2025年09月09日
階層別研修とは、社員を等級や役職などで区切り、各階層で求められる役割を果たすために必要な能力の保持・発揮を目的とした研修のことを意味します。
企業の持続的な成長には、社員の能力開発が不可欠であり、様々な研修が実施されています。しかし、「社員の成長が組織の成果に結びつかない」「研修が一時的なイベントで終わり、現場で活かされない」といった課題を抱える人事担当の方は少なくありません。このような悩みは場当たり的な研修ではなく、会社の未来を見据えた体系的な人材育成戦略を構築することで解決しやすくなります。
本記事では、階層別研修の本質から具体的な設計方法、成功のポイントまでを網羅的に解説します。
【お役立ち資料】成果につながる階層別研修を設計するには?
研修を導入しても「現場で活かされない」「階層ごとの育成課題が解決されない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。
本資料「階層別研修 設計ガイドブック 成果につながる育成設計」では、階層別研修の設計ポイントやカリキュラム例、研修体系図の作成手順と例などをわかりやすく解説しています。自社に合った研修設計を進めたいご担当者さまは、ぜひご活用ください。
目次
階層別研修とは、社員を等級や役職、勤続年数といった階層で区切り、それぞれの階層で期待される役割や責任を果たすために必要な能力・スキルを身につけ、現場で発揮できるように導くための研修のことです。
新入社員や若手社員、中堅社員、管理職、経営層など、階層ごとに組織内で求められる役割や期待は異なります。階層別研修は、業務上でそれぞれに求められる役割を発揮し、期待に応えられるよう、計画的かつ体系的に能力開発を支援することを目的としています。
人材育成策は一般的にOJT、OFF-JT、SDという3つに分類されます。まずはOJT、OFF-JT、SDの違いについて見ていきましょう。
| 育成手法 | 概要 | 具体例 |
|
OJT(On-the-Job Training) |
職場での実務を通じて、上司や先輩が部下・後輩に必要なマインド・知識・スキルなどを指導する。 | ・指導担当者による業務指導 ・目標管理制度(MBO)におけるフィードバック |
| OFF-JT(Off-the-Job Training) | 職場を離れた場所で行われる研修やワークショップなど。特定のテーマについて集中的に学ぶ。 | ・階層別研修 ・スキル別研修(ロジカルシンキング、語学など) |
| SD (Self-Development) | 社員の自発的な学習(自己啓発)を会社が支援する仕組み。 | ・書籍による学習 ・eラーニングによる学習 ・資格取得 ・公開セミナーへの参加 |
階層別研修は、OFF-JTに含まれる研修のひとつであり、主に特定階層をターゲットとした「階層別教育」と、複数職種や役職・階層を対象とする「共通教育(全社共通教育含む)」に大別されます。ただし、「共通教育(全社共通教育含む)」は必ずしもOFF-JTに限られるものではなく、OJTを通じて理念やビジョンを浸透させるなど、日常業務を通じた取り組みも含まれます。
なお、全社共通教育と階層別教育の2つは包含関係にあり、対象者が異なるだけで目的は同じく「会社が目指す状態を実現すること」にあります。これらの教育の特徴は、それぞれ以下の通りです。
| 全社共通教育 | コンプライアンスや情報セキュリティ、企業理念の浸透など、全社員が共通して身につけるべき知識や価値観を学ぶこと |
|---|---|
| 階層別教育 | 特定の階層の社員を対象として、その階層特有の役割遂行に必要なスキルを学ぶこと |
例えば「コミュニケーション」というテーマであれば、全社共通教育としては「円滑な人間関係を築くための基本」を学びます。一方で管理職向けの階層別研修になると、「部下のモチベーションを高めるためのコーチング・フィードバック」といった、より対象を絞った専門的な内容になります。このように全社共通の土台の上に、各階層の専門性を積み上げていくといったイメージです。
OJT・OFF-JT・SDといった3つの人材育成策は、「会社が目指す状態を実現する」という共通の目的に向けて相互補完の関係にあり、連動しています。OFF-JTにおける階層別研修で学んだマネジメント理論を現場のOJTで実践し、上司からフィードバックを受け、さらに不足している知識をSD(自己啓発)で補うといったように、組み合わせによって学習効果が最大化されるのです。
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次に、階層別研修を通じて社員に身につけてほしい・発揮してほしい能力の着眼点を紹介します。 人の能力を見る軸として参考になるモデルは、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」と、OECD(経済協力開発機構)のDeSeCoにおける「キー・コンピテンシー」などがあります。
上図の通り、社会人基礎力は「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームではたらく力(チームワーク)」の3つから構成されます。これらの力は、多様な人々と仕事をしていくために欠かせない基礎的な力と定義されています。また、キー・コンピテンシーはさらに以下のように能力を整理できます。
| 認知的能力 | 情報を取得・理解・処理して応答するための思考プロセスを指し、「知識」「思考力」「経験」に分解される。知識をもとにした考えや行動が深い経験や価値ある体験を生み出し、それらが新たな知識や広く深く考える力へとつながる、というサイクルを回すことが重要。 |
|---|---|
| 人間関係形成能力 | 価値観や考え方の異なる他者を理解・尊重し、目標に向かって協働する能力。この能力を発揮するには、自己理解や他者理解に加え、効果的な他者対応に関する高度なコミュニケーションが求められる。 |
| ジリツ的行動能力 | 目標を設定したり達成したりするために、自らの意思で主体的に行動する能力。この能力を発揮するには、自身に設定されている役割や周囲からの期待などを知ることに加え、自らの意思(希望)を持つことが求められる。ここで表す「ジリツ」には、自律と自立の両方の意味を含んでいる。 |
階層別研修で扱う内容は、突き詰めればこれらの能力要素の取得と発揮に行き着きます。自社の人事制度における等級定義や評価項目が、これらの能力のどの部分に対応しているのかを紐付けてみることで、研修で何をすべきかがより明確になるでしょう。
そして、これらの能力の根底に据えられるものが、アリストテレスの哲学に由来する「共通善」だと考えられます。これは「より善く生きる」ための倫理観や、社会全体にとって善いことは何かを考える視点を指します。いくら高い能力を持っていても、それが私利私欲や不正のために使われては意味がありません。企業のコンプライアンス遵守やCSR活動にも通じる組織人として、そして一人の人間として持つべき土台となる考え方です。
なお、能力とスキルは一般的に混同されがちですが、ここでは定義が明確に異なるものとして取り扱います。能力は自分が持っている潜在的な力や、特定のことを成し遂げるためのスキル全体のことです。一方でスキルは特定の作業や課題をこなすために必要な技術や知識を意味します。位置関係としては、能力の下にスキルが存在しています。そのため、特定の能力を高めるためにその能力を構成するスキルを学ぶという設計が適切です。
会社のミッションやビジョンを実現する、中期経営計画を達成することを目的に、社員の能力開発や組織開発を計画的・体系的に行うわけですが、それら施策を整理・統合したものが、教育体系と呼ばれるものです。今回は、この教育体系の一部である「OFF-JTの研修体系」ついて扱います。
OFF-JTに限定した研修体系の多くは、「求められる役割を発揮するために学ぶべき内容」と「上位階層を目指すための準備」という2つの観点で施策が設定されています。この研修体系があることで、経営層や人事部は育成施策の全体像を容易に把握することができ、目的に即した計画的で体系的な人材育成を推進しやすくなります。
社員にとっては、役割発揮に必要な能力の学習機会・手段が提示されていることから、成長に対する安心感を得ることができます。その上司は、研修体系に記載されている情報をもとに部下へのかかわり方を考えたり、OJT・SDと組み合わせた指導・提案を実施したりできるため、部下の能力開発を効果的に進められます。
難しく思える体系図の作成ですが、以下4つのStepで考えると理解が進みます。簡略化した内容ではありますが、参考にしてみてください。

まずは体系図の作成目的を再確認し、検討範囲を決めます。なお、一般的な教育体系には階層別研修やスキル研修、全社教育などのOFF-JTだけでなく、SDも含まれます。OFF-JTに範囲を絞る場合は、以下についてしっかり検討しましょう。
社員が見て分かりやすい形式にするのであれば、表形式で整理することをおすすめします。一般的には、縦軸に社内等級(階層)を設定し、横軸にはその企業固有の軸を設定します。企業固有の軸としては、例えば「自社開催の研修」や「グループ全体で開催される研修」などです。また、研修体系図の横軸は、会社の状況に合わせて『役職別』や『研修の種類別』といった区分を使うことで、社員にとってより分かりやすく多角的な情報を示すことができます。
一般的な人事制度資料には、等級・役職ごとの定義や評価項目と判断スケール(S,A,B,C,Dなど)が記載されています。そのような定義に関する情報に加えて、経営層や対象層の上司から得た期待や、対象層のハイパフォーマーから得た思考・行動特性などを加味し、対象層に求められる要件を確定させます。
これにより、現在のビジネス環境や組織の状況を反映した「未来を意識した今求められている要件」を明確にすることが可能です。また、完成した体系図に対する納得度が高まることで、現場での活用も期待できます。
等級や役職ごとに「未来を意識した今求められている要件」が明らかになれば、「それをどのように身につけるか」「どのように発揮するか」について考えられるようになります。これらをStep1のポリシーに沿って検討し、研修名や参加条件などの必要情報を図(表)形式で分かりやすく整理していきます。 なお、 図(表)にはそのまま載せない情報となりますが、この段階で以下についても考えておきましょう。
完成した体系図を多くの場面で使ってもらうためにも、視覚的に情報が捉えられるよう色分けしたり、フォントサイズなどに気を配ったりするとより効果的です。
多くの企業が階層別研修を導入する理由として、「ミッション・ビジョンの実現や中期経営計画を達成するための人的・組織的基盤形成」であることは前述の通りです。ここでは、目的や期待効果について再整理します。
研修の実施目的として、「社員の役割認識や能力向上を図るため」といった話をよく耳にしますが、それ以外にも重要な目的があります。具体的には、企業理念やビジョン、価値観などを浸透(共感レベルまで高める)させることで、求める企業文化を醸成し、経営戦略・戦術の実行度合いを集団として高めることです。
経営戦略・戦術の実行度合いを高めるためには、多様性を受入れ活かしながら、同じ目的・目標を持つ者としての凝集性を高めるといった状態を創り上げることが求められます。
役割認識や能力向上に加えて、価値観の浸透や企業文化の醸成といった効果を期待して階層別研修を設計・実施する。
研修の企画者が強く意識していることは、研修を通して「階層ごとの役割と責任を明確化すると同時に、各自のパフォーマンスを最大化すること」であると思います。自身の役割を理解し、ミッションを高いレベルで遂行(QCD基準など)するために必要となるスキルを習得・実行できることは、組織全体のパフォーマンスを高めるために必須要件だといえます。
この考えにひとつ追加すると、「今この時点」に加えて「これから」といった“未来の視点”を加味して研修を設計することです。上位等級・役職を期待する選抜者のみに別途研修を行うこともありますが、社員にキャリアビジョンを描かせるためにも、先々を意識した内容を盛り込むと効果的です。
現等級・役職に求められる役割認識と職務遂行スキルの習得に限定するのではなく、次のステージを意識した内容を盛り込むことでキャリアを意識させる。
会社が社員の能力向上の場を提供することは、会社からの「大切な存在である」「期待している」といったメッセージでもあります。「この会社は自分の成長を支援してくれる」と社員が感じられれば、仕事への熱意や貢献意欲が高まり、エンゲージメント向上に大きく寄与します。
また、「同階層間のネットワーク形成や上司との交流」を研修目的に盛り込み、施策を採り入れることも高い効果が見込めます。階層別研修は能力開発へ意識がいきがちですが、対象者の感情にも目を向けることで社員の満足度を高め、優秀な人材の定着・離職防止に直結する研修となります。
社員の能力だけでなく感情を捉えて施策を設計することで、エンゲージメント向上・離職防止といった効果もねらう。
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ここでは、効果的な研修にするためのカリキュラム設計のポイントを紹介します。
社員(研修受講者)は、人事制度に記載されている役割だけを意識・行動していればよいわけではありません。 中期経営計画を達成するには、自社ビジネスを外部環境に適応させていかなければなりませんし、そのためには個々人が「役割を超えた期待」に応えることが重要です。
研修では受講者の仕事に対するマインドが変わるように、研修内容(What)や手段(How)だけでなく、会社が目指している状態(定量・定性)についても明確に伝えましょう。そして、それを実現するにあたって対象者にどうあってほしいか(Why)を関連づけて伝え、理解してもらうことも重要です。これは、以下のようなサイモン・シネックが提唱する「ゴールデンサークル理論」にならっています。そうすることで学びの質は大きく変わり、受講者の当事者意識を高め、学習効果を最大化できるのです。

人間というものは、自分で思っているほど自分のことを知らないものです。自分の特徴や強みなどを適切に把握していなければ、自身の成長方向性が定まりません。
自己理解を深めるには、セルフコーチングなどの技法を通して自己探求をしつつ、上司や同僚、後輩などといった他者から客観的なフィードバックを得ることが効果的です。そうすることで、「気づけていない自分(盲点の窓)」を発見することができます。
研修では自身の関与者から成長に寄与するフィードバックをもらうことなどがなされますが、重要なのはそれを本人が受け止められる状態をつくることです。自身への助言を真摯に受け止めることで対象者の視座が高まり、視野も広がります。
また、手法の選定も重要です。知識習得が目的ならオンライン、一体感の醸成や高度なスキル習得が目的なら対面研修が適しているなど、目的によって使い分ける視点を持ちましょう。
ロジャー・スペリーの研究で知られているように、人間には感覚や共感を重視する「右脳型」の人もいれば、論理的思考が得意な「左脳型」の人もいます。 これは受講者も同じです。受講者を画一的に捉えて研修内容を構築するのではなく、両方のタイプへ効果的に伝わるような設計をすることが重要です。
例えば左脳系の方々に対しては、気持ち・感情の話や体験談ばかりだと響きにくく、一方で右脳系の方々に対しては定義や論理・構造の話ばかりだと関心を持ってもらえず学びが深まりません。 受講者の特性に合わせてアプローチを変えること。そしてひとつの研修の中に両方のアプローチをバランス良く盛り込むことで、より多くの受講者から共感が得られ、腹落ちを促すことが期待できるのです。

「研修で良い話を聞いた」で終わらせないためには、研修を「点」ではなく「線(つながり)」で捉える設計が重要です。人材育成における「70:20:10の法則(成長の7割は経験から、2割は他者から、1割は研修から得られる)」にもあるように、学びの定着には実践が欠かせません。
研修の場で学んだ内容を職場に戻って実践する期間を計画段階から設け、自らの行動による気づきや学びを中間課題として整理し、ふり返りの場で共有することが効果的です。 ふり返りの場としては、例えばアクションラーニングの手法を取り入れ、以下のようなサイクルを設計します。
研修(1日目)→ 職場での実践期間(1.5~2カ月)→ ふり返り研修(2日目)
上記の実践期間中に上司や同僚、後輩などを巻き込み、フィードバックをもらう仕組みを作ることも極めて効果的です。研修を計画する段階で、この「学びを活かすための場」までセットで設計することが、行動変容を起こすための鍵となります。
より良い施策を検討するには、研修効果を評価・測定し、改善ポイントを見出す必要があります。有名な効果測定のモデルとしては、経営学者のドナルド・カークパトリックが提唱した「4段階評価モデル」が挙げられます。

| レベル | 評価内容 | 測定方法の例 |
| レベル1:反応(Reaction) | 受講者が研修に満足したか | 研修後の満足度アンケート |
| レベル2:学習(Learning) | 知識・スキル・態度を習得できたか | 理解度テスト、レポート提出 |
| レベル3:行動(Behavior) | 学習したことが職場で実践されているか | 本人・上司・同僚への行動変容アンケート、360度評価 |
| レベル4:結果(Results) | 行動変容が組織の業績に貢献したか | 生産性向上、売上増加、離職率低下などのKPI測定 |
経営学者のジャック・フィリップスはこれに「レベル5:ROI(Return on Investment)」を加え、研修コストに対する金銭的なリターンを測定するモデルを提唱しています。しかし、研修効果だけを抽出して数値化するのは極めて困難です。
現実的には、多くの企業で「レベル3:行動」を測定することがひとつのゴールとなっています。研修から数カ月後に、本人や上司などの関係者にアンケートを行い、「研修で学んだ○○を実践していますか」「○○さんの行動に変化は見られますか」といった形で測定します。
ただし、回答には評価者のバイアス(確証バイアス、利用可能性ヒューリスティックなど)が反映されるため、結果数値は参考とするのがよいでしょう。 測定しようとする姿勢そのものが、研修の価値を高めることにつながります。

階層別研修を導入しているものの、現場の課題解決につながらないと感じていませんか? 本資料では、成果につながる研修設計のポイントやカリキュラム例をわかりやすく解説しています。
ここでは、階層別に行われる研修の目的や実施内容、開催形式の例を紹介します。なお、以下で紹介している内容は一般的なモデルなので、会社方針や課題に合わせて内容をカスタマイズしてください。
新卒で入社した新入社員には、まず社会人としての基礎を習得し、自社の文化や仕事の進め方などを理解してもらう必要があります。
社会人としての基礎を徹底的に学び、同期との連帯を深めて早期離職を防ぐとともに、会社の文化や理念への理解を深めることでスムーズに職場へ適応することを目的としています。
新入社員を対象とする研修では、以下のようなスキルを習得します。
座学による知識習得とロールプレイングによる実践練習を組み合わせます。また、配属後はOJTと連動させ、定期的なフォローアップ研修で知識とスキルの定着を確認すると同時に、同期同士のつながりをより深めてもらいます。
【関連記事】新入社員研修の内容とプログラム例を紹介!目的や成功のポイントも
入社から数年が経過した若手社員には、これまでに培った経験を活かし、主体的に考えて行動してもらうことが期待されます。
研修を通じて現在の職務遂行能力に自信を持ってもらうと同時に、今後は主体性を発揮し、周りを巻き込みながらより高度で複雑な仕事に対応できる人材になることを目的とします。
若手社員を対象とする研修では、以下のようなスキルを習得します。
ワークショップ形式で行う実践的な演習や、チームでのプロジェクト遂行を通じて、主体性と協調性を養います。また、自身のキャリアについて考えるキャリアデザイン研修も効果的です。
【関連記事】若手社員研修におすすめプログラム10選!目的や実施のポイント
豊富な経験と知識を持つ中堅社員には、担当業務を高いレベルで遂行するだけでなく、管理職を補佐する役割も期待されます。
業務改善のスキルや後輩の指導スキルを習得・向上させ、職場の業務や職場運営の適切な進行をサポートできる存在になることを目的とします。
中堅社員を対象とする研修では、以下のようなスキルを習得します。
実務を扱った課題解決やケーススタディによる意思決定訓練、後輩指導のロールプレイング、部門横断プロジェクトの企画・実行など、より実践的な内容に取り組みます。
【関連記事】中堅社員研修におすすめのテーマとは?成長を促す5つのポイントも
組織運営の責任者である管理職には、経営と現場をつなぐ重要な架け橋としての役割が期待されます。
経営目標を自身が管理監督する組織の具体的な目標に落とし込み、グループのチーム化や動機づけ、部下育成を通じて恒常的に高いパフォーマンスが発揮できる状態をつくることを目的とします。
新任管理職(課長・部長)を対象とする研修では、以下のようなスキルを習得します。
自部署・チームのビジョン設定や目標達成に向けた計画立案のワークショップ。演習やケースなどを活用して学ぶマネジメントやリーダーシップなど、「職場実践の準備」として位置づけた内容を数多く採り入れます。この階層に対しては、外部コーチによる個別フォローアップなども効果的です。
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企業の舵取りを担う経営層(役員)には、会社の未来を切り拓くための戦略的な意思決定と、それを実現するための強力なリーダーシップが期待されます。
自社のビジョンや成長戦略を立案し、実行に向けて社内へ浸透させること。また、環境変化に即応できる柔軟でしなやかな組織文化を形成することを目的とします。
経営層(役員)を対象とする研修では、以下のようなスキルを習得します。
外部の専門家を招いた講演や自社を題材にした市場分析、座学やケース学習から得た視点を使った自社経営課題についての討議だけでなく、他企業の役員と共に学ぶ形式を採用するケースもあります。
階層別研修を成功に導くために、心に留めておきたい2つの重要な姿勢について解説します。
外部からの刺激にあたる研修は、本人の成長を促すきっかけに過ぎません。重要なのは、受けた刺激を本人が適切に捉え(納得・共感)、実践を通して自分のものとすることです。さらに、その行動を通じて新たな気づきや学びを得ることにあります。そのためには、上司が研修受講者に対し目的に即した形で関わる(支援を含む)ことが求められます。流れを時系列で整理すると、以下のようになります。
| 研修前 | 事務局や受講者本人から研修内容を事前に上司へ共有し、上司に期待する役割を伝える。また、上司から研修受講者本人へ期待する役割を伝えてもらう |
|---|---|
| 研修直後 | 1on1で、研修での学びや実践計画(上司から受けたい支援を含む)について話し合う |
| それ以降 | 日々の活動や状況を上司が適切に把握し、必要に応じた支援を行う |
このように、研修事務局と受講者、そして現場の上司が三位一体となって取り組むことが、研修の効果を飛躍的に高めます。
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ビジネス環境や自社の事業フェーズ、社員の価値観は刻々と変化しています。一度作った研修体系や施策が、永遠に有効である保証はどこにもありません。
目的・目標に即した教育体系を運用するためには、研修後のアンケートや効果測定の結果を分析し、受講者の声や現場の課題を真摯に受け止め、研修体系に反映することが求められます。研修体系や個々の施策(研修)に対するPDCAサイクルを回し続けることで、「会社のミッションやビジョンの実現」、「中期経営計画の達成」が可能な人的・組織的基盤が形成されるのです。
階層別研修は、会社のビジョンや経営戦略を実現するための「戦略的投資」といえます。各研修の設計は、会社方針や目標を達成するために必要となる組織・人材の能力的更新という観点で、計画的かつ体系的に実施することが重要です。
またカリキュラムは知識の習得だけでなく、自己認知を深め、行動変容を促す仕掛けが欠かせません。現場での実践を通して自ら学んだり、上司から支援を受けたりする(OJT)ことで、より大きな効果を生み出します。
社員一人ひとりの成長を企業の成長へとつなげ、未来を創造するための強力なエンジンとして、階層別研修を実践していきましょう。
【お役立ち資料】成果を生み出す研修設計で、組織を次のステージへ
研修は実施することが目的ではありません。組織の成長につながる研修を設計することで、人材育成の効果は大きく変わります。
本資料「階層別研修 設計ガイドブック 成果につながる育成設計」では、階層別研修の設計ポイントやカリキュラム例、研修体系図の作成手順と例などをわかりやすく解説しています。自社に合った研修設計を進めたいご担当者さまは、ぜひご活用ください。

株式会社パーソル総合研究所
ラーニング事業本部 組織力強化コンサルティング部
組織力強化コンサルティング1グループ
内田 智之
複数のコンサルティングファームに在籍し、組織・人事コンサルティング(組織風土変革、人事制度設計、教育体系策定、教育システムの導入など)や組織診断、各種研修業務 に従事しながら新サービスや変革技術の開発を行ってきた。専門は組織行動論であり、その源流にあたる心理学の各種理論を取り入れた組織や個人の変革・成長支援を強みとしている。
また、データ分析にも強く、多変量解析を駆使した現状分析なども手掛けている。所属企業内に組織開発研究所(現在は閉鎖)を立ち上げ、主席研究員として運営にも携わってきた経験を持っており、上記業務・活動を推進する一方で、自らのビジネス領域に関係する調査・研究を行い、研究結果の現場活用にも取り組んでいる。