中小企業の人材育成に効果的な取り組み事例や考え方を解説!

人材・組織 人事

生産年齢人口が減少局面にある日本において、人材育成は企業の競争力強化はもちろん、事業継続の面でも重要な取り組みです。しかし、多くの中堅・中小企業が

 ・社内に人材育成の専門的知見をもつ人物がいない
 ・自社には人材育成の文化や仕組みがない

などの理由で、どのような人材を、どのように育成すればよいかという悩みに直面しています。そこで今回は、中堅・中小企業がいま取り組むべき人材育成のトレンドと考え方、その実践例を解説します。

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目次

人材育成のトレンドを知る~「求められる人材」はどう変わった?

人材育成の取り組みを進める上で、まずは「求められる人材像」が時代と共にどのように変化しているのか、トレンドを把握しておく必要があります。

2006年頃から経済産業省や経団連では、「社会人基礎力」として

・前に踏み出す力(アクション)
・考え抜く力(シンキング)
・チームで働く力(チームワーク)

の3つの能力を掲げてきました。その後、2016年頃から “VUCA時代に求められる能力“として、

・主体性と課題発見力
・多様性を尊重し価値観の異なる相手との協働

が強調されるようになり、さらに

・リベラルアーツ
・情報活用能力
・双方向で真摯に学び合う対話力

VUCA時代に求められる能力

 

【出典】経済産業省「人材像WG 参考資料集」

いささか難しく聞こえますが、急速なデジタル化とグローバル化で社会が大きく変化する中、仕事内容、そして仕事に必要なスキルも著しく変化していることは、想像に難くないと思います。

もう少しかみ砕いて解説すると「従来の定型・マニュアル通りの仕事はRPAやAIなどで自動化が進む」一方で、人には「不確実な環境下で、非定型で複雑な、周囲の人とコミュニケーションを取りつつ仕事をこなす能力が求められるようになった」ということです。

そして、そのためには「自律自走型で、自ら課題を設定し、周囲を巻き込みながら解決していける人材が求められている」と言えます。

関連記事「VUCA(ブーカ)時代に求められるスキルと、組織づくりのポイント」を見る

アフターコロナで人材育成はどう変わる?

    新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた後、「仕事のやり方」や「はたらき方」の変化に伴い、予想される人材育成・能力開発への影響を尋ねた企業調査を独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行ったところ、次の結果が見られました。

      1. 個人の仕事の範囲や役割がより明確になる…33.8%
      2. リモートワークを活用した研修が増える… 27.4%
      3. より自己啓発を重視する… 22.6% など

      【出典】独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査

    このことから、新型コロナウイルス感染症が終息した後も企業は個人に焦点を当てた人材育成を重視する姿勢を示していることが伺えます。 

    人材育成は自社の現状を把握することが第一歩

    企業にとって、人材育成は目的ではなく目標を達成するための手段に過ぎません。そのため「自社の中期経営計画を推進する上で、社内にどのような人材が不足していて、育成しないといけないのか」というように、具体的に落とし込んで考えることが大切です。

    そして、この「これから必要な人材」は、大企業なら2割程度、中堅・中小企業でも1名は既に社内に存在すると言われています。しかし、その人材を継続して採用・育成できないことが、あらゆる組織に共通する悩みではないでしょうか。

    優先順位の考え方~「いきなり全部」はムリ!施策検討のヒント

    人材育成の取り組みがなかなか進まない企業には、いくつかの共通点があります。

      • 社内に担い手(人)がいない
      • 人材育成の仕組みがない
      • そもそも体系立てて人を育てる企業文化がないため、予算が付かない など

    かつての右肩上がりで成長した時代と違い、不確定要素の多い現代では、新商品・サービスの開発や新たなマーケット・業態へのチャレンジなどに迅速に対応できる人材が不可欠です。このため、人への「投資」が重要になります。

    本章では、人材育成における施策検討の進め方について解説します。企業における組織・人材の重要課題は、以下の通り階層別・機能別に分けることができます。

    企業における知識・人材の階層別・機能別重要課題

     

    この図にある課題はどれも重要であり、可能ならすべて着手したいところですが、人的・予算的リソースに限りがある中堅・中小企業では、優先順位を付けて進める必要があります。その見極めのポイントは「影響範囲」と「即効性」の二つです。

    まず、「影響範囲」では上の層から着手することが鉄則です。基本的に組織の人的課題は、上位階層が下の階層に影響を及ぼすからです。しかし、役員クラスから切り込むのはなかなか難しいでしょう。

    一方、新しい施策の浸透が早いのは若手・新人層ですが、その影響範囲は限定的です。

    このことから、管理職・中堅層をターゲットとした「次世代リーダーの育成のためのサクセッションプランニング」や、「伸び悩み防止のためのストレッチアサインメント」から着手するのがお勧めです。企業における中間管理職の役割は多岐にわたるため、この層の意識が変われば会社全体に与える影響範囲も広く、結果として投資対効果も高まります

    人材育成の方針は中長期に立てる

    多くの中堅・中小企業は、成長市場の中でよい製品やサービスを生み出して勝ち残ってきた一方、組織力は弱い傾向にあります。激しい市場変化の中でこのまま何も手を打たなければ、「下りのエスカレーター」に乗り続けることになりかねません。

    そして、人材育成は時間がかかりますので、「3~5年かけて次の新しい管理職を作っていく」取り組みに、一刻も早く着手することが求められているのです。

    関連記事「人材育成とは?基礎から実践の手法、計画の立て方を解説」を見る

    予算の考え方~他社平均はどのくらい?助成金利用の注意点

    従業員1人あたりの年間教育研修費用は、2020年度の予算において下記のようなデータがあります。

    企業規模 従業員1人当たりの額(平均)
    1,000人以上 35,147円
    300~999人 48,056円
    299人以下 41,353円 
    【出典】株式会社産労総合研究所「2020年度(第44回)教育研修費用の実態調査」調べ

    一見すると妥当な予算と思われるかもしれません。しかし、その大半を新人研修と管理職研修が占め、結果として多くの日本企業で30代~40代前半の中堅層に対する人材教育が行き渡らず、キャリアの方向感を失わせる要因になっているのです。

    また、新人研修以降の若手社員に対する教育制度の少なさが、早期離職につながっています

    こうした課題を解消すべく、人材育成を支援する法律や助成金が用意されています。ただし、利用に際してはかなり複雑な申請書類の提出などが必要です。また、研修終了後に申請し、支給審査を経て不支給になる可能性もゼロではないことに留意してください。

    人材育成を支援する法律・助成金

    ① 人材開発助成金
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

    ② キャリアアップ助成金
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

    ③ 教育訓練給付金
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html

    関連記事「ニューノーマル時代における新入社員研修のポイント」を見る

    実践事例~自社でもできる!具体的な人材育成の取り組み例

    ここからは、社内で実施可能な人材育成の取り組み例を三つご紹介します。

    1. 管理者のマネジメント力向上と若手社員の成長を実現するアサイン

    一つ目は、ITや建設などプロジェクト型で業務が遂行される組織に有効な取り組みです。

    新規案件を受注してプロジェクトを立ち上げる際、担当営業とプロジェクトマネージャーは決定していることが多いでしょう。では、そのチームに誰をアサインするか、貴社ではどのように決められているでしょうか。

    ある企業では、月に1度「プロジェクトのアサイン&育成会議」を開催しています。

    ポイント:部門をまたいで部長、課長などの管理職同士が定期的な話し合いを持つこと

    そうすることで若手社員の個々のスキルや抱えている仕事の状況などへの理解が共有されます。それらを踏まえて今後のスキル拡張を見据えたアサインができます。アサインされたメンバーはプロジェクトを通じて新たなスキルを身に付けられます。また、管理者のマネジメント力が養われるほか、人材リソースとの兼ね合いで今後、会社がどのような案件を受注すべきかが明確になる効果も期待できます

    2. OJT力の強化

    二つ目は、製造業などライン型業務が多い組織に特に有効な、OJT強化の取り組みです。

    近年、メンターやブラザー・シスターなどの仕組みを取り入れる企業が増えていますが、意外とOJTのやり方は現場任せになっています。役割認識や1ランク上への成長に必要な要素は「Off-JT研修が1、上司や先輩のアドバイスが2、現場経験が7」と言われるほど、OJTは重要です。

    ポイント:しっかりとOJTができる先輩社員を外部研修などを通じて育成すること

    こうしたOJT力の強化は、嘱託や再雇用社員など、熟練層からの技術継承にも効果的です。

    役割認識と成長への必要な要素

     

    3. 1on1ミーティング

    三つ目は、あらゆる企業に当てはまる、評価改善の取り組みです。

    管理職の評価がうまく機能しない課題を抱える企業は少なくありません。実は、上司の評価に対する部下の不満は「ノーマネジメント(自分の業務を見てくれていない)」が多いのです。

    そこである企業では、年に2回の評価面談とは別に、上司と部下が気軽にコミュニケーションをとる仕組み(1on1ミーティング)を実施しました。

    ポイント:結果を同クラスの管理職同士でシェアし、自分がサポートできないことは積極的に他の管理職にヘルプを求められるようにしたこと

    この取り組みのおかげで、上司と部下双方の不安や不満の払しょくだけでなく、経営的にも現場で何が起きているか情報を吸い上げられるようになり、人材育成の施策に反映できる効果をもたらしています。

    アウトソーシングの見極め、4つのポイント

    社内に人材育成に割けるリソースやノウハウが少ない中堅・中小企業では、アウトソーシングの活用が有効です。ここでは、その際の見極めのポイントを解説します。

    関連記事「人事アウトソーシングとは|期待できる効果や選び方を解説」を見る

    1. 選択肢と実績が豊富で、優先順位付けに協力してくれるか?

    まずは、対象別のプログラムが豊富かつ実績があること。そして、自社に合った人材研修はもちろん、何から実施するか優先順位付けにも協力してくれるパートナーを選びましょう。

    2. パッケージ型の仕組みを提供してくれるか?

    開発に時間とコストがかかるフルオーダーメイドではなく、パッケージ型の仕組みで自社のサイズに合うものを選定してくれるかどうかも、重要なポイントです。

    3. 適正なコスト感で実施できるか?

    自社の予算感に合うかどうかも、しっかりと確認しましょう。最近では初期費用を抑えた、月額制のサブスクリプションサービスもあります。

    4. オンラインでの実施も可能か?

    ニューノーマルにおいては、集合型研修の実施は難しくなることが予想されます。自宅やサテライトオフィスからでも受講できるよう、オンラインでの実施が可能かも確認しましょう。

    関連記事「もう迷わない!自社に最適なアウトソーシング先企業の選び方」を見る

    まとめ|中小企業における人材育成は優先順位をつけて進めよう

    本記事では、中堅・中小企業がいま取り組むべき人材育成のトレンドと考え方、その実践例を解説しました。

    中小企業にとって、自社の競争力強化や事業継続のためには人材育成の課題解決が非常に重要です。

    まずは、「社内にどのような人材が不足していて、育成しないといけないのか」というように、人材育成の課題を具体的に落とし込んで考えることが大切です。社内に人材育成に割けるリソースやノウハウが少ない場合は、助成金やアウトソ―スの活用を検討してみましょう。 

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    インタビュー・監修

    中田 太平

    中田 太平

    株式会社パーソル総合研究所
    デジタルラーニング事業本部 デジタルラーニングソリューション部 マネジャー
    小売業販売支援コンサルティング業務経験を経て、2005年より人事・労務・人材育成の領域で活動。
    電鉄系グループ会社で人事全般、労務・福利厚生のコンサルティングに従事した後、デロイトトーマツ グループで大阪・関西の責任者として人材育成、組織開発のコンサルティングと研修講師を務める。
    階層別研修の中でも、管理職のマネジメント、リーダーシップ研修を中心に登壇。
    主要テーマは、組織マネジメント、人事考課者トレーニング研修、コーチング、リーダーシップ開発、次期幹部養成等

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