PERSOL

Day 2

Session 2

未来を見つめるZ世代は、何のために「はたらく」のか?

未来を見つめるZ世代は、何のために「はたらく」のか?

デジタルネイティブでありながら、人とのつながりを尊重する傾向が強く、他の世代よりも多様な価値観を持ってはたらくことを重視するZ世代は、ライフプランとキャリアプランにおいて何を重視しているのか。富士通株式会社の横田奈々氏、株式会社メルカリの鈴木万里奈氏、株式会社Kakedasの渋川駿伍氏らと共に、これから待ち受けるライフステージの変化に対する、自分らしいはたらき方について議論します。モデレーターはパーソルテンプスタッフ株式会社の加瀬洋子氏です。

Z世代に「ワークライフバランス」はもう古い?

加瀬 : Z世代とは一般的に1996年から2015年の間に生まれた、デジタルネイティブ世代とも呼ばれる皆さんを指しています。2020年には世界の人口の約25%を占め、その1つ前のミレニアル世代が理想主義や楽観主義といわれたのに対し、Z世代は現実主義といわれています。こうした定義について、当事者である皆さんはおそらくあまり自覚されてはいないですよね?

鈴木 : そうですね。自分自身をZ世代と思ったことはあまりないのですが、生まれてからずっと不況が続いていたこともあり、自衛の意味も込めて現実主義というのは腑に落ちますね。

出典:【Z世代】SDGs シューカツ解体白書

出典:【Z世代】SDGs シューカツ解体白書

加瀬 : では、この世代の「はたらく価値観」についてデータを見てみたいと思います。まず、仕事選択に際して重要視する観点について、1位は「ワークライフバランス」で全体の63.2%。2位が「サービスや商品の将来性」で54.6%。3位は「サービスや商品が好きか」で45.1%となっています。

渋川 : 私の場合は起業家というのもあって、創業当時はワークライフバランスを意識する余裕は正直ありませんでした。しかし、従業員が増えていくにつれ、自分自身がウェルビーイングを追求しなければ、周囲の人にそういう考え方を持ってもらうことはできないなと気付かされました。

横田 : 私はワークライフバランスという言葉自体が、少し前のものになっている印象がありまして、どちらかというとライフロール(人生における役割)の組み合わせをより重視するキャリア4.0のほうが納得感はあります。ワークライフバランスといっても、いまの時代は副業されている人も多いですから、自分がやりたいことの組み合わせでより「“自分らしく”はたらく」の価値観のほうがが大きいのではないかと。

加瀬 : なるほど。たしかに、はたらき方のイメージに関する調査では、1位が「自分らしくはたらける環境」(53.7%)となっています。横田さんご自身もこれは就職にあたって意識されましたか。

横田 : そうですね、自分らしくはたらける選択肢を持つという意味で、副業が可能な職場は求めていました。

鈴木 : 私は、2位の「ライフステージによって仕事量を調整したい」(53.1%)という結果が興味深くて、仕事と生活を完全に切り分けるのではなく、自分にとってその時々に魅力を感じることをやりたいという思いはあります。

渋川 : ハードワークをしたい時期もあれば、仕事と趣味を両立したい時期もあるでしょうから、大切なのはそれを自分の意思で選べることですよね。「自分らしくはたらくとは何だろう?」という問いに対する答えは、ライフステージごとに変わっていくはずですから。

Z世代が考えるこれからのはたらき方

出典:BIGLOBEZ「世代の仕事と育児に関する意識調査」

出典:BIGLOBEZ「世代の仕事と育児に関する意識調査」

加瀬 : では、将来設計の考え方についてはいかがでしょうか。データではZ世代の6割が、「将来、子どもが生まれても父母ともに仕事をしたい」と考えているそうですが。

鈴木 : これにはポジティブな面とネガティブな面の両方があると思いました。共働きが浸透したのはポジティブなことですが、日本の給与水準がなかなか上がらないのでパートナーともにはたらかなければならないというのは、やはりネガティブなことですよね。

渋川 : 「はたらく」、「仕事をする」というのが、必ずしもフルタイムでの仕事を意味しなくなってきているのは大きいと思います。だからポジティブに解釈をすれば、趣味などと同様に「好きなことを続ける」感覚で仕事を続けたい人もいるでしょう。それが鈴木さんがおっしゃったように、「はたらかなければならない」状態になってしまうと残念ですが。

横田 : 良くも悪くも、この世代にとっては両親が共働きなのは普通で、とくに変わったことではありません。それに、はたらいていること、社会のなかにいることもまた、自分らしさの一部ですから、仕事を続けたい人が多いのは自然なことではないでしょうか。

加瀬 : ここからは、育休という制度についても考えてみたいと思います。Z世代に対する「将来設計の考え方」に関する調査では、「育児休業をとって積極的に子育てをしたい」と考える人は年々増加傾向で、男女差も縮まってきています。育児は夫婦一緒に取り組むものであるという意識が根付きつつあるわけですね。これについてはぜひ、男性である渋川さんにご意見を聞いてみたいです。

渋川 : 少なくとも私自身は、積極的に育児休暇を取り入れたいと思っています。実際、同世代の友人や経営者を見ていても、同様の意見が多いように感じます。むしろ、育児という貴重な経験をしないほうがもったいないですから。

加瀬 : なるほど。また、これからのはたらき方について聞いた調査では、85.0%の人が結婚に対して「何かしらのハードルを感じる」と回答しています。その理由は「金銭面の準備」(58.0%)、「出産・子育て」(39.3%)、「キャリア・はたらき方」(22.3%)となりました。見方によっては、仕事と結婚を両立させるにはこうしたハードルを乗り越える必要があるわけです。皆さんはどうお考えですか?

横田 : そもそもどのようなかたちであれ、自分一人の問題ではなく、相手あってのことですから、個人的にはこれらのハードルについては、「その時になったら考えたい」というのが本音ではあります。

鈴木 : ただ、率直に言うと、事実婚や同性婚などさまざまなかたちがあるなかで、「結婚」という言葉を使う設問に違和感を覚えました。誰もが当たり前のように結婚の制度を使う時代ではないですから。

渋川 : そうですね。問いの設定が議論の幅を狭めてしまっている感はありますよね。パートナーシップのあり方は変わってきています。

加瀬 : この設問を考えた人にとっては辛辣ではありますが、まさにそうしたご意見をいただきたい場です。これまでの世代はやはり、仕事と生活を切り分ける発想が根付いているので、結婚や出産を切り分けて考えること自体がないのでしょうね。

鈴木 : 一方で、女性という観点でいえば、どうしても生物的な問題はついて回ります。私の場合はすでに卵子凍結を終えていて、自分のキャリア形成を優先したいと考えていて、その過程で機会があるならそこから出産や育児を並行していこう、という感覚なんです。

加瀬 : なるほど。そういった問題をもっと気軽に上の世代に相談できるようになればいいですよね。さらに次の世代のことまで考えれば、制度の整備も含めてそうした環境でなければ、人材を集めるのも難しくなっていくでしょう。

横田 : そうですね。先ほどの卵子凍結や子宮がん検診などが、福利厚生で会社がサポートしてくれる環境でなければ、就職先、転職先として考えられない時代になっていると思います。

渋川 : また、たとえば出産や育休でお休みしていた人が、復職にあたってどのようなはたらき方が望ましいのか、現場が声をあげることで制度が変わるケースは多いと思います。スタートアップはとくにそうですが、ボトムアップでより良い環境を整えていくという視点も大切でしょう。

キャリアの「わからない」は不安ではなくワクワク

加瀬 : 皆さんは、ご自身のキャリア形成に関して、現在を起点に将来を導き出すフォーキャスト型なのか、それとも目指す未来から逆算するバックキャスト型なのかでいうと、どちらの思考をお持ちでしょうか。

渋川 : 私ははたらくことだけでなく、ライフステージの選択肢も含めて考えなければならないと思っているので、バックキャスト型に近いかもしれません。弊社は2018年に創業して、昨年売却したばかりで、いまはまさに自分自身の次の挑戦を見据えているところです。このあと、大学院での学び直しを経て、再び起業するということころまでは思い描いています。

鈴木 : 私は真逆で、あまり今後の目標設定をしていなくて、自身のスキルアップ重視というよりも周囲の環境を良くしていくことに重きを置いています。いま兼業で福祉の会社ではたらいているのもその一環で、選択肢がこれだけ広がっている時代だからこそ、自己実現のためにその都度いろんな領域に手を伸ばしていければと思っています。

横田 : 私も鈴木さんと似ていて、最初はデザインがやりたくてデザイン事務所に入り、その後はその時々の関心に合わせて、スタートアップにジョインしたり、こうして富士通に入社したり、というキャリアでした。今後どうするのかは自分でもまだわかりません。

加瀬 : その「わからない」ということが、決して不安にはつながっていないということですよね。

横田 : そうですね、不安はまったく感じていなくて、むしろ、これから自分の価値観・キャリア観がどのように変化していくのか、それによってどう自分のキャリアを歩んでいくのか、ワクワクする気持ちのほうが大きいです。

加瀬 : かつてはキャリアの将来設計を行なう研修も多く見られましたが、いまはもう、そういったスタンスではなくなってきているんですね。

鈴木 : これだけ変化が激しい時代ですから、10年先を想定してそこを目指してしまうと、気がつけば取り残されてしまっているリスクもあると思うんです。だからあえて先を見据えないというのはありますね。

加瀬 : なるほど。こうした多様な価値観に対し、上の世代は「だからむずかしい」と受け取る人もいるでしょうが、重要なのはだからこそ両者が活発に議論をすることですね。これまでの時代で放置されてきた“負”の部分を、世代を越えていかに解決するか。それが企業や社会をより良くする秘訣なのかもしれません。

※本記事の情報はイベント開催時(2023年3月13日-14日)基準です。

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