2021年04月07日
2025年11月21日
モラハラ(モラルハラスメント)とは、倫理観や道徳意識といった「モラル」に反した精神的な暴力のことです。家庭や学校、職場など、さまざまな場所で起こる可能性があります。
モラルハラスメントという言葉は、フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌによって広く知られるようになりました。イルゴイエンヌは、職場におけるモラハラを以下のように定義しています。
職場内で繰り返す言葉や態度などによって、人の人格・人権や尊厳を傷つけたり、心身の健康を害したりして、その人が仕事を辞めざるを得ないような状況に追い込むこと、または職場の雰囲気を悪化させること
本記事では、職場で起こるモラハラの意味や具体例、そして企業に求められる予防策・対処法について解説します。
職場のモラハラを防ぐ!実践できるハラスメント対策ガイド【無料】
モラハラは、職場の生産性低下や離職の原因となるだけでなく、企業リスクにもつながります。しかし、「どこから対策すればいいのか分からない」「具体的な対策を考えたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこでパーソルグループでは、ハラスメントのリスクや企業が取るべき予防策についてまとめたガイドブックを公開しています。
職場のモラハラ対策に課題をお持ちの方は、ダウンロードいただき、ご活用ください。
目次
モラハラとはモラルハラスメントの略であり、倫理観や道徳意識に反した精神的な嫌がらせ・いじめのことを指します。セクシュアルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)などと同様に、社会問題とされている代表的なハラスメントのひとつです。
精神的な攻撃が中心となるため、周囲からは見えづらく、問題が深刻化しやすい特徴があります。モラルハラスメントの提唱者であるイルゴイエンヌは、職場におけるモラハラを大きく2つのタイプに分類しています。
1.陰湿な行為の繰り返し
2.権力を利用したモラハラ
ただし、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適切な注意や指導は、モラハラにはあたりません。あくまで度を超えた精神的苦痛を与える行為が問題となります。
モラハラとパワハラは、どちらも相手の尊厳を傷つける許されない行為ですが、その性質には違いがあります。
| モラハラ(モラルハラスメント) | パワハラ(パワーハラスメント) | |
| 主な関係性 | 立場に関係なく発生する(上司、同僚、部下など) | 職務上の優位な立場を利用する(主に上司から部下へ) |
| 主な攻撃手段 | 精神的な暴力 | 精神的・身体的な暴力 |
| 特徴 | 周囲に気づかれにくく、陰湿化しやすい | 立場の利用が明確で、行為が表面化しやすい場合がある |
パワハラが「権力(パワー)を利用したハラスメントであるのに対し、モラハラは「道徳(モラル)」に反した精神的な嫌がらせを指します。
モラハラは立場に関係なく起こり得るため、同僚間や、時には部下から上司に対して行われるケースも含まれます。また、パワハラが殴る・蹴るといった肉体的な攻撃を含むことがあるのに対し、モラハラは精神的な攻撃のみで行われるのが大きな違いです。直接的に叩かれたり殴られたりしなくても、精神的な暴力は人の心に深い傷を残します。
心の傷は目に見えないため、周囲がその深刻さを理解するのは容易ではありません。だからこそ、モラハラは周囲に気づかれないまま陰湿化しやすく、被害者が休職や退職に追い込まれたり、最悪の場合は命に関わるような深刻な事態に発展してしまったりする危険性があります。これこそが、モラハラの難しい点といえるでしょう。
【関連記事】パワハラ(パワーハラスメント)とは?定義や6類型、防止法を解説
モラハラは、行った本人に明確な悪意がなかったとしても、相手に深い心の傷を負わせる危険性があります。職場では、以下のような行為がモラハラに該当するリスクがあります。
業務の遂行を意図的に妨害する行為はモラハラにあたります。例えば、業務に必要な情報をわざと伝えない、嘘の情報を教える、重要な会議や打ち合わせに意図的に参加させないといった行為です。また、本人の能力や経験とかけ離れた遂行不可能な仕事を与えたり、逆に全く仕事を与えず疎外したりするケースもモラハラに含まれます。
業務上の指導として必要な範囲を超え、相手の尊厳や人格を傷つける言動はモラハラに該当します。ほかの従業員がいる前で繰り返し叱責したり、本人にわざと聞こえるように悪口を言ったりするのも、相手を精神的に追い詰める行為です。
特定の人からの挨拶や業務連絡を意図的に無視したり、職場の人間関係から切り離して孤立させたりする行為もモラハラに該当します。あからさまな舌打ちやわざとらしい溜め息で相手を威嚇し、委縮させるような行為も同様です。
業務に関係のない私生活について必要以上に踏み込む行為も、モラハラと見なされる恐れがあります。家族構成や恋愛、休日の過ごし方などを執拗に詮索したり、「なぜ結婚しないの?」「なぜ子供を産まないの?」といった人の価値観に関わる発言をしたりすることは、たとえ世間話のつもりでも相手に精神的苦痛を与えてしまうかもしれません。
モラハラの加害者となりやすい人物には、自己愛が強く、周囲の人間を自分の思い通りに支配したいという欲求が強い傾向が見られます。
こうした特徴を持つ人物が、自分の思い通りにならない人や、自分より目立っている人をターゲットにし、モラハラ行為に及んでしまうケースがあります。

【調査レポート】ハラスメント・危機管理対策の取り組み実態
パーソルグループでは経営・人事1,300名を対象に、危機管理対策やハラスメント対策について、企業が抱える課題や具体的な取り組みについて調査しました。自社のハラスメント対策の検討時にぜひご活用ください。
モラハラが職場に与える影響は深刻です。場合によっては、個人の問題にとどまらず、企業経営全体に関わる事態に発展するリスクもあります。ここでは、モラハラが職場に与える影響を3つ解説します。
被害者は、加害者との接触を避けるため、あるいは心身の健康を害したり会社への信頼を失ったりした結果、退職や転職を余儀なくされるケースがあります。
パーソル総合研究所の「職場のハラスメントについての定量調査」によれば、1年間にハラスメントを理由に離職した人は推計で約86.5万人に上ります。さらに深刻なのは、そのうち約57.3万人が会社にハラスメント被害を伝えることなく退職している点です。これは、被害が表面化せず、会社がハラスメントの存在や実態を把握できていない、いわゆる「暗数化」が生じていることを示しています。
被害者が声を上げずに離職しても、加害者が職場に残れば根本的な解決にはならず、次の被害者が生まれてしまうかもしれません。
モラハラの加害者は、被害者への攻撃を優先するあまり、仕事が疎かになるケースがあります。結果として、チーム全体のパフォーマンスにまで悪影響を及ぼしかねません。
一方の被害者も、精神的な苦痛から仕事への集中力を欠き、パフォーマンスが低下してしまいます。モラハラを受けているにもかかわらず自責の念に駆られ、不要な我慢や努力をしてしまうこともあるでしょう。さらに、直接的な当事者でない従業員も「次は自分がターゲットになるかもしれない」という恐怖から心理的安全性が低下し、チームや企業全体の生産性にも悪影響が及ぼされます。
「職場のハラスメントについての定量調査」でも、ハラスメント被害を受けた従業員は「主観的生産性(業務遂行能力や生産性)」や「幸福度」、「継続就業意向」が明らかに低下する結果が示されています。
すべての企業には「安全配慮義務(従業員に安全な労務を提供する義務)」ならびに「職場環境配慮義務(快適な職場環境を提供する)」があります。モラハラを放置すればこれらの義務違反を問われ、被害者から疎外賠償請求訴訟を起こされるリスクがあります。
また、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)に基づき、対策が不十分と判断された場合は企業名が公表される可能性もあり、社会的信用の失墜は免れません。
さまざまな予防策を講じていても、モラハラが発生してしまった場合には、迅速かつ誠実な対応が求められます。ここでは、職場内でのモラハラの発生時に企業が取るべき対応について解説します。
まずは被害を訴えた相談者から、プライバシーに配慮しつつ詳細な聞き取りを行います。その後、状況を見ながら加害者とされる人物、さらには周囲の第三者からも話を聞き、客観的な事実確認を進めます。
話の食い違いがある場合や裁判になったときに備え、以下のような客観的な証拠の確保も重要です。
なお厚生労働省では、トラブルが起きた際に、労働者・事業主どちらでも利用できる「個別労働紛争解決制度」の利用を推奨しています。「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、職場のトラブル解決をサポートする制度で、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内に設置された「総合労働相談コーナー」が窓口となっています。
モラハラを含めた職場トラブルの相談や、解決のための情報提供を無料で受けられるため、対応に困った際には活用を検討しましょう。
事実確認と並行し、モラハラを受けた被害者に対する精神的なケアを最優先で行いましょう。産業医面談を設定する、必要に応じて療養のための休職を勧める、加害者との物理的な距離を確保するために部署異動を検討するなど、被害者の保護を第一に考えます。
モラハラの事実が確認された場合、就業規則に基づき、加害者の処分を行います。一般的には、過去の判例を参照して懲戒処分が実施されます。懲戒処分には降格や減給、出勤停止、悪質な場合には諭旨解雇や懲戒解雇などの措置が含まれます。加害者と見なされる人物がモラハラの事実を否定した場合は、裁判に発展するケースも考えられます。
なぜモラハラが発生したのか原因を特定し、顧問弁護士なども交えて具体的な再発防止策を検討します。加害者への厳罰化だけでなく、管理職への研修強化やコミュニケーションの活性化など、根本的な組織風土の改善に取り組みます。加害者に対する懲戒処分を厳罰化するのも有効です。
ハラスメント防止の取り組みは、単に問題の発生を防ぐだけでなく、組織全体にポジティブな影響を与えることが判明しています。
厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要」によると、ハラスメントの予防・解決のための取り組みを進めたことによる副次的効果として、以下の点が上位に挙げられています。
これらの結果は、ハラスメント対策が組織全体のエンゲージメントや心理的安全性の向上に直結することを示しています。モラハラのように見えにくい問題に対応するには、日頃からの信頼関係と、何でも言い合えるオープンな職場風土の醸成が欠かせません。
一方で、同調査では、ハラスメント対策を進める上での課題も浮き彫りになっています。取り組みを実施している企業が挙げる課題として、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」(59.6%)が圧倒的に多く、次いで「管理職の意識が低い/理解不足」「発生状況を把握することが困難」(同率23.8%)が続いており、「指導」と「モラハラ」の線引きに悩むケースが多いことがうかがえます。

【専門家監修】判例から学ぶ!ハラスメント&社内トラブル事例集
職場のハラスメントは、企業の成長を阻害する深刻な課題です。本資料では、具体的な判例をもとに「どのような行為がハラスメントと判断されるのか」「企業の体制不備が問われるケースは何か」などを専門家の解説付きで紹介しています。
2020年6月(中小企業は2022年4月)から、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、通称「パワハラ防止法」が改正され、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました。これにより、大企業の事業主にはハラスメントの防止措置が義務付けられています。
モラハラはパワハラと共通する点も多いため、パワハラ防止法と同様の考え方で予防や対策を進めていく必要があります。厚生労働省は、企業が講ずべき措置として以下の4点を挙げています。
企業が講ずべき措置
上記を踏まえて、具体的に企業が取り組むべき施策を紹介します。
【関連記事】パワハラ防止法とは?法律の内容や企業に求められる対応について解説
モラハラ対策で重要なのは「会社はモラハラを断固として許さない」という毅然とした方針を明確にし、それを社内全体で共有することです。
ハラスメントについての規則や懲戒処分などは、就業規則に明記しましょう。会社としての方針を明確にし、継続的に周知・啓発に努めることで、実際にモラハラの発生防止はもちろん、従業員の心理的安全性やエンゲージメント向上にもつながります。
【関連記事】エンゲージメントとは?定義や注目される背景、高めるための施策を解説
モラハラをはじめとする職場のハラスメントについて、従業員が安心して相談できる体制を整備し、全社に周知することも欠かせません。
体制整備のポイント
また、普段から被害を受けた場合に一人で抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に早期に相談をするよう、日頃から従業員に呼びかけておくことも大切です。
モラハラは周囲の従業員が気づくケースもあります。被害を知っていながら見過ごすことも問題の深刻化につながることを周知する必要があります。モラハラが疑われる場面に遭遇した場合には加害者に直接注意を促すか、難しければ相談窓口に連絡するよう、あらかじめ従業員に意識付けしましょう。
モラハラを未然に防ぐためには、会社全体でハラスメントについての理解を深めることも重要です。定期的にハラスメント研修を実施することで、従業員一人ひとりの意識が高まり、職場全体のリテラシー向上につながります。研修は社員だけではなく、パート、アルバイトなども含む全従業員を対象に実施しましょう。
なお、パーソルグループでは長年の人材開発実績をもとに1社1社にあわせた最適なハラスメント研修を提供しています。研修をご検討されている方はお気軽にお問い合わせください。
【関連記事】ハラスメント研修とは?目的や種類・カリキュラム例、ポイントを解説
モラハラは、役職や立場に関係なく、全従業員が加害者にも被害者にもなる可能性があります。精神的な攻撃は目に見えにくく、気づいたときにはすでに深刻な事態に陥っているケースも少なくありません。従業員同士のコミュニケーションに問題はないか、相談窓口が形骸化せず気兼ねなく利用できる体制が整備されているかなどを常にチェックし、モラハラが起きない、そして許さない職場環境づくりを進めていきましょう。
職場のモラハラを防ぐ!実践できるハラスメント対策ガイド【無料】
モラハラは、職場の生産性低下や離職の原因となるだけでなく、企業リスクにもつながります。しかし、「どこから対策すればいいのか分からない」「具体的な対策を考えたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこでパーソルグループでは、ハラスメントのリスクや企業が取るべき予防策について、まとめたガイドブックを公開しています。
職場のモラハラ対策に課題をお持ちの方は、ダウンロードいただき、ご活用ください。
A.すべての従業員が「どのような行為がモラハラにあたるか」という正しい知識と、「モラハラは絶対に許さない」という共通認識を持つことです。研修などを通して知識を共有するとともに、何かあった際に誰もがためらわずに相談できる窓口が機能している状態を作り、維持しましょう。
ハラスメント対策の理解を深める方法や研修の学習テーマについては、ガイドブックでまとめて紹介しています。ガイドブックは、以下リンクよりどなたでも無料でダウンロードいただけます。
A.モラハラとパワハラの大きな違いは「加害者と被害者の関係性」「暴力の内容」の2点です。パワハラは「業務上の優位な立場」を利用したハラスメントであるのに対し、モラハラは、同僚や部下など立場に関係なく起こり得ます。
また、パワハラが肉体的な暴力を含むことがあるのに対し、モラハラは精神的な暴力で、肉体的な暴力は伴わないのが一般的です。目に見えづらい暴力だからこそ、モラハラは周囲が気づきにくい側面があります。
>> モラハラとパワハラの違い