2021年04月28日
2025年03月12日
業務委託とは、自社の特定の業務を外部の企業や個人に依頼する契約形態のことです。委託する業務の内容によって、民法上「請負」と「委任」契約に分類されます。
本記事では、業務委託と請負の違いやメリット・デメリット、導入方法などをまとめました。
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労働人口の減少や働き方改革に伴い、生産性向上への意識が高まっています。従来の業務手法を見直し、改善することが重要です。
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業務委託とは、自社の特定の業務を、雇用契約を結ばずに、外部の企業や個人に依頼する契約形態のことです。受託者は注文者から受けた仕事の成果物・役務を提供することで報酬が支払われます。
厳密には「業務委託契約」は俗称であり、民法上の「請負契約」または「委任・準委任契約」、またこれらの混合的な発注の仕方・引き受け方をする契約全般を指します。
近年、業務委託のニーズが高まっている背景には、雇用コストの削減や業務量の変動への柔軟な対応(季節的な業務の増減や、景気の影響による雇用調整)などが挙げられます。
業務委託に適しているのは、経理や総務、営業事務、人事労務などのバックオフィス業務のみならず、ITエンジニア、デザイナー、コンサルタントなど専門知識を要する業務にも広がっています。特に、繁閑によって業務量の差が大きい場合や、社内で専門人材を確保することが難しい場合に、業務委託のメリットが発揮されやすくなります。
ここからは、業務委託の3つの種類について解説します。
請負契約とは、「仕事を完成すること」を約束し、その成果に対して報酬が支払われる契約です(民法第632条)。例えば、企業がITベンダーにプログラム制作を依頼し、完成したプログラムに対して報酬を支払う場合がこれにあたります。
請負契約は委任・準委任契約と異なり、仕事が完成しなかったり、成果物に瑕疵があり契約の目的達成が困難だったりする場合、注文者は契約を解除することができます。
委任契約とは、「特定の業務を遂行すること」を約束し、その業務を行うこと自体に対して報酬が支払われる契約のうち、法律行為を行う契約です(民法第643条)。例えば、企業が弁護士に法律相談を依頼し、相談業務を行ってもらう場合がこれにあたります。
委任契約では、「業務を行うこと」に対して責任を持ちますが、必ずしも成果物を完成させる義務はありません。そのため、依頼した業務が期待通りの成果に結びつかなくても、業務自体が適切に行われていれば契約は成立します。
準委任契約とは、委任契約と同じく「特定の業務を遂行すること」を約束する契約ですが、法律行為以外の業務にも適用されます(民法第656条)。例えば、企業がコンサルタントに市場調査を依頼し、その調査業務を行ってもらう場合がこれにあたります。
成果物の有無ではなく業務の履行自体に対して報酬が支払われるという点は委任契約と同様です。
業務委託と人材派遣は、自社の従業員以外の外部人材を活用する点では共通していますが、「委託先と契約先」「業務の指示命令権の所在」が異なります。
業務委託は、委託元企業と受託会社が業務委託契約を結びます。受託会社の責任者が業務指示や指導を行います。一方、人材派遣は人材派遣会社と雇用関係にある派遣スタッフが、派遣先企業の指揮命令のもとに業務を行います。
【部門別】アウトソーシングの成功事例と15のチェックポイント
本資料では、経理・受付・事務などバックオフィスの部門別に、業務委託(アウトソーシング)の成功事例を詳しく紹介します。
業務委託の活用には、さまざまなメリットがあります。主な3つについて解説します。
業務委託を活用することで、人件費や設備投資などの固定費を抑え、必要な業務に応じてコストを調整することができます。企業が人を雇用する場合、給与や社会保険料、研修費や労務管理などのコストが発生します。一方、業務委託では業務単位やプロジェクト単位で契約が可能なため、必要な分だけコストをかけることができます。これにより、固定費を抑えつつ、効率的にリソースが確保できます。
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業務委託の場合、業務に対する専門的な知見やノウハウを保有しているため、一から教育を行う必要がなく、スムーズに業務に取り組むことが可能です。これにより、業務の対応品質や対応のスピード、正確性が向上します。
例えば、社内にシステム開発を担当できるエンジニアがいない場合でも、業務委託を活用し、豊富な対応実績を持つ人材に依頼できます。近年はエンジニアの獲得競争が激化しており、採用コストをかけても優秀な人材を確保することが容易ではないため、業務委託は有効な選択肢と言えるでしょう。
作業負担の大きい業務は従業員のリソースを圧迫し、本来注力すべきコア業務に時間を割けなくなる可能性があります。特に、ルーティン業務や定型業務は、会社の運営上欠かせない業務ですが、外部の専門人材に任せることで社内の業務負担を軽減できます。
競争力を高めるためには、自社ならではの取り組みや戦略に注力していかなければなりません。従業員が最大のパフォーマンスを発揮できるよう、人手不足がボトルネックとなっている場合は、業務委託の活用をおすすめします。
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業務委託を活用することでメリットがある一方でデメリットもあげられます。
委託先に依存して業務を任せきりにしていると、社内に業務フローやプロセスを詳しく理解している人材がいなくなり、ノウハウや技術が蓄積されにくくなります。
また、業務委託先の撤退や方針転換によって自社での運用に切り替える場合に、機能しなくなる可能性もあるでしょう。
委託する業務によっては、外部の人材が自社の顧客情報や機密情報を扱うことになるため、情報流出のリスクが高まります。 業務委託先は、一般的に個人情報保護に関する厳格なルールを設けていますが、自社で取り扱う場合よりもセキュリティレベルが低い可能性も考えられます。
そのため、業務委託先を選定する際には、「プライバシーマーク」や「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)」など情報セキュリティに関する認証を取得しているかどうかも判断材料になるでしょう。
【関連記事】アウトソーシングの3つのデメリットと解消策、ポイントを解説
業務委託契約では重要事項があいまいなまま業務が開始されてしまい、後々トラブルとなることがあります。こうしたトラブルを避けるため、契約内容を書面にして取り交わしておくことが望まれます。
同じ当事者間で複数の委託契約が見込まれる場合、業務委託契約の「基本契約書」に加えて、個別の業務を委託する際に結ぶ「個別契約書」(発注書)を別途作成しておくと、管理上、双方の手間が省けます。
本章では、基本契約書と個別契約書の具体的な内容について解説します。
まず、報酬額、報酬の支払い期日・支払い方法、振込手数料の負担者などを定めます。ただし、これらはトラブルの原因になりやすいため、場合によっては個別契約書において具体的に定めたほうが望ましいケースもあります。
また、委託する業務内容によっては、個人情報の定義、個人情報の適切な管理・コンピュータのセキュリティ対策、個人情報の返還および複製の禁止を定めることもあります。
そのほか、委任・準委任契約では受託者の善管注意義務(民法第644条、善良なる管理者の注意をもって職務を遂行する義務)を定めておくと良いでしょう。
業務の質・量を含め、達成するべき業務内容・成果物の状態をできるだけ具体的に記し、後のトラブルの原因となることを防ぎましょう。また、前述の通り、報酬額などはトラブルになりやすいため、報酬や経費の具体的な範囲などについても取り決めを明文化しておくことが望まれます。
さらに、業務内容によっては知的財産権の帰属を明示することも必要です。例えば、知的財産権のうち譲渡できるものは譲渡あるいは買い取りする旨を示す、または商用二次利用の規定、その使用により得られる製品を販売する際の使用許諾料を記しておくといった内容が考えられます。
業務委託の活用を検討する際は、以下の2点について整理した上で、業務委託の活用が自社に適しているかを検討すると良いでしょう。
まずは、自社における課題を把握することから始めましょう。そのためには、業務フローやプロセス、関係者を洗い出し、どこに生産性や対応品質の低下を引き起こしているボトルネックがあるのかを特定することが大切です。
よくあるケースとしては、「業務量が多く人手が足りない」「特定の担当者に業務が集中し、属人化している」などがあります。さらに分析すると、「業務量が多いのは無駄な作業が発生しているから」といったケースもあるでしょう。
このように業務の改善点を明確にすることで、業務委託の活用によって解決できるかどうかを検討しやすくなります。
業務委託の活用が適切だと判断した場合、次に取り組むべきは委託する業務の選定です。一般的に、外部へ委託しやすいのはノンコア業務(間接業務)です。ノンコア業務とは、直接的な利益を創出せず、マニュアル化しやすく、一定の手順に沿って対応できる業務を指します。また、業務の難易度が高すぎず、高度な判断を必要としないことも特徴です。
そのため、自社の従業員でなければ対応が難しい業務や専門的な判断が求められる業務は、業務委託には不向きと言えるでしょう。外部に委託しても十分に機能するかどうかが、業務選定のポイントです。
業務委託の活用においては、トラブルを回避するための注意点があります。次のポイントに留意して慎重に取り組みましょう。
前述の通り、あいまいな契約内容はトラブルの根源です。報酬に関わる項目はもちろん、成果物や遂行する業務の質や量について受託者との間ですり合わせ、具体的に明記しておく必要があります。
例えば、成果物に対して受託者に修正を依頼したとしても、契約に修正対応の有無が明記されていなければ、対応してもらえないケースもあるでしょう。こうしたリスクを想定し、契約における取り決めや合意形成は念入りに行いましょう。
業務委託契約は下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用対象となるケースがあります。下請法が適用される場合は、注文者が守るべき義務と禁止事項が定められているため注意が必要です。
下請法は以下の通り、事業者の資本金規模と取引内容から判別されます。
上図のうち(1)(2)で各資本金規模に該当する場合は下請法が適用され、親事業者(注文者)には守るべき義務と禁止事項があります。
義務
禁止事項
義務である事項「書面の交付義務(3条)」または「書類の作成・保存義務(5条)」に違反した場合、50万円以下の罰金(10条)が科されます。
また、業務委託においては偽装請負にも注意する必要があります。偽装請負とは、業務委託契約を締結しているにもかかわらず、受託者に対して具体的な指揮命令を行うことです。指揮命令を行う場合、本来であれば労働者派遣契約を締結する必要があります。そのため、偽装請負に該当するとみなされると、労働者派遣法や職業安定法における違反行為として罰則が科されます。
業務委託を活用する際は、下請法と偽装請負に関する法的リスクについても注意しましょう。
委託する業務によっては、顧客や取引先などに関する機密情報を外部に渡さなければならないケースもあります。万が一、情報の漏えいや持ち出しが発生しないように、業務委託先の管理体制を確認しておくことが重要です。個人情報の取り扱いについての規定はもちろん、トラブルが起こった場合のフローなども確認し、信用性の高い委託先を選びましょう。過去に情報漏えいを起こしている場合は、再発防止の取り組みについてもヒアリングする必要があります。
また、場合によっては、契約書に秘密保持契約(NDA)や再委託禁止の項目を追加するなどの対応が求められます。
業務委託には完成した成果物に報酬を支払う「請負」と、役務の提供に報酬を支払う「委任/準委任」があります。いずれも雇用によらないため、企業はコストの最適化や専門的な知見・ノウハウの活用といったメリットが得られます。一方で、契約内容に関するトラブルや法的リスク、セキュリティ対策への注意も必要です。
運用のポイントをおさえて、業務委託を活用しましょう。
【お役立ち資料】業務委託を検討中の方に、業務整理ノウハウBOOK
労働人口の減少や働き方改革に伴い、生産性向上への意識が高まっています。従来の業務手法を見直し、改善することが重要です。
たとえ「現在の業務には特に問題がない」「これまでのやり方で進めてきた」と感じていても、実は隠れた「ムダ」が存在しているかもしれません。
パーソルグループでは、業務委託・業務効率化をご検討中の方に、業務改善コンサルティングの現場での事例を基に、業務の見直し方法や業務改善の進め方、コツについて解説した「業務改善コンサルタントが教える、業務整理ノウハウBOOK【業務の見える化チェックシート付き】」を作成しました。自社の業務を効率化したい方はぜひご活用ください。
A1.業務委託とは、自社の特定の業務を、雇用契約を結ばずに、外部の企業や個人に依頼する契約形態のことです。法的には「業務委託契約」という言い方は厳密でなく、民法上の請負と委任・準委任の契約、またこれらの混合的な発注の仕方・引き受け方をする契約を総称して業務委託契約と呼びます。
>>業務委託とは
A3.業務委託契約が下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用対象となる場合は注意が必要です。注文者が守るべきルールや禁止事項があります。まずは本文の表を参考に、契約が下請法の適用となるかを確認してください。
>>業務委託を活用する際の注意点