントとなります。
また、現場メンバーの理解を深めるために、フォローアップの体制整備や、定期的な説明会の実施も検討するとよいでしょう。
営業DXは、ツールやシステムを導入して終わりではなく、その後の効果測定と改善も重要です。顧客のニーズは変化し続けるため、導入前の計画が必ずしも成果を出すとは限りません。当初の構想が時代に合わなくなる恐れもあります。
そのようなミスマッチを防ぐためにも、効果検証は継続的に実施しましょう。営業スタッフからのフィードバックや定期的な振り返りを行い、必要に応じて営業プロセスやツールの活用方法を見直すことで、組織全体の成長促進につながります。
実際に営業DXの推進によって成果が得られた事例を紹介します。
既存顧客に対する営業リソース比重が高く、新規顧客の開拓が進まない企業の営業DX事例です。
この企業では、既存顧客と新規顧客で対応するグループを分け、既存顧客の中でもすでに売上を大きく占める顧客についてはフィールドセールスで対応しました。一方、新規顧客を獲得するための戦略として実施したのが、ポテンシャル層から商機を創出するための営業プロセス構築です。営業支援ツールを使用して、顧客状態をデータからすぐに判断できるように整備しました。
結果として、今までフォローしきれていなかった問い合わせにも対応できるリソースを創出し、新規顧客の増加を達成しています。
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2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行を機に、営業DXは急速に広がりました。営業支援ツールやプラットフォームの導入により、営業活動の効率化や営業スキルの標準化、マネジメントの生産性向上などが期待できます。
しかし、ただ漠然とツールやプラットフォームを導入するだけでは、営業DXの成功にはつながりません。目的を明確化し、研修を通じて社内にDXの理解を浸透させることが重要です。
また、営業DXのためのツールやプラットフォーム導入後は、モニタリングや効果測定、改善を繰り返しましょう。これにより効果的な営業活動を継続でき、企業全体の持続的な成長にもつながります。

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
セールスマーケティング事業部 セールスコンサルティング統括部
セールスコンサルティング部 営業戦略コンサルタント
小坂 駿人
2021年 パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 入社
前職ではHR業界における事業戦略/新規事業開発部門に所属
2022年には、大手IT通信事業者対して顧客データ×活動データを用いた
セールス&マーケティングのデジタル化プロジェクト(データドリブンセール)における業務設計を担当
現在は業種・業態を問わず、セールス領域の生産性向上を目的とした営業プロセスの再構築や、データ/テクノロジーを活用した戦略・業務設計等、セールス領域に特化したコンサルサービスを提供
「営業を科学する」をテーマに、AIを活用した“セールスアナリティクス”プロジェクトにも参画