2025年01月29日
2025年06月10日
事業ポートフォリオの最適化に課題を感じている経営企画の方は多いのではないでしょうか。限られた経営資源をどの事業に投入すべきか、撤退を検討すべき事業はないか、これらの判断は企業の将来を左右する重要な意思決定です。
本記事では、そうした課題解決に役立つPPM分析について、その目的や具体的なやり方、事例を交えてわかりやすく解説します。PPM分析を活用することで、事業ポートフォリオのマネジメントを改善し、効率的な経営資源の配分による企業の持続的成長を実現することができるでしょう。
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PPM分析は、プロダクトポートフォリオマネジメント(Product Portfolio Management)の略称で、企業が保有する製品・事業のポートフォリオを分析し、経営資源の最適な配分を決定するための手法です。
市場成長率と市場占有率(マーケットシェア)という2つの軸を用いて、製品や事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つのカテゴリーに分類します。
PPM分析の主な目的は、限られた経営資源を戦略的に配分することです。
企業は、多様な製品や事業を持っているため、それぞれに適切な投資判断を下す必要があります。PPM分析の活用により、各製品・事業の現状と将来性を可視化し、投資の優先順位を明確にすることができます。
これにより、企業は長期的な成長と収益性の向上を図ることができます。
PPM分析は、1970年代に米国のコンサルティング会社であるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によって開発されました。
当時、多角化経営が進む中で、企業は事業ポートフォリオの最適化に悩んでいました。BCGは、市場成長率と市場占有率という2つの軸を用いて、事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つに分類するフレームワークを提唱しました。
PPM分析は、シンプルでわかりやすいことから、多くの企業に採用され、今日までポートフォリオ分析の代表的手法として用いられています。
PPM分析の最大の特徴は、市場成長率と市場占有率という2つの軸を用いて、製品・事業を4つのカテゴリーに分類する点です。
この分類により、各カテゴリーの特性に応じた戦略的な投資判断が可能になります。例えば、「花形」には積極的な投資を行い、「負け犬」については撤退を検討するなどの判断ができます。
また、PPM分析は、定量的なデータに基づく客観的な分析手法であり、経営判断の根拠を提供する役割を担っています。ただし、定性的な要因も考慮する必要があるため、PPM分析はあくまでも意思決定の一助として位置づけられています。

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ここでは、その分析フレームワークについて解説します。
PPM分析では、市場成長率と市場占有率の2つの軸を用いて、事業や製品を評価します。
市場成長率は、その市場の将来性や魅力度を示す指標であり、「本年度の市場規模÷昨年度の市場規模」で算出されます。一方、市場占有率は、競合他社と比較した自社の市場での地位を表し、「自社の売上高÷市場規模」で求められます。
上記の2つの軸を用いて、事業や製品を4つのカテゴリーに分類します。それぞれの呼称と特徴は以下の通りです。

4つのカテゴリーは固定的なものではなく、事業の成長段階や市場環境の変化に応じて移行していきます。理想的な移行パターンは、問題児から花形へ、そして金のなる木へと成長していくことです。
一方で、花形が問題児へと逆戻りしたり、金のなる木が負け犬へと転落したりするケースもあります。こうした望ましくない移行を避けるためにも、各事業の強みを生かした戦略的な投資判断が求められます。
PPM分析を実施する際には、一定のプロセスに沿って進めることが重要です。ここでは、PPM分析の具体的な進め方について解説します。
PPM分析を始める前に、分析対象とする製品やサービスを明確に定義する必要があります。分析対象は、企業の戦略的意思決定に影響を与える重要な製品やサービスを選定することが望ましいでしょう。
分析対象が決まったら、各製品・サービスの売上高データと、それぞれの市場規模データを収集します。データは信頼性の高い情報源から入手することが重要で、業界団体の報告書や調査会社のレポートなどを活用するとよいでしょう。
収集したデータを基に、各製品・サービスの市場成長率と市場占有率を算出します。市場成長率は、次の式で計算できます。
市場成長率 = 本年度市場規模 ÷ 昨年度市場規模
一方、市場占有率は、自社の製品・サービスの売上高を市場規模で割ることで算出します。
市場占有率 = 自社製品・サービスの売上高 ÷ 市場規模
算出した市場成長率と市場占有率を基に、各製品・サービスをマトリクス上にプロットします。マトリクスは、縦軸に市場成長率、横軸に市場占有率をとり、4つの象限に分かれています。各象限に位置する製品・サービスに対する一般的な戦略は以下の通りです。
ただし、これらは一般論であり、個別の事情を考慮した上で、最適な戦略を立案することが重要です。
PPM分析は、一度実施すれば終わりというものではありません。市場環境や競合状況は常に変化するため、定期的にPPM分析を実施し、戦略の見直しを行う必要があります。
分析の頻度は、業界の変化のスピードや自社の状況に応じて決定しますが、少なくとも年に1回は実施することが望ましいでしょう。また、分析結果を踏まえた戦略の実行状況をモニタリングし、必要に応じて軌道修正を行うことも重要です。
PPM分析を継続的に実施し、PDCAサイクルを回すことで、自社の製品・サービスポートフォリオを最適化し、持続的な成長を実現することができるのです。
PPM分析には、企業経営において多くのメリットがあります。ここでは、その主要なメリットについて詳しく見ていきましょう。
PPM分析の大きな利点の1つは、限られた経営資源の最適な配分により、企業の効率性を高められることです。
「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の分類に基づいて、経営資源の投資先を戦略的に決定することができるのです。
例えば、高い成長率と市場シェアを持つ「花形」事業には積極的に投資を行い、一方で、低成長・低シェアの「負け犬」事業からは撤退を検討するといった判断が可能になります。このように、PPM分析を活用することで、限りある資源を最も効果的な事業に集中させ、企業全体の効率性を高めていくことができるのです。
PPM分析のもう1つの重要なメリットは、事業ポートフォリオを戦略的に管理できることです。
多角化企業の場合、複数の事業を同時に運営しているため、全体最適の視点から事業ポートフォリオをマネジメントすることが不可欠です。PPM分析は、そのための強力なツールとなります。
各事業の位置づけを可視化することで、全社的な観点から事業ポートフォリオの問題点や改善の方向性が明らかになります。例えば、「金のなる木」事業で得た利益を「問題児」事業に投資し、将来の「花形」へと育成するといった戦略的な資源配分が検討できます。このように、PPM分析に基づいて事業ポートフォリオ全体を俯瞰しながら、長期的な観点から最適化を図ることが可能になります。
さらに、PPM分析を定期的に実施することで、市場環境の変化に素早く適応できるようになります。
事業を取り巻く環境は常に変化しており、それに合わせて事業ポートフォリオを動態的に見直していく必要があります。PPM分析は、市場成長率と市場占有率という客観的な指標に基づいて事業を評価するため、環境変化の兆候を早期に捉えることができます。
例えば、「金のなる木」事業の市場成長率が鈍化してきた場合、「負け犬」へと転落するリスクがあります。PPM分析によってこうした変化を察知し、先手を打って事業の再編や新規事業の立ち上げに着手することで、変化する市場環境に柔軟に対応していくことが可能になります。

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最後に、PPM分析は意思決定の客観性と透明性を高めるためにも有効です。
事業の評価や資源配分の判断には、しばしば主観的な要素が入り込む可能性があります。しかし、PPM分析では市場成長率と市場占有率という定量的なデータに基づいて事業を分析するため、個人の主観に左右されにくい客観的な判断が下せます。
また、PPM分析の結果は視覚的に分かりやすく提示されるため、経営陣や社員との認識共有もスムーズに行えます。投資の優先順位や事業の見直しについて、データを基にした建設的な議論を社内で行いやすくなるのです。このように、PPM分析を活用することで、意思決定プロセスの客観性と透明性を担保し、経営の健全性を高めていくことができます。
PPM分析は、製品ポートフォリオの戦略的マネジメントに役立つフレームワークですが、いくつかの注意点があります。ここでは、その主要なポイントを解説します。
PPM分析は、市場成長率と市場占有率という2つの定量的指標に基づいています。しかし、これらの指標の計算には、信頼性の高い市場データの入手が不可欠です。業界によっては、正確な市場規模の把握が困難な場合もあり、分析の精度に影響を与える可能性があります。
また、PPM分析は、現在の市場状況を静的に捉えたものであり、将来の市場変化を予測するものではありません。したがって、分析結果に基づく意思決定は、短期的な視点に偏りがちである点に留意が必要です。
PPM分析は、財務指標に基づく定量的な分析手法ですが、製品の競争力を評価する上では、定性的な要因も無視できません。例えば、ブランド力、技術的優位性、顧客ロイヤルティなどは、数値化が難しい要素ですが、市場における製品の位置づけに大きな影響を与えます。
したがって、PPM分析の結果を解釈する際には、定性的な要因も併せて考慮し、総合的な判断を下すことが重要です。定量と定性の両面からの分析により、より実態に即した戦略立案が可能となります。
PPM分析は、過去の実績データに基づく分析であるため、将来の市場変化に伴うリスクを十分に評価できない場合があります。特に、技術革新が急速に進む業界や、規制環境の変化が予測される業界では、市場の不確実性が高く、リスク要因の影響が大きいといえます。
そのため、PPM分析に基づく意思決定では、市場の不確実性を考慮したシナリオ分析や、リスク評価を併せて実施することが望ましいでしょう。これにより、環境変化に対する適応力を高め、リスクに備えた戦略立案が可能となります。
市場環境は常に変化しており、PPM分析の結果も時間の経過とともに陳腐化する可能性があります。したがって、分析結果を一度きりのものとして扱うのではなく、定期的にアップデートを行うことが重要です。
具体的には、年次や四半期ごとに市場データを更新し、分析を実施することが望ましいでしょう。これにより、市場の変化を迅速に捉え、それに応じた戦略の修正や投資判断が可能となります。PPM分析を継続的なプロセスとして位置づけ、柔軟な対応力を維持することが肝要です。
PPM分析は、企業が持つ製品やサービスのポートフォリオを評価し、経営資源の最適配分を行うための重要なフレームワークです。ここでは、PPM分析を効果的に活用するためのポイントについて解説します。
PPM分析を実施する際は、企業の経営戦略と連動させることが重要です。分析結果から得られた知見を基に、経営戦略の方向性を確認し、必要に応じて修正を行うことが求められます。
具体的には、経営戦略で掲げた目標や優先事項と、PPM分析で明らかになった製品・サービスの位置づけを照らし合わせ、整合性を確保する必要があります。これにより、経営資源の配分が経営戦略に沿ったものになり、企業の成長につながります。
PPM分析の有効性を高めるには、他の分析手法と組み合わせることが有効です。特に、SWOT分析やバリューチェーン分析など、企業の内部環境や競争優位性を評価する手法との併用が推奨されます。
これらの分析手法を組み合わせることで、製品・サービスの強みや弱み、市場における機会や脅威をより詳細に把握できます。その結果、PPM分析で得られた知見の精度が高まり、より的確な経営判断が可能になります。
PPM分析の結果を活用するためには、分析結果を社内で共有し、組織全体に浸透させることが不可欠です。分析結果を理解し、実行に移すのは現場の社員であるため、分かりやすく、説得力のあるコミュニケーションが求められます。
具体的には、分析結果を視覚化したグラフや図表を用いて説明したり、ワークショップを開催して議論を深めたりするなど、社員の理解を促進する取り組みが有効です。また、経営層からのメッセージ発信も重要で、PPM分析の重要性と活用方針を明確に示すことが求められます。
PPM分析は一度きりの取り組みではなく、継続的に実施することが重要です。市場環境や競合状況は常に変化するため、定期的に分析を行い、製品・サービスのポートフォリオを見直す必要があります。
そのためには、モニタリング体制を整備し、PDCAサイクルを回す仕組みを確立することが不可欠です。具体的には、市場データの収集・分析プロセスを標準化し、定期的な報告会や議論の場を設けるなど、組織的な取り組みが求められます。
PPM分析は事業ポートフォリオの評価に有効な手法ですが、単独で用いるよりも他の分析手法と組み合わせることで、より多面的な分析が可能となります。ここでは、PPM分析と併用することで、より深い洞察が得られる分析手法について解説します。

SWOT分析は、企業の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を整理する手法です。PPM分析で事業の位置づけを確認した後、SWOT分析を行うことで、各事業の強化ポイントや課題がより明確になります。
例えば、花形事業についてSWOT分析を行い、競合に対する強みや市場拡大の機会を特定することで、さらなる成長に向けた戦略立案に役立てることができます。一方、負け犬事業の弱みや脅威を分析することで、撤退の判断材料にもなるでしょう。
【関連記事】SWOT分析とは?やり方や具体例、活用法をわかりやすく解説
3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から事業環境を分析する手法です。PPM分析で事業の位置づけを確認した後、3C分析を行うことで、各事業を取り巻くミクロ環境をより詳細に理解することができます。
例えば、問題児事業について3C分析を行い、顧客ニーズや競合の動向、自社の強みを把握することで、市場シェア拡大に向けた施策を検討することができます。金のなる木事業については、安定的な収益を維持するために、顧客満足度の向上や競合対策が重要になるでしょう。

PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの視点から、事業を取り巻くマクロ環境を分析する手法です。PPM分析で事業の位置づけを確認した後、PEST分析を行うことで、各事業に影響を与える外部要因をより広い視野で捉えることができます。
例えば、花形事業や問題児事業について、技術革新の動向や政策変更の影響を分析することで、将来の市場成長性を予測し、適切な投資判断に役立てることができます。また、金のなる木事業や負け犬事業については、社会的トレンドの変化がもたらす影響を考慮し、事業の方向性を検討することが重要です。
【関連記事】PEST分析とは?目的や事例、自社の戦略に活かす方法を解説
バリューチェーン分析は、企業の主活動と支援活動を分析し、競争優位の源泉を特定する手法です。PPM分析で事業の位置づけを確認した後、バリューチェーン分析を行うことで、各事業の強みや改善点をより具体的に把握することができます。
例えば、花形事業や問題児事業について、バリューチェーン上の各活動を分析し、競合と比較することで、差別化ポイントや効率化の余地を見出すことができます。金のなる木事業については、安定的な収益を維持するために、バリューチェーンの各活動における継続的な改善が求められるでしょう。
【関連記事】バリューチェーンとは|具体例や分析方法をわかりやすく解説
ポジショニングマップは、製品やブランドを市場内で相対的に位置づけ、競合との関係性を可視化する手法です。PPM分析で事業の位置づけを確認した後、ポジショニングマップを作成することで、各事業の市場における差別化要因や競合との距離感をより明確に把握することができます。
例えば、花形事業や問題児事業について、ポジショニングマップ上での自社製品の位置づけを分析し、競合との差別化ポイントを強化する戦略を立案することができます。金のなる木事業については、ポジショニングマップを活用して、市場内での優位性を維持するための施策を検討することが重要です。
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新規事業を立ち上げる際には、PPM分析をはじめとしたフレームワークを適切に用いることで競合分析や目指すべきポジション・事業の強みを理解することができます。
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本記事では、企業の事業ポートフォリオの最適化に役立つPPM分析について、その目的や具体的なやり方、活用のポイントを解説してきました。PPM分析は、市場成長率と市場占有率という2つの軸を用いて、事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つのカテゴリーに分類し、経営資源の戦略的な配分を支援するフレームワークです。
PPM分析を実践するには、以下のステップが重要となります。
また、PPM分析を有効活用するためには、経営戦略との連動、他の分析手法との組み合わせ、分析結果の社内浸透、PDCAサイクルの確立などが求められます。PPM分析は万能ではなく、定性的な要因も考慮した総合的な判断が必要ですが、戦略的な意思決定を支える強力な手法であることは間違いありません。
事業ポートフォリオのマネジメントに課題を感じている企業は、ぜひPPM分析の導入を検討してみてください。市場の変化に素早く適応し、限られた経営資源を最適配分することで、持続的な成長と収益性の向上を実現できるでしょう。