2024年07月23日
2025年06月10日
企業がマーケティング戦略を立てる際は、自社の商品やサービスの特性はもちろん、外部環境についても正確に把握しなければなりません。変化の多い流動的な外部環境を整理・分析するにあたって活用できるフレームワークがPEST分析です。
本記事では、PEST分析の基本や目的、具体的なやり方、自社の戦略への活用方法などについて、わかりやすく説明します。実際の事例も紹介するので、自社でPEST分析を行う際の参考にしてください。
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PEST分析は、企業の外部環境を分析し、自社に与える影響を把握するためのフレームワークです。
企業の外部環境とは、企業の活動に直接的または間接的に影響を与える、外的な要因や条件を指します。いずれも企業がコントロールできない領域にあるため、企業はそれらを把握した上で戦略を立てる必要があります。
外部環境は、ミクロ環境とマクロ環境の2つに分類することができます。ミクロ環境とは自社を取り巻く市場や競合他社のことであり、一方のマクロ環境は政治、経済、社会、技術の4つの要因を指します。PEST分析はマクロ環境(国家レベルの広域的な要因)の分析に役立つフレームワークです。
不確定要素が多く、先行きが見通しづらいVUCA時代においては、外部環境の変化が自社に及ぼす影響をあらかじめ想定しておく必要があります。不測の事態が起こった場合でも事業を継続できるように備えておかなければならないため、企業においてはPEST分析の実施が欠かせません。
PEST分析の目的は、外部環境を把握して課題を見つけ、その課題に対する正しい戦略や適切な対策を立てることです。外部環境の状況によって市場やニーズは変化を遂げるため、企業が事業を行う上では外部環境の把握が欠かせないと言えるでしょう。将来的な見通しを予測できていれば、市場やニーズの変化をいち早く察知し、適切なアクションをとることができます。

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PEST分析は「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つの要因から成り立っており、これらの要因を分析することで、企業が直面する外部環境の把握につながります。

これらの外的要因は、企業戦略や、商品・サービスの開発、市場競争などに大きな影響を与えます。企業は外部環境を的確にキャッチできるよう、常にアンテナを張って情報感度を高める努力が必要です。外部環境について情報を集め、PEST分析を行うことで、効果的なマーケティング戦略が策定できるでしょう。
政治的要因には、以下のようなものが挙げられます。
政治的要因はビジネスにおけるルールに関わるものです。例えば、規制緩和によって新たな市場参入の可能性が生まれたり、税制の改正によって税負担が大きくなったりするケースが考えられます。自社にとって利益につながることもあれば、損失を被ることもあるため、日頃から情報のアップデートを欠かさないようにしましょう。
経済的要因に当てはまる例としては、以下の通りです。
経済的要因は自社の利益に直接的な影響を与えやすいため、特に注視する必要があります。近年、原材料などの高騰により商品の値上げに踏み切る企業が増えているように、中長期的な経営判断において重要な要素と言えるでしょう。
社会的要因には、以下の例が挙げられます。
社会的要因は、特にマーケティングや商品開発において欠かせない要素です。自社の商品やサービスが市場に受け入れられるには、顧客がどのような価値観やニーズを持っているか、その変化を含めて把握した上で戦略を考える必要があります。
技術的要因の例は、以下の通りです。
技術的要因は、事業の発展性やバリューチェーンに大きな影響を与えます。革新的なテクノロジーの出現は、既存事業を脅かすことも、新規事業のチャンスを生むこともあるでしょう。また、人口減少が進む日本においては生産性の向上が急務と言えるため、技術的要因を踏まえた事業戦略が欠かせません。

PEST分析を効果的に行うためには、いかに情報を集め、正しく振り分けられるかが重要です。以下の6ステップで分析・特定を行いましょう。
政治、経済、社会、技術の4つの要因に関連する情報を収集します。官公庁が公表しているデータなど、信頼性のある発信元から最新の情報を取得することが重要です。
収集した情報は、要因ごとに振り分けていきます。例えば、以下のように振り分けます。
PEST分析を進めると、何に振り分ければいいのか判断に迷う要因も出てくるかもしれません。しかし、PEST分析において重要なのは、要素を細かく振り分けるこの後のステップです。そのため、4つの要素への振り分けは、ざっくりで問題ありません。
要因の振り分けが終わったら、各要因を「事実」と「解釈」に分類します。客観的事実や数値に基づく分析は「事実」として、独自の解釈や主観的な評価が行われた情報は「解釈」として振り分けましょう。
振り分けたマクロ要因が、自社のビジネスにどのような影響を与えるかを評価します。ポジティブな影響は「機会」、ネガティブな影響は「脅威」として考え、それぞれ整理をしておきましょう。
自社のビジネスに与える影響を整理したら、それらの影響の大きさについても考えます。また、どのタイミングで起こり得るのかも明確にしましょう。この情報をもとに優先順位を検討し、影響度が大きく、早いタイミングで起こり得るものについては早急に対応を進める必要があります。
ここまでの分析を結果としてまとめた上で、自社事業の戦略立案を行います。
以下は要因に対する取り組みの例です。
| Political(政治) | 環境規制の強化に対して、環境への配慮を強調したマーケティングキャンペーンを展開する 労働法改正に対して、採用活動のために従業員の働きやすさや福利厚生を強化する |
|---|---|
| Economic(経済) | 消費者の買い控えに対して、コストパフォーマンスを重視した新商品を展開する 円安傾向に対して、輸出向け製品の販売促進キャンペーンを実施する |
| Social(社会) | 健康志向の高まりに対して、健康に配慮した商品やサービスを開発する 超高齢社会に対して、高齢者向けの商品ラインの充実を図る |
| Technological(技術) | ビッグデータの発展に対して、戦略立案のためにデータアナリティクスツールを導入する ネットショッピングの普及に対して、オンラインプラットフォームを強化する |
PEST分析は「やって終わり」になってしまっては意味がありません。事業計画やマーケティング方針など、具体的なアクションに落とし込み、アクションの実行を推進していきましょう。
PEST分析と併用することで、より多面的に外部環境と内部環境を把握できるフレームワークが、「SWOT分析」と「ファイブフォース分析」です。それぞれ目的や分析手法が異なるため、ここで説明します。
SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境を、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)として洗い出し、分析する手法です。自社や事業の現状を把握するのに役立ちます。SWOT分析において外部環境を洗い出す際にPEST分析を用いるのが一般的です。
【関連記事】SWOT分析とは?やり方や具体例、活用法をわかりやすく解説
ファイブフォース分析とは、特定の業界や市場などのミクロ環境を、「業界内の競合他社」「代替品の脅威」「新規参入者の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」という5つの要因に分類して評価する手法です。PEST分析で政治や経済などの観点から自社の置かれている状況を把握するとともに、ファイブフォース分析によって業界や市場における自社の収益性や競争力を知ることが大切です。
【関連記事】ファイブフォース分析とは?具体例を用いて分かりやすく解説
企業の外部環境を分析し、自社に与える影響を把握するPEST分析ですが、企業では実際にどのように活用されているのでしょうか。
ここでは、日本を代表する総合商社の一つである伊藤忠商事が公開している、2030年までのPEST分析の事例を一部ご紹介します。伊藤忠商事は、PEST分析を競争優位性の構築に役立てています。
政治的要因として挙げられるのが、政情の不安定化や格差問題、地政学リスク、経済安全保障などです。伊藤忠商事は世界各地で事業を展開しているため、各国の貿易政策や規制の変更は、貿易量増加・新たな商流の発生の機会が考えられると同時に、既存取引の消滅のリスクがあります。
経済的要因としては、世界経済の停滞や新興国経済の成長格差拡大、為替相場のドル高などが挙げられます。為替レートの変動は直接的な影響を及ぼします。円安メリットを享受するビジネスは拡大の機会がある一方で、新興国通貨の下落や海外投資コストの上昇といったリスクがあります。
社会的要因には、健康志向やQOL意識の高まりなどがあります。消費者のライフスタイルや価値観の変化は、商品やサービスの需要に影響を与えます。例えば健康志向が高まることで、健康増進の需要増加の機会がある一方で、安全や健康問題発生時の信用力低下などのリスクがあります。
技術革新により、ビジネスモデルが変化することで、革新的サービスや新たなビジネスモデルの創出・提供の機会が生まれる一方で、サイバー攻撃によるデータの流出、既存ビジネスモデルの陳腐化・消滅といったリスクがあります。
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PEST分析は、企業の外部環境を理解し、戦略を立てるための強力な手法です。政治、経済、社会、技術の4つの要因を分析することで、企業が直面するリスクや機会を把握し、適切な対応策を導き出せます。PEST分析を実践してみてください。