パフォーマンスマネジメントとは、社員の能力やモチベーションを引き出すことで、目標達成に向けて主体的に行動できるように促すマネジメント手法です。社員一人ひとりのパフォーマンスが向上することで、組織や企業の成長にもつながります。
パフォーマンスマネジメントは、スターバックスコーヒーやAdobeといった有名企業が導入しているため、聞いたことがあるものの、具体的に何をすればよいのか、目標管理制度(MBO)と何が違うのか、どのような効果が得られるのか分からない、という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、パフォーマンスマネジメントを効果的に導入するために、パフォーマンスマネジメントとは何か、混同されやすい目標管理制度(MBO)との違いを詳しく解説します。
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人材やはたらき方が多様化し、組織マネジメントの重要性が高まっています。
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採用・離職、上司・部下の認識ギャップ、キャリアなどに焦点を当て、 組織マネジメントにおける課題や取り組みについてまとめたものです。
組織作りやマネジメントに課題を抱える経営・人事の方、管理職の方のご参考になれば幸いです。
パフォーマンスマネジメントとは
パフォーマンスマネジメントとは、社員の能力とモチベーションを引き出し、一人ひとりが主体的に行動できるように促すマネジメント手法のことをいいます。
パフォーマンスマネジメントの考え方は、1970年代にアメリカのコンサルタントであるオーブリー・C・ダニエルズ氏が「メンバーが行動から結果に結び付けるための人材マネジメント手法」として提唱したことが始まりとされています。
パフォーマンスマネジメントでは、上司と部下が目標達成に向けてとった行動の振り返りやこれから何をすべきかなどについて、定期的にコミュニケーションをとります。
上司は部下の目標達成に向けて、主体的に考え行動できるよう、コーチングを行います。
【関連記事】コーチングとは?ビジネスへの活用効果やメリット・やり方を簡単に解説
パフォーマンスマネジメントの特徴
パフォーマンスマネジメントは、VUCA時代において、柔軟に変化に対応していくためのマネジメントとして注目されています。
目標を上司と部下が一緒に決める
上司が一方的に目標を決めるのではなく、対話を通したコミュニケーションによって目標設定を行います。
短い期間でフィードバックを行う
1週間から1カ月に1度など短いスパンでの対話を繰り返し行います。リアルタイムにフィードバックを行うことで、目標の見直しが柔軟に行えます。
部下の気づきを促すコーチングを行う
上司が答えを教えたり指示をしたりするというよりも、「何が課題なのか」「どうすべきか」など部下自身の気づきを促すような問いかけを行います。
目標達成に至るプロセスに着目し、未来の行動を重視する
目標達成にむけてこれから何をすべきなのか、今後の話に焦点を当てます。
社員の強みや個性を重視する
自身の強みを理解できていなかったり、自信のなかったりする部下に対して、強みを把握し発揮できるようなコーチングを行います。そうすることで一人ひとりのモチベーションや能力を引き出します。
パフォーマンスマネジメントと目標管理制度(MBO)の違い
パフォーマンスマネジメントと似たマネジメント手法に、「目標管理制度(MBO)」があります。目標管理制度(MBO)とは、組織の目標を達成するために社員自らが目標を設定し、それに達する達成度合いで評価を行うマネジメントの概念です。
パフォーマンスマネジメントと目標管理制度(MBO)は、どちらも「目標を立て、実行し振り返る」という点では同じです。しかし、フィードバックの頻度と重視するポイントに違いがあります。
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パフォーマンスマネジメント |
目標管理制度(MBO) |
目的 |
社員一人ひとりの能力とモチベーションを引き出し、主体的な行動を促す |
個人のモチベーション維持や最終的な組織の利益 |
フィードバック |
短期的(1週間~1カ月) |
長期的(半年~1年) |
重視するポイント |
未来のパフォーマンス |
過去のパフォーマンス |
【関連記事】MBO(目標管理制度)とは?手法や目標設定の例・メリット
パフォーマンスマネジメントで期待される効果
パフォーマンスマネジメントを行うことで「成功の循環」が生まれます。
成功の循環とは、MIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏が提唱したもので、良い組織作りをするためのフレームワークを指します。4つの要素で構成されており、関係性はサイクルで示されます。
①関係の質 |
社内コミュニケーションが活性化することで、メンバーとの信頼関係が構築できる。何か困ったことがあった際に相談でき、失敗に対しての恐れが軽減される。 |
②思考の質 |
組織内で、自分が受け入れられているという肯定感を得られることで思考が前向きになり、周囲や組織で起こっていることに対し当事者意識を持って受け止められるようになる。 |
③行動の質 |
周囲や組織で起こっている課題に対し、当事者意識を持つことで、積極的に行動したり、新しいことにチャレンジしようとモチベーションが向上したりする。 |
④結果の質 |
得られた結果に対して前向きに受け止め、改善を繰り返すことでより良い成果を得られるようになる。 |
このように、パフォーマンスマネジメントにより、一人ひとりが強みを活かし、成長できる環境を整えることで、社員のエンゲージメント向上にもつながります。
パフォーマンスマネジメントの進め方
パフォーマンスマネジメント実施の流れは、以下の3ステップです。
1.目標を設定する
まずは目標設定を行います。上司やリーダーが一方的に目標を設定するのではなく、対話を通して部下自身が目標を設定することが重要です。
2.部下のパフォーマンスを観察する
設定した目標に向け、どのような行動を取っているのか、定期的なコミュニケーションを通じて観察・把握します。
気づかぬうちに目標と行動との間にズレが起こっている可能性もあります。目標達成に向け、適宜コーチングを行うことで部下の主体的な行動を促しましょう。
このとき、解決方法を教えたり行動を指示したりしないように注意します。「何が課題なのか」「どうすべきか」など、部下自身が気づけるような問いかけを行い、軌道修正を図ることが大切です。
3.部下の行動に対してフィードバックを行う
目標達成に向け、どのように行動したか、時間をあけずにフィードバックを行いましょう。フィードバックとは、問題の解決や成長促進を目的とし、実際に取った行動やパフォーマンスの評価を行動した本人に伝えることを指します。
このとき、主観を入れずに客観的なデータに基づいて伝えることが重要です。具体的な数値などを活用し、次なる目標達成に向けたアクションを考えていきましょう。
【関連記事】フィードバックとは?実施手順と成長を促すコツをわかりやすく解説
【お役立ち資料】フィードバック実践のコツと進め方
フィードバックを成功させるためには、対象者とのコミュニケーションを通して信頼感を確保したり、事後のフォローアップをしたりすることが重要です。 本資料では、フィードバックのコツや進め方をさらに詳しく解説します。
パフォーマンスマネジメントの効果を上げるポイント
パフォーマンスマネジメントは運用方法を工夫することで、さらなる効果を期待できます。この章ではパフォーマンスマネジメントの効果を上げる4つのポイントを紹介します。
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- 導入の目的を組織全体に浸透させる
- フィードバック、コーチングスキルを身につける
- 1on1を取り入れ継続的なサポートを行う
- 必要に応じてツールを導入する
1.導入の目的を組織全体に浸透させる
パフォーマンスマネジメントは、全社に目的を浸透させ、企業全体で取り組むことが重要です。目的が曖昧なまま、ただ何となく面談を繰り返してしまうなど、取り組みが形骸化しパフォーマンスマネジメントの効果が得にくくなります。
また、企業の経営ビジョンや経営戦略を明確にし、企業の目標が組織やチーム・個人目標に落とし込むことができれば、成果に結びつきやすくなります。
2.フィードバック、コーチングスキルを身につける
フィードバックやコーチングを行う上司側のスキルが伴っていないと、部下を適切にサポートできません。コーチングは上司が部下に気づきを促し、主体性を育てることが大切です。部下が主体的に取り組めるように、傾聴の姿勢で効果的に問いかけを行うようにしましょう。
また、企業側がコーチングスキルやフィードバックスキルを身に付けられる研修を導入することも有効です。
3.1on1を取り入れ継続的なサポートを行う
1on1とは、上司と部下がマンツーマンで定期的にミーティングをすることで、社員の成長を促進させるマネジメント手法のことです。上司と部下の対話が増えることで、信頼関係が構築され、エンゲージメント向上につながるといったメリットがあります。
1on1で話す内容は、業務に関する悩みから今後のキャリア、プライベートの話題まで自由に決められます。定期的な面談を通して、上司は部下の悩みに気づくことができるため、悩みが大きくなる前に早い段階で解決策を提示できます。
1on1の導入ステップやポイントについては、以下の関連記事を参考にしてください。
【関連記事】1on1とは?目的や話す内容・面談との違い
4.必要に応じてツールを導入する
パフォーマンスマネジメントを効率的に行うために、ツールの導入もおすすめです。ツールを導入することで、目標・評価に関する情報やコーチングの内容などを集約・一元管理でき、業務効率化につながります。
パフォーマンスマネジメントの導入事例
本章では、パフォーマンスマネジメントを活用している企業の事例を紹介します。
スターバックスコーヒージャパン株式会社
スターバックスコーヒージャパンでは、パートを含む全社員を対象に、4カ月に1回の面談を行っています。
専用の面談シートを使い、自身の目標と能力育成計画を設定し、マネージャーからコーチングやフィードバック、次の目標設定まで進めていきます。
専用シートには、「この仕事を通じて達成したい人生の目標」について記載する欄もあります。業務に関する認識を揃えることとあわせて、一人ひとりのはたらく意義を明確にできるため、エンゲージメントが高い状態で業務に携わることができています。
アドビ株式会社
アドビは、2012年に「チェックイン」という人事評価制度を導入しました。従来は年に1度の評価としていましたが、面談機会を増やしフィードバックに注力することで、社員一人ひとりのスキルアップやモチベーション向上を促進しています。
チェックインの導入後、離職率も過去最低水準へと低下しており、エンゲージメント向上につながっていることがわかっています。
まとめ|パフォーマンスマネジメントで社員と組織の成長促進を
パフォーマンスマネジメントは、社員の能力やモチベーションを引き出し、一人ひとりが主体的に行動できるように促すマネジメント手法です。パフォーマンスマネジメントを効果的に導入するには、導入目的を組織全体に浸透することや上司のフィードバック・コーチングのスキルが重要です。
本記事で解説した効果を上げるポイントを参考にしながら、導入を進めてみてください。
【調査レポート】マネジメントの取り組み実態とは?
人材やはたらき方が多様化し、組織マネジメントの重要性が高まっています。
パーソルグループでは、管理職および一般職1,000名を対象に調査を行い、 【マネジメントの取り組み・実態調査レポート】を作成いたしました。
採用・離職、上司・部下の認識ギャップ、キャリアなどに焦点を当て、 組織マネジメントにおける課題や取り組みについてまとめたものです。
組織作りやマネジメントに課題を抱える経営・人事の方、管理職の方のご参考になれば幸いです。
よくあるご質問
Q1.パフォーマンスマネジメントとは?
A1. パフォーマンスマネジメントとは、社員のスキルや能力、モチベーションを引き出し、個人や組織のパフォーマンスを向上させるマネジメント手法です。
また、社員が自分の成長を実感することで、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。
>>パフォーマンスマネジメントとは
Q2.パフォーマンスマネジメントの注意点は?
A2.パフォーマンスマネジメントを効果的に導入するための注意点は、以下の通りです。
1.導入の目的を組織全体に浸透させる
2.フィードバック、コーチングスキルを身につける
3.1on1を取り入れ継続的なサポートを行う
4.必要に応じてツールを導入する
>>パフォーマンスマネジメントの効果を上げるポイント