2026年08月21日
介護を理由に離職する「介護離職」は、従業員本人だけでなく、企業にとっても人材流出や生産性低下など大きな経営課題です。介護離職を防ぐためには、介護休業制度などの制度整備だけでは十分ではありません。従業員が制度を利用しやすい環境づくりや、管理職の理解促進、柔軟なはたらき方の整備など、制度と運用の両面から支援することが重要です。本記事では、介護離職が起こる原因から、2025年法改正のポイント、企業が取り組むべき施策まで解説します。
介護離職を防ぐために、企業が整えるべき支援体制を確認いただけます
少子高齢化により、日本の労働市場では、はたらく人の数や構成が大きく変わりつつあり、2035年以降、介護就業者はさらなる増加が予想されています。介護離職を防ぐには、制度を整えるだけでなく、従業員が必要なときに制度を知り、相談し、活用できる環境づくりが重要です。本資料では、介護離職を防ぐために企業が見直したい支援体制や、制度周知・相談体制づくりのポイントをわかりやすくまとめています。自社の介護離職対策を整理したい方は、ぜひご活用ください。
目次
介護離職を防ぐには、介護休業制度などを整備するだけでは十分ではありません。制度を利用しやすい職場環境を整え、従業員が仕事と介護を両立できる体制を構築することが求められます。企業が優先的に取り組みたいポイントは次の3つです。
この3つを実現することで、仕事と介護の両立を支援し、介護離職の防止につながります。本記事では、それぞれの取り組みについて詳しく解説していきます。
介護離職とは、家族の介護を理由として仕事を辞めることを指します。介護の対象は、高齢の親だけではありません。配偶者や祖父母、配偶者の父母などを介護するケースもあり、誰もが当事者になる可能性があります。介護は終わりが見えにくく、長期間に及ぶことも少なくありません。
そのため、一時的な休業だけでは対応が難しく、仕事との両立に悩んだ結果、離職を選択してしまうケースがあります。近年では、人材不足が深刻化する中で、介護離職は企業の人的資本経営や人材定着の観点からも重要なテーマとなっています。
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総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」によると、介護や看護を理由に離職する人は毎年一定数存在しています。過去1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した人の推移を見ると2007年の14.5万人から2017年には9.9万人まで減少しました。しかし、2022年には10.6万人と再び増加に転じており、介護離職は依然として企業にとって重要な課題であることが分かります。
また、2022年に介護・看護を理由に離職した人のうち、約8割(8.3万人)が離職後に無業となっている点も見逃せません。介護離職は本人のキャリアが中断されるだけでなく、企業にとっても経験豊富な人材の流出につながる可能性があります。
さらに同調査では、介護をしている人は約629万人に上ぼりそのうち約365万人(58.0%)は仕事を続けながら介護を行っています。有業者の割合は2017年から5年間で2.8ポイント上昇しており、仕事と介護を両立する人は今後も増加していくことが予想されます。
介護は一部の従業員だけの課題ではなく、多くの企業が向き合うべきテーマです。企業には、仕事と介護の両立を前提とした制度や職場環境を整備することが求められます。
介護離職を防ぐためには、育児・介護休業法で定められた介護休業制度や介護両立支援制度等を正しく理解し、適切に運用することが重要です。2025年4月施行の法改正では、企業による介護離職防止の取り組みを強化するため、新たな義務や努力義務が設けられました。主なポイントは次の5つです。
| 法改正 | 企業に求められる対応 |
|---|---|
| 1. 雇用環境整備 | 研修・相談窓口の整備など |
| 2. 個別周知・意向確認 | 制度説明と利用意向の確認 |
| 3. 40歳前後への情報提供 | 制度の事前周知 |
| 4. 介護休暇の取得要件緩和 | 就業規則・対象者設定の確認 |
| 5. テレワーク等の努力義務 | 柔軟なはたらき方の導入を検討 |
企業は、介護休業や介護両立支援制度等を利用しやすい環境を整備するため、次のいずれかの措置を講じる必要があります。
制度を設けるだけでなく、従業員が制度を知り、安心して利用できる環境づくりが求められます。
従業員から家族の介護に直面した旨の申し出を受けた場合、企業は介護休業制度や介護両立支援制度等について個別に周知するとともに、制度利用の意向を確認する必要があります。制度の説明や相談機会を設けることで、従業員が仕事と介護を両立するための選択肢を理解しやすくなります。
企業には、従業員が介護に直面する前の早い段階で介護休業や介護両立支援制度等への理解を深められるよう、40歳に達する年度または40歳の誕生日から1年間に情報提供を行うことが義務付けられました。
介護は突然始まるケースも多いため、介護に直面してから制度を知るのではなく、あらかじめ制度や相談先を理解しておくことで、落ち着いて仕事と介護の両立を検討しやすくなります。
これまで労使協定を締結している場合は、継続雇用期間6か月未満の労働者を介護休暇の対象から除外することが認められていました。しかし、2025年4月以降はこの除外規定が廃止されています。
| 時期 | 労使協定で除外できる労働者 |
|---|---|
| 2025年(令和7年)3月31日まで |
① 週の所定労働日数が2日以下 ② 継続雇用期間6か月未満 |
| 2025年(令和7年)4月1日以降 |
① 週の所定労働日数が2日以下 ※継続雇用期間6か月未満の除外規定は廃止 |
介護と仕事の両立を支援するため、要介護状態の家族を介護する従業員がテレワーク等を選択できるよう措置を講じることが、事業主の努力義務となりました。企業には、従業員の状況に応じて柔軟なはたらき方を選択できる環境づくりが期待されています。
介護離職は、従業員個人の事情だけで起こるものではありません。制度や職場環境、管理職の対応など、複数の要因が重なって発生するケースも見られます。ここでは、企業が把握しておきたい主な原因を紹介します。
介護では、通院の付き添いや介護サービスの調整、急な呼び出しなど、勤務時間中の対応が必要になることがあります。一方で、出社が前提の勤務形態や長時間労働が常態化している職場では、介護との両立が難しくなり、離職につながる可能性があります。テレワークやフレックスタイム制度、時間単位休暇など、柔軟なはたらき方を選択できる環境づくりが重要です。
介護休業制度などを整備していても、従業員が制度の存在を知らなかったり、「利用しづらい」と感じたりすると、十分に活用されません。制度の周知不足や、利用すると評価に影響するのではないかという心理的ハードルも、介護離職の一因となります。制度を整備するだけでなく、利用方法を分かりやすく案内し、安心して相談できる環境を整えることが大切です。
従業員が最初に相談する相手は、直属の上司であるケースが少なくありません。しかし、管理職が介護に関する制度や支援方法を理解していない場合、適切な対応ができず、従業員が相談をためらう原因になります。管理職向けの研修や相談対応マニュアルの整備を通じて、現場で適切に支援できる体制を構築しましょう。
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介護により経験豊富な人材が離職してしまうことは、企業の生産性や組織力、採用活動にも影響を及ぼします。ここではその影響を見ていきましょう。
介護離職によって中堅社員や管理職が退職すると、企業は採用や教育に新たなコストをかける必要があります。総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、雇用労働者における介護者数は50~54歳で70.4万人、55~59歳で82.2万人と50代が特に多くなっています。そのため、企業の中核を担う年代の人材が介護を理由に離職した場合、業務の引き継ぎや後任育成、採用などに時間とコストがかかる可能性があります。
介護離職が発生すると、残された従業員に業務が集中し、長時間労働や心理的負担の増加を招くことがあります。また、経験やノウハウを持つ人材の退職によって業務効率が低下したり、引き継ぎ対応が発生したりすることで、組織全体の生産性に影響を及ぼす可能性もあります。その結果、従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下、さらなる人材流出につながる恐れがあります。介護離職防止は、従業員個人への支援だけでなく、組織全体の持続的なパフォーマンス維持にも重要な取り組みです。
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近年は人的資本経営への関心が高まり、人材の定着率やはたらきやすい環境づくりが企業価値を左右する要素となっています。介護と仕事を両立できる環境を整備することは、従業員の離職防止やエンゲージメント向上に加え、多様な人材が活躍できる職場づくりにもつながります。また、人材の確保・定着や生産性の維持にも寄与するため、中長期的な企業価値や競争力の向上が期待できます。
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介護離職を防ぐためには、制度を整備するだけでなく、「制度を利用しやすい職場環境」をつくることが重要です。ここでは、人事・労務担当者が優先して取り組みたい施策を紹介します。
介護では、突然の通院の付き添いや介護サービス事業者との調整など、勤務時間の変更が必要になる場面があります。また、介護は予測が難しく、急な対応を求められるケースも少なくありません。そのため、従業員が状況に応じてはたらき方を選択できる制度を整備することが重要です。
また、制度は導入するだけでは十分ではありません。利用条件や申請方法を分かりやすく周知し、従業員が安心して利用できる環境を整えることも欠かせません。制度を整備しても利用率が伸びないケースは少なくないため、制度設計とあわせて運用面の見直しも求められます。
制度設計や運用に課題を感じている企業は、専門家の支援を活用する方法もあります。パーソルグループでは人事制度見直し支援を通じて、企業の実態や課題を踏まえた制度設計や運用改善を支援しています。
介護離職を防止するためには、管理職の理解と対応力が求められます。従業員が介護に直面した際、最初の相談先となるのは直属の上司であるケースが多いためです。管理職が制度の内容を理解し、適切な制度の案内や業務調整、配慮のあるコミュニケーションを行うことで、従業員は仕事と介護の両立について相談しやすくなります。
一方で、介護に関する知識や対応経験が不足している管理職も少なくありません。そのため、管理職向けの研修や対応マニュアルの整備を通じて、介護に関する基礎知識や相談対応のポイントを共有し、組織全体の対応力を高めることが重要です。
管理職の対応力向上に課題を感じている場合は、外部サービスの活用も有効な選択肢です。パーソルグループでは、マネジメント・リーダーシップ強化を通じて、部下支援や対話力の向上を支援しています。
介護は家庭内の問題として捉えられがちで、従業員が一人で抱え込みやすい課題です。「職場に迷惑をかけたくない」「評価に影響するかもしれない」といった不安から、上司や人事への相談が遅れるケースも考えられます。しかし、相談が遅れると、適切な支援制度を利用できず、介護と仕事の両立が難しくなる可能性があります。
そのため、企業は人事相談窓口や外部相談窓口の設置、定期的な面談の実施など、従業員が早期に相談しやすい仕組みを整えることが求められます。また、相談内容の守秘義務やプライバシーへの配慮を明確に示すことで、従業員が安心して相談できる環境づくりの後押しとなるでしょう。
介護離職防止の取り組みは、一度制度を整備すれば終わりではありません。実際に制度が利用され、継続的に改善される仕組みを構築することが重要です。
制度があっても利用率が低ければ、介護離職防止にはつながりません。制度を知らない、利用方法が分からない、上司へ相談しづらいといった要因が利用の障壁になることがあります。制度周知や管理職教育、ガイドブックの整備などを組み合わせることで、従業員が必要なタイミングで制度を活用しやすい環境づくりにつながるでしょう。
介護離職防止の取り組みでは、施策の効果を定期的に確認しながら改善を重ねていく視点が欠かせません。例えば、以下のような指標を設定し、PDCAサイクルを回すことで、自社の実態に合った支援体制の構築が期待できます。
介護離職は、従業員本人だけでなく、企業にとっても人材流出や生産性低下、人的資本経営への影響など、さまざまな課題につながる重要なテーマです。介護離職を防ぐためには、介護休業制度などを整備するだけでなく、制度を利用しやすい職場環境や管理職の理解促進、相談しやすい体制づくりなど、制度と運用の両面から取り組むことが欠かせません。
介護離職とは、家族の介護を理由として仕事を辞めることです。介護は長期間に及ぶことが多く、仕事との両立が難しくなった結果、離職を選択するケースがあります。企業にとっては人材流出や生産性低下につながるため、重要な経営課題の一つとなっています。詳しくは「介護離職とは」をご覧ください。
はい。介護離職防止は人材定着や生産性向上につながるだけでなく、育児・介護休業法への対応という観点からも重要です。制度を整備するだけではなく、従業員への周知や相談体制の整備、制度を利用しやすい職場環境づくりが求められます。詳しくは「介護離職を防ぐために企業が取り組むべき施策」をご覧ください。
介護離職は採用・育成コストの増大やノウハウ流出、生産性低下につながる可能性があります。特に中核人材が離職した場合、組織パフォーマンスや人的資本経営にも影響を及ぼします。詳しくは「介護離職が企業にもたらす影響」をご覧ください。
制度を整備していても、十分に活用されていないケースは少なくありません。制度設計だけでなく、管理職教育や周知活動、利用状況の確認などを継続的に行いながら改善することが大切です。詳しくは「介護離職防止を定着させる制度設計・運用のポイント」をご覧ください。
【無料DL】制度があっても活用されない状態を防ぐために
介護離職は、従業員本人のキャリアだけでなく、企業にとっても中核人材の喪失や組織力低下につながる課題です。制度を設けていても、従業員が知らない、相談できない、現場で活用しづらい状態では、離職リスクを十分に抑えられません。
本資料では、介護離職を防ぐために企業が押さえておきたい支援体制や周知・運用のポイントを解説しています。自社の制度や相談体制を見直す際の参考資料としてお役立てください。