組織開発とは|成果を出す実施プロセスと4つの具体施策を解説

組織開発は、「企業・団体における組織状態の変化に関する施策」と捉えられがちであり、経営や組織管理の文脈で理解されているのが実態です。しかしその歴史を紐解くと、源流は哲学や心理学にあり、集団における構成員の認知や他者との関係性に関する内容を主に扱ってきています。著名な研究者として、K.Z.レヴィンやE.H.シャインなどが挙げられますが、共に心理学者でもあります。

組織開発は、組織・人事領域において一定の知名度はあるものの、含まれる領域は幅が広く非常にわかりにくいものとも言えます。

本記事では、組織開発の定義やその本質、具体的なアプローチ方法までを幅広くご紹介します。

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目次

組織開発とは

組織開発とは

組織開発は他のマネジメント用語と同様に定まった定義はないものの、多くの研究者がその定義に用いる用語などから概要をつかみ取ることが可能です。

本記事では、組織開発について以下のように定義をしています。

組織の「健全性」や「効果性」、「自己革新力」を高めることを目的に、行動科学の知見や技法などを用いて、組織において可視化できるハードな側面(理念、戦略、構造、制度など)と、目に見えにくいソフトな側面(組織風土、リーダーシップ、コミュニケーションなど)の両面へ働きかける、計画的で体系的な諸活動である。

特徴的なのは、活動の目的として、組織の「健全性」「効果性」「自己革新力」を示していることと、それらを実現するための考え方を「行動科学」という切り口で捉えていることと言えます。つまり、社会における人間の認知や行動を理解し、企業組織へ応用することで会社や職場が目指す未来のありたい姿(ビジョン)を実現する。そのために様々な活動を計画し、体系的に組み入れることで全体施策をつくりあげていくのです。

このように、「何か特定の施策を単発的に行う」といった単純なアプローチ方法ではないこと。そして施策においても「企業や職場の数と同じほど多様」であることから、イメージとしては研修よりも心理療法に近いと言えます。こういったことが、組織開発を分かりにくくしている要因なのかもしれません。

組織開発が再注目されている背景

日本における組織開発は、1970年代から80年代にかけて盛り上がりを見せていたと言われており、多くの企業で小集団活動と関連付けて実施されてきました。しかし、経営環境の変化と共に組織開発は下火となり、分かりやすい施策であるハード的なアプローチ(構造や制度、システムなど)へと関心が移っていきました。

しかし「失われた30年」と言われる日本経済の実態をみると、その効果は限定的であったように思われます。

近年においては、従業員の帰属意識希薄化への対応や価値観の多様化に対する対応、人材不足への対応という新たな課題が発生していることから、多くの企業では従来課題に加えてこれら課題にも取り組むことが求められています。

1. 帰属意識の希薄化

日本型経営の強みと言われた「終身雇用」「年功序列」が崩壊し、社員を処遇する人事制度が大きく見直されている現代において、社員の会社に対する位置づけは昔と変わっています。企業側と社員側との関係をみると、企業・組織に対する求心力は低下し、相対的に遠心力が増すといった現象が生まれています。これには外部要因である「転職環境の整備」も影響しているのですが、この傾向は年々加速していると言えます。

しかし、企業ビジョンの実現や中期経営計画の達成を考えたとき、社員の心が一つになり同じ目標に向かって相互に効果的な影響を与え合うような状態を作り上げることは必須条件と言えます。

このような現状を打破するためのアプローチ方法として組織開発が求められています。

2. 価値観の多様化

グローバル化や女性活躍の推進、雇用形態の多様化などにより、企業は「様々な価値観を持つ社員」「多彩な能力を持つ社員」で構成されるようになりました。これに伴い、各人の違いを認め・受入れるだけでなく、活かし合うといったダイバーシティ&インクルージョン(以降D&I)といった考え方も広がっています。

従来型の組織運営や人材育成は“石畳”にたとえられます。画一的な人材を育て、それらを設置するだけで組織がつくられる形態です。それに対しD&Iの観点を組入れた現代型の組織運営や人材育成は“石垣”にたとえられます。不揃いだけれども各自尖った部分を持つ石材を上手に組み合わせて石垣(組織)を構築する。個々の強みを活かし伸ばすマネジメントが求められています。

この考えをより促進させるためのアプローチ方法として組織開発が注目されています。

3. 人材不足

企業における人材不足も深刻です。単純に人員数が足りていないという企業もありますが、より問題となっているのが「必要とする経験やスキルを持った人材が足りていない」という点です。

優秀な人材は市場価値が高いため、企業として適切に対応しないと見切りをつけられてしまうことになります。そして、その退職という事実は他の社員に対する負の影響を与えるという点にも考慮する必要があります。

自社に所属する社員が、仲間と協力しながら難課題に挑戦する。仕事を通して成長感が得られる。社会に対して貢献できていると感じられるといった組織風土は組織パフォーマンスの向上だけでなく、採用競争力の強化にもつながります。

このような組織状態を作り上げるためのアプローチ方法として組織開発が取り入れられています。

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人材開発との違い

組織開発の特徴をよく表しているのが、施策に対する考え方です。「何をするか?」という施策ありきの考えではなく、自分たちは「どうありたいのか?」を起点にモノゴトを捉え、関係者間で紡ぎあげられた“未来のありたい姿(ビジョン)”の実現に向けて具体的な行動に移していくといった考え方を採るところにその特徴が表れています。施策においては、集団構成員に内在化された組織やチームのビジョンを実現するために、各人だけでなく、個人間や、集団、そして集団間など様々な対象に対して行動科学の考えを盛り込んだ施策を計画的・体系的に実施していきます。当然、この施策には個人を対象としたトレーニングも含まれます。

それに対し、人材開発は「社員一人ひとりのスキルや能力を高め、パフォーマンス向上を図る取組みのこと」であり、個人を対象としたトレーニングが主な施策と言えます。一部コミュニケーション研修やチームビルディング研修など組織開発のテーマに似通っているような内容もありますが、本質的なところでは異なります。

これらはどちらが良い・悪い、優れている・劣っているというものではなく、目的的に選択をすることが重要と言えます。

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組織開発がもたらす成果

何を目的として組織開発へどう取り組むのか?によって、求める成果は大きく変わってきます。

企業が営利団体であることを考えると、ビジネス成果の創出は外すことができません。この数値的な成果創出を行うのは社員であり、その集団である組織です。つまり、企業としては「ビジネス成果の創出」だけでなく、その基盤となる「人材や組織の変化・成長」という二軸目標の同時実現(達成)が求められているわけです。

組織開発を行うにあたり、この観点を持ち合わせることは重要と言えます。

ビジネス成果創出のための組織基盤(人材や組織の変化・成長)は、「個人」「組織・チーム」「人事」の3つでとらえることができます。

過去かかわってきた組織開発プロジェクトで設定された成果例の抜粋が以下となります。

人材や組織観点での成果例

個人 管理職のマネジメント力向上
メンバーによる主体性の発揮
仕事を通して得られる幸福感の向上
組織
チーム
業務負荷の見える化・平準化・分散化
集団のチーム化による凝集性(チームの一体感など)の向上
共有メンタルモデルの確立と促進
人事 理念・ミッション・ビジョンなどの理解浸透
リテンション施策の促進と採用力強化
メンタル症患者の減少

次にビジネス成果です。組織開発を行うことで得たいと考える具体的な成果を指しますが、これは企業や取り組む部署によって大きく異なります。営業部門であれば「新規顧客の開拓数」「顧客満足度数値(CS)の向上」などを設定する場合があります。設計・開発部門であれば「開発期間やコストの短縮」「技術伝承」などがあります。また管理部門であれば「業務の標準プロセスを確立」「人材育成」といった内容が選択されたりもします。

組織開発における二軸目標は、上位目標を受け、組織開発にかかわるメンバーが対話を重ねて自ら決めていくため、「こうあらなければならない」といった唯一のものは無いというのが実態です。

重要なのは、永続的なビジネス成果創出を期待するには、そのための基盤を整えなければならないことです。遠回りに見えるかもしれない「人材や組織の変化・成長」をまず実現する。これが組織開発と言っても過言ではありません。

組織開発の着眼点

組織開発を構造的に捉える

組織開発に取り組むうえで起点となるのが、「関係者が思い描く未来のありたい姿」であることはすでに述べた通りです。しかし、「未来のありたい姿」は関係者の数だけ存在し、立場によっても異なるため分かりにくいものです。

本章では、その手引きとしてソーシャルフェーズをご紹介します。

このソーシャルフェーズは個人レベルから会社全体までの5段階で表されており、「最終的に目指す状態を意識しながら考える各段階の目指す状態」に対して示唆を与えてくれます。

それぞれのフェーズに対する解説は以下となります。

①パーソナルフェーズ

最初のフェーズであり、ここでは現在の自分や目指したい自己像を扱います。

パーソナルフェーズでは、セルフコーチングなどを通して行う自分自身に対する探求や、本来の自己に「希望」や「期待」などを加えた“自身が目指したい自己像の明確化”などを行います。また、自己の強みを明らかにすることで自己有能感を育み、関与空間拡大の礎を築くこともこのフェーズに含みます。

②インターパーソナルフェーズ

理想的な対人関係を扱うフェーズです。

インターパーソナルフェーズでは、パーソナルフェーズで明らかになった情報を使い、対話を通して相互理解を深めていきます。他者の立場や思考・希望などを理解・尊重しながら、相手に合わせた適切な対応方法の合意をこのフェーズで取るわけです。これにより、目的にかなった良好で効果的な対人関係を構築することを目指します。

③チームフェーズ

所属メンバー全員が合意できる理想的なチーム状態を扱うフェーズです。

チームフェーズでは、互いの強みを活かし、弱みを補いあいながら、職場管理職が構成メンバーと共にチームビジョン(未来のありたい組織像)を紡ぎあげ、協力して実現していこうとする状態を構築します。このチームビジョンは一方的な押し付けではなく、相互作用の中で構築されることが求められます。

④インターチームフェーズ

 理想的なチーム間の関係を扱うフェーズです。

インターチームフェーズでは、それぞれのチームが掲げるビジョンや置かれている立場、仕事の進め方など、違いを理解・尊重しながら対話を繰り返し、相互のかかわり方について合意を取っていきます。これにより、内集団・外集団の再カテゴリー化がなされ、組織と共有している目的・価値を能動的に実現するための同一チームが作られます。

⑤オーガニゼーションフェーズ

最後は、会社全体を扱うフェーズです。

オーガニゼーションフェーズでは、個々人に加えて職種・階層など様々な集団を統合していきます。会社のビジョンが各人・各組織に内在化され、一丸となって実現しようとする凝集性の高い集団が作られると、その実現に向け各自が努力しつつ相互支援(ソーシャルサポート:情緒的、評価的、道具的、情報的サポート)がなされます。その他にも、個人・チームとしての成功体験を形式知化し、全社展開することで、健全で効果性の高い組織へと変容していく。また、新たな価値創造に寄与するといったことをねらっていきます。

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「プロセス」を意識的に取り上げる

先に示した5フェーズのどの段階にいるのか?にかかわらず意識をしなければならない考えがあります。それが「コンテント」と「プロセス」です。

この2つの用語は、組織開発を実施するうえで外すことのできない重要概念であり、以下のような氷山モデルで説明されます。

まず「コンテント」についてですが、チームの課題や仕事など、内容的な側面を指します。話の内容や目標・課題、業務など水面に顔を出していて捉えやすいものと考えていただくと分かりやすいです。

次に「プロセス」についてです。組織開発におけるプロセスは、私たちが日常よく用いる「業務プロセス」とは意味が異なり、「対人間で起こっている関係的過程」という説明がよくなされます。このプロセスは、コンテントと同時に発生する心的感情(自身の心の中で生まれる)であり、相手との関係に影響を与えます。

会議を例にとって見てみましょう。多くの会議では、話の構造や話されている内容、根拠などコンテントの部分に着目しがちです。しかし実際は、参加者が「会議の場を安心・安全な場と捉えられていたか」「気兼ねなく自由に発言できていたか」「一人ひとりが決定に関与できていたか」というプロセスの部分が、会議で決定された内容に対する質や満足度、実行に大きく影響します。

最近よく耳にする「心理的安全性」は、より良いプロセスを生み出すための重要概念のひとつであると言えます。

目には見えない(見えにくい)プロセスの善し悪しがコンテントに影響し、仕事の成果を左右することから、組織内の当事者自らがプロセスを意識的に取り上げ、議論の俎上に載せることが求められています。

グループ・ダイナミクスの負の側面に注意する

グループ・ダイナミクスとは、集団を構成する個々人の関係から発生する集団の力学的特性であり、「集団力学」とも言われます。

企業は、個人の努力では難しいと思われる高い目標を達成するために組織を作ります。その組織に所属する各メンバーは相互に刺激を与えあい高い成果を生み出します。これがプロセス・ゲインと呼ばれる現象です。しかし、組織内では必ずしも相乗効果が生まれるとは限らず、人が集まることによるデメリット。つまりプロセス・ロスが往々にして発生します。

組織開発にかかわる方々の中でも、職場管理職や事務局の方々は、このプロセス・ロスと呼ばれる事象に注意しながら組織を的確に捉え、導いていくことが求められます。

以下は、プロセス・ロスに関係する代表的な事象です。

①同調圧力(ピア・プレッシャー)

構成メンバーが、所属集団に「受け入れられたい」と思うことが影響し、集団での意思決定に同調することを指します。本心では同意していないが、表面上は多数派に合わせる「外面的同調」がこれにあたります。

②集団浅慮(グループ・シンク)

力を持ったリーダーなどの影響を受けることで、モノゴトが多様な視点で適切に判断されることがなされないまま、浅はかな結論が導き出されることを指します。凝集性が高く、閉鎖的なチームで起こると言われています。

③社会的手抜き(リンゲルマン効果)

人は集団の中で働くときに、まじめに働く仲間にまぎれて努力を怠ったり、本来持つ力を発揮せず、手を抜いたりすることを指します。

④集合的無知(多元的無知)

 周囲の人たちが自分と同じように感じたり考えたりしているにもかかわらず、互いに周囲の状況を伺い合うことで、「他の人は自分とは異なる感情や思考を持っている」と取り違え、沈黙してしまうことを指します。

組織開発の種類と手順

組織開発は、その進め方によって診断型組織開発と対話型組織開発に分けることができます。

診断型組織開発

従業員(非正規社員を含むケースあり)が回答した調査・アンケートの結果を活用する組織開発の形式であり、代表的なアプローチ方法として「サーベイ・フィードバック」が挙げられます。

診断型組織開発は、対象組織の現状を把握するためのリサーチ(調査)をまず実施し、得られた調査結果を使った対話を関係者間(上司と職場メンバーなど)で行います。対話の場では、組織の現状を真摯に受けとめ、未来志向で建設的な話し合いを通して解決策を見出し、実施に向けて合意します。その後、関係者が協力し合いながら合意した内容を実行し、ふり返りなどを行う活動です。

<診断型組織開発の代表的なメリット>

    • 網羅性の高い設問を使用することで、組織の現状を幅広くとらえられる。
    • 客観的な数字を使って現状を把握したり、各種検討が可能となる。
    • 実施施策の効果を測定しやすい。

対話型組織開発

現状把握を目的とした調査は行わず、参加者間で行われるお互いの認識や想いに関する対話を繰り返すことで、「現状の共有」や「ありたい姿」を明確化していく組織開発の形式であり、代表的なアプローチ方法として「AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)」が挙げられます。

対話型組織開発の最大の特徴は、問題を明らかにし、その修正をはかる「問題解決型のアプローチ」を採らない点にあります。自分たちの強みや特徴ともいえる「ポジティブ・コア」を明らかにし、組織メンバーの協働を通じて未来における組織のありたい姿を探求する。そして、その実現に向けた日々のかかわりの中でお互いを高め合う活動です。

<対話型組織開発の代表的なメリット>

    • 枠にとらわれない広く、深い対話が行いやすい。
    • 関係者の参加度合いや納得度、満足度が高くなる。
    • 自分ゴト化がはかりやすく、活動の継続率も高い。

実施手順

NTLインスティテュートが示している実施の流れに診断型・対話型の両組織開発を関連付けて示すと、以下のようにあらわすことができます。

診断型組織開発は8フェーズ構成なのに対し、診断を行わない対話型組織開発は5フェーズ構成となります。

No フェーズ 診断型
組織開発
対話型
組織開発
内容
1 エントリーと契約 組織開発の実施目的や取り組み方針などについて、組織開発支援者(社内外コンサルタントなど)と意思決定者(プロジェクト・オーナー)や事務局との間で合意します。また、施策案を構築するために必要となる情報をヒアリングなどから得ていきます。
2 データ収集 開示された情報やヒアリングから得られた情報をもとに仮説を立て、調査構造や設問を設計します。同時に、調査結果の活用方針に沿って集計形式を整えます。
3 データ分析 収集したデータを集計・分析します。組織開発では、結果の解釈を各職場の参加者にゆだねることが多いため、分析結果の主な報告対象は経営層や事務局となります。
4 フィードバック 組織開発を行う関係者に結果をフィードバックします。この場は、結果が提示されるだけでなく、その結果を当事者たちが受けとめ、未来のありたい組織像について対話する場となります。ここで重要となるのが、先ほどご紹介した「プロセス」に対する注目です。
5 アクション計画 プロセスを意識し、関係者が合意する「未来のありたい組織像」を紡ぎあげます。そして、明示化された目指したい組織状態を実現したり、その結果としてのビジネス成果を獲得するために、各自がどのような役割を発揮するか?どのような関与を相手に期待するか?などについて話し合い、具体的な計画へと落とし込んでいきます。
6 アクション実施 相互に支援を行い合いながら、計画を実行します。
7 評価 一定期間のアクションを経て、効果を検討するための評価を行います。ここでは、No.1のエントリーと契約で合意した目的やNo.5で設定された目標が達成されているかについて確認を行います。着眼点としては、「定量」と「定性」の両側面があります。
8 終結 組織開発の実施目的や目標が達成された場合は終結しますが、基本的に活動は永続的なものとなります。
ちなみに未達成の場合は、No.5や6の目標見直しや再計画化などを行うこととなります。

組織開発における進め方のポイント

組織開発は施策ありきではなく、かつアプローチ方法も幅広いため、「専門家に伴走を依頼するケースが多い」といった特徴があります。社内に組織開発担当者がいらっしゃらない場合は、社外のコンサルタントへ依頼することになります。

どちらを選択されるとしても組織開発に取り組むうえでおさえておくべきいくつかのポイントがあります。

経営層などの上位役職者を巻き込む

組織開発は、その性質上すぐにビジネス成果が生まれるものではありません。ビジネス成果を生み出すための組織基盤を整えるところから取り組むことになるため、投資をする企業としては「待つ」ことが求められます。また、その活動においては上位組織や他部署を巻き込む会社全体の施策となることが多いため、経営層など上位役職者を事前に巻き込み、プロジェクト・オーナーとして関与いただくことが本活動を推進するうえで効果的です。

手段ありきで考えない

既に申し上げた通り、組織開発は「何か特定の施策を単発的に行う」といった単純なものではありません。「企業や組織の数と同じほど課題と施策は多様である」と言えることからも分かる通り、組織や所属人員、各者の関係性、具体的なビジネス、保有技術や能力などを多面的に把握し、それぞれに対応する施策を計画的、体系的に統合していく必要があります。

社内に経験者がいない場合は、経験豊富な外部専門家をチームに加えることで、推進に対する事務局の心的負担はかなり軽減されます。

対象組織の現状に合わせて関与方法を変える

組織や個々人に対する支援も同様であり、対象に合わせた適切なかかわり方が求められます。E.H.シャインは、この関与(援助)方法について「専門家モデル」「医師-患者モデル」「プロセス・コンサルテーション・モデル」の3形態を示しています。

対象者が納得し、自らの意思で行動に移すようなかかわりを考えるとプロセス・コンサルテーション・モデルが効果的ではありますが、対象者の置かれた「その時点における状況」を援助者が理解し、適切に判断したうえで関与方法を選択することが求められます。

組織開発の施策4選

組織開発の中で行われる各施策は、実践現場から数多く生まれています。

これら施策は単体で効果をあげるものではなく、目的・目標の達成に向けた全体計画の中で、対象となる組織や所属人員、各者の関係性などを見極めて採用されるものとなります。

今回は以下4つの施策について、先述のソーシャルフェーズと関連付けてご紹介します。

自己概念と自己呈示

主にパーソナルフェーズやインターパーソナルフェーズで使用される施策です。

相手に自分を知ってもらうためには、まず自分自身についてよくわかっていなければなりません。この、「自分自身に対する探求を通して自己理解を深めていくこと」が自己概念(自己定義)であり、認識された内容を伝え合うことを自己開示と言います。

自身を捉える着眼点としては、価値観や思考・コミュニケーションタイプなどがあります。

自己呈示は、本来の自己に「希望」や「期待」などの意図を込めて伝える行為を指しますが、自身が目指したい自己像として相手に伝えるような使用方法もあります。

社会規範の表出化

主にインターパーソナルフェーズ以降で使用される施策です。

職場には様々なルールがあります。このルールは明文化されたものと暗黙的なもの(社会規範)とに分類することができるのですが、分かりにくいのが暗黙的なルールです。

社会規範の表出化とは、この暗黙的なルールを見える化し、共通認識状態をつくりだすことを指しますが、必要に応じてこの社会規範を改定することも含みます。

我々が目指す状態を実現するために必要な考えや行動とはどういったことなのかをチーム内で話し合い、その価値観や判断基準と合致しない社会規範を自らの手で変えていくことが当施策となります。

役割認識と期待交換

主にインターパーソナルフェーズ以降で使用される施策です。

一般的な組織には人事制度が存在します。そこには職種定義や等級定義、役職定義、評価項目およびその基準などが記載されています。これが職場や各人の役割(ミッション)になります。しかし、全ての仕事がこの文面に合致するわけではなく、私たちはこの役割を超えて行動しているのも事実です。

役割認識と期待交換では、このグレーな部分を関係者間で明確にしていきます。各自の思考タイプや強みなどを理解したうえで、目的を確認し、双方から「こういった支援をお願いしたい」という内容を出し合っていくわけです。このサポートについては、「情緒的サポート」「評価的サポート」「道具的サポート」「情報的サポート」の4つの観点で捉えると分かりやすいです。

チームビジョンの策定

主にチームフェーズで使用される施策です。

職場の仲間と共に目指したい、「未来の職場像(チームビジョン)」について語り合い、目指すべき状態を紡ぎあげていきます。重要なのは、上位方針や職場管理職の考えを押し付けるのではなく、関係者の想いを引き出し統合することで「自分たちの、自分のビジョン」だと捉えてもらえるよう進めていくことです。自分ゴト化されたビジョンがあるとメンバーの心に灯がともり、「実現に向けて共に頑張ろうという意欲」が芽生えます。

このチームビジョン策定を行う前提として、上記の「自己概念と自己呈示」や「社会規範の表出化」は終えておく必要があります。

関連記事「組織マネジメントとは?管理職に求められる能力と実現するポイント」を見る

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まとめ|組織開発によって組織の成果を最大化し持続的な成長を

社員一人ひとりに違いがあるように、会社には多様な組織や職場が存在し、抱えている課題も多岐にわたります。組織開発とは、その個々に対峙する活動と言い換えることができるかもしれません。

実施施策については、「何をするのか?」に目が行きがちです。しかし、重要なのは活動の目的と合意された目標(ビジョン)。そして、対話におけるプロセス面への配慮です。活動の当事者たちが、自分たちがどうありたいか?どのような組織を作っていきたいか?について、適切なプロセスの中で、上位方針や役割(ミッション)などと重ね合わせて考えていく。そのために効果的な施策を計画的・体系的に統合していくことが求められます。

そして組織開発推進者には、「組織や個人を唯一の存在として捉え、今この場面における最高の援助を行うこと」が、求められています。援助する側と受ける側、活動する側と意思決定する側、それぞれの立場で効果的なかかわりを行うことが本活動を継続させるためのポイントであり、成果に結びつく活動になるものと言えます。

インタビュー・監修

株式会社パーソル総合研究所

組織力強化事業本部 組織力強化コンサルティング部 コンサルグループ

内田 智之

情報システムを扱う商社にて、新規市場の調査や開拓営業、特許出願などを経験したのち、コンサルティング業界へ転身。日本能率協会コンサルティングやSMBCコンサルティング、トランストラクチャといった複数のコンサルティングファームに在籍し、組織診断やコンサルティング(組織風土変革、人事制度設計、教育体系策定、教育システムの導入など)、各種研修業務に従事。また、所属企業の中で組織開発研究所(現在は閉鎖)を立ち上げ、主席研究員として運営にも携わってきた経験を持つ。上記業務・活動を推進する一方で、自らのビジネス領域に関係する調査・研究を行い、研究結果の現場活用に取り組んでいる。2019年10月より現職。

よくあるご質問

Q1.組織開発とはどのようなものですか?

A1.組織開発とは、組織の当事者である社員たちが、個人と個人の関係性を軸に、組織の活性化を図る取り組みです。組織開発の対象となるのは組織全体や部門、部署、個人など多様なレベルに及びます。そのため理論や手法が非常に多岐にわたり、複雑化しているという現状があります。

>>組織開発とは?

Q2.組織開発の手順を教えてください

A2.組織開発の手順は、以下7つのフェーズから成り立っています。

    1. エントリーと契約
    2. データ収集
    3. データ分析
    4. フィードバック
    5. アクション計画
    6. アクション実施
    7. 評価

>> 組織開発の手順

Q3. 組織開発のアプローチ方法はどのようなものがありますか?

A3.本記事では診断型組織開発と対話型組織開発について説明しています。それぞれの特長は以下のとおりです。

診断型組織開発

組織内のデータを収集し、専門家による分析および診断を実施して課題を抽出した上で、施策を実行する手法です。データをもとにした客観的な数字による現状把握ができるというメリットがある一方、専門家に依頼するコストがかかるというデメリットがあります。

対話型組織開発

組織内の当事者たちが対話を繰り返すことにより、主体的に課題を発見し、抽出する手法です。企業の問題点がはっきりしていない状況でも組織開発を進められることがメリットです。社員同士の対話を中心に組織開発が進んでいくので、計画性を具備しにくく具体的なゴールや成果が定まりづらい点がデメリットです。

>>組織開発の種類

各社のマネジメント状況、パフォーマンスが高い企業の特徴とは?

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