2025年03月17日
職場におけるパワーハラスメント(以下パワハラ)は、従業員の心身に大きな影響を与えるだけではなく、企業の生産性や社会的信用を損なう要因にもなります。2020年6月よりいわゆる「パワハラ防止法」が施行されており、企業はパワハラを防止するための対応を行う必要があります。
本記事では、パワハラ防止法の内容や、企業が取り組むべき対策について詳しく解説します。パワハラ防止法の具体的な内容を学び、自社での対応にぜひ生かしてください。
パワハラ防止法対応の第一歩、ハラスメント対策ガイド公開中
パワハラ防止法の施行により、企業は明確な対策が求められる時代になりました。
「何から始めればいいのか分からない」「制度は整えているものの不安がある」と感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。
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目次
パワハラ防止法とは、2020年6月より施行された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」のことです。この法律により、企業には職場におけるパワハラ防止対策を講じることが義務付けられ、違反した場合には指導や企業名の公表などの措置が取られる可能性があります。
職場におけるパワハラの定義は、以下の通りです。
上記3つの要素をすべて満たすものがパワハラです。
ここでいう「職場」はオフィスの中だけを指すのではなく、労働者が職務を遂行する場所すべてが含まれます。例えば出張先や取引先との商談場所、移動の車中なども職場として見なされます。
企業は、正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、すべての従業員にパワハラ防止策を講じる必要があります。派遣従業員については、派遣元の企業だけではなく派遣先の企業も、自らの雇用する従業員と同様に措置を講じなければなりません。
地方公務員もパワハラ防止法の対象となります。ただし、国家公務員は対象外であり、人事院規則で別途定められています。
【関連記事】パワハラとは?定義と6つの類型、企業が取り組むべき対策を解説
パワハラ防止法が制定された背景の一つは、パワハラに関する相談が増加したことです。都道府県労働局などに設置された総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、2008年度32,242件から2017年度には72,067件と、10年間で2倍以上に増加しました。
また欧米諸国では1990年代ごろから日本に先駆けてハラスメントに対する法規制が進んでいたことも、パワハラ防止法制定の背景の一つと考えられます。2019年には、ILO(国際労働機関)で「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」が採択され、暴力やハラスメントへの対策が必要であるという認識が国際的に高まりました。こうした国際的な流れも、日本でのパワハラ防止法制定を後押ししたと考えられます。
2020年6月の施行当初は大企業に限ってパワハラ防止対策が義務化されており、中小企業については努力義務となっていました。しかし、2022年4月より中小企業や個人事業主にも適用され、対策の実施が義務付けられました。現在は業種や規模によらず、すべての企業がパワハラ防止対策を講じる必要があります。
なお、大企業と中小企業は、資本金の額または出資の総額と、常時使用する従業員数によって区別されます。中小企業の定義は、業種によって異なります。
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
---|---|
卸売業 | 資本金の額または出資の総額が1億円以下、または常時使用する従業員の数が100人以下 |
小売業 | 資本金の額または出資の総額が5千万円以下、または常時使用する従業員の数が50人以下 |
サービス業 | 資本金の額または出資の総額が5千万円以下、または常時使用する従業員の数が100人以下 |
製造業その他(上記3つに当てはまらない業種すべて) | 資本金の額または出資の総額が3億円以下、または常時使用する従業員の数が300人以下 |
企業には、パワハラ防止対策を講じることに加え、雇用主自らもパワハラに関して関心や理解を深め、従業員への言動に注意を払うよう努めることが求められます。
また企業の雇用主だけではなく、従業員もパワハラへの理解を深め、自身の言動に注意しなくてはなりません。
【お役立ち資料】パワハラ防止法対応の第一歩、ハラスメント対策ガイド
パワハラ防止法の施行により、企業は明確な対策が求められる時代になりました。本資料は、ハラスメント対策の課題点と予防法についてまとめていますので、ハラスメント対策をご検討されている方は、ぜひご活用ください。
パワハラ防止法の施行に伴い、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」が定められました。この指針では、企業は以下の4つの措置を講じることが求められています。
ここからは、それぞれの措置について詳しく解説します。
企業はパワハラの防止方針を明確に打ち出し、従業員への周知を徹底する必要があります。企業としての姿勢を伝えることで、パワハラに対する意識が高まり、未然に防ぐことにつながります。
例えば、従業員向けの通達文書、社内向けのWebサイト、就業規則にパワハラの定義や禁止事項、相談窓口などを明記することなどが対応として考えられます。このような対応は、従業員がパワハラについて理解し、相談しやすい環境を整える第一歩といえるでしょう。またパワハラを行った者に対し厳正に対処する旨や対処内容を明記することも有用です。
従業員が具体的にパワハラの相談をできるような環境を整えることも、企業の重要な責務です。つまり、パワハラなどの相談に対応するための窓口を明確に定め、これを従業員に周知すること、相談があった場合のルールを明確にしておくことが必要です。
相談窓口を設置する場合、具体的な担当部署や当該部署への連絡方法を明示することが必要です。また担当部署は、従業員のプライバシーや雇用不安に配慮しながら申告された事実について必要な調査を進めることになります。相談窓口の担当者による対応のばらつきを防ぐため、適切に対応するためのマニュアルやルールを作成しておくと良いでしょう。
相談窓口を社内に設置するのではなく、外部の専門機関に委託することも可能です。リソースの余裕がない場合や、専門知識を有する従業員が居ない場合などにおすすめです。
また、単に窓口を設置しても、従業員に的確に認知されなければ意味がないため、従業員向けのパワハラに関する研修などを通じて相談窓口の存在や相談の手続きについて周知させる必要があります。このような研修で、パワハラの定義や考え方について啓発するトレーニングをすることで、より実効性が高まります。
パワハラが発生した場合、企業は迅速かつ適切な対応を取る必要があります。被害の拡大を防ぎ、二次被害を防止するために重要です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
パワハラが発生した場合は、事実関係を正確に把握するために、パワハラを申告した従業員、パワハラを目撃した従業員、パワハラ行為が疑われる従業員などにヒアリングを実施し、ヒアリング内容を裏付ける客観的な証拠(メール、録音など)を収集する必要があります。
調査の結果パワハラの事実が認められた場合は、再発防止の観点からパワハラを行った行為者に対する処分や職場内での注意喚起など、再発防止に向けた対策を行う必要があります。
また、パワハラ被害のある従業員の職場環境を是正する措置として、例えば、必要な人事異動や業務ラインの変更などを検討する必要もあるでしょう。
上記1~3までの措置を講じるに当たり、以下2つの措置を併せて講じなければならないと定められています。
1つ目の措置におけるプライバシーには、性的指向や性自認、病歴といった機微な個人情報も含まれます。相談によって知り得た情報を保護するため、相談窓口の担当者へプライバシー保護に関する研修を実施しましょう。
2つ目の措置は、従業員が相談したり、協力したりすることにより不利益を被るリスクを恐れ、声を上げられなくなってしまうことを防ぐのに重要です。
パワハラ防止法には、企業が講ずべき措置の他、企業と従業員の間で紛争が生じた場合の対処方法についても以下の定めがあります。
紛争調整委員会とは、公平・中立な第三者として紛争の解決を図る労働問題の専門家組織です。都道府県労働局長による助言や指導で紛争が解決しない場合に、紛争調整委員会による調停が行われます。
ここからは、パワハラの以下3つの要素について、具体的にどのような言動を指すのかを解説します。
前述の通り、3つの要素をすべて満たす場合がパワハラに該当します。例えば、上司が部下に対して多少厳しい口調で指導したとしても、業務上必要かつ相当な範囲内であれば、パワハラには該当しません。しかし、指導内容が人格否定をするようなものや、必要以上に精神的な苦痛を与えるものであれば、パワハラに該当する可能性があります。
パワハラの判断は、個々のケースによって異なり、客観的な視点からの判断が必要です。
優越的な関係を背景とした言動とは、職場における地位や職務上の優位性を利用した言動を指します。言動を受ける従業員が抵抗したり拒絶したりできない関係性であれば、この要素に該当します。
以下の内容は、優越的な関係を背景とした言動に当たる例です。
業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動とは、社会通念に照らして、業務上適正とされる範囲を逸脱した言動を指します。
例えば以下のような言動が該当します。
相手に問題行動がある場合にある程度厳しい注意や叱責をすることは業務上適正といえますが、常識的な範疇を超える過剰な叱責や相手の人格を否定する発言などは仮に指導目的であってもパワハラに該当し得る点に留意しましょう。
職務の遂行環境を害する言動とは、相手の就業環境が客観的に悪化することを指します。以下のような言動は、この要素に該当する可能性があります。
このような職場環境の悪化は被害者の主観により決まるものではなく、客観的に職場環境の悪化が認められるかどうかで判断されることに留意しましょう。メディアやインターネットでは被害者がハラスメントと感じたらハラスメントであるとされることがありますが、そのような単純なものではありません。
職場におけるパワーハラスメントはさまざまなパターンが考えられますが、厚生労働省はパワハラに該当する代表的な言動の類型を6つ示しています。ここからはそれぞれの類型について、具体例を交えながら解説するとともに、パワハラに該当するか否かの判断ポイントも示します。
身体的な攻撃は、相手に直接身体的苦痛を与えることです。パワハラと聞いてイメージしやすい類型でしょう。以下が身体的な攻撃の具体例です。
身体的な攻撃は、どのような状況であってもパワハラに該当する可能性が高いでしょう。冗談や悪ふざけであっても、相手から暴力を受けたと被害申告がされればパワハラに該当する可能性は十分にあります。他方、誤ってぶつかった場合のように事故によるものは該当しません。
精神的な攻撃は、言葉や態度によって相手を精神的に追い詰める行為です。人格否定や脅迫、侮辱など、以下のようにさまざまな行為が該当します。
客観的に見て相手に対する嫌がらせが明らかであるような場合、相手が精神的な苦痛を感じていることを認識しながら執拗に繰り返すような場合は精神的な攻撃としてパワハラに該当する可能性が高いといえます。また、従業員に対する注意指導のためとしても、必要以上に厳しい言葉や、人格を否定するような言葉を用いたものであれば、同様にパワハラに該当する可能性は高いといえます。
人間関係からの切り離しは、職場における人間関係から相手を孤立させる行為です。例えば以下の内容が該当します。
相手の職場環境を害する程度に孤立させる行為をしているかどうかが判断のポイントとなります。例えば、特定の従業員に対して業務上必要な情報を回さないような行為やチーム全員が出席するようなイベントにあえて特定の従業員を呼ばないことを繰り返すような行為が該当し得るといえます。他方、有志のみで行う任意参加の飲み会に誘わない、業務上必要な会話以外をしない程度であれば、直ちに職場環境が悪化するものではないためこの類型には当たらないでしょう。
過大な要求とは、相手の能力や経験を著しく超えた業務や、明らかに不要な業務を強制する行為です。
これは業務の適正配置の観点から問題があるかないかという観点で判断されます。例えば、特定の業務経験の浅い従業員をサポートせずに当該業務に従事させ、うまくいかないと叱責するような行為を繰り返せば、パワハラに該当する可能性は十分にあります。他方、未経験の業務に従事させた、仕事を丸投げしたというだけでは直ちにパワハラに該当するものではないと考えます。
過小な要求は、相手の能力や経験に明らかに見合わない業務を割り当てる行為や、そもそも業務を割り当てない行為です。例えば以下の内容が当てはまります。
こちらも業務の適正配置の観点から問題があるかないかという観点で判断すべきものです。例えば、弁護士や税理士といった特定の資格を前提に業務をしている者に対して清掃や受付業務をさせたり、勤続年数の長いベテラン従業員に新人が行う雑用や電話番だけさせたりという行為がこれに当たります。他方、業務の適正配置の観点から必要かつやむを得ないものであれば、直ちにパワハラに該当するものではありません。
個の侵害は、個人のプライバシーや尊厳を侵害する行為です。以下の行為が該当します。
業務上必要のないプライベートな情報に過度に関与しているかどうか、相手のプライバシーを尊重しているかどうかが判断のポイントとなります。また機微な個人情報については、前述の通りプライバシー保護の観点から、開示されないように措置を講じる必要があります。
現時点では、パワハラをしたことやパワハラ防止法に違反したことに対する罰則規定はありません(2025年2月時点)。
しかし、パワハラ防止法に違反した場合、厚生労働大臣による助言や指導、勧告の対象となります。企業が勧告に従わなかった場合は、企業名が公表されます。
また厚生労働大臣は、パワハラ防止の措置について、企業へ報告を求めることが可能です。その際に報告を行わなかった場合や、虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料が科されます。
さらにパワハラを受けた従業員から、民事訴訟を起こされる可能性もあります。裁判で企業の責任が認められれば、多額の賠償金を支払わなければならないケースもあるでしょう。パワハラ行為が脅迫罪や暴行罪などの犯罪行為に該当する場合は刑事告訴などがされる可能性もあります。
加えて近年はSNSが流行しており、従業員が自社のパワハラ行為に関する情報を投稿して一気に拡散してしまうケースも考えられます。パワハラ防止法に違反している旨が広まれば、信用が失われてしまうでしょう。
このように、パワハラ防止法に違反した場合の罰則規定はないものの、さまざまなリスクに直面する可能性があります。企業はこれらのリスクを理解し、積極的に対策を講じることが必要です。
前述の通り、企業規模や業種を問わず、すべての企業がパワハラ防止対策を講じる必要があります。では、具体的にどのような対策に取り組めば良いのでしょうか。
ここからは、企業が行うべき対策を3つ解説します。
1つ目の対策は、パワハラを発生させないために、社内風土の醸成に取り組むことです。社内風土の醸成には、日常的なコミュニケーションを活発化させたり、定期的なチームミーティングの中で、従業員同士が助け合える関係作りに努めたりするなどが効果的です。従業員の心理的安全性を高め、コミュニケーションを取りやすい環境を作れば、パワハラを防止できるのはもちろん、発生した際に従業員が相談しやすくなるでしょう。
また定期的に従業員向けのアンケートなどを実施し、職場の状況や従業員の意識を把握することも大切です。アンケートの実施は、企業のハラスメント防止対策への姿勢を伝えることにもつながります。
2つ目は、従業員が安心して相談できる窓口の設置です。相談窓口の設置自体は、前述の通りパワハラ防止法で義務付けられています。しかし、ただ設置するだけではなく、相談しやすい体制・雰囲気を作ることが重要です。
相談しやすい体制・雰囲気作りには、前述した相談窓口の担当者向けのマニュアル作成や、外部窓口の活用などが有効です。それらに加えて、従業員が安心できるよう、対面での対応だけではなく、オンライン窓口を設置したり、電話やメールなどでも対応できる体制を整えたりすると良いでしょう。さらに匿名で相談できるシステムを導入することで、プライバシーへの不安を感じている従業員でも、より気軽に相談しやすい環境となるはずです。
またパワハラだけではなく、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントなどの、他のハラスメント相談にも対応できる体制を整えましょう。パワハラは、その他のハラスメントと複合的に生じることが想定されるからです。一つの窓口で、さまざまなハラスメントに対応できるのが望ましいでしょう。
3つ目は、従業員向けのパワハラに関する定期的な研修の実施です。従業員がパワハラを起こさないよう、定義や具体例、防止策などの周知を徹底しましょう。
研修では、法律の知識だけではなく、実際の事例を交えながら、パワハラがどのような状況で発生するのか、どのような言動がパワハラに該当するのかを具体的に理解してもらいます。
研修は管理職向けにも行いましょう。管理職は部下からの相談を受けたり、パワハラを目撃したりする機会が多いため、適切な対応方法を身に付けておく必要があります。また管理職は、部下への指導を行う際に、パワハラを起こしてしまうリスクがあります。そのため研修を行い、パワハラへの対処方法や部下とのコミュニケーションで注意すべきことを学んでもらうことが重要です。
ハラスメント研修について、具体的な種類や実施例は以下の記事をお読みください。
【関連記事】ハラスメント研修の目的や内容、義務化を解説!カリキュラム例も
実際に、企業ではどのようなハラスメントが発生しているのでしょうか。ここからは「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」の内容に基づき、ハラスメントの発生状況と企業の対応状況を解説します。
過去3年間に「ハラスメントに関する相談があった」と回答した企業のうち、73.0%が「ハラスメントに該当する事例があった」と回答しています。また過去3年間における事例件数が「増加している」「件数は変わらない」と答えた企業の割合は合計49.8%であり、「減少している」と回答した企業の割合は21.8%でした。およそ半数の企業において、状況が改善されていないことが分かります。
パワハラ予防・解決の取り組みの実施有無に関するアンケートでは、95.2%の企業が何かしらの取り組みをしているという結果が出ています。従業員の規模とパワハラ予防・解決策の実施状況の関係性を見ると、従業員規模が大きい企業ほど、予防・解決策を実施している割合が高いことが分かりました。
またパワハラ予防・解決のための取り組み内容については「相談窓口の設置と周知」を行っていると回答した企業が86.0%と最も多く、次いで「ハラスメントの内容、職場におけるハラスメントをなくす旨の方針の明確化と周知・啓発」が82.6%という結果となりました。
過去3年間でパワハラに該当する事例があった企業の取り組みについては「被害者に対する適正な配慮の措置」と答えた企業が95.9%、「行為者に対する適正な措置」と答えた企業が93.1%となっています。パワハラの予防・解決に向けて取り組む上での課題としては「ハラスメントかどうかの判断が難しい」(62.9%)や「管理職の意識が低い/理解不足」(31.3%)などが挙がっています。
さらにハラスメント全体について、今後必要な対策としては「企業の自主的な取組の促進・支援」(54.7%)を挙げた企業が最も多い結果となりました。
このことから、パワハラに対して一定の取り組みができている企業が多いと捉えられます。しかし、取り組みができていても、パワハラかどうかの判断が難しいと感じている企業や管理職の意識が低いと感じている企業は一定数あります。そのため、前述したような定期的な研修の実施などにより、パワハラに関する知識の周知を進めることが重要です。
パワハラ防止法は、職場におけるパワハラを防止し、従業員が安心してはたらける環境を作るために重要な法律です。企業はパワハラ防止法の内容を正しく理解し、適切な対策を講じる必要があります。
データから分かるように、パワハラ防止法が施行されてから5年程度たっているにもかかわらず、パワハラと判断された事例件数は大きく改善していません。本記事で紹介したような対策を行い、企業におけるパワハラを防止しましょう。
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パワハラ防止法の施行により、企業は明確な対策が求められる時代になりました。
「何から始めればいいのか分からない」「制度は整えているものの不安がある」と感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。
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梅澤 康二 弁護士
日本の4大法律事務所であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所での6年間の執務を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)、『それ、パワハラですよ?』(ダイヤモンド社)などがある。