バックキャスティングとは?フォアキャスティングとの違いや活用方法を解説

2030年までに持続可能な社会を目指すために持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が掲げられていることは、多くの方がご存じでしょう。未来の理想的な姿を想像し、逆算して現在の行動に落とし込む手法は国際社会に加え、ビジネスでも用いられています。そのひとつが「バックキャスティング」です。

バックキャスティングとは、未来の理想的な状態から逆算して現在の行動を計画するフレームワークです。不確実性が高く、ビジネス環境が急速に変化する現代では、未来の予測は簡単なことではありません。そのため、現在を起点に行動計画を立てる従来の計画手法を用いても、効果的な戦略立案の難度は高いといえるでしょう。

バックキャスティングは、中長期的なビジョンを掲げながら、とるべき行動やステップを明確にすることで、組織が目標達成に向けて進むための強力な手法になり得ます。

本記事では、バックキャスティングの基本的な概念や、現代において求められている背景、ビジネスに取り入れるメリットなどについて詳しく解説します。

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目次

バックキャスティングとは

バックキャスティング(バックキャスト)とは、目標やビジョンを設定し、そこから逆算して行動計画を立てるシナリオ手法のフレームワークです。目標達成のために必要なステップや条件を明確にし、どのように行動すべきか、考えを巡らせます。

バックキャスティングは、具体的な目標が定められているプロジェクト管理や戦略策定などにおいて有効です。計画立案にバックキャスティングの思考を取り入れることで、目標達成のためのロードマップが明確になり、マイルストーンの設定によって常に進捗確認をしながら行動できます。

フォアキャスティングとの違い

未来からの逆算思考であるバックキャスティングに対して、現在を起点に未来を予測する手法が「フォアキャスティング」です。フォーキャスティング、フォーキャストとも呼ばれます。

目標に至るプロセスを逆算するバックキャスティングとは対照的に、現在の延長線上にある未来を予測し、それに基づいて計画を立てるのがフォアキャスティングの特徴です。

フォアキャスティングによって行動計画を立てた場合は、現在の延長線上にある達成実現性の高い未来を描くため、現実的で無理のないロードマップが策定できます。対して、バックキャスティングはまず叶えたい目標やビジョンを描き出した上で、その達成に向けたロードマップを策定するため、劇的な変化が求められる課題解決に適した手法といえるでしょう。

また、フォアキャスティングは短期・中期向け、バックキャスティングは中長期向けと、実現に向けての適した期間は、それぞれの手法によって異なります。フォアキャスティングは予測される未来を実現する対応策を導き出すために、バックキャスティングは理想的な未来を創造する道筋を描くために、目的に応じて上手く使い分けることが大切です。

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バックキャスティングが求められる背景

未来の予測が困難な現代のビジネス環境では、バックキャスティングは時代に即した戦略的アプローチといえます。

現代は「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の4つの単語の頭文字をとったVUCA時代とも呼ばれており、経済や技術、環境など多くの要因が複雑に絡み合い、未来の予測が非常に困難です。

現在から未来を予測するフォアキャスティングの手法では、適切な戦略立案が難しいケースも少なくありません。このような状況下では、未来の望ましい状態を設定し、そこから逆算して行動を計画するバックキャスティングが有効です。

また、日本では少子高齢化や労働力人口の減少、環境問題の深刻化、技術革新とグローバル競争の激化など、中長期的に解決しなければならない問題が多く存在しています。

環境問題を例に挙げると、日本政府は2030年までに温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、2050年にはカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げています。壮大な目標を実現するためには、再生可能エネルギーの導入拡大やエネルギー効率の向上といった長期的な取り組みが不可欠です。このように、目指すべき未来が明確であればあるほど、バックキャスティングは効果的な手法になり得ます。

【出典】経済産業省「2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方

【関連記事】VUCAとは?意味や時代に合わせた対策・必要な組織作りを解説

バックキャスティングをビジネスに取り入れるメリット

バックキャスティングは、企業が持続可能な成長を達成し、競争力を維持・向上させるための強力なフレームワークです。バックキャスティングをビジネスに取り入れる4つのメリットを紹介します。

明確なビジョンと方向性の確立

将来の理想的な状態を明確にし、共通認識をとることが、バックキャスティングの第一歩です。理想の未来像があるからこそ、企業は中長期的なビジョンと方向性を具体的に設定でき、実現に向けて一貫した戦略を立てられます。企業全体が同じ目標に向かって努力するようになれば、組織の一体感も高まるでしょう。

イノベーションの促進

未来の目標からプロセスを逆算するバックキャスティングでは、現在の制約にとらわれない、新しいアイデアや柔軟な解決策が生まれやすくなります。商品やサービスの課題解決のためにバックキャスティングを用いる際は、ユーザーの視点に重きを置いてプロセスを設計する思考法である「デザイン思考」も併せて取り入れましょう。

【関連記事】デザイン思考とは?DX活用事例と実践プロセスを5ステップで解説

リスク管理と柔軟性の向上

バックキャスティングでは、将来の目標達成のために必要なステップを考えます。このプロセスを通じて潜在的なリスクが特定できれば、適切な対策を講じられるでしょう。また、目標達成のための複数のシナリオを用意できれば、予期せぬ変化にも対応できる、柔軟な戦略を立案できます。

【関連記事】リスクマネジメントとは|基本の考え方、プロセスを簡単に解説

ステークホルダーのエンゲージメント強化

明確なビジョンと具体的な行動計画を持つことは、従業員や顧客、投資家といったステークホルダーとの信頼関係の強化につながります。企業のビジョンに共感し、好感を抱くステークホルダーが増えることも期待できます。

特に、環境や社会への貢献を重視する現代社会では、サステナビリティに配慮したビジョンの提示はエンゲージメント強化につながりやすく、マーケティング戦略的にも有効です。

【関連記事】サステナビリティ経営とは|意味と取り組む意義・SDGsとの違い

バックキャスティングのやり方|5つのステップ

バックキャスティングでは、未来のビジョンを具体的に描くことが重要です。バックキャスティングを用いた行動計画の立て方について、5つのステップに分けて紹介します。

1.自社のコアバリューを捉える

バックキャスティングの最初のステップは、自社のコアバリュー、つまり核となる価値観や信念を明確にすることです。

コアバリューは企業文化や経営理念に関わる重要な要素であり、戦略立案の指針となります。的確に捉えるためにも、従業員や顧客、取引先の声を参考にしながら、同業他社と比較した際の独自性や強みを明確にしましょう。

2.目指すべき理想像を定義する

コアバリューを明確にした後は、自社が今後どのような姿を目指していくのか、具体的な理想像を描きましょう。企業のビジョンやミッションを長期的な目標として落とし込むために不可欠なステップです。

理想像を定義する際には、業界の特性や社会の変化などを踏まえて市場環境を予測した上で、できるかぎり具体的かつ測定可能なゴールを設定することが重要です。また、顧客をはじめとするステークホルダーのニーズも反映できるとよいでしょう。

社会の変化といったマクロ環境の把握・分析には、 PEST分析のフレームワークが有効です。

3.達成のために何をすべきか考える

未来の理想像を定義したら、その実現に向けて何をすべきか、具体的なアクションを考えます。

まず、現状と理想像とのギャップを分析し、その差を埋めるための課題を洗い出しましょう。次に、これらの課題に対する対策や行動を明確にします。さらに、今後具体的な行動計画に落とし込むために、中間目標や重要なマイルストーンを設定します。

また、人員や時間、資金といった必要なリソースについても把握して、足りなければどのように確保できるか、ほかのものに置き換えられないかを考えることも重要です。人員や時間が不足している場合は、BPO・アウトソーシングの導入についても検討しましょう。

【関連記事】BPOとは?アウトソーシングとの違い・対象業務や導入事例

4.優先順位を決めて行動計画を立てる

達成に向けたアクションが整理できたら、実行に向けて優先順位を決め、具体的な行動計画を立てます。

まず、すべてのアクションを重要度と緊急度に基づいて分類し、実行に移す順を決めましょう。次に、各ステップに具体的な期限を設けて、タイムラインを作成します。リソースの配分や担当者の割り当ても明確にします。

その上で、プロジェクト管理ツールやガントチャートなどを活用して、スケジュールの進捗状況を可視化ならびに共有できるようにしましょう。

【関連記事】プロジェクトマネジメントとは?必須スキルやフレームワークを紹介

5.状況に応じてアップデートする

バックキャスティングを用いて行動計画を立てたとしても、外部環境の変化や、予期せぬ課題などが発生し、スケジュール通りに進まない可能性があります。行動計画は状況に応じて変更しましょう。場合によっては、定めた理想像そのものをアップデートする必要が出てくるかもしれません。

社会情勢や業界トレンドなどの情報収集を怠らないと同時に、担当者とは定期的に1on1などを実施し、進捗や課題に対して適切なフィードバックを行えるようにしましょう。

バックキャスティングで陥りがちな注意点

バックキャスティングは行動計画の策定に有効なフレームワークですが、注意点も存在します。バックキャスティングを用いて目標設定を行う際に気をつけたい2つのポイントと、それぞれの解決策を紹介します。

現状とのギャップが大きい

バックキャスティングを用いる際、理想像と現状のギャップが大きいと、現場からの不安や抵抗感が生じる場合があります。

このギャップを埋めるためには、理想像を行動計画に落とし込む段階で、現実的なステップに分解することが重要です。小さな成功体験の積み重ねは、従業員のモチベーション維持に寄与します。

また、バックキャスティングは、実際に行動に移す部署やチームの担当者も巻き込んで行いましょう。現場の声を取り入れ、コミュニケーションを図りながら具体的な行動計画を立てることで、目標やビジョンに向けた着実な前進につながります。

目標やビジョンが曖昧になる

中長期的な未来の理想像は、どうしても抽象的で曖昧なものになりがちです。行動計画を実行に移し、PDCAサイクルを回し続けるためには、測定可能なステップの設定が解決策となるでしょう。

例えば「2028年までに顧客満足度を業界トップクラスにする」という目標を掲げたとします。これは、以下の測定可能なステップに分けられます。

    • 2025年までに公式SNSのフォロワーを1万人増やす
    • 2026年までにリピーターの割合を30%にする
    • 2027年までに顧客満足度を85%に引き上げる

このように、達成可否が明確な目標を設定することで、KPIが設定できるようになり、バックキャスティングの欠点を回避できます。

バックキャスティングを取り入れた事例

実際にバックキャスティングを取り入れた企業の事例として、パナソニックの「Future Craft」を紹介します。

パナソニック

パナソニックは「従来のプロダクトデザイン中心のアプローチでは、顧客ニーズや社会的課題に十分対応できていない」といった課題を抱えていました。ビジネスやテクノロジーのノウハウはあったものの、クリエイティブな視点が欠けていたため、変化への迅速な対応が不十分でした。

このような課題の解決に向けて、パナソニックはバックキャスティングの考えのもと「Future Craft」というデザインフィロソフィーを立案。「Future Craft」では、未来の理想像から逆算して現在の行動を計画することで、UXデザインやビジョンデザインにシフトし、顧客の潜在的なニーズを深掘りする新しい体験を提供しています。

さらに「デザイン経営実践プロジェクト」を通じて、ビジネス(Business)・テクノロジー(Technology)・クリエイション(Creation)の3つの要素を統合した越境型BTC組織を形成し、それぞれの専門性と価値観を取り入れ続けることにも注力。「戦略立案」「くらし」「住まい」「クルマ」といったさまざまな事業部門で「未来起点・人間中心」のサイクルを回し続け、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めるとともに、本質的な競争力の強化に努めています。

【出典】パナソニックホールディングス株式会社「「ありたい未来」からはじめる~パナソニックデザイン

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まとめ|バックキャスティングで組織の目標達成へ

バックキャスティングは、目標やビジョンといった理想像を設定してから、それに向けた行動計画を立てるシナリオ手法です。企業を取り巻く環境が常に変化し続け、未来の予測が困難な現代においてこそ、効果を発揮する考え方といえるでしょう。バックキャスティングを取り入れるメリットや具体的なやり方を押さえて、自社の目標達成の手法としてぜひお役立てください。