総務アウトソーシングとは|メリットと導入・運用時のポイントをわかりやすく

労働力不足が深刻な問題となっている日本において、人材不足やコスト削減、業務効率化に課題を抱える企業は少なくありません。特に企業のバックオフィス業務の中軸を担う総務部門において、その課題は顕著と言えます。

総務部門は、企業の人材や制度を支える欠かせない存在であると同時に、多岐にわたる業務を企業内で横断的に請け負う部門です。総務部門の業務は「煩雑化」「分散化」「属人化」しやすいと言われており、こうした課題が多くの企業の悩みの種となっています。

これらの課題の解決策のひとつとして注目されているのが「総務アウトソーシング」です。総務アウトソーシングの導入によるメリットや運用時の注意点、自社にとって最適なアウトソーシングの選択の仕方や、判断基準についても詳しく解説します。

【お役立ち資料】総務アウトソーシングの導入事例と15のチェックポイント

人材不足が深刻化する中、業務生産性を高めるための施策が急務となっています。その解決策として、アウトソーシングを導入する企業が増加しています。

・自社の業務をアウトソーシングすべきかどうか分からない
・アウトソーシングするメリットが分からない

そのような方に向けて、業務別の成功事例や導入ポイントをまとめた「アウトソーシングで業務を改善!成功事例と15のチェックポイント」を公開しています。
アウトソーシングを導入すべきか悩んでいる方は、ぜひご活用ください。

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目次

総務アウトソーシングとは

総務アウトソーシングとは、多岐にわたる総務業務の一部または全部を、外部の専門業者に委託することを指します。総務部門の業務は、一般的には組織全体に関わる横断的な内容が多く、企業の規模や業種によっても求められる内容が変わります。そのため、委託業務の範囲は企業のニーズや提携先のサービス内容によって異なることを、まずは念頭に置きましょう。具体的には、以下で紹介する業務を担うことが多いと言えます。

総務業務一覧

これらには「社員の柔軟な対応が必要な、企業売上に直結する業務(コア業務)」と「マニュアル化できる定型的な業務(ノンコア業務)」が混在していますが、いずれの業務もアウトソーシングが可能です。

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なぜ総務業務をアウトソーシングするのか

総務業務のアウトソーシングが注目される背景には、日本社会における慢性的な人材不足や、2019年4月より順次施行されている、働き方改革関連法における業務効率化促進の影響が関係しています。

アデコの調査では、約50%の企業が総務をはじめとするバックオフィス業務のアウトソーシングを「利用している」「利用予定である」「利用に向けて情報収集中である」と回答しています。多くの企業が総務部門に集中している定型業務を外部に委託し、貴重な社内リソースをコア業務に注力させたい意向にあることが分かります。

加えて、総務は業務範囲の広さから業務が煩雑化しやすく、担当が分散したり属人化したりしてしまうケースが少なくありません。このような問題を解消するため、企業は定型的かつマニュアル化が可能な業務を外部に委託し、効率化を目指す傾向にあると考えられます。

総務のアウトソーシングで期待できること

すでに多くの企業が導入を検討している総務アウトソーシングですが、具体的にはどのような効果が期待できるのでしょうか。4つのメリットについて解説します。

    1. コア業務に注力できる
    2. コスト削減に繋がる
    3. 業務の効率化・品質向上が見込める
    4. 属人化が解消できる

1.コア業務に注力できる

総務業務には、主に「日常業務」「管理業務」「戦略業務」の3つがありますが、日常と管理の2つの業務をアウトソーシングすることで、社内リソースを働き方改革やBCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)といった「戦略業務」へ集中させることが可能となります

また、来客対応や受電対応、郵便物の受け取りといった、出社が必要な業務をアウトソーシングすることで、担当者が必ずしも出勤しなくてもよい体制が整うことも利点です。結果的にテレワークやサテライトオフィスでの勤務といった新しいはたらき方も導入しやすくなります

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2.コスト削減に繋がる

繁閑差に応じて必要なときだけアウトソーシングを活用することで、人件費や労務管理費の変動費化を実現し、コスト削減につなげられる点も、総務アウトソーシングを活用するメリットです。

例えば、毎月の給与処理業務は、月末や年度末に業務が集中するため、そのタイミングのみアウトソーシングを活用し、閑散期には社内対応に切り替えるなど柔軟な体制を構築することで、不要な固定費の削減が期待できるでしょう。

さらに、アウトソーシングの種類や委託先によっては、業務管理だけでなく人材管理まで委託できるメリットもあります。人材管理もアウトソーシングすることで、担当者の退職や異動時にも採用や教育、引き継ぎなどにかかる工数の削減にもつながるでしょう。

社会保険や税関係の法改正などによる業務の見直しや対応に迫られた際も、委託先に業務を一任することで、総務部や人事部などのバックオフィス部門の負担軽減につながります。

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3.業務の効率化・品質向上が見込める

専門性の高い外部リソースを活用することで、業務の品質向上が期待でき、さらにアウトソーシング導入を機に自社業務が整理されるため、業務改善にもつながります

例えば、労務管理が特定の社員に任されていた場合、担当社員が不在の際には労務関連の手続きが滞ることもあるでしょう。しかし、アウトソースをきっかけに業務がマニュアル化・可視化されれば、脱属人化が実現できるでしょう。また、委託先スタッフのアドバイスや最新ツールの活用によって、自社業務のより効率的な運営も期待できます。

4.属人化が解消できる

総務業務は、長年にわたって特定の社員に依存しがちな業務も多いため、属人化のリスクが高いと言える領域です。業務が属人化すると、担当者の退職や異動が発生するたびに業務の引き継ぎが難しくなり、社内のノウハウが断絶してしまう恐れがあります。

アウトソーシングを活用することで、こうした属人化を解消し、業務の標準化・マニュアル化が可能となります。委託先のノウハウを活かし、業務プロセスが体系的に整理されれば、新しい担当者がスムーズに業務を引き継げるでしょう。属人化の解消は、結果的に業務の安定性向上につながります。

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総務のアウトソーシング活用で気をつけるべきポイント


コア業務への注力やコスト削減、業務の効率化・業務対応品質の向上など大きな改善の期待が見込める総務アウトソーシングですが、いざ導入・運用し始めても、思うような成果が得られなかったり、結果的にコスト削減に繋がらなかったりする場合があります。

アウトソーシングの選定・導入時と運用時に気をつけるべきポイントをそれぞれ解説します。

選定・導入時のポイント

アウトソーシングを導入する前に自社がアウトソースを行う目的と依頼範囲を整理し、コストやセキュリティ面で問題がないか確認しましょう。

自社の課題を洗い出す

総務業務のアウトソーシングを検討する際は、自社が抱える課題を具体的に洗い出すことが重要です。以下のように、企業は多様な課題を抱えていることが想定されます。

    • 固定費を削減したい
    • 社内リソースをコア業務に振り分けたい
    • 専門性の高い外部の知見を取り入れることで業務を効率化したい

あらかじめ想定される課題を明確化しておくと、アウトソーシング導入の目的がよりはっきりし、委託する業務の範囲や適切な委託先の選定にも役立ちます。

アウトソーシング導入の目的を明確にする

総務業務のアウトソーシングを成功させるためには、導入の目的を明確にすることが大切です。自社の課題に即した具体的な目的を設定しましょう。

目的を明確にすることで、外部委託する業務の範囲や委託先の選定基準がはっきりし、効果的な運用が期待できます。また、目的が明確であれば、導入後にどのような成果を目指すべきかを判断しやすくなり、定期的な見直しによる改善が可能です。

委託する業務と自社で行う業務に分ける

委託する業務と自社で行う業務の範囲を明確に区別することも、重要なポイントです。総務業務には日常的な対応が求められるタスクから緊急対応が必要な相談まで多岐にわたります。どこまでを外部に任せ、どの部分を社内で保持するのかを慎重に検討しましょう。

例えば、マニュアル化しやすい定型業務や繁忙期に負担が増す業務は外部委託し、戦略的な意思決定が必要な業務は社内で管理できれば、業務効率化とコア業務への集中が両立できます。

委託の際のコストは適切か確認する

委託コストが適切かどうかの検討も、慎重に行いましょう。自社で行った場合の人件費や管理費、教育費などと比較して、実際にアウトソーシングによって得られるメリットが費用に見合うものかどうかを確認します。

また、契約内容やサービス範囲によっては、追加費用が発生するケースもあるでしょう。詳細な見積もりや条件を事前に確認し、コストが自社の予算内であるかどうか、検討しなければなりません。このような適切なコスト管理により、効果的な予算配分と経営効率が期待できます。

委託先のセキュリティ体制を確認する

総務業務には社内の重要な情報が含まれます。そのため、委託先のセキュリティ体制の確認は必須です。個人情報や社内の機密情報が漏えいするリスクを防ぐため、委託先がどのような情報保護措置を講じているか、セキュリティに関するガイドラインや監査体制が整っているかを確認しましょう。

また、万が一の情報漏えい時の対応策や損害賠償の規定についても、明確にしておきましょう。高いセキュリティ基準を満たした委託先を選ぶことで、業務を安心して任せられる体制が整います。

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総務業務をはじめ、さまざまな部門ごとにアウトソーシングの成功事例を紹介。現場の課題感からアウトソーシング導入後の効果、改善のプロセスをまとめています。

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運用時のポイント

定期的なモニタリング

アウトソーシング運用時は、委託先とコミュニケーションを密に取り、情報共有を行うように心がけましょう。特に事務業務や労務管理などは、数値として成果が見えにくい傾向にあります。そのため、フィードバックをもとに改善を続けることで、業務効率化やコスト削減も達成しやすくなるでしょう。

また、フィードバックをもとに改善を重ねることで、より効率的な業務遂行やコスト削減が可能となります。定期的なレビューの機会を設けるなどして委託先と協力し、成果や課題についてモニタリングを行いましょう。

ナレッジの蓄積・業務改善を行う

総務アウトソーシングを導入した後も、委託先に任せきりにせず、自社内でノウハウやナレッジを蓄積する取り組みが重要です。情報共有を行うことで自社にノウハウを蓄積し、今後の内製化や委託先の切り替え時もスムーズに対応できる基盤を作りましょう。

また、蓄積したナレッジをもとに、自社に最適な業務フローの改善を図ることで、継続的な業務効率化が期待できます。担当者間での情報共有も行い、総務業務の質を高めていく体制を整えましょう。

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総務アウトソーシング活用の注意点

総務アウトソーシングは、業務の効率化やコスト削減といった多くのメリットをもたらしますが、一方でいくつかのリスクや注意点もあります。効果的な導入のためにも、5つのポイントに注意しましょう。

1.初期費用やランニングコストがかかる

総務アウトソーシングを導入する際には、初期費用やランニングコストについて要検討しましょう。

導入時の準備費用や、業務引き継ぎの際の教育・指導コストが発生するだけでなく、運用中も毎月の委託料がかかります。また、委託先のサービス範囲を拡大すると追加料金が発生するケースもあるため、契約内容を事前に詳細に確認し、予算内で計画的に運用することが重要です。

コストに見合う効果が得られるように、導入前にROI(投資対効果)を見積もり、入念な準備を行いましょう。

2.情報漏えいのリスクがある

総務部門は、企業の機密情報や従業員の個人情報を扱うため、アウトソーシングによって情報漏えいリスクが高まります。委託先のセキュリティ体制や情報保護対策が十分に整っているか確認し、データ管理に関する契約内容も明確にすることが大切です。

また、定期的なセキュリティ監査やアクセス制限の導入など、情報保護に関する対策を行うことで、リスクの軽減が図れます。万が一の漏えい時の対応も契約前に確認しておきましょう。

3.社内での管理・運用ノウハウの蓄積が難しい

総務アウトソーシングの利用によって日常的な業務が委託先に依存し、社内での管理や運用ノウハウの蓄積不足が散見される点も課題のひとつです。

委託先に任せきりにしてしまうと、将来的に社内体制へ戻す際にスムーズな業務移行が困難になります。そのため、定期的に情報共有を行い、社内でもノウハウを保持する仕組みづくりが必要です。業務フローやマニュアルを社内でも随時更新し、担当者間での知識の引き継ぎ体制を整えておきましょう。

4.コミュニケーションギャップが発生する恐れがある

アウトソーシングを導入すると、社内と委託先の間で情報伝達や業務連携が複雑になり、コミュニケーションギャップが生じる恐れがあります。業務の進捗や変更点が適切に共有されなければ、業務の遅延やミスの原因にもなりかねません。

こうしたリスクを避けるためにも、定期的な打ち合わせや進捗報告の機会を設け、双方での認識を一致させるよう心がけましょう。明確な報告・連絡・相談のルールを確立することで、スムーズな連携が期待できます。

5.解約後の内製化が負担になる

アウトソーシング契約を解約し、自社で業務を内製化する際には、再び業務を社内で回すための準備が必要です。内製化の際には委託先からの業務引き継ぎや、社内リソースの再確保、業務フローの再構築などが必要であり、事前に計画が不足していると円滑な移行が難しくなる場合もあります。

負担を軽減するためにも、解約後の内製化を見越し、導入当初からノウハウを社内に残す取り組みや業務の記録・共有体制を整えることをおすすめします。

総務アウトソーシングの活用事例

最後に、パーソルグループがご支援した、総務アウトソーシングの導入事例を紹介します。

ノンコア業務を集約し、事業拡大に伴う社員の業務負荷を軽減

従業員規模100〜500人の原料メーカーA社では、事業拡大に伴って総務部門の業務量が増加しており、本来であれば従業員をコア業務に集中させたいところ、日々の定型業務に追われリソースの配分が困難な状況でした。

さらに、グループ会社4社とともに本社移転が決定したため、グループ各社の業務を整理し最適化する必要がありました。

そこでパーソルでは、新オフィスに「総務ルーム」を設置することによって、ワンストップで総務業務がアウトソーシングできる仕組みを提案。来客や取引先の対応、代表電話の受電、庶務業務など幅広い総務の業務をトータルでアウトソーシングすることによって、従業員は日常的な定型業務から解放され、コア業務に専念できる環境が整いました。

同時に、グループ会社の業務の可視化を実施。各社の類似業務や重複業務を本社総務に一元化するため、業務ルールやフロー、外部ベンダーとの連絡方法の見直しを提案しました。また、グループ会社の業務移行に伴い、マニュアルを作成。来客対応や社員からの問い合わせ対応の業務品質を安定させるために、アウトソーシングスタッフの業務を固定化する仕組みも導入しました。

結果として、本社およびグループ4社の総務業務が集約され、業務効率化が実現しました。

総務カウンター設置で「探す・迷う」を解消、月間の検索時間約57時間を削減

従業員300名のサービス業の企業では、貸出業務や在庫管理業務、メール代行、問い合わせ対応といった業務を担当制で運用していました。

しかし、従業員が総務部に依頼をする際、「誰が担当者なのか」「どこに問い合わせればいいのか」が分からず、時間のロスが頻発。さらに、担当が割り振られていない総務業務においては気づいた社員が対応する状況が続き、業務の重複や非効率な状況が問題となっていました。

このような課題を解決するために「総務カウンター」を設置し、常駐スタッフがいる状況を作ることで、社員の検索時間を短縮し、結果的に月間で約57時間の削減に成功しました。

さらに、総務業務を整理し可視化。業務ルール・プロセスを策定したり、共通業務を集約し、委託先に適切に振り分けたりすることで、事務担当者の業務時間を月間で約35時間削減し、総務社員がコア業務に専念できる環境を整えました。

【お役立ち資料】総務アウトソーシングの導入事例と15のチェックポイント

人材不足が深刻化する中、業務生産性を高めるための施策が急務となっています。その解決策として、アウトソーシングを導入する企業が増加しています。

・自社の業務をアウトソーシングすべきかどうか分からない
・アウトソーシングするメリットが分からない

そのような方に向けて、業務別の成功事例や導入ポイントをまとめた「アウトソーシングで業務を改善!成功事例と15のチェックポイント」を公開しています。
アウトソーシングを導入すべきか悩んでいる方は、ぜひご活用ください。

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まとめ

総務アウトソーシングは、企業全体の業務効率化の観点でも有効な手段のひとつです。外部に委託することで、社内リソースの最適化やコスト削減、業務効率化、クオリティ向上などが期待できます。

アウトソーシングを導入する際は、自社業務の目的や依頼範囲にマッチするサービスを選ぶことで、リスクを防ぎ、コストパフォーマンスの高い成果が得られます。

パーソルグループでは、総務庶務関連業務のアウトソーシング・BPOサービスを提供しています。100業務以上の幅広い対応に留まらず、委託元社員が迷うことなく利用できる「ワンストップ型オフィス」の構築をはじめとする、企業の将来を見据えた「戦略的総務庶務」へと生まれ変わる支援をいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

Q1.総務業務をアウトソーシングするメリットは?

A1.以下4つのメリットが挙げられます。

・コア業務に注力できる
・コスト削減に繋がる
・業務の効率化・品質向上が見込める

・属人化が解消できる

総務業務は繁閑差がある場合が多いため、変動費化によってコストの削減が見込めるでしょう。また、専門性の高い外部リソースを活用することで、業務の効率化も期待できます。

>>総務のアウトソーシングで期待できること

Q2.総務業務をアウトソーシングする際の流れは?

A2.まずは自社の業務を洗い出し、アウトソーシングを導入する目的を明確にしましょう。導入目的に応じて委託先にどのような効果を期待し、どこまで委託するのかを定めます。また、委託先を選ぶ際は、コストの適正さやセキュリティレベルの確認が必要です。

>>総務のアウトソーシング活用で気をつけるべきポイント