コールセンターの離職率が高い理由とは?原因と対策まで

コールセンターの離職率は全体的に高い傾向にあります。具体的な対策を取らなければ、応対品質や生産性の低下、採用・教育コストの増加など、さまざまな影響が出ます。

この記事では、コールセンターの実際の離職率や、離職が引き起こす影響、離職率を下げる方法について解説します。自社の売上や応対品質を向上させるためにも、ぜひ参考にしてください。

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目次

コールセンターの離職率は?

コールセンターは、一般的な職業と比べて離職率が高い職種です。『月刊コールセンタージャパン』によると、入社1年以内であるオペレーターの離職率が71%以上であると答えた企業が全体の22%も存在します。

2013年と比較して、2018年の離職率が大幅に上がっていることから、コールセンターの離職率は上昇傾向にあるとみられます。

【出典】月刊コールセンタージャパン「早期離職を防ぐ 「最初の90日」の乗り越え方
このように、 コールセンターにおける離職率は高い傾向にあるため、事前に離職率を下げるような取り組みが必要となります。

コールセンターの離職が起きる8つの要因

コールセンターで離職が相次ぐ理由は、コールセンターの業務内容やオペレーターのキャリア形成が関係しています。ここでは主な要因を8つ取り上げて解説します。

1.キャリアアップの見込みがない

コールセンター内でのキャリアアップの一例として、スーパーバイザー(SV)・管理職への昇進がありますが、オペレーターに対して管理職の数は少なく、キャリアアップのスピードは早くないと考えられます。

さらに、コールセンターの仕事は電話対応や専用システム上での作業の繰り返しが多いため、スキルを蓄積しづらいという性質があります。そのため、将来性を感じられない従業員は、早期に離職することが考えられます。

2.達成しづらいノルマ

ノルマの厳しさも離職の原因と考えられます。例えば、コールセンターのノルマとしては以下のようなものが挙げられます。

インバウンドの場合

    • 着信に対して応答した件数の割合(応答率)
    • 一度の電話でお客さまの問題・要望などが解決した率(初回完結率)

アウトバウンドの場合

    • 電話をかけた件数(架電数)
    • 契約した件数(成約数)

特に、営業電話をかけて売上を伸ばさなければならないアウトバウンド担当者の場合、営業ノルマのプレッシャーは増大します。ほかの従業員と自分の成績を比べてしまい、ストレスを感じる人も少なくないでしょう。

3.トラブル・クレーム対応

オペレーションに課題が多いことも、理由のひとつです。とくに、インバウンド担当者は顧客とのトラブルや理不尽なクレーム対応に苦しめられるケースが大きいと考えられます。厳しい言葉を何度も投げかけられれば、離職につながりやすくなるでしょう。

4.SVやマネージャーとのコミュニケーション不足

SVやマネージャーとうまくコミュニケーションがとれず、仕事に不信感を覚える人もいます。コールセンターの仕事は基本的に個人で電話対応を行うため、業務の合間でのコミュニケーションを取るのが難しい場合があります。

また、情報共有やディスカッションが不足すると、適切な業務が行えなくなることもあります。研修で教わったとおりに業務を行っていても「対応が間違っている」と上司に指摘される場合などが例に挙げられます。

5.モチベーションの低下

業務負担が大きいため、モチベーションが下がるケースも少なくありません。顧客対応方法やサービス理解など覚えるべきことが多く、特に入電数が多いコールセンターでは、一件の対応が終わった後もすぐに次の対応に移らなければなりません。これがストレスを感じる原因となります。

継続的なストレスが続く環境では、従業員のモチベーションが低下し、業務パフォーマンスへの悪影響を及ぼす可能性があります。

6.不十分な研修やサポート体制

従業員への研修やサポート体制が整っていないことも、理由のひとつです。十分な研修が行われておらず、万全な状態で仕事を行えないことで、顧客から仕事内容に関して指摘を受ける可能性があります。結果的に研修も含め十分なサポート体制の構築ができていない企業そのものに信頼感を持てず、離職を選択する人もいます。

7.職場環境や風土が合わない

コールセンターの職場環境やカルチャーが自身に合わず、離職する人もいます。ひとつのオフィスに複数人のオペレーターが集まる環境下で、業務に集中するにはかなりのエネルギーが必要です。コールセンター特有の環境が合わなければ、長期的にはたらくことが難しくなり離職の原因となりえます。

8.労働時間の長さ

SVやマネージャーの立場では労働時間が長く、負担が大きいことも離職理由のひとつです。SVはオペレーター業務と並行して、企業やサービスの知識を学ばなければならないため、残業や休日出勤が増える可能性があります。

リックテレコムの調査によると「業務負荷が高い」と答えたSVの割合が66.7%でした。業務負担が続くとモチベーションの低下や離職を引き起こすため、企業には早急な対策が求められます。

【出典】株式会社リックテレコム「コールセンター白書2022」をもとに作成

高い離職率が引き起こす影響

コールセンターの離職率が高いまま運営を続けると、業績にも大きな影響が発生します。本章では、想定されるリスクも踏まえて解説します。

応対品質の低下

自社サービスや応対ノウハウについて熟知した人材が不足することで、オペレーターの応対品質が低下してしまいます。充実したサービスを提供できないため、顧客満足度も相対的に低下し、企業のブランド力や売上の低下につながります。

生産性の低下

次に、業務の生産性も低下します。少ないオペレーターで、従来と同じ数の案件に対応しなければならないため、一人当たりの負担量が増加してしまいます。オペレーター一人あたりの業務量が増え、疲労が蓄積されると、仕事の能率も下がってしまい、さらなる弊害を踏む可能性があります。

また、離職が頻発して起きる環境が続くと、コールセンターは慢性的な人材不足に悩まされてしまいます。周囲の従業員が次々と離職していくことによって、残された従業員にとっても離職への心理的ハードルも低くなってしまいます。

管理者の負担増加

管理者の負担が増加することも大きな影響です。離職者の穴を埋めるために、普段より余分に採用活動やオペレーション内容の修正を管理者が行わなければなりません。管理者への負担が増加することによって将来的には、管理者の離職も続出する恐れがあります。

採用・教育コストの増加

新しい人材を採用・育成するために、費用・時間ともに多額のコストがかかります。長期間研修を行って人材を育てても、その従業員がまた早期退職する、という悪循環に陥るケースも少なくありません。

離職率を下げるための対策

コールセンターの離職率を下げるためには、給与の見直しからサポート体制の強化など、全社的に取り組まなければなりません。ここでは離職防止のための施策を5つ取り上げます。

1.適切なノルマの設定、目標管理

ノルマを各オペレーターに課す場合、実現可能なノルマを設定することが重要です。そして、モチベーションを維持できるような目標管理も行いましょう。ノルマを設定する際には個人の能力や稼働時間を考慮した上で、達成可能な設定を行うことが重要です。

また、努力すれば達成できるようなストレッチ目標を設定することで、作業者の自信に繋がるだけではなく、業務に達成感を覚えてもらうことで、継続的に意欲を引き出せます。さらに定期的なフィードバックを行うことで信頼関係の形成やモチベーション維持につなげましょう。

2.適切な評価とフィードバック

各従業員に適切な評価を行い、今後の業務に活かせるフィードバックを伝えましょう。業績評価、能力評価、情意評価など、いくつか評価項目を定めて、評価基準に沿った評価を行いましょう。適切な評価が行われることで「自分の仕事を誰かが見てくれている」という安心感が、早期離職を防ぎます。

評価制度は透明性を高くすることが重要です。評価制度の透明性を高めることにより評価を受ける側も、自分の評価内容への理解も高まり、今後の業務への反映が行いやすくなります。

また、評価を効率的に行うためには人事評価をシステム上で一元管理するシステムを導入したり、複数名から人事評価を受ける360度評価の手法を導入するなどが効果的です。

【関連記事】人事評価制度とは?必要性や評価項目の具体例・導入のポイント

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1on1によるきめ細かなサポート

定期的な1on1ミーティングにより、メンタル面のサポートを行うことも必要です。仕事への不満や今後の目標について話し合うことで、上司と部下の信頼関係が築けます。もし業務時間内での1on1実施が難しい場合は、普段からオペレーター内で業務に関する情報の共有を行うなど、積極的にコミュニケーションをとれるような仕組みを導入しましょう。

【関連記事】1on1とは?目的や話す内容・面談との違い

コールセンター研修の実施

コールセンター研修を行っていない企業は、早急に研修の整備が必要となります。コールセンター研修は、階層ごとにテーマを分けて実施しましょう。オペレーター向けには基礎的な電話応対基礎、SV向けにはチームマネジメントを学ぶ研修がおすすめです。

また、定期的な応対品質チェックも必要です。研修内容が成果につながっているか、定期的に評価しましょう。

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給与・職場環境の見直し

はたらきやすい職場環境を整えることも大切です。例えば電話システムや椅子など従業員の業務に影響のある設備を見直すことで、業務効率化だけでなく、従業員のモチベーション向上につながります。また、リフレッシュスペースの設置や食事補助サービスなどの福利厚生の充実も、離職防止に効果が見込めます。

また、コールセンターが従業員に支払う給与は人材不足の背景から増加傾向にあります。特に首都圏ではオペレーターの平均時給が高く、約42.9%の企業が2000円以上と回答しています。

【出典】株式会社リックテレコム「コールセンター白書2022」をもとに作成

労働時間に合った賃金を支払うことは当然ですが、給与以外の部分も合わせて見直すようにしましょう。

コールセンター運営のポイント

コールセンターでは稼働率を上げたり、応対品質を安定させたりすることが大切です。そのためには、離職防止以外にも、オペレーターの技術向上やツールの活用などさまざまな打ち手が考えられます。

ここでは、コールセンターを正しく運営するために押さえるべきポイントを6つ紹介します。

1.稼働率を高めるための体制構築

コールセンターの運用体制を構築し、稼働率を向上させることが重要です。受電量が増加する時間帯には、オペレーターーを多めに配置するなどのシフト管理など、稼働率を高めるための人員配置を行いましょう。

2.応対品質などスキルの向上

コールセンター運営には、オペレーターの応対品質向上も欠かせません。適切な電話応対に必要な品質の評価指標を定義し、以下のような観点で教育・研修を実施しましょう。

    • スキルや対応方法のばらつきを防ぎ、全体的な品質向上を目的としたオペレーター―研修を行う
    • 座学だけでなく、実践型の研修をメインにする
    • 定期的なモニタリングを行い、業務に対するフィードバックを行うようにする

3.技術的なサポート

システムエラーや使用機器にトラブルが発生した際に円滑な対処を行うためには技術的なサポートが必要となります。機器のトラブルに対応できるスタッフを育成・配置し、トラブル発生時の対応マニュアルなどを事前に作成を行い従業員が焦らずに対応できる環境整備を行いましょう。

4.ツールの活用

業務を効率良く進めるためのツールを活用してみましょう。コールセンターの業務は問い合わせ対応のみでなく、顧客データの入力や管理者への報告といった後処理も業務に含まれます。そのため電話のシステムと情報を管理するツールを合わせて活用することにより、業務の効率化が期待されます。

コールセンターで使用されるツールの例は以下のとおりです。

    • CTI…電話やFAXなどをパソコンと連携させるツール
    • IVR…自動音声応答システム
    • CRM…顧客情報などをデータ化して蓄積するシステム

5.データ分析と改善

コールセンター運営のためにはオペレーター業務の分析が欠かせません。オペレーター応対品質に関わる項目として「応答率」「平均応答速度」などがあります。生産性に関わる項目としては「平均通話時間」「稼働時間」などです。それぞれの数値を分析することでどのような内容が分かるかを解説します。

応対品質に関わる項目

    • 応答率:コールセンターへの談話に対して、どれだけの件数対応できたかを測る指標。高い数値になるほど、通話の取りこぼしがないことを示します。
    • 平均応答速度:オペレーターが着信してから応答するまでの平均時間です。この時間が短いほどお問い合わせに対して即時に対応を開始できていることを表します。

生産性に関わる項目

      • 平均通話時間:オペレーターが顧客と通話している時間の平均時間です。この指標を分析することで、必要以上に通話時間が長いオペレーターを発見、改善を促すことができます。
      • 平均処理時間:1つの入電に対して事故処理までを含み、対応にかかった時間を指します。業務時間の把握にも活用ができ、効率性を計る上でも指標となります。
      • 稼働率:オペレーターが労働時間に対する顧客対応時間の割合です。稼働率を把握することで、入電数に対する適切な人数を考える際に重要になります。また、稼働率が高すぎるとオペレーターへの負担が大きくなります。オペレーターへの負担の度合いを計るためにも稼働率の数値を活用しましょう。

6.アウトソーシングの活用

効率よく業務を行うために、アウトソーシングを活用する方法もおすすめします。アウトソーシングとは、業務を外部に委託することです。自社で従業員の育成を行う必要がないため人材の教育コストを抑えながら、十分な電話応対スキルを持ったスタッフに業務を行ってもらうため応対品質も向上します。また、自社の従業員はコア業務に専念できるためや生産性を上げられるなど、メリットが多数存在します。

もしも運用コストの負担や社内人材をコア業務へ集中させるといった理由などでコールセンターの運営を見直そうと考えている場合は、積極的にアウトソーシングを利用してみましょう。

【関連記事】コールセンターはアウトソーシングすべき?メリット・デメリットを解説

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コールセンターの管理者にとって、日々の運用に忙殺されて改善活動まで着手できていない方も多いのではないでしょうか。

・コールセンター運用を効率化したい
・コールセンターの品質をさらに向上したい


このような課題を持つ方に向けて、コールセンター運用における課題と解決策を網羅した52ページにわたる運用ノウハウを公開しています。

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まとめ

コールセンターの離職率は、全体的に高い傾向にあります。具体的な対策を取らなければ、応対品質や生産性の低下、採用・教育コストの増加など、さまざまな影響が出ます。業務をスムーズに実施し、企業の業績を上げるためにも、「技術的なサポートの取り入れ」「アウトソーシングの活用」といったポイントを意識して、対策することが重要です。