デザイン思考でイノベーションや新事業を創出。5つのプロセスで具体的に実践・応用

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デザイン思考は、未知の問題に取り組み新しいビジネス戦略立案を可能にする、従来と異なるアプローチ。ユーザーを深く理解し、革新的なソリューションを生む、5つのプロセスを経る思考法です。考え方や具体的な取り組み方をやさしく解説します。

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目次

デザイン思考の概要

デザイン思考とは

デザイン思考とは、簡単に言うと「デザイナーではない人たちがデザイナーのように考える」ことで、常に「ユーザー」視点から出発することが特徴です。

例えば、従来の製品・サービスは、「売れるのか、儲かるのか」あるいは「技術的に可能なのか」といった作り手側の都合が重視される傾向にありました。しかし、モノがあふれる時代になり、機能でも価格でも競合する製品・サービスが増えてくると、「どうしたらユーザーに選んでもらえるのか」を改めて考えなければいけません。

そこで注目され始めたのが、デザイン思考です。デザイン思考は、ユーザーが、本当は何を感じ、何を考え、何に困っているのか、何を望んでいるか、といった視点から考え始めます。

デザインというと、モノの「色」や「形」を考える作業を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、ここでデザインするものは「色」や「形」に限りません。新しいビジネスや製品・サービスの立案、社会課題の解決策など、モノづくりのみならず、広く「問題解決」を扱うのがデザイン思考です。そのため、スタンフォード大学ではビジネススクールのかわりにデザインスクールが設置され、日本でも、2018年5月には経済産業省と特許庁が「デザイン経営」宣言を発表するなど、ビジネスにデザイン思考を取り入れる動きが活発です。

デザイン思考は「5つのプロセス」にも特徴があります。詳しくは後述しますが、(1)ユーザーに共感し、(2)ユーザーが抱える問題を明確化、(3)アイデアを生み出し、(4)速やかに試作品(プロトタイプ)を作り、(5)検証(テスト)・改善を行う、というものです。5つのプロセスは必ずしも順番どおりには進まず、検証結果によっては、問題の定義からやり直すこともしばしばです。

デザイン思考が注目される理由

デザイン思考が必要とされる背景には、ビジネス環境の変化があります。

AIやIoTをはじめとするテクノロジーの発展により、これまでにない人間の行動様式が生まれつつあります。同時に、「より快適に」「より使いやすく」など、ユーザー視点から仮説と検証を繰り返し、改善していくことが求められるようになりました。

生産性や技術力を追求する従来の方法では、新興国との競争が難しくなっていることも、背景として見逃せません。競争力を高めるためには、イノベーションや新規事業といった、より付加価値の高い課題に取り組むことが必要です。デザイン思考は、そのための武器でもあるのです。

GAFAなど世界的企業において実践されていることも、デザイン思考が広まるきっかけとなりました。「民泊」のAirbnbも、創業者3人のうち2人はデザイナーです。サービス立ち上げ当初、民泊というユニークなアイデアにも関わらず、宿泊率は伸び悩んでいました。そのとき、創業者たちは「ここに宿泊したい」とユーザーが思えるほど魅力的な宿泊先の写真が掲載されていなかったことを発見。そこで、自ら写真を撮影し直して洗練された写真を掲載したところ、宿泊率は劇的に向上しました。ユーザーが何を感じ、どうしたら心が動くのかを第一に考える。デザイン思考の好例です。

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デザイン思考を取り入れるメリットと取り組み方

デザイン思考を高めていくメリット

以上をまとめると、企業が自社のビジネスにデザイン思考を取り入れることには、次のようなメリットがあると考えられます。

(1)顧客が抱える本質的な課題を捉える
スピーディに試作とテストを繰り返すことで、顧客が抱える課題に迫るアイデアを形にしていくのがデザイン思考です。ユーザーの意見をフィードバックさせながら、問題の本質を理解し、問題解決へとつなげることができます。

(2)イノベーションの創造
既存の製品やサービスの枠にとらわれず、ユーザー視点から捉え直すことによって、新たな価値を生み出すことができます。

デザイン思考を構成する5つのプロセス

前述のとおり、デザイン思考には5つのプロセスがあります。必ずしも順番どおりには進まず、行ったり戻ったり、同じプロセスを繰り返したりするのが常です。また、このプロセスをチームで行うことも、デザイン思考の特徴です。

プロセス1:共感
ユーザーのニーズを調査し、彼らが直面している課題について共感を深めます。ここで大事なのは、ユーザー視点で考えること。自分の思い込みを捨て、ユーザーが置かれている状況や感情に「共感」することで、ユーザー自身も気がついていないかもしれない潜在的なニーズを掘り起こします。ここではしばしば「ユーザーインタビュー」が行われます。

プロセス2:問題の定義
「共感」の段階で得られた情報に加えて、市場動向や未来予測も総合しながら、解決すべき問題を明確にします。ユーザーは何に困っていて、なぜ困っているのか。架空のユーザー像である「ペルソナ」を作成することも、問題定義の助けになります。

プロセス3:アイデア創出
明らかになった問題を解決するため、既成概念にとらわれずアイデアを生み出していきます。この段階では、アイデアの完成度を上げることや「正しい」アイデアを見つけるよりも、多くのアイデアをスピーディに挙げていくことを重視します。それにはチームでアイデアを出し合う「ブレインストーミング」が有効です。

プロセス4:プロトタイプ
アイデアを検証するために、試作を行います。紙の模型であることもあれば、簡易的に製品を作ってみることもあります。こうしてアイデアをモノとして可視化、誰もが手で触れる形にすることで、アイデアの検証がはかどるのです。

ステージ5:テスト
試作したものをユーザーに使ってもらい、プロトタイプの検証と改善を繰り返していきます。「このアイデアでは課題解決ができない」と分かれば、問題定義やアイデア出しの段階まで立ち返るケースも珍しくありません。

デザイン思考の5つのプロセス

 

【出典】非営利団体インタラクションデザインファウンデーションのHPより抜粋

デザイン思考を学べる教育機関も増えています。前述したスタンフォード大学の「d.school」が著名ですが、日本でも東京大学の「i.school」をはじめ、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)、千葉工業大学創造工学部デザイン科学科などが挙げられます。

国内のデザイン教育拠点

機関名 URL
東京大学(i.school) https://ischool.or.jp/
慶応義塾大学大学院(メディアデザイン研究科) https://www.kmd.keio.ac.jp/ja/
千葉工業大学(創造工学部デザイン科学科) https://www.it-chiba.ac.jp/faculty/cre/des/
京都大学(デザインイノベーションコンソーシアム) http://designinnovation.jp/
九州大学(芸術工学研究院) https://www.design.kyushu-u.ac.jp/

デザイン思考による国内外事例

デザイン思考は、具体的にどのように問題解決へ役立つのでしょう。

中部経済産業局が、デザイン思考を企業の経営革新や事業拡大へとつなげる取り組みを行い、事例を「デザイン思考活用講座解説書」としてまとめています。

「ものづくり」に活かしたケースとして、石川県九谷焼の新商品開発が紹介されています。九谷焼は色鮮やかな絵づけが特徴の陶磁器です。従来は「床の間に飾るもの」として愛好されていましたが、市場は先細りに。そこで「飾るだけでなく使える道具にしよう」と、ユーザー視点の商品開発に取り組み始めました。それまで用いられなかった他産地の素材や技術も組み合わせることで完成したのは、九谷焼のワイングラスでした。こうして九谷焼は「高品質な生活用品」という新市場への参入に成功しました。

また、ある世界的テクノロジー企業は、顧客志向の製品・サービスの追求を目的に、全社的にデザイン思考の浸透を進めています。デザイナーとエンジニアの割合を「1:30」から「1:8」にするため、1,000人以上のデザイナーを採用したこともあります。

デザイン思考を始めてみよう

大学に通ってデザイン思考を本格的に学ばずとも、デザイン思考のプロセスを日々の仕事に応用することができます。

何よりも大切なのは、やはりユーザー視点です。「自社がこうしたいから」「ビジネス上こんな制約があるから」ではなく、ユーザーにとっての良い製品・サービスを生み出すために自分たちが何をできるのかをまず考えるのです。ここでいうユーザーは一般消費者に限らず、取引先の担当者でも構いません。ユーザーが何に困っていて、何を望んでいるのか、具体的にイメージすることから、アイデアを広げていきましょう。

「デザイン思考」はビジネス上の問題解決にも役に立つ

デザイン思考は、問題解決のための手段であり、ビジネスにおいても広く活用されています。大切なのは、「ユーザー」視点から発想すること、5つのプロセスに沿って試作と検証を素早く繰り返すことです。ユーザーが抱える課題を深く理解し、「よりユーザーに選ばれる」製品やサービスを生み出すため、社会が直面しているさまざまな課題を解決するイノベーションを模索するため、デザイン思考の理解が求められています。

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