2021年04月07日
2024年05月01日
モラハラとは「モラルハラスメント」のことで、フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱し、広く知られるようになりました。
モラハラは、家庭、学校、職場などさまざまな場所で起こり得ます。では、職場におけるモラハラはどのように定義されているのでしょうか。イルゴイエンヌは、職場におけるモラハラを以下のように定義しています。
職場内で繰り返す言葉や態度などによって、人の人格・人権や尊厳を傷つけたり、心身の健康を害したりして、その人が仕事を辞めざるを得ないような状況に追い込むこと、または職場の雰囲気を悪化させること
本記事では職場で起こるモラハラの意味や具体例、さらには予防策・対処法について解説します。また、よりハラスメント対策について知りたい方は、以下の資料も参考にしてください。
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「モラル」とは倫理観や道徳意識のことです。「ハラスメント」とは、いやがらせやいじめを指し、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)などが、ハラスメントとして広く知られています。
つまり、モラハラは「社会における善悪・正邪の判断をするときの一般的な決まりごとである倫理、道徳に反した」「人として守るべきルールに反した」いやがらせやいじめのことです。
イルゴイエンヌは、職場におけるモラハラを大きく2タイプに分類しています。
1.陰湿な行為の繰り返し
2.権力を利用したモラハラ
業務を円滑かつ安全に進める上で、注意や叱責などは必要なことです。必要かつ相当な範囲で行われる、指示として適正な注意や一時的な叱責は、当然、モラハラにはあたりません。ただし、威圧的な態度や度を越した叱責が継続的に行われた場合は、モラハラと見なされることがあります。
厚生労働省の定義によると、パワーハラスメント(パワハラ)とは「優越的な関係に基づいて行われる、業務の適正な範囲を超えた、身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること」を指します。
パワハラとモラハラには、共通する部分も多くあります。異なるのは、加害者と被害者の関係性、暴力の内容の2点です。
パワハラは、パワーバランスが上の者が、下の者に立場を利用して行うハラスメントです。モラハラは、そうしたケースに加え、同僚や部下など立場が同等もしくは下の者から行われることもあります。
また、パワハラには肉体的な暴力も含まれますが、モラハラは精神的な暴力で、肉体的な暴力は用いません。目に見えづらい暴力だからこそ、モラハラは周囲がその発生に気づきづらいという側面があります。
以下のような言葉、態度は、本人に悪意がなくても、モラハラとなる可能性が高いといえます。
モラハラの例
直接的に叩かれたり殴られたりしなくても、精神的な暴力を振るわれると、人は心に傷を負います。モラハラは、初めは精神的な苦痛だけですが、その蓄積により肉体にも影響が出始めます。
心の傷は目に見えないため、心の傷を負ったのか、その深さがどのくらいなのか、周囲が本人と同様に理解するのは容易ではありません。だからこそ、被害が毎日のように継続したり、場合によってはエスカレートしても分かりづらく、周りが気づいたときには被害を受けた社員が病気となって休職や退職してしまったり、最悪の場合には命を落とすなどの深刻な問題へと発展してしまいます。これが、モラハラの難しいところです。
モラハラの加害者となる人物には、自己愛が強い、周囲の人間を支配したがるという特徴が見られます。
加害者に見られる特徴
被害者となる人物は、他人の言うことをうのみにしやすい、他人に依存しやすいなどの特徴が見られることもありますが、必ずしもそうした人ばかりがターゲットになるわけではありません。たまたま加害者よりも目立っている、加害者が期待した反応を示さないなど、加害者にとって都合が悪い状況をつくったことで、被害者となってしまうこともあります。
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モラハラが職場に与える影響は決して少なくありません。場合によっては、企業経営に関わる事態に発展することもあるでしょう。ここでは、モラハラが職場に与える影響を3つ解説します。
モラハラの被害が激しいと、加害者との接触を避けるため、あるいは仕事への意欲や会社への信頼を失ったため退職・転職を考えるケースも珍しくありません。ただ、被害者が離職しても加害者が残っていれば、根本的な解決にはつながらず、次の被害者が生まれる可能性もあるでしょう。
また、モラハラの被害を直接受けていなくても、職場の雰囲気が悪くなり結果的に離職者が増えることも考えられます。その結果、人材採用コストの上昇やサービスの質低下などの問題が発生することもあるでしょう。
モラハラの加害者は、被害者を攻撃することを優先するあまり、仕事を円滑に進行させることを考えないこともあります。その結果、チーム全体のパフォーマンスにまで悪影響を及ぼすことが珍しくありません。
一方被害者も、モラハラを受けているにもかかわらず自責の念に駆られ、不要な我慢や努力をしてしまうこともあるでしょう。さらに、直接的な当事者でない従業員も、今度は自分もモラハラを受けるのではないかと恐れ、心理的安全性が低下するリスクがあります。
その結果、仕事への集中力の欠如やミスの増加など企業全体の生産性に影響を与えるリスクは無視できません。
企業は、安全配慮義務(従業員に安全な労務を提供する義務)と、職場環境配慮義務(快適な職場環境を提供する)を負っています。よって、企業がモラハラ対策を整備しないことやモラハラを放置する行為を理由に、損害賠償責任や民法上の使用者責任を問うため、従業員が職場を訴えるケースもあるでしょう。
また、ハラスメント防止法は、それ自体には罰則はありません。ただ、企業のモラハラ対策が不適切と判断されると、企業名が公表されることがあります。これにより、築き上げてきたブランドが失墜するなど企業イメージにも影響が出かねません。
さまざまな予防策を取っても、モラハラが起こってしまったときにはどのように対処したら良いのでしょうか。
重要なのは、被害者、加害者、そして被害に遭っている場面を見かけた第三者それぞれの証言です。まずは、相談してきた被害者、あるいは第三者から聞き取りを行い、状況を見ながら加害者にも聞き取りを行いましょう。
話の食い違いがあったとき、モラハラがあったことを判断する材料となるのが、客観的な証拠です。裁判となったときにも必要となりますので、被害者や第三者には、以下のような証拠があるか確認したり、証拠として残したりしておくように働きかけましょう。
厚生労働省では、トラブルが起きた際には、労働者・事業主どちらでも利用することができる「個別労働紛争解決制度」の利用を推奨しています。「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、職場のトラブル解決のためのサポートが受けられる制度で、問い合わせや申し込み窓口として各都道府県労働局または全国の労働基準監督署内に「総合労働相談コーナー」が設けられています。
モラハラを含めた職場トラブルに関する相談、解決のための情報提供を無料で受けることができるので、困ったときにはぜひ利用しましょう。
2020年6月に、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、通称「パワハラ防止法」が改正されました。これにより職場におけるハラスメント防止対策が強化され、大企業の事業主にはハラスメントの防止措置が義務付けられました。2022年4月より中小企業も義務化の対象となりました。
モラハラはパワハラと通ずるところが多いので、パワハラと同様の対策で予防、対策にあたりましょう。厚生労働省は、企業が講ずべき措置として4つのポイントを挙げられています。
企業が講ずべき措置
上記を踏まえ、具体的に企業が取り組むべき施策を紹介します。
モラハラ対策で最も大事なのは、モラハラは断固として許さないという考えを社内に浸透させることです。
就業規則にハラスメントについての規則や懲戒処分についての言及を追加したり、以下のようなポイントをおさえた研修を実施したりすることで「全社員がモラハラに対しての知識を持ち、何かあった際にすぐに対処することができる状態」を作りましょう。
なお、パーソルではハラスメント防止研修を実施しています。その中ではモラルハラスメント研修もあるので、モラハラに関するリテラシー向上強化に取り組みたい場合は、活用をご検討ください。
モラハラをはじめ、職場のハラスメントについて相談できる体制を整備し、全社に周知しましょう。
体制整備のポイント
また、普段から被害を受けたときには一人で我慢せず、信頼できる人や相談窓口に相談をすることを推奨しておくと、相談をしてもらいやすくなるでしょう。
モラハラに周囲が気づくこともあります。被害を知っていながら見過ごすことも、モラハラの加害の一つであること、モラハラと思われる場面に遭遇した場合には加害者に直接注意を促すか、難しければ相談窓口に助力を求めるよう、普段から周知しておきましょう。
モラハラは、役職や立場に関係なく、非正規社員を含む、職場における全員が加害者・被害者となる可能性のあるハラスメントです。職場全体を見渡して、社員のコミュニケーションに問題はないか、相談窓口が気兼ねなく利用できる体制がきちんと整備されているかなどをチェックし、モラハラが起きない環境づくりを行っていきましょう。
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近年、職場のハラスメント問題が社会問題となっています。「職場でハラスメント対策を強化したいが、何をすればいいか分からない」という悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
【調査レポートから読み解く、ハラスメント対策の4つの観点】では、職場におけるハラスメントの実態と原因、具体的な対策について詳しく解説しています。
モラハラ対策をはじめ、ハラスメント対策に取り組む企業担当者の方はぜひご活用ください。
A.全ての従業員が正しい知識や共通認識を持つことです。研修実施などを通して「全員がモラハラに対しての知識を持ち、何かあった際にすぐに対処することができる状態」を作り上げておきましょう。
ハラスメント対策の理解を深める方法や研修の学習テーマについては、ガイドブックでまとめて紹介しています。ガイドブックは、以下リンクよりどなたでも無料でダウンロードいただけます。
>>調査レポートから読み解くハラスメント対策の4つの観点
A.モラハラとパワハラの大きな違いは「加害者と被害者の関係性」「暴力の内容」の2点です。パワハラは、パワーバランスが上の者が、下の者に立場を利用して行うハラスメントです。モラハラは、同僚や部下など立場が同等もしくは下の者から行われることもあります。また、パワハラには肉体的な暴力も含まれますが、モラハラは精神的な暴力で、肉体的な暴力は用いません。目に見えづらい暴力だからこそ、モラハラは周囲がその発生に気づきづらいという側面があります。
>> モラハラとパワハラの違い