時差出勤はフレックスタイムとどう違う?メリット・デメリットと準備事項・注意点

ワークスタイル・はたらき方 人事

時差出勤とは、始業時間と終業時間を変更して通勤時の混雑・密を避ける勤務形態です。コロナ禍中、またその脅威が緩和した際には導入を検討できる選択肢の一つであるため、メリットやデメリット、導入時に準備することや注意点をまとめました。

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目次

時差出勤とフレックスタイム制の違い

時差出勤とは

時差出勤とは事業場のすべてまたは一部の始業時間と終業時間を変更する勤務形態です。多くの企業と同じ始業・終業時間を避けることで、出退勤時の鉄道や道路交通の混雑・過密を避けることができます。多くの場合、勤務時間の総時間数を変えず、時間のシフトのみで行います。

たとえば始業時間8:30、終業時間17:30の企業が、以下のような所定労働時間枠を設け、労働者の申し出により会社がいずれかを指定します。
(A) 8:00始業、17:00終業
(B) 9:00始業、18:00終業
(C) 10:00始業、19:00終業

時差出勤の例

 

働き方改革の実施の一環として導入している企業もあります。また新型コロナウイルス感染拡大を予防し、労働者の健康を確保することも期待できます。例えば出退勤時の電車の3密を避けよう、人と人の接触機会を少なくしようと導入したり、あるいは緊急事態宣言発令後は、テレワークを導入した企業が感染拡大の状況が緩和されてきたときに平常時の業務形態に代えて導入を検討したりすることができるでしょう。

この時差出勤と似ていて、よく混同される勤務形態にフレックスタイム制があります。

時差出勤はフレックスタイムとは異なり、労働者が自由に始業・終業時間や1日の労働時間を決めることはできません。また多くの場合、1日の所定労働時間は変わりません。フレックスのように始業・終業時間を労働者の自由な裁量に委ねるのではなく、労使協議のもと繰り上げ・繰り下げた時間枠を会社が指定します。

フレックスタイム制とは

フレックスタイムは、一定期間(清算期間)のうちあらかじめ決めた総労働時間のなかで、労働者が自分の意思で(1)始業時間、(2)終業時間、(3)1日の労働時間を決めることができる、という勤務形態です。

労働者の日々の都合に合わせた出退勤を可能にし、ワーク・ライフ・バランスを向上させるメリットがあります。時差通勤よりも自由度がさらに高い勤務形態であるといえます。

たとえば1日のうち必ず勤務しなければならない時間帯=コアタイムを定め、その前後の時間帯をフレキシブルタイムとします。フレキシブルタイム中なら何時でも出社・退社しても良いのです。またコアタイムは必ず設けなければならないわけではありません。すべての時間帯をフレキシブルタイムとすることもできます。

フレックスタイムの例

 

フレックスタイム制を導入するには、(1)就業規則などへの規定と、(2)労使協定の締結の2つが必要になります。また2021年現在では清算期間の上限が1カ月から3カ月へと延長されており、清算期間が1カ月を超える場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署へ届け出なければいけません。

時差出勤のメリット・デメリット

企業にとってのメリット

時差出勤を導入した場合、企業には以下のようなメリットがあると考えられます。

感染症リスクの低減

始業・終業時間が通勤のピークに重なっている場合、労働者は満員電車など通勤ラッシュの3密にさらされます。特に新型コロナウイルス感染拡大が終息しないうちは、通勤ピーク時を避けた始業・終業時間を設定することで、社内の感染リスクを下げることが期待できるでしょう。不要な風評被害や除染コストを回避することもできます。

離職・休職の防止

育児・介護など1日のうち一定の時間を費やすことが必要な労働者にとって、所定の決まった時間にしか始業・終業できないと重い負担になりかねません。時差出勤が可能であれば、こうした労働者のニーズに柔軟に応えることになり、結果的に離職・休職を防止することが期待できます。

ワーク・ライフ・バランス向上による優秀人材の確保

時差出勤によって、労働者一人ひとりの都合に合った就労が可能になれば、ワーク・ライフ・バランスの向上が見込めます。特に若い優秀人材はプライベートな時間やワーク・ライフ・バランスを重視する傾向があるため、優秀人材の確保や離職防止につながることが見込めます。

生産性の向上

時差出勤を導入することによって通勤のストレスを軽減することができるでしょう。不要なストレスから解放され、快適な就労環境ではたらくことができれば、労働者のモチベーション維持および生産性の向上、従業員満足度の向上も期待できます。

人材不足の解消

育児・介護や家庭のさまざまな時間的制約を負う人が、就労の際に選べる選択肢が増えます。こうした人のニーズとマッチする時差出勤などの勤務形態がなければ、アルバイト・パートや離職などを選ぶほかなくなってしまうでしょう。時差出勤を導入すれば、こうした人たちに手を差し伸べることになり、人材不足を緩和・解消することが期待できます。

時間外勤務の削減

前もって遅い時間に仕事をする必要があると分かっている労働者が選びやすい時間枠を設けておくことで、時間外勤務の削減を見込むことができるでしょう。時差出勤の制度は労使で話し合い、時間枠をずらすことで導入が可能であるため比較的他の勤務体系より導入しやすいことから、効果を出しやすいと考えられます。

企業にとってのデメリット

反対に、導入により企業の負担が増えるなどのデメリットも考えられます。例えば、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

労務管理の煩雑化

時差出勤に多くの時間枠を設定すれば、それだけ人事・労務担当者による労働者の勤怠管理にかかる工数が増えることが予想されます。フレキシブルに対応できる労務管理システムの導入やタイムカード、申請や許可にかかる手順の電子化など、労務管理事務を簡略化する工夫が必要になるかもしれません。

部署内外のメンバーとの連携が困難に

同じ部署内、または他部署のメンバーがそれぞれ異なる始業・終業時間のもと勤務している場合には、業務連絡や打ち合わせ、協力体制の構築など、他メンバーとの同時的な協業・連携が困難になる可能性があるでしょう。連絡が滞れば、通常業務に支障が生じる可能性すらあります。他メンバーの就労時間を広く共有するなどの工夫が必要となるでしょう。

朝早い時間の突発的業務対応の遅れ、朝礼が行えない

時差出勤によって、労働者が全員出社していない午前中早い時間帯に起こった突発的な業務への対応が遅れる可能性があります。また一斉に集合しての朝礼ができなくなることへの不満が聞かれることもあります。

労働者にとってのメリット

一方、はたらく側にとってのメリット・デメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。まず、労働者にとってのメリットには、以下のようなものがあると考えられます。

感染症リスク低減による不安の解消、通勤ストレスの緩和

時差通勤により通勤ピーク時を避けることで3密を回避し、感染症に罹患するかもしれない、といった不安を軽減できます。また、通勤ピーク時には避けることが難しい、満員電車や交通渋滞のような通勤のストレスを緩和することもできるでしょう。

ワーク・ライフ・バランスの改善

育児・介護などはたらく人の都合に合った時間の始業・終業時間が選べるようになることで、プライベートな時間を確保し充実させることができ、ワーク・ライフ・バランスの改善が見込めます。より快適な就労条件ではたらくことができるため、モチベーション維持も期待できます。

労働者にとってのデメリット

労働者にとってもメリットのある時差出勤ですが、では、デメリットはないのでしょうか。考えられるデメリットには以下のようなものがあります。

早い始業時間を選択しても、早い時間には帰りづらいことも

せっかく早い始業時間・終業時間を選択しているのに、職場の雰囲気などによっては、早い時間には帰りづらくなってしまう可能性があります。結果的に就労時間が長くなってしまうのでは、企業にとっても時差出勤を導入したメリットが薄まってしまいます。管理職が範となって早く帰宅して、社内風土を変えていく必要があるかもしれません。

手続きが手間だと利用しづらい

申請・許諾といった利用の手続きに手間・時間がかかるようであれば、労働者にとって利用しづらくなってしまいます。利用者が少なければ、結果的に企業としても導入のメリットが限定的になってしまいます。手続きの簡略化・電子化などにより手間の軽減に努めたいところです。

導入時に必要となる準備

対象となる労働者・適用事由を設定する

多くの場合、時差出勤を必要とするのは看護・介護、妊娠・出産・育児中の人、傷病を負っている人などで、時差出勤の適用対象はこうした人々が主となってきました。これが最近では、ワーク・ライフ・バランスの向上やメリハリのある仕事の仕方による生産性向上などを目的に、より広い労働者を対象とする例が見られます。

業務上の理由だけではなく自己都合でも利用可能にするなど、より広く利用しやすい制度にすれば、企業としてもメリットを十全に享受できます。保育園・介護施設への送迎や子の学校行事、通院などだけではなく、自己啓発や社会活動への参画などをも適用事由にするといった対応が考えられるでしょう。

始業・終業時間、適用回数を決める

多くの場合、所定労働時間は変えずに始業・終業時間を所定の時間から前後にずらし、いくつかの時間枠を設けることになります。このとき、適用事由・対象範囲や始業・終業時間、その適用回数(無制限、月1回など)については労働者とよく話し合ってニーズを吸い上げておくことが望まれます。

また、もしも優秀人材の採用・囲い込みをもくろむなら、より多くの始業・終業時間の枠を設けておく、といった対策をしておくことも考えられるでしょう。より広い労働者の都合に合わせることができ、優秀人材が望むワーク・ライフ・バランス向上を、より広く可能にする制度にしておくわけです。

就業規則を改訂する

始業および終業の時刻は就業規則の必須の記載事項です。そのため、従来の就業規則に始業・終業時間を変更できる旨の定めがない場合には、時差出勤導入時に労使の話し合いによって決めた始業・終業時間について記載しなければいけません。これにはさまざまな記載方法があり、例えば以下のような例があります。

就業規則の記載例(1)本来の始業・終業時間から繰り上げ・繰り下げを1時間程度とするもの

 

就業規則の記載例(2)本来の始業・終業時間から繰り上げ・繰り下げを3パターンとするもの

 

【出典】神奈川産業保健総合支援センター「就業規則 規定例集」

事前に周知する

制度の利用を促すために、事前に周知・説明をしましょう。労働者が広く利用しやすくするためには、簡易な申請・許諾の仕組みを整えることが望まれます。多くの労働者の意見を吸い上げておけば、理解を得やすく、また利用されやすい制度とすることができるでしょう。

導入する際の注意点

深夜割増賃金を考慮しておく

労働基準法では、法定労働時間を超える労働時間分については割増賃金を支払うよう定めています。時差出勤を導入するときには、22:00〜翌5:00までの労働に生じる深夜割増賃金を考慮しておきましょう。たとえば1日8時間労働+休憩1時間としている企業なら、13:00を過ぎて始業時間を設けると、必ず深夜割増賃金が発生してしまいます。

労務管理が成否を分ける

多くの時間枠を設ければ、それだけ労働者にとって利用しやすくなる一方、労務管理は煩雑になりがちです。利用しやすい仕組みをつくるとともに、労務管理をいかに上手に運用するかが時差出勤導入の成否を分けるといっても過言ではないでしょう。

例えば、PCやスマホから打刻可能な勤怠管理のソフトウェアやウェブサービスを導入するなど、利用と管理がしやすい方法はさまざまあります。また余裕があれば、社労士やコンサルタントなどの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

一斉休憩を適用除外とする労使協定が必要

原則として、1日6時間以上の労働時間の場合は休憩時間45分以上、8時間以上の労働時間の場合には、休憩時間1時間以上を一斉に労働者に付与しなければいけません。時差出勤の導入によって、これができなくなる場合には労働者との間で労使協定を締結する必要があります(届け出までは必要ありません)。「一斉適用の適用除外に関する労使協定書」が各地の労働局に用意してありますので、活用しましょう。

神奈川労働局「一斉休憩の適用除外に関する労使協定書」
ダウンロード:https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/roudou_kijun.html

時差出勤の成功事例

三井情報株式会社
法の定めを超える介護支援を可能にする時差出勤制度を導入

育児・介護休業法では、企業は家族に介護する人がいる労働者に対しては、介護のための所定労働時間短縮などの措置をとらなくてはならない、とされています。その期間は、対象家族1人につき、「利用開始の日から連続する3年以上の期間」と定められています。つまり、最低3年間ということです。

三井情報では、利用可能な期間を無制限として、法を上回る措置を講じました。また、育児支援においても、育児のための時短勤務の対象を、「小学3年生修了までの子を育てる親」にまで拡充しました。これも育児・介護休業法では「3歳に満たない子を養育する労働者」としており、法を上回る措置です。

支援制度の拡充にともない、経営トップ層から「育児や介護は多くの従業員がその当事者になる可能性をもつことから、当事者は支援制度の利用をためらうことなく、また、周囲の同僚は当事者を積極的にサポートしてほしい」といったメッセージを発信するなど、制度を利用しやすくする意識の醸成にも取り組んでおり、現在では多くの人が当事者へ積極的に協力する意識を共有するにいたっているそうです。
【出典】厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」

協和界面科学株式会社
法の定めを大幅に超える育児時差出勤制度を導入

協和界面科学では、社長自らがワーク・ライフ・バランスを宣言、育児を行う社員などにやさしい、はたらきやすい職場づくりを目指しています。

育児・介護休業法では、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合は、1回の請求につき1カ月以上1年以内の期間、所定労働時間を超えて労働させてはならないという決まりがあります。この法定年齢を大幅に超え、小学校6年生の子がいる社員が育児時差出勤を利用できるようにしました。

「小学校就学前は保育園のお迎えに間に合わせることができ、小学校入学後は学童からの帰宅に合わせて親が帰宅できる」と、従業員から好評で、ほかにも有休取得の促進や時間外労働削減の取り組みを行っており、こうした取り組みが「次世代育成支援対策推進法」の基準を満たすため子育てサポート企業「プラチナくるみん」を取得するまでにいたったそうです。
【出典】厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」

時差出勤は始業・終業時間を変更する勤務形態。比較的導入しやすく、ワーク・ライフ・バランス向上にもつながる

時差出勤とは始業・終業時間をシフトさせて、通勤時の混雑・密を避け、また労働者の都合に合わせた就労時間を可能にする制度です。比較的導入しやすく、企業・はたらく側いずれにもメリットがあります。例えば感染症リスクの低減、ワーク・ライフ・バランス向上による優秀人材の確保やモチベーション維持、生産性の向上などです。導入する際には何より労務管理が確実に行えるような配慮が必要といえます。また利用しやすいような申請・許諾の仕組みも整えることで労働者に広く利活用してもらい、メリットを十分に享受しましょう。

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