クリティカルシンキングとは?ビジネスに役立つ考え方と実践の手順

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ビジネスに役立つとわかっていても、正しく理解し実践するのが難しいと思われがちなクリティカルシンキング。ロジカルシンキングとどう違うのか、その具体的な考え方や実践の手順とコツをやさしく解説します。

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目次

クリティカルシンキングとは

批判的に考えるとはどういうことか

クリティカルシンキングはCritical Thinking、直訳すると「批判的思考」です。英語圏で最も由緒あり権威が認められているオックスフォード英語辞典(以下、OED)によると、以下のように説明されています。

- critical thinking
[uncountable] the process of analysing information in an objective way, in order to make a judgement about it

  • 【出典】オックスフォード英語辞典
  • [不可算] あることを判断するべく、目的に達するために情報を分析するプロセス

「目的に達するため」「情報を分析するプロセス」という2点が重要です。これは「批判的」といっても誰かを批判・非難するための考え方ではない、ということも意味しています。批判とは鵜呑みにせず吟味することであり、批判はむしろ自らに向くのです。ある達成すべき目的が前提する所与の条件・データや立論過程、そもそも目的に対しても批判的に検討することで、より好ましい目的に至るための思考プロセスを指してクリティカルシンキングと呼んでいます。

なおクリティカルシンキングには欧米で50年来にわたる教育・研究がなされてきた歴史があり、よく知られた定義のひとつに「自分の推論過程を意識的に吟味する再帰的(reflective)な思考」(Ennis, 1987)というものがあります。現在でも高等教育の主要な目標とされており、日本でも「日常生活から職業生活、学問にわたって応用可能」(楠見、2011)な思考方法として、教育やビジネス分野など、広く注目を浴びています。

【出典】「短縮版社会的クリティカルシンキング志向性尺度の検討」(磯和壮太朗・南学)

ロジカルシンキングとの違い

ビジネス上、必須の考え方としては、まずロジカルシンキングを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングと決して相互に対立する考え方ではありません。なお、OEDには実はlogical thinkingという項目はありません。そこでlogicalについてみてみると、以下のように説明されています。

- logical
1. (of an action, event, etc.) seeming natural, reasonable or sensible
2. Following or able to follow the rules of logic in which ideas or facts are based on other true ideas or facts

  • 【出典】オックスフォード英語辞典
  • 1. (行為や出来事などが)人為的でなく自然で合理的、または道理にかなった
  • 2. 思考や事実が他の正しい思考や事実に基づいているという、論理のルールに従っているか、または従うことができるような

ここからロジカルシンキングとは、まさに論理のルールに基づき、合理的で道理にかなった考え方だといえます。あるがままの現実を直視・認識し、そこから筋道だって考えるのですから、それを妨げる感情や主観を排した考え方でもあるといえるでしょう。

ここで先に見たOEDによるクリティカルシンキングの意味を振り返ってみると、次のようにいえるでしょう。特にビジネスでは現実の諸条件を正しく把握・認識して判断し、より望ましい目的に至るためには論理的・合理的に考えるよりほかありません。したがってクリティカルシンキングはロジカルシンキングに含まれ、論理的に考える点では同じですが、なかでも「目的に達するため」の「判断に資する情報分析プロセス」を伴う思考の側面がフォーカスされている、といえます。

以上からクリティカルシンキングは単に論理的思考であるにとどまらず、より望ましい目的を達成しようとするビジネスにも役立つ、実践的な判断をするために有効な思考法であるということがわかります。

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの包含関係

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの包含関係

ビジネスにおけるクリティカルシンキングの活用方法

クリティカルシンキング実践の4ステップ

では、その有効性をビジネスでいかんなく発揮させるために、どのような手順でクリティカルシンキングを実践すればよいのでしょうか。ビジネス上、クリティカルシンキングは以下の4つのステップを踏んで行われます。

STEP1:目的=ゴールの明確化
STEP2:現状分析
STEP3:課題発見
STEP4:解決のためのアクション

それぞれ具体的に見ていきましょう。

STEP1:目的=ゴールの明確化

まずは、目的=ゴールを明確にします。ゴールが明確になっていなければ、ゴールに辿り着くためにとるべき行動も具体的にならないからです。

クリティカルシンキングは前提となる諸条件や立論過程、既知の課題にも疑いの目を向けるため、場合によっては目的=ゴールが再設定されることもありえます。具体的なケースをもとに考えていきましょう。

ケース:労務部門で人手が足りず、残業が常態化している

働き方改革を実践し、その実現による魅力的な職場づくりを通して優秀人材を確保したいなら、これはゆゆしき問題です。労務担当者の残業が多いことは、他の社員からも何度か指摘されています。
現場からは「人手が足りない、人を増やしてくれ」と悲鳴が上がっていますが、単に人を増やす、すなわち人件費を増やすことは難しい場合が多いでしょう。売上に占める販管費の割合が高いと、売上に比例して、人件費も増加することとなり、利益が圧迫されてしまいます。

そこで、中長期的な利益アップ=売上増もしくは経費削減、社内人材の能力アップをめざすという解決法を探ってみます。ここではコスト抑制と人材育成を主な目的とし、仮に「業務効率の改善」をゴールと考えました。さらに期限・内容や数値目標を明らかにするため、より詳細に以下のようにゴールを設定しました。

  • 半年間で労務部門の残業時間を5割減
  • 進捗を見て、可能であれば1年後の残業時間をゼロに
  • 人件費等の経費は少なくとも現状を維持すべく、残業時間削減と並行して業務効率化にも着手
  • 四半期で業務内容やフローの見直し・改善、社員のスキルアップに向けた人材育成を実施する

STEP2:現状分析

次にゴールを達成するための諸条件を明らかにすべく、現状分析を行います。ゴールを達成するために前提となる条件=現状を明確化・詳細化し、それら条件の下、どのように行動するか考えるための準備を行うステップです。

主に現場へのヒアリングや過去の財務諸表などの見直しによってゴール達成を阻む、または後押しする現今の要素・リソースを洗い出します。

ここでも、先に挙げた労務の残業のケースを例に具体的に考えていきましょう。まずは労務担当者へのヒアリングを行うことにしました。担当者に日々の業務内容やフローなどについてヒアリングしたところ、主な業務だけでも以下があげられました。

  • 総務と労務を兼任している
  • PCや電子機器、通信環境や備品などの管理・補充等は恒常的に行う(総務)
  • 社員のPCやサーバ、ソフト、通信環境などのトラブルへの不定期な対応が必要(総務)
  • 社長の強い要望で週1回、会社からの通知や社員近況などを知らせる社内報メールを送付している(総務)
  • 締め日から給与支払日近くまでは給与計算を手計算で行う(労務)
  • 中途採用募集中で応募対応や面接設定などに不定期な対応が必要(労務)
  • 労務管理を手集計で行っている(労務)
  • 各種契約関係、入出金作業ほか定期・不定期の雑務も多い(総務・労務)

業務内容に加えて、各業務に費やす時間、業務の目的、遂行に必要な知識と技能、その知識と技能を習得するのに費やした期間の長さ、各業務の責任の程度をヒアリングし、職務分析表が作成できました。たとえば必要な知識・技能については習得期間などからレベルづけし、各業務の責任の程度から負担の重さについて一定の評価も行いました。

また、業務を行う環境についても整理しました。たとえば給与計算や労務管理を手計算・手集計によって行うときには表計算ソフトを用いている、PCやサーバ管理は外部の業者と連携して行っている、PC等のトラブル対応や採用応募者への対応は主にメールと電話で行っている、といったことです。

現状分析で大事なことは、「これは(解決が)無理そう」「わたしがそう感じるから正しい」といった感情や主観を排すること、目的がどこにあるかを常に確認すること、彼我の思考法は一定の癖・バイアス(傾向)をもつことが多いため、そこにこそ批判の目を向けることです。

なお、このケースでは労務担当者という直接の業務遂行者からヒアリングできたため問題ありませんでしたが、より広い情報源から情報収集を行うときには、その情報が確かなものかを吟味しなくてはなりません。つまり、その情報が一次情報なのか、それとも二次情報なのかを判別することが必要になります。一次情報とは本人が実際に見た・聞いた・体験した情報と考察、二次情報とは第三者を通じて得た情報、一次情報を解釈・編集した情報のことです。より信頼に値するのが一次情報であり、二次情報にあたる際には「誰かの判断が介在している」ことを念頭に信頼性を検討しなければいけません。

STEP3:課題発見

続いて、現状分析から、どのような解決がありうるかを考えます。ビジネスに限らない標準的なクリティカルシンキングでは、このステップは「推論」と位置づけられています。ビジネス上では諸条件を吟味し、ゴールに近づくための仮説を立案する、立案した仮説の妥当性を批判的に検討する、というステップであるといえます。

ここでもケースを用いて、課題発見を行っていきましょう。このステップでも積極的に労務担当者と話し合った結果、以下が課題としてあげられました。

  • そもそも業務の総量が多い
  • 不定期な対応(PCトラブルや採用応募対応など)が、定期業務を圧迫している
  • 労務管理と給与計算の手集計・手計算は改善の余地がある
  • 特別の知識が不要な一定の備品管理は、労務担当者でなくても代替できる
  • 週1回のメール社内報発信は、社の一体感醸成のために続けたいが、その情報収集が担当者の負担となっている

また、労務担当者が特に課題と考えていることは、以下の2点であることもわかりました。

  • 不定期対応のうち特に負担であるのが電話による対応で、自分の業務進捗いかんにかかわらず中断して対応に迫られて困っていること
  • 労務管理についてはあるウェブサービスの利用により効率化が可能であることを知っているが、目先の業務の多忙さによって費用対効果がしっかり計算できず、提案するに至っていないこと

そこで、労務担当者と相談しながら、以下を残業時間削減のためのアクションプランとして考え出しました。

  1. ノー残業デーの設置
  2. 可能な範囲での電話対応の取りやめ。緊急でない限り、PCトラブルや採用応募対応の電話を廃止し、メールまたは情報共有のウェブサービス上で行うよう社員に周知、人材募集の告知をメール応募のみに修正
  3. PCやサーバ、通信環境トラブル対応は、現状の契約範囲内で業者に一任
  4. 週1回のメール社内報の情報収集を自動化。社員各人が個別に書類に記入している日報をクラウド上に統一、これを確認している各部署のリーダーが進捗・気づきなどを一定分量にまとめて労務担当者に週の期限までに知らせる仕組みに
  5. 文房具などの備品は各社員が必要に応じて社の備品置き場からもっていってよいことに。この際、各自が補充した個数を備品置き場においた管理表に各自が書き込む、というしくみに
  6. 労務管理のウェブサービス導入

(6)労務管理のウェブサービス導入については有料サービスであるため、当初のゴール設定からずれが生じています。しかし、労務担当者へのヒアリングで、現状は各社員が共通書式に則って自己申告を行うことで勤怠の実態把握を行っているが、労務管理ウェブサービスを用いると、全社員に共通のフォーマット、かつデジタル上での勤怠管理が可能になり一定の自動化が実現されること、さらに従来の共通書式では散見された解釈違いなどによる集計上の障害がなくなること、そのうえ将来的には有料追加オプションによってさらなる労務管理の自動化が見込めることがわかりました。これを受け、税理士や各部署のリーダーとも相談し、今後全社的なリソースとして活用できることを費用対効果として期待し、労務管理のウェブサービスを導入することとなりました。ゴールに微調整を加えたのです。

STEP4:解決のためのアクション

最後に、課題を解決するための行動に移していきます。このステップでも、目的を意識し、当初のアクションプランの妥当性を批判的に検討し直し、柔軟にアクションを調整していくことが求められます。

ここでも、ケースを用いて具体的に見ていきましょう。ゴールを振り返ってみると、「四半期での業務改善」によって「半年での労務担当者の残業50%減」を目指していました。しかし、業務改善の進捗度合いなどを計測することで、労務担当者の業務がかえって増えるのでは本末転倒です。そのため、労務担当者とも話し合い、ゴールに正しく向かっているかどうかを計る指標は担当者の残業時間のみとしました。これなら、従来に比べて労務担当者の業務が増えるようなことはありません。

また、労務担当者に、残業時間が減らないようなときには事前の稟議なしにアクションプランを随意に調整してよいとする権限委譲を行いました。従来から労務担当者は日報でその日の主業務やトピックを報告していたので、従来通りの事後報告で充分、と考えたのです。

しかし、四半期での業務改善による残業時間削減を目指しているものの、労務担当者の残業時間は思ったように減りません。残業時間が減らない要因のひとつとして、兼任している総務業務の一環である、緊急時のPCトラブルなどへの対応が、件数は減ったもののまだ存在していることがあるとわかりました。そこで、「社員が自分でトラブルに対応できるようになればよい」と考え、PCにそれほど詳しくない社員でも対処可能なように、PCなどの緊急トラブルへの対応マニュアルをつくることにしました。

解決のためのアクションのステップが始まっても、なかなか労務担当者の残業時間が減らなかったのは、このマニュアル作成のためでした。マニュアル作成が完了して社員に行き渡るようになると、次第にトラブル対応の件数は減っていき、労務担当者の残業時間は目標の半年を待たずにゼロ近くまで減らすことができたということです。

難易度が高く見られがちなクリティカルシンキングを身に着けるためのポイント

クリティカルシンキングを阻む思考

クリティカルシンキングは、論理的思考を前提としたうえ、さらに向かうべき目的を常に意識し、かつ現状認識や推論過程など「自らへも批判的な目を向ける」考え方です。そのため、難易度が高く見られがちであるとともに、どうしても苦手、という人も実際に見受けられます。

したがって以降は、クリティカルシンキングを阻む思考をあげ、どうすれば克服できるかを考えていきます。

・感情や主観に流される

事実をあるがままに認識するにあたって、もっとも邪魔をするのが感情や主観です。感情や主観を排除できない限り、前提の論理的思考ができません。自らに批判的な目を向けるということも難しいでしょう。

・柔軟性に欠ける

ときに自説にこだわるあまり、建設的な議論ではなく相手を言い負かすための議論をしてしまうことがあるかもしれません。自身および他者の意見の妥当性について検討ができていない、ということでもあるでしょう。これでは視野狭窄に陥り、論理的思考ができないばかりか、自説が前提する諸条件や仮説の立論過程の妥当性を検討し、柔軟に修正していくこともできません。

・適切な情報の判別ができない

ビジネスシーンでは、さまざまな領域から多様で大量の情報を収集し、総合的に判断しなければならないこともあります。収集した情報が誤りやデマ、誇張であったなら、そこから組み立てる仮説立論・推論のすべてが定立基盤を失ってしまうでしょう。したがって、先述したように判断材料とする情報が一次情報なのか二次情報なのか、信頼性を検討しながら情報に接していく必要があります。

クリティカルシンキングを身につける

上にあげたようなクリティカルシンキングを阻む性向を理解し、日頃からものごとを考えるときにこれらを厳に避けるという態度を持ち続けることで、クリティカルシンキングの考え方に近づいていくことができるでしょう。

またクリティカルシンキングが求めるスキルは様々ですが、スキルや能力をもっているだけではクリティカルシンキングは充分にその効力を発揮できないとする研究もあります。

たとえば必要とされるスキル・能力には、帰納・演繹などの推論スキル、類推、仮説同定や議論の真偽判定などの論理スキル、読解スキル、情報の信頼性評価(一次情報・二次情報の判定スキルなど)、事実と意見を区別する能力、数学の能力などが報告されています。しかし、これらを開発し獲得するには、各自・個別の学習と反復訓練が必要となるでしょう。対して、必要な態度・姿勢であれば、日々ものごとを考えるときに意識することで習慣化し、クリティカルシンキングを習得していくことが期待できるのではないでしょうか。そうした態度として、以下の4つをあげている研究があります。

(1)論理的思考への自覚
自分自身の論理的な思考力について自覚しているか

(2)探究心
さまざまな情報や知識を求めようとしているか

(3)客観性
主観にとらわれず客観的にものごとをみようとしているか

(4)証拠の重視
証拠に基づいた判断を行おうとしているか

【出典】「批判的思考の能力と態度の測定」楠見孝(京都大学大学院教育学研究科)

上にあげたようなクリティカルシンキングを阻む要素を自覚的に取り除き、この4つの態度を意識して日常的に思考過程に取り込むことがクリティカルシンキング習得の第一歩です。

日本でも注目を浴びるようになったクリティカルシンキングは、いまやビジネス分野でも必須のスキルとして考えられるようになりました。
常に目的を意識し、自らにも批判的に向き合う姿勢をもってものごとを考えることで、よりよいビジネス上の成果を手にしたいものです。

クリティカルシンキングはロジカルかつ、目的指向で自らにも批判の目を向ける考え方

クリティカルシンキングとは、目的に達するための、情報分析プロセスを伴った論理的思考のこと。ビジネス上では(1)目的=ゴールの明確化、(2)現状分析、(3)課題発見、(4)解決のためのアクションの4ステップをもって行い、目的を常に意識しながら、もっている情報・データや仮説構築・立論過程、さらには目的にも批判的な目を向け、妥当性を検討します。これを支え、後押しする態度・姿勢としては論理的思考への自覚、探究心、客観性、証拠の重視の4つが提唱されており、これらの態度をもってものごとをクリティカルに考える習慣を得ていきましょう。

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