2025年12月25日
カスハラとは、顧客や取引先から受ける不当な要求や言動を指します。従業員の尊厳や心身の健康を脅かすだけでなく、企業の業務効率やサービス品質の低下、ブランドイメージの損失など組織全体に深刻な影響を及ぼすため、企業はカスハラへの対応を組織的に進めなければなりません。
カスハラ対策では、企業としての明確な方針の策定や現場での実務手順の整備、従業員が安心して相談できる体制づくりなど、具体的かつ実践的な取り組みが重要です。形だけの対応ではなく、従業員を守る姿勢を組織全体で示すことが、はたらきやすい職場環境の実現につながります。
本記事では、カスハラの基本知識や具体例、従業員や企業への影響、そして対策を講じる際の流れをわかりやすく解説します。企業が安心してはたらける環境を整えるための参考として、ぜひご覧ください。
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カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先から受ける著しく不当な要求や言動のことです。主に、正当なクレームの範囲を超えて従業員の尊厳を傷つけたり、業務の遂行に支障をきたしたりする行為が該当します。
厚生労働省が公表する「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラは以下のようなものだと考えられるとされています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
2025年に改正された労働施策総合推進法では、企業に対して「職場でのカスタマーハラスメント防止措置」が義務付けられました。これにより、カスハラ対策はすべての企業にとって避けて通れない重要な課題となっています。
しかし、カスハラの大きな問題点は、その定義や基準が曖昧であることです。何をカスハラとするかは業種や状況によって異なるため、一律の基準では判断できません。そのため、企業は自社の業務実態に合わせて「どこからどこまでをカスハラとみなすか」の明確な基準を設けて線引きする必要があります。従業員が安心してはたらける環境を整備するためにも、企業は自社の実情に合わせたカスハラの判断基準を明確化することが重要です。
株式会社パーソル総合研究所が実施した「カスタマーハラスメントに関する定量調査(2024年)」によると、顧客対応を行うサービス職では35.5%が「カスハラ被害を経験している」と回答しました。さらに、そのうち20.8%が「過去3年以内に被害を受けた」と答えており、カスハラが近年特に顕在化していることがうかがえます。

こうした結果から、カスハラは特定の業種に限らず、誰にでも起こり得る社会的課題となっていることがわかります。ここでは、カスハラの実態をより具体的に把握するため、被害状況を職業別・年代別に分けて解説していきます。
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職業別に見ると、3年以内のカスハラ被害の経験率が最も高いのは34.5%の「福祉系専門職員(介護士・ヘルパーなど)」という結果でした。 3年以内のカスハラ経験率と離職率をマップ化すると、「福祉職(介護士・ヘルパーなど)」「宿泊サービス」「受付・秘書」は、カスハラ被害の経験率と離職率がともに高いことがわかります。
これらの職種は顧客接点が対面形式であることが共通しており、長時間にわたる対応や感情労働が求められる点が特徴です。特に介護や医療の現場では、利用者や家族の不安・不満がそのまま従業員にぶつけられるケースも多く、暴言や過度な要求、理不尽なクレームが発生しやすい傾向にあります。
一方で、オフィスワーク中心の職種や、オンラインで完結する業務ではカスハラ被害の割合が比較的低く、対面対応の多さが被害リスクを高めていることがうかがえます。こうした結果からも、企業においては職種特性に応じたカスハラ対策を講じることが重要だと言えるでしょう。
年代別に見ると、カスハラの加害者は50~60代の男性が最も多いという結果が出ています。年齢を重ねるほど社会的地位や立場を背景に相手より優位に立とうとする心理が働きやすく、加えて長年の慣習や価値観から、要求や態度が過剰になるケースが少なくありません。
一方で、被害経験率が高いのは20~30代の若年層です。職務経験が浅い従業員は、カスハラへの対処方法がわからず、精神的なダメージを受けやすい傾向にあります。
企業としては、こうした世代間ギャップを踏まえた教育や支援体制の整備が重要です。管理職やベテラン社員が現場の声を理解し、組織として若手を守る仕組みを構築することが、カスハラ対策の第一歩となるでしょう。
カスハラと正当なクレームを明確に区別することは、現場で適切に対応する上で欠かせません。正当なクレームは、商品やサービスの不具合に対して、改善を目的に冷静かつ具体的に意見を伝えるものです。要求内容に妥当性があり、相手を尊重したコミュニケーションが成立している場合、それは企業にとって品質向上のための貴重なフィードバックになります。
一方で、カスハラは要求の内容や伝え方が社会通念上不相当なものを指します。例えば、暴言や脅迫、執拗な連絡、謝罪の強要、従業員の人格否定など、目的よりも攻撃性が前面に出ている行為です。要求そのものが妥当であっても、手段が常識の範囲を逸脱していればカスハラに該当します。
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カスハラの被害実態についての調査では、「暴言や脅迫的な発言」「威嚇的・乱暴な態度」が多くの割合を占めています。また、謝罪の強要や暴行、過度な要求など、手段・態様が常識を逸しているケースが少なくありません。これらの行為は、単なるクレームの延長ではなく従業員の尊厳や企業の業務環境を脅かす深刻なハラスメントになります。

ここでは、カスハラの代表的な7つの行動例を紹介します。
カスハラの中で最も多く見られるのが暴言や脅迫的な発言です。正当なクレームが企業の商品やサービスへの不満表明であるのに対し、カスハラではその矛先が従業員(個人)へと向けられます。例えば、「お前じゃ話にならない」「あんたバカじゃないの」といった人格否定や、「SNSに晒してやる」「本社にクレームを入れる」といった脅迫などが典型的です。
さらに、業界用語や専門知識をひけらかして威圧したり、差別的な言葉を使って相手を貶めたりするケースも少なくありません。こうした言葉の暴力は、従業員に恐怖や無力感を与えるだけでなく、職場全体の士気を著しく低下させる要因にもなります。
大声で怒鳴る、机を叩く、物を投げつけるといった威圧的な態度や行動も、カスハラの代表的な例です。睨みつける、異常に近づくといった身体的な威嚇行為は、従業員に強い恐怖や緊張を与えます。
また、店内で怒鳴り散らしたり、わざと大きな音を立てて周囲の注目を集めたりする行為も同様にカスハラに該当します。これらの行動は他の顧客にも不安を与え、安全で安心してはたらける職場環境や顧客接点の場そのものを脅かす要因となります。
何度も同じ内容の電話をかける、深夜や早朝に連絡するなどの行為もカスハラです。回答済みの内容を繰り返し問い合わせたり、長時間にわたって電話対応を強いたりする行為は、業務の大きな妨げとなります。
また、SNSやメールで執拗にメッセージを送り続ける行為も該当します。複数の部署や窓口に同時に問い合わせる「マルチクレーム」も、企業のリソースを不当に消費する行為として問題視されています。
商品やサービスの範囲を超えた対応を要求する行為も、カスハラに分類されます。例えば、「無償での対応を執拗に求める」「契約や規約にない特別扱いを要求する」といった行為がこれに当たります。
また、わずかな不具合を理由に全額返金や過大な補償を要求したり、従業員個人に休日の連絡先や私物の提供を求めたりするケースも見られます。こうした要求は、従業員の負担を増やすだけでなく、企業の公平なサービス提供を妨げます。
商品やサービスに問題がない場合でも、土下座や反省文の提出を求めるなど、過度な謝罪を強制する行為はカスハラです。
例えば、「謝罪の様子を撮影して拡散する」という脅迫や、謝罪に来る担当者の役職や人数を指定する行為、「誠意を見せろ」という曖昧な要求で、金品や過剰な補償を引き出そうとするケースなどがあります。これらの要求は、謝罪が目的化しており、問題解決への関心がない点が特徴です。
カスハラの行為に見られる物理的な暴力は、暴行罪または傷害罪に該当します。これは、最も悪質なカスハラの形態であり、殴る、蹴る、髪を引っ張るなどの直接的な暴行はもちろん、人に向かって物を投げつける、押す、突き飛ばすといった行為も含まれます。
このような行為は明確な犯罪であり、警察への通報や法的措置が必要です。従業員の身体的安全を守ることは、企業の最優先事項と言えます。
商品性別に基づく差別的発言や、容姿に関する侮辱的な言動もカスハラです。年齢や体型、身体的特徴を揶揄する言葉は、従業員の人格を深く傷つけます。
さらに、セクハラに該当する発言や、プライベートな質問を執拗に繰り返す行為も含まれます。こうした言動は、従業員に心理的な苦痛を与え、はたらく意欲や職場の士気を損なうことになります。
カスハラは、従業員個人への精神的負担にとどまらず、企業全体の生産性や組織文化にも深刻な影響を及ぼします。
ここでは、従業員と企業の双方に及ぶ、カスハラの具体的な影響について詳しく解説します。
カスハラは、従業員一人ひとりの心身やはたらく意欲に直接的なダメージを与えます。カスハラ被害を受けることで業務における不安や恐怖感が積み重なり、離職意向の増加やモチベーション低下につながります。さらに、職場全体の雰囲気やチームワークにも悪影響を及ぼすため、現場の実態を把握した上で企業が対策を講じることが重要です。

カスハラ対応に多くの時間を割かれることで、本来の業務が滞ります。さらに、一人の顧客対応に複数の従業員が関わらなければいけない場合は、業務効率の低下にもつながるでしょう。
また、カスハラ被害後は恐怖感から顧客対応に消極的になったり、過度に慎重になりすぎて業務スピードが落ちたりする影響も考えられます。精神的なストレスから集中力が低下し、ミスが増えるという悪循環も生まれるため、企業全体の生産性や組織運営にも大きな影響を及ぼします。
理不尽な扱いを受けることで、従業員のモチベーションは著しく低下します。「どんなに努力しても評価されない」という無力感や、「この仕事を続ける意味はあるのか」という疑問が生まれ、やがて退職意向につながるケースも少なくありません。
さらに、周囲の従業員がカスハラ被害の現場を目撃することで、職場全体の士気も低下します。チームの雰囲気が暗くなり、協力やコミュニケーションが滞ることで、組織全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼす恐れがあります。
カスハラ被害による従業員の精神的負担は、企業の業務効率やサービス品質にも直結します。離職やモチベーション低下による人的損失、サービス品質やブランドイメージの低下など、組織全体への悪影響は軽視できません。
ここでは、カスハラが企業運営に与える具体的な影響を解説します。
カスハラ被害により従業員のモチベーション低下や離職が進むと、サービスの質が低下します。カスハラを経験した従業員は、再び同様の被害を受けないよう防衛的な対応に偏りやすくなるため、本来であれば柔軟に提供できる対応やサービス提供が難しくなり、均質で機械的な対応になりがちです。
こうした状況は、理不尽な要求をしない顧客にも影響を及ぼし、満足度の低下や信頼損失につながります。カスハラの影響は被害を受けた従業員だけでなく、企業全体のサービス品質にも直結する問題なのです。
カスハラによる従業員の離職が増えると、新たな人材の採用や教育にかかるコストも増大します。求人広告費や採用活動にかかる時間だけでなく、新入社員の研修や教育にも多大な費用がかかるため、企業の競争力低下につながるでしょう。
また、「カスハラが多い職場」という評判が広まると、求人応募者が減少し採用難に陥る恐れもあります。優秀な人材を確保するために給与水準を引き上げざるを得ない場合もあり、企業の人件費負担はさらに増加します。
カスハラ対応に多くの時間を割くことで、他の顧客への対応が遅れます。一部の理不尽な要求に対処する間に、顧客が長時間待たされる不公平感が生じ、結果として顧客満足度が低下する可能性も否定できません。
さらに、カスハラ対応に追われることで、システムや業務プロセスの改善に割く時間も減少し、長期的なサービス向上や業務効率化が進まなくなるリスクもあります。このように、カスハラは従業員だけでなく、企業全体の顧客体験や競争力にも大きな影響を及ぼすのです。
カスハラ発生時に従業員を守れない体制が明らかになると、企業のブランドイメージは大きく損なわれます。例えば、SNSで従業員の告発が拡散されたり、メディアで報道されたりすることで、社会的信用が失われるリスクがあります。「従業員を大切にしない企業」という印象が広まると、優秀な人材の採用や取引先との関係構築にも悪影響が出るかもしれません。
また、ESG投資の観点からも、従業員の安全や人権を十分に守れない企業は投資家からリスクと判断される可能性があります。企業が持続的に成長し、社会的信頼を維持するためには、カスハラ対策と従業員保護を経営課題として優先的に取り組むことが不可欠です。
カスタマーハラスメントへの対応を促進する法令や条例は、全国および自治体レベルで急速に整備・強化が進んでいます。特に2025年6月に成立した改正労働施策総合推進法では、すべての企業・事業者に対してカスハラ対策の義務が法的に明記されました。
企業はこれらの規制や指針を正しく理解し、自社の対応方針や体制に反映させることが求められています。また、適切な対策を講じることは、従業員の安全を守るだけでなく、企業の社会的信用や業務運営の安定にも直結する重要な課題です。
ここでは、カスハラに関する法令・条例について解説していきます。
「改正労働施策総合推進法」では、すべての企業に対してカスハラ対策となる「雇用管理上の措置義務」が明確に定められました。
企業が行うカスハラ対策の基本的な内容は以下の通りです。
| 事前の対策・措置 | 事案発生時の対応 |
|---|---|
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これらの義務を怠った場合、事業主は報告徴求命令や助言、勧告、公表など行政指導の対象となります。企業は改正法の施行までに具体的な方針策定や体制を構築することが求められています。
2025年4月、東京都では「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されました。これは自治体として全国初のカスハラ防止条例で、事業者に対してカスハラ防止のための体制整備を義務化しています。
条例では、事業者は従業員をカスハラから保護する責務があることを明記し、対応方針の策定、相談窓口の設置、研修の実施などを推奨しています。東京都内で事業を展開する企業は、この条例に基づいた対策が求められます。
労働契約法第5条では、企業に「従業員の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるように必要な配慮(安全配慮義務)」が定められています。
カスハラ行為によって従業員が心身の健康を害した場合、企業が適切な対応を怠れば安全配慮義務違反となり、損害賠償責任を問われる事例も増加しています。自社でカスハラ被害を防止するためにも、相談体制の整備や、対応方針の策定、再発防止策などの対策を十分に講じることが重要です。
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企業がカスハラから従業員を守るためには、包括的な対策が求められています。重要なのは、経営層が現場の実態を正しく理解し、形だけではない、従業員の気持ちに寄り添った対策を講じることです。
ここでは、企業がカスハラ対策を講じる上で必要な項目をステップ形式で解説します。
前述の通り、カスハラは一定の基準がなく、その線引きは業種や企業、状況によって異なります。そのためまずは、自社で発生しているカスハラの実態を把握することが重要です。調査の際は、従業員アンケートや相談記録の分析、現場ヒアリングなどを通じて、被害の傾向や課題を明らかにします。このカスハラの実態把握が、すべての対策の基盤となります。
STEP 1で明らかになった調査結果を経営層やマネジメント層と共有し、企業として「カスハラをどう捉え、どう対応するか」という明確な方針を打ち出します。カスハラの定義が曖昧なままでは現場判断にばらつきが生じ、従業員を守る体制が機能しません。
方針には、「従業員の尊厳と安全を最優先に守る」姿勢を明記し、顧客満足と従業員保護を両立するという企業の立場を示します。
また、策定した方針は、社内だけでなく社外にも発信することが大切です。ホームページや店頭掲示、契約書などを通じて「不当な言動には毅然と対応する」という姿勢を明示することで、カスハラ行為そのものの抑止につながります。
現場で実際にカスハラが発生した際の対応手順をマニュアルとして策定します。初期対応から上司への報告、記録の取り方、警察への通報基準までを具体的なステップで整理し、誰が読んでも同じ行動を取れるようにすることが大切です。
また、対応時の録音・記録方法や複数人での対応体制、弁護士や警察への連携ルートといった実務的なポイントも明記します。「どうすればいいか」が明確になることで、従業員の不安や萎縮を防ぎ、冷静かつ一貫した対応が可能になるでしょう。
しかし、マニュアルの内容が現場の実態とかけ離れていては、実効性のないものとして形骸化します。そのため、マニュアル策定の際は、経営層が主体となって現場の声を丁寧に吸い上げ、実際のトラブル事例や想定シナリオを反映させた内容にすることが重要です。
従業員がカスハラ被害を抱え込まないよう、安心して相談できる窓口を設置します。カスハラの被害は、上司に直接言いづらいケースも多いため、人事部門や労務担当、外部の専門機関など複数の相談ルートを用意することが望ましいでしょう。
窓口では、被害の内容を丁寧にヒアリングし、再発防止や必要な支援へとつなげます。その際、「相談しても不利益はない」「プライバシーは守られる」というメッセージを明確に伝えることで、従業員の心理的安全性を確保することが大切です。
また、匿名での相談を受け付けられる体制を整えると、より多くの従業員が利用しやすくなります。定期的に相談内容や発生傾向を分析し、職場環境の改善や教育体制の見直しに反映させることで、組織としての対応力も高まります。
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カスハラを受けた従業員の心のケアを行うことも欠かせません。産業医や社外カウンセラーなどの専門家と連携し、相談体制を整えることが重要です。
被害直後は、まず従業員の話を丁寧に聞き取り、つらい経験を受け止めます。その上で「あなたは悪くない」「会社が支える」という安心感を与え、心理的安全を確保することが大切です。被害後も定期的な面談やフォローを行い、長期的なストレスや職場への不安が残っていないかを確認しながら、健全な職場復帰を支援しましょう。
また、社内に支援体制がない場合は、オンライン心理面談サービスなどの活用も効果的です。匿名で悩みや本音を話せる環境で、臨床心理士・公認心理師に相談することができ、セルフケアや再発予防に向けたアドバイスまで行われます。詳しくは、パーソル ビジネスプロセスデザイン株式会社が提供する「KATAruru -アバターメンタルケアサービス-」をご覧ください。
カスハラ対策は、方針やマニュアルの策定だけでは現場に浸透しません。従業員が実際に対応できる力を身につけるためには、定期的な研修の実施が不可欠です。
研修ではまず、カスハラの定義や具体例、許容されない行為を全員に周知します。「どのように対応すれば安全か」「どこに相談すればよいか」といった実務上の手順もあわせて確認することが重要です。接客担当者や新入社員には現場で直面しやすい場面を想定した実践的な内容を、管理職には部下が被害を受けた際の適切なサポート方法やエスカレーションの判断基準など、役割に応じた内容で実施することが求められます。
また、ロールプレイングを取り入れた実践型研修を実施するのも効果的です。実際のカスハラ被害を想定した演習により、従業員は頭で理解するだけでなく、体で対応方法を身につけることができます。
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カスハラの手口や形態は時代や社会状況の変化とともに変わるため、一度作成したマニュアルや体制は定期的に見直し、改善し続けることが欠かせません。
特にマニュアルや対応方針は、現場からのフィードバックを積極的に収集し、実態に即した内容へアップデートしましょう。新たなカスハラ事例が発生した場合は、迅速にマニュアルに反映させ、従業員が最新の対応方法を確実に理解できるように周知します。また、他社の事例や法改正の動向にも注意を払い、必要に応じて体制全体に反映させることが重要です。
こうした継続的な見直しにより、企業は変化するカスハラのリスクに柔軟に対応し、従業員が安心してはたらける環境を維持できます。
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カスハラは、従業員の尊厳や心身の健康を脅かすだけでなく、企業の持続的な成長を阻害する深刻な課題です。一方で、カスハラの定義や線引きは曖昧であり、企業ごとに自社の実情に応じた判断基準を明確化することが求められます。
また、2026年10月予定の改策総合推進法の施行により、カスハラ対策は企業の義務となります。従業員の安全を守り、組織の健全性を維持するためには、対応方針の策定やマニュアル整備、相談窓口の設置、メンタルケア体制の構築、研修の実施、そして継続的な見直しと改善が欠かせません。
特に重要なのは、経営層が現場の実態を正しく把握し、従業員に寄り添った対策を講じることです。形だけの対策ではなく「従業員を守る」という姿勢を組織全体で示すことによって、安心してはたらける職場環境を実現し、企業の競争力やブランド価値の向上につなげましょう。
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パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
ワークスデザイン事業本部 サービスデザイン統括部
サービス戦略部部長
吉田 純一郎
大学卒業後、金融機関のコンタクトセンタースタッフとして従事。スーパーバイザー、プロジェクト責任者を経て、2012年に株式会社ハウコム(現パーソルビジネスプロセスデザイン株式会)へ入社。SCC及びナレッジマネジメントの革新的な方法論であるKCSを活用したコンサルテーションサービスなどの企画、開発、提供を担当。得意分野はサポートセンターの実務経験およびHDIが提供しているメソッドを活用した業務改善・組織改善(実績多数)。さらに産業カウンセリングの知識と技術を駆使した“人”へのアプローチは社内外の“カイゼン”を牽引する方法として好評を得ている。