2021年01月27日
2024年01月17日
サステナビリティとは環境・社会・経済など多岐にわたる持続可能性のこと。そして、サステナビリティ経営とは、その3つの観点すべてにおいて持続可能な状態を実現する経営のことです。
本記事では、企業がサステナビリティを指向し、SDGsを採用する意義やメリット、国際標準のGRIスタンダードについても、わかりやすく説明します。
【調査レポート】SDGs、ESG等、経営トレンドに関する取り組み実態とは?
パーソルグループでは、経営者ならびに経営関連業務に携わる方 1,000名を対象に、経営トレンド6テーマ(生成AI、GX、SDGs、ESG、人的資本経営、Well-being)について、それぞれ関心度合いや具体的な取り組み、課題、成果等を調査し、レポートとして公開しています。
企業規模別・上場区分別の詳細データも掲載していますので、 他社の動向把握などにぜひご活用ください。
サステナビリティ経営とは、「環境・社会・経済」という3つの観点すべてにおいて持続可能な状態を実現する経営のことです。
サステナビリティ(Sustainability)は直訳すると「持続可能性」であり、「環境・社会・経済」の観点から、今後長期間にわたって地球環境を壊すことなく、資源も使い過ぎず、良好な経済活動を維持し続けることを意味する言葉です。
環境 | 森林伐採や海洋汚染、温室効果ガスの排出問題などの課題を解決することは、私たち人類が生存し続ける上で欠かせません。 |
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社会 | ジェンダーや教育の格差、難民問題などの課題を解決することが、国や地域だけにとどまらずグローバルにおいても社会の安定につながります。 |
経済 | 貧困問題の解決や良好な労働環境整備、セーフティネットなど社会保障の拡充が求められています。 |
生産やサービス提供など自らの企業活動が環境・社会・経済という3つの要素に与える影響を考慮することが事業の長期的な維持継続には欠かせないため、サステナビリティは、企業活動においても無視することはできません。
たとえば廃棄物をゼロにして地球環境への負荷を軽減することは、良好な生活環境の実現につながります。また、ジェンダーやLGBTを尊重した人材を活用することは、一企業の雇用の安定にとどまらず多様性(ダイバーシティ)のある社会の実現にもつながります。
このような長期的な視点に立った考えを取り入れた企業経営をサステナビリティ経営と呼んでいます。
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サステナビリティに関連する言葉として「SDGs」と「CSR」があげられます。
SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年に国連が採択した2030年までの持続可能な世界を目指すための17の目標です。貧困や飢餓の撲滅、気候変動への対応、ジェンダー平等の促進など、社会・経済・環境の課題に総合的に取り組むものです。
サステナビリティは環境・社会・経済の3つの側面を大きな枠組みでとらえています。これに対しSDGsは、その3つの側面について具体的に17のゴールを設定し、統合的に解決しながら持続可能なよりよい未来を築くことを目標としています。
つまり、SDGsはサステナビリティの考え方をより具体化したものといえるでしょう。
SDGsの17のゴール
CSR(企業の社会的責任)とは、企業が自社だけの利益を追求するのではなく、顧客・従業員・取引先・投資家をはじめとしたすべてのステークホルダー(利害関係者)に対して責任を持ち、その要求に応えるべきという考え方です。具体的には、法令遵守や労働環境の改善、地域社会への貢献、環境保護活動などを通じて、企業活動が社会全体に与える影響に配慮することを指します。
サステナビリティは、企業の成長と環境・社会・経済の持続可能性を両立させることを目指す考え方です。CSRが「責任」に基づく一方で、サステナビリティは「戦略的視点」で、事業そのものに持続可能性を組み込み、長期的な成長を図ります。
世界人口が増加し続ける中、企業には限られた資源を有効に使いつつ、自社の技術力やサービス力を活かして地域や世界の人々の生活を支え、豊かにすることが期待されています。これが持続可能な発展に寄与し、SDGsの達成につながるからです。
一方、視点を変えみると、企業がSDGsに取り組む意義が明らかになってきます。
企業がSDGsに取り組むことによって新たな市場開拓の機会が生まれます。SDGsに掲げられている目標達成に貢献できるような環境・社会課題を解決する製品やサービス、技術が広く社会に受け入れられれば、企業の業績だけでなく企業価値も向上するでしょう。その結果、市場を通じた資金調達もしやすくなるだけでなく、税制面での優遇措置や税コスト軽減効果も期待できます。
日本証券業協会ではSDGs推進のための税制措置として、社会の持続的な発展に貢献する金融商品への投資に対する税制優遇措置の創設を要望しています。これは市場からの後押しする動きとして注目されています。
SDGsに積極的に取り組む企業は、SDGsという世界共通の言葉を通じ、自社の製品やサービス、技術などの情報発信を行うことができます。それによって、ステークホルダーにとどまらず社会全体にも自社の取り組みが伝わります。
期待される効果のひとつが、他企業との連携です。開発力やイノベーション能力のある他企業の強みと自社の強みを組み合わせることで、よりSDGsの実現に貢献する製品やサービスを生み出すことも可能です。その結果、SDGsの実現に向けてより影響力のある取り組みを社会に広げることができるでしょう。
サステナビリティは社会、環境、経済の3つの側面を大きな枠組みでとらえていることもあって、企業にとってその解釈はまちまちです。そのため、国際的なスタンダードとして2016年に発表されたのが「GRIスタンダード」です。
GRIスタンダードを発行しているのは、サステナビリティについて具体的な国際基準を作るために設立されたGRI(Global Reporting Initiative)という団体です。GRI の設立にあたってはUNEP(国連環境計画)も関与したとされます。
GRIスタンダードは大きく共通スタンダードと項目別のスタンダードの2つに分けられています。
項目別のスタンダードは「経済」(GRI201~207の3項目)、「環境」(GRI301~308の8項目)、「社会」(GRI401~419の19項目)で構成されています。
GRIスタンダード全体の構成
GRIスタンダードにおける項目別テーマ
GRIスタンダードをもとに作成されるのがサステナビリティ報告書です。これは、企業が持続的社会の実現に向けどのような取り組みをし、どのような効果をもたらしたかを開示する報告書です。
企業の決算書に書き方の決まりがあるように、サステナビリティ報告書もGRIスタンダードに沿って書かれます。企業が持続的社会の実現に向けて行った活動が、環境・社会・経済の計34テーマについてどのように貢献し、どのような効果をもたらしたかを明記します。
また、一般的にサステナビリティ報告書やサステナビリティへの取り組みを公表している日本企業では「GRIスタンダード対照表」をホームページ上で公開し、これらがGRIスタンダードに準拠していることを明示しています。
コーポレート・サステナビリティは事業の長期的な維持継続に不可欠となってきました。そのため、日本でも企業価値の向上につながるSDGsへの取り組みが進み、GRIスタンダードをもとに作成されるサステナビリティ報告書の例も増えています。こうした企業の取り組みは、国内外での高評価にもつながっているようです。
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パーソルグループでは、経営者ならびに経営関連業務に携わる方 1,000名を対象に、経営トレンド6テーマ(生成AI、GX、SDGs、ESG、人的資本経営、Well-being)について、それぞれ関心度合いや具体的な取り組み、課題、成果等を調査し、レポートとして公開しています。
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