2021年11月26日
2023年08月30日
人材不足が課題となっている昨今、煩雑な経理業務を効率化すべく、注目を集めているのが経理アウトソーシングです。経理アウトソーシングとは、企業の経理業務の一部もしくはすべてを外部の企業に委託するサービスのことを言います。
本記事では、経理アウトソーシングで委託できる業務や、導入のメリット・デメリット、そしてアウトソーシング先の選び方について解説します。
【お役立ち資料】経理の業務改善まるわかりBOOK
経理業務のDX化、ペーパーレス化が求められる中、日々の業務に追われ、なかなか進められずにいたり、そもそも進め方が分からないといった課題をお持ちではないでしょうか。
本資料では、経理業務効率の改善ができない原因から、業務の改善方法の選択肢、経理業務の標準化について詳しくご説明しています。
経理業務の効率化を検討される際には、ぜひご一読ください。
目次
経理アウトソーシングとは、企業の経理業務の一部もしくはすべてを外部の企業に委託するサービスのことを言います。アウトソーシングは「BPO」「業務委託」と呼ばれる場合もあります。
アウトソーシングを導入することで、高い専門性を持つ外部業者へ業務を委託できるため、業務の効率化につながります。
財務・経理に特化したアンケートメディアPRO-Qの調査によると、経理の業務課題は「業務の属人化」が最も多いことがわかります。
経理業務は高い専門性が求められるため、知識のある特定の担当者に業務が集中しやすい傾向があります。業務が属人化すると、担当者の退職など有事の際に、業務が停滞するリスクがあり、企業全体に影響が出てしまいます。
さらに、アナログな作業が増えがちな点も経理業務ならではの課題です。例えば証憑の確認や保管を紙で行っていたり、納品書や請求書の承認を押印にて行ったりと、業務効率化を妨げる文化が浸透している場合があります。
また、「電子化への移行」「専門知識の習熟」に次いで、「人手不足」も課題として挙げられています。少子高齢化などにより労働人口が減少し、人材不足の状態が続いています。特に近年は、インボイス制度など法規制の改定が多く、経理業務が複雑化しており、採用が難しくなっています。限られた人員で大きな成果をあげることが求められていく中、業務の効率化は必要不可欠だと言えるでしょう。
【お役立ち資料】アウトソーシングの成功事例と導入後の効果
人材不足の解消を図るべく、アウトソーシングを導入する企業が増えています。本資料では、総務・経理・営業など、業務ごとにアウトソーシングの成功事例を紹介しています。導入すべきかお悩みの方は、ぜひご覧ください。
経理アウトソーシングでは、日次や月次で発生する伝票整理、請求書の発行、給与支払いや経費精算に伴うデータ作成、契約書や納品書といった証憑確認など、幅広い業務を委託することが可能です。
証憑処理 | ・証憑の受け取り ・証憑の内容確認 ・振替伝票などの起票 ・証憑の仕訳入力 ・伝票と証憑の照合 |
---|---|
データ作成 | ・支払データ、振込データ、 経費データの作成 ・振込先マスター登録 |
請求・消込 | ・請求、振込金額の照合 ・入金消込 ・証憑の作成、封入・封緘、発送 |
管理・検索 | ・データ作成 ・支払データ、振込データ、 経費データの作成 ・振込先マスター登録 |
これらの日次・月次で発生する業務以外に、決算申告もアウトソーシングが可能です。決算申告は期間が限られていることに加え、社内や監査法人の対応なども必要で工数のかかる業務だと言えます。アウトソーシングすることで、工数削減や業務効率化につながります。
経理アウトソーシングを導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的なメリットを5つご紹介します。
請求書発行や経費精算といった定型業務を外部に委託することで、人手不足が解消されます。
また、外部へ委託する際に業務が可視化されたり、整理・マニュアル化されたりするため、属人化の解消にもつながります。属人化が解消されれば、経理担当者の入れ替えや急な退職にも対応しやすくなります。
【関連記事】人手不足の現状と原因|業界別データと6つの解決策・事例も解説
社会保険や各種税制度などの法改正によって、経理担当者は毎年のように制度変更を理解して、業務のやり方を変更する必要があります。この法制度の変更に関する情報を収集・理解し、全ての経理担当者に教育を行うのは、骨の折れる業務です。
経理アウトソーシングのサービスを提供している企業は、経理に関する最新の情報やノウハウを有しています。そのため、自社の経理担当者が情報収集し、教育する手間を省くことができます。
経理業務には、一般的に「繁忙期」と「閑散期」が存在します。
月末月初や会計の期末にあたる時期は、経理における繁忙期にあたります。多くの企業の経理部門では、繁忙期に人手不足に陥り、場合によっては経理担当者が残業でタスクをこなすといった状況に追い込まれます。
しかし、繁忙期に合わせて新たに経理担当者を雇用すると、閑散期には余剰人員が発生してしまいます。そこで、経理アウトソーシングを繁忙期にスポットで活用することにより、柔軟な人員コントロールができるようになります。
経理アウトソーシングのサービスを提供している企業は、専門的な知識とノウハウを有しているため、業務品質の向上が期待できます。さらに、アウトソース時に自社業務が整理されるため、業務改善にもつながります。
繁閑差に応じて必要なときだけアウトソーシングを活用することで、人件費や労務管理費が変動化し、コスト削減につながります。また、自社であれば、担当者の退職・異動時は採用や引継ぎのコストが発生しますが、アウトソーシングを活用することで採用や育成にかかるコストも削減できるでしょう。
【関連記事】コスト削減とは?削減アイデアと成功事例・NG例を解説
経理アウトソーシングにはメリットがある一方で、デメリットもあります。
委託先の企業に業務を丸投げしていると、自社の社員のスキルアップや育成に繋がらず、「委託先が何をしているのか分からない」「業務効率が改善されたのか検証できない」といったことに陥りかねません。
そのため、委託先の企業と密に情報連携しながら進めるとともに、フローを標準化し、自社でも運用できるような体制を整えるとよいでしょう。
トラブルが起こった際、素早い対応ができない可能性もあります。
そのため、委託方法については十分留意する必要があります。トラブルが発生した際にどれくらいの期間で対応してくれるのか、スタッフの常駐は可能なのか 、といった点を契約時に考慮しましょう。
業務内容によっては、外部スタッフが機密情報を扱うことになり、情報流出のリスクが高まります。
そのため、秘匿価値の高い情報を扱う業務は、アウトソーシングを導入すべきか慎重に検討すべきでしょう。また、委託先の企業が情報の取り扱いに関してどのように取り組んでいるのか、事前に確認することが大切です。
経理業務の一部をアウトソーシングする際に、社内の経理事務と経費処理が重複してしまう可能性もあります。自社で対応すべき業務とアウトソーシングすべき業務を整理し、依頼範囲を明確にしましょう。
【関連記事】アウトソーシングの3つのデメリットと解消策、ポイントを解説
委託先を選定する際は、以下のポイントを確認し、慎重に判断しましょう。
委託先に提供するデータに、企業の機密情報や個人情報が含まれている場合は、委託先のセキュリティ対策を事前に確認しましょう。
個人情報の保護体制を示す「プライバシーマーク」や 「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)」など、 セキュリティに関する認証を取得しているか否かも、判断材料になります。
アウトソーシングを成功させるためには、委託先と密にコミュニケーションをとりながら、進めていくことが重要です。
担当者のレスポンスは速いか、円滑に意思疎通ができるかなどもチェックしておきましょう。対応スピードが遅く、業務が滞ってしまうと、コア業務へも支障が生じる恐れがあります。トラブル発生時にもすばやく解決できるかも重視すべきポイントです。
自社の状況を踏まえた、柔軟な提案を行ってくれるか確認しましょう。
例えば、現行のシステムの切り替えや開発が必要になると、導入時に多くの工数・コストを要します。自社の制度やシステムに合致した業務設計・提案を行ってくれる委託先を選ぶことが大切です。
経理業務のアウトソーシングを依頼する際は、事前に課題や改善点を明確化するとともに、費用を抑える工夫をすることもポイントとなります。
経理業務に限った話ではありませんが「いつ、誰が、何を、どれくらいの時間で」処理しているかを把握できれば、無駄や改善方法が分かりやすくなります。そのため、まず業務を洗い出し、課題を明確に把握することからはじめましょう。
・特定の担当者に業務が集中している
・承認までの工数が多く、確認作業に多くの時間がかかっている
・紙ベースで書類を保存しており、すぐに確認ができない など
業務の見直しには、業務改善のフレームワーク「ECRS(イクルス)の原則」が活用できます。
・排除(Eliminate)…作業をなくしても問題ないか
・結合(Combine)…作業をまとめられないか
・再配置(Rearrange)… 作業の順序を変えて効率化できないか
・単純化(Simplify)…作業をもっと簡単にできないか
業務を可視化した後、洗い出した業務に対してこれらの観点から業務を見直すと改善点が見えやすくなるでしょう。また、「E>C>R>S」の順番で業務改善の効果が高い傾向があるため、優先順位をつける上で効果的です。
また、業務フローを見直すと同時に、スケジュール調整も行い、業務切り替えのタイミングでの役割分担も明確にしておきましょう。
経理アウトソーシングでは、提出する資料の状態によって料金が変動する場合があります。業務に必要な領収証などの資料が整理されていないと、資料の振り分け作業から必要となるため、コストがあがります。
コストを抑えるためにも、提出する資料はファイリングし、すぐに参照できる状態にしておきましょう。特に、部署数が多い企業の場合、各部署との連絡や調整に時間を要します。
また、スケジュールには余裕をもち、いつまでに何を用意・提出するのか、あらかじめ期限も設定しておくことをおすすめします。
アウトソーシングを成功させるには、実際に業務を担当するメンバーの協力が欠かせません。
どのような課題感を抱えているのか、将来的にどのような姿を目指すためにアウトソーシングするのか、業務を委託する範囲や今後の体制など、社内での共通認識をもつようにしましょう。
年末調整や決算申告といった期限が定められている業務は、依頼するタイミングが遅くなると委託先にも大きな負荷がかかるため、料金が加算されます。
コストを抑えるためには、余裕をもって早めに依頼することを心がけましょう。
経理アウトソーシングにかかる費用は、委託業務によって異なります。ここでは、業務ごとの費用相場を紹介します。
請求支払いや経費精算、固定資産の登録といった一つひとつの取引について、根拠資料をもとに複式簿記により仕訳を行い、会計帳簿を作成する業務です。
料金は1仕訳あたりの単価で設定されている場合が多く、1仕訳あたり50円〜100円が相場です。取引の少ない小規模な事業者であれば毎月数千円程度の料金ですが、大企業になると数万円単位の料金がかかります。
仕訳数 | ~100 | 101〜200 | 201〜300 | 301〜400 | 401〜 |
---|---|---|---|---|---|
料金相場 (月額) |
約10,000円 | 約15,000円 | 約20,000円 | 約25,000円 | 約30,000円〜 |
従業員一人ひとりの出退勤データを精査し、残業時間や保険料等を計算する業務です。毎月の給与から源泉徴収した所得税を年末に精算する年末調整をオプションで依頼できる場合もあります。
費用相場は従業員1人あたり1,000円〜2,000円で、年末調整は500円〜2,000円が相場です。委託先によって基本料金やオプションの範囲などが異なるため、詳細をよく確かめるようにしましょう。
単純な給与計算のみを依頼する場合、従業員数ごとの費用相場は以下のとおりです。
従業員数 | 10人 | 50人 | 100人 | 500人 | 1,000人 |
---|---|---|---|---|---|
料金相場 (月額) |
15,000円〜20,000円 | 40,000円〜60,000円 | 80,000円〜100,000円 | 300万円〜 (年額) |
500万円〜 (年額) |
決算書の作成や法人税の申告を委託でき、費用相場は5万円〜20万円です。決算書の作成業務のみを委託するか、納税額を計算する申告業務までを委託するかによっても費用が変わってきます。
また、会計士などの専門家に委託する場合は15万円〜25万円が相場で、法定調書や賠償資産申告書などの対応も合わせて委託するとさらに10万円〜20万円程度の費用がかかります。
最後に、アウトソーシングを活用することで、直面していた課題を解決に導いた2社の事例を解説します。
A社では、繁忙期に経費精算や伝票処理などの業務に追われ、担当者が深夜まで残業を余儀なくしているだけでなく、経理部門では人手が足りず他部署にヘルプを要請するといった問題がありました。
また、経費精算に関する業務マニュアルはあるものの更新されておらず、口頭での引継ぎが行われ、対応者によって処理方法が異なることからミスが度々起こっていました。
そこでA社は、経理アウトソーシングをパーソルに委託。まずは、コンサルタントが過去のデータから業務量を分析し、人材の最適配置計画を策定。繁忙期にスポットしてスタッフを派遣することで、経理担当者がコア業務に集中できる環境を整えました。
また、アウトソーシングチームにより、該当業務に関する調査および分析を行い、対応マニュアルを策定。業務フローやルールを統一することで、ミス削減や業務効率化に成功しました。
B社では、経理・財務部門で人員の入れ替わりが少なかったことから、業務の属人化が進んでいました。
そこで、 パーソルのコンサルタントによる担当者へのヒアリング・類似実績でのノウハウをもとに業務調査を実施。コア業務とノンコア業務を切り分け、社員がコア業務に特化できる環境を実現しました。また、属人化している業務を洗い出し、マニュアルやFAQを作成することで誰がこなしてもミスがなく高いクオリティの業務ができるように「業務の標準化」を推進しました。
また、経理部門と財務部門では、それぞれ独立して業務運用を行い派遣採用をしていたため、片方の部門が繁忙期の時にもう片方の部門では閑散期といったように、適切な人員配置ができずにいました。
そこで、双方の部門の業務内容を調査し、定量的な工数や類似業務を明確化。パーソルが経理部と財務部の各業務を一体化した効率的な業務運用を提案しました。
経理部門と財務部門を一体化して運営することにより、業務の無駄や人材の最適配置を実現しています。
【関連記事】アウトソーシングの導入事例|成功に導く3つのポイントとは
経理業務効率化の一手段として、アウトソーシングについて解説してきました。業務内容が多岐にわたり作業量も多い経理業務を改善するためには、自社の課題感に合う最適な方法を選択する必要があります。
アウトソーシング以外の施策例を2つ紹介します。
部署ごとに会計書類のフォーマットや管理方法が異なっている場合、それらを統一するだけで業務効率化が進むこともあります。例えば請求書の記載内容やファイルの命名ルールについて独自ルールが浸透していると、部署異動のたびに新たなルールを確認したり覚えたりする必要があり、手間がかかります。
小さな改善施策ではありますが、一度ルールを整えれば今後の管理がしやすくなります。まずはどのようなフォーマットが使われているのか、どのようにデータを管理しているのかを確認し、ルールを統一することから始めてみましょう。
独自の。ある程度のスキルを有する人材を素早く確保できるメリットはありますが、有期雇用の場合は契約期間に縛りがあるため、注意が必要です。
各種ツールやRPAの導入も、業務効率化の一手です。先述の通り、経理業務はアナログな管理や作業による課題感を持つ企業も多いです。ツール導入時には費用・教育面でのコストが発生しますが、紙やエクセルで管理していた情報を一元化すれば、情報を引き出したり見える化したりする工数を大幅に削減できるようになります。
本記事では、経理部門においてアウトソーシングの活用を検討している企業に向けて、経理アウトソーシングの基礎知識やメリット・デメリット、具体的な事例などを解説しました。
経理アウトソーシングは、経理部門全体をコア業務に注力できる、繁忙期・閑散期における適切な人員配置といったメリットをもたらします。しかし、闇雲に導入を決定するのではなく、何を目的に導入するのか、将来的に経理部門の自走は必要なのかを明確にするとともに、運用後もコストカットや業務効率化に寄与したのかといった点を検証していく必要があります。
本記事でご紹介した活用事例や、自社の経理部門が置かれている状況を十分に考慮した上で、効果的に経理アウトソーシングを導入しましょう。
パーソルグループの幅広いネットワークと創業45年以上の実績を活かし、お客様の現状、課題、業務特性等を踏まえた最適なソリューションをご提案させていただきます。お気軽にお問い合わせください。
A.基本的には、経理業務全般を委託することが可能です。例えば、伝票整理や請求書の発行、経理データの作成など非常に多岐に及びます。
>>経理アウトソーシングで委託できる業務
A.まずは自社の課題を洗い出し、アウトソーシングを導入する目的を明確にします。目的を基準に各アウトソーシング企業の強みや実績を情報収集し、自社のニーズに合う企業を選定しましょう。
>>経理アウトソーシング先の選び方