要員計画とは
要員計画とは、企業が事業計画を遂行するために、必要な人員の採用、配置などを計画することを指します。
要員計画を立案する最大の目的は、あくまでも「事業計画の遂行」です。そのため、事業計画の遂行にあたり「どれだけの人員が必要か」という数量的な観点だけではなく、具体的にどのような能力を持った人材が必要なのかといった能力要件の定義や、どのように人材を確保・教育するのかといった具体的なプロセスも要員計画には含まれなければなりません。

要因計画の例
・事業計画を遂行するためには、マネジメント人材が何人必要なのか
・即戦力人材を何人採用するのか
・今いる人材をいつまでにどのように育成していくのか
・外部リソースを活用するのか など
要員計画と人員計画、採用計画の違い
要員計画と似た言葉で人員計画があります。要員計画と人員計画は基本的には同じ意味で使われますが、以下のように使い分けられることもあります。
要員計画:経営計画や事業計画をもとに検討する計画で「どこの部署に何人配属するか」といった量的な側面に注目されて使われる。
人員計画:部署などの小単位において、具体的に「どのような人材を求めているか」といった質的な側面も含めて使われる。
なお、採用計画は、経営計画や事業計画をもとに人材採用を検討・立案するものであり、要員計画の一要素です。
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要員計画を策定する目的
要員計画は事業計画の遂行のために策定されるものですが、具体的な目的は以下の3つに分けられます。
1.採用計画を合理化するため
事業計画に紐づいた要員計画を立てることで、合理的な採用活動の展開へと繋がります。
例えば、「今期5人の離職者が出たから、来期は新たに5人を採用しよう」といった場当たり的な計画でなく、「事業計画を遂行するためには何人を採用すべきなのか」「事業収益と照らし合わせた結果、何人を採用するのが妥当なのか」といった視点で進めていくことで、無駄がなく合理的な採用計画を立案することができます。
2.適材適所の人員配置を実現するため
要員計画を策定するということは、各部署がどのような人材を必要としているか、またどれくらい人員が過不足しているかを把握するということです。そのため、現場が求めている人材を適材適所に配置する、人員が不足している部署へ異動させるといった「社内リソースの最適な分配」に役立ちます。
3.中長期的な人材育成のため
人材の能力開発・育成は短期間で行えることではありません。要員計画に基づいて、将来的にリーダー人材やマネジメントが何人必要なのかを割り出すことによって、中長期的な人材育成計画を立案することができます。
適正な要員数を算出する2つの方法
事業成長と適正な要員数を紐づけるためには、具体的にどのように考えればよいのでしょうか?適正な要員を算出する方法には「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」の2種類があります。
トップダウン方式
トップダウン方式は、目標利益から適正要員数を導き出す計算方法です。
▼トップダウン方式の方程式
適正要員数 =(売上高 - 人件費以外の全経費 ー 目標利益)÷ 一人あたりの人件費
年度の目標利益がきちんと出るようにする財務的アプローチであるともいえます。そして、基本的には損益計算書、もしくはそれに準じる情報を使いながら、要員数を導きます。
ただし、算出された要員はあくまで経営ベースであるため、結局現場で必要となる事業成長を支える人員が不足してしまうという懸念もあります。
ボトムアップ方式
ボトムアップ方式とは、業務量から適正要員数を算定する方法です。
▼ボトムアップ方式の算定式
適正要員数 = 総労働時間 ÷ 一人あたりの労働時間
発生する現場の業務量をしっかりとこなせるだけの要員数を導く業務的アプローチです。ボトムアップ方式では、現場の業務量をベースに要員を計算します。
ボトムアップ方式とトップダウン方式はどちらが正しいというものではなく、同時に両立させるべきものです。トップダウン方式・ボトムアップ方式で計算された要員の算定が大きくずれるようであれば、それは適正な要員であるとは言えません。その場合は、さまざまなコスト削減に取り組んで人件費を見直した上で、妥当な要員数となるように見直します。
大切なのは、ボトムアップ方式とトップダウン方式のどちらかを基準に要員計画を策定しながらも、もう片方の方式をチェック機能として用いることです。
要員計画を策定するための4ステップ
実際に要員計画を策定するステップと、それぞれのステップにおける注意点を見てみましょう。
STEP1.現状把握
まずは、今いる人材の現状把握から始めます。
具体的には、部署や事業所ごとの在籍人数を確認します。この際、従業員情報(氏名・年齢・役職・部署といった情報)を一元で管理できる「人事管理システム」を用いることで、業務の効率化を図ることができます。
STEP2.要員調査
続いて、要員調査を実施します。要員調査とは、社内のニーズを把握し、必要な人材の要件を割り出すためのアセスメントです。
ボトムアップ方式で要員を算出する場合は、各部署や事業所の責任者にニーズをヒアリングし必要人員を割り出します。
▼ボトムアップ方式のヒアリング内容例
- 現状での業務量とリソースの過不足
- 来期に向けて必要な人数
- いつまでに人員を補充する必要があるのか
- 求める人材の具体的なスキルや志向
- 繁盛期と閑散期の業務量の違い
- 本当は注力したいものの手が回っていない業務があるか
トップダウン方式で要員を算出する場合は、予算から適正な人員数を決定するため、経営層にヒアリングし必要人員を割り出します。
▼トップダウン方式のヒアリング内容例
- 目標利益、売上高、経費の見込みはどうか
- 事業や経費の優先順位に変化があるか
- 経営環境、労働市場面の変化があるか
- 長期的な事業・経営計画の進捗はどうか
STEP3.要員の調整
STEP2で算出した要員の調整を行います。
具体的には、算出した要員をどのように補填していくのかを考えます。例えば、新卒採用を行うのか、中途採用を行うのか、既存の従業員の能力開発を進めるのか、またアウトソーシングをはじめとする外部リソースを活用するのかなどを決めていきます。
この際に大切なのは、来期の必要人材といった短期的な視点に捉われず、事業計画に基づいて中長期的な視点を重視することです。
もし即戦力が欲しいという理由だけで、中途採用の比率を大きくしてしまった場合、将来的に会社の中心となる若手人材が不足したり・育たなくなったりといったデメリットも考えられます。
あくまでも事業計画に基づいて将来的な経営目標を達成するためには、どのように要員調整を行うべきなのかといった点を十分に考慮しましょう。
STEP4.要員計画の策定・運用
最後に要員計画を策定し、実際に運用していきます。この要員計画をもとに「採用計画」「人材育成計画」を立てていきます。
要員計画を効果的に運用するポイント

立案した計画をもとに具体的な施策を実行し、最終的な事業計画の遂行へと結び付けるためには、要員計画の定期的なモニタリングが必要になってきます。要員計画のモニタリングとは、実際に採用した人材が社内でパフォーマンスを発揮しているのか、育成している人材が求めている能力を取得しているのか、といった点を定点で観測することです。
もし仮に計画通りにいっていないのであれば、再度要員計画を見直す必要があります。また、離職など想定外の変化が生じることがあります。この際にも、経営計画を基準に要員計画を見直していくことが求められるでしょう。
要員計画を立てて終わりにせず、計画をもとに施策を実行すること、施策の結果を分析すること、そして要員計画の見直しをスピーディーに繰り返すことが大切です。
適切な要員計画策定のために検討したいサービス
要員計画は、経営戦略・事業計画に基づいて立案されなければいけません。そのため、策定を行う際には、事業理解や経営に対する深い知見が必要になってきます。
要員計画を誤ると、中長期的に「自社に優秀なタレントが不在になる」「事業を遂行するための人材が不足する」といった問題を招き、市場での優位性を失う要因にもなりかねません。このような事態を回避するためにも、状況に応じて経営・人事領域に深い知見を持った外部コンサルティングサービスを活用するのも一つの手法です。
また、「採用にかかる業務量を軽減したい」「そもそも自社の採用ノウハウに自信がない」といったケースでは、採用活動を外部パートナーに委託する「RPO」を活用することも選択肢のひとつです。
RPOに関して詳しくは、別記事「RPO(採用代行)とは|導入事例と検討・依頼時の注意点」で解説していますので合わせて参考にしてください。
まとめ
本記事では、要員計画の基礎知識、要員計画を策定する具体的なステップ・効果的に運用するポイントについて解説しました。
要員計画は、来期に必要な人員を明らかにするだけの計画ではありません。事業計画を円滑に進めていくため、また事業目標を達成するために企業の人的リソースをどのように調整していくのかを決める大事な工程です。
まずは、現場の担当者やマネジメント層へのヒアリングを通して、現状求められている人材を「質」「量」 の2つの側面から正しく把握することが求められます。そのうえで、必要な人員を確保するためには、どのような手法を採用するのが適切なのかを中長期的な視点から考えていく必要があるでしょう。
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