2025年08月29日
急速な変化が求められる現代においては、単に「新しいことを学ぶ」だけでは、組織を変えることはできません。そんな中、今注目されているのが、一度身につけた価値観や行動様式を手放すことから始める「アンラーニング(unlearning)」という考え方です。本記事では、アンラーニングの意味やリスキリングとの違い、企業が取り組む意義や進め方、注意点までを分かりやすく解説します。
【お役立ち資料】変化に強い組織をつくる!
アンラーニングを促進する3つの原則とは?
急激に変化するビジネス環境では、これまでの成功体験や知識が通用しない場面が増えています。しかし、現場では「新しいスキルを学んでも古い習慣が邪魔をする」「変化への抵抗が強い」といった課題に直面することも少なくありません。
本資料では、アンラーニングを促進するための具体的な方法や阻害要因を解説し、組織全体で変化を受け入れる風土を構築するための実践的なヒントを提供します。従業員の成長を後押しし、組織の競争力を高めるためにぜひダウンロードしてご活用ください。
目次
「アンラーニング」とは、時代や環境の変化とともに通用しなくなった知識やスキル、価値観を手放し、代わりに新たな知識・スキルを取り込むことを指します。例えば、長年成果を上げてきた営業手法やマネジメントスタイルが、今の時代にそぐわなくなってきた――そんなときに求められるのが、アンラーニングです。これは過去の成功体験を否定するものではなく、時代に合わせて見直す前向きな行動といえるでしょう。
未来の予測が困難な現代において、従業員一人ひとり、そして組織全体が変化に柔軟に対応する力を育てるために、アンラーニングの視点がますます重要になっています。単なる業務のやり方だけでなく、思考や判断の根底にある前提を見直すアンラーニングこそが、企業の変革における鍵を握るといえます。
株式会社パーソル総合研究所が実施した「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」では、正社員の約半数(49.8%)が何らかのアンラーニングに取り組んでいると回答しています。具体的な内容として、「仕事の計画」や「仕事の手続きや方法」が28%を超える一方で、「意思決定のプロセスや方法」(24.4%)、「顧客のニーズについての考え方や信念」(23.7%)といった思考や価値観に深く関わる領域では、やや低い割合にとどまっています。
表面的な業務改善に比べ、根本的な価値観の見直しには時間や支援が必要です。この点は、企業がアンラーニングを推進する際の課題として挙げられます。組織全体でアンラーニングを浸透させるためには、従業員が安心して価値観ややり方を手放せる環境を整えることが欠かせません。
リスキリングが「新しいスキルを習得すること」を指すのに対し、アンラーニングは「これまでのスキルや知識を意識的に見直し、固定観念を手放すこと」に焦点を当てています。
リスキリングを推進する企業は増えていますが、新しいスキルを効果的に活用するためには、その前段階としてアンラーニングが欠かせません。過去の価値観ややり方に固執したままでは、せっかく習得した新しいスキルも、現場で実践に活かすことが難しくなってしまうからです。
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【調査レポート】2026年度のリスキリング実施予定と展望
全国の企業にお勤めの方を対象に「リスキリング」に関する定点調査を四半期ごとに実施しています。本調査では定点調査の項目に加え、生成AIの普及による変化や、2026年度の方向性についてもまとめています。ぜひダウンロードして、最新のリスキリング動向をご覧ください。
現代は、テクノロジー、はたらき方、価値観などが加速度的に変化し、正解がない時代に突入しています。このような環境では、過去の成功パターンがむしろ変化の足かせとなることもあります。特に中堅からベテラン層は、長年の経験によって確立された思考や行動様式を持っていますが、それが新しい環境への適応を阻む要因となるケースも少なくありません。
アンラーニングを通じて、こうした固定観念を緩めることができれば、組織全体の変革を促進することにつながります。さらに、リーダー層が率先してアンラーニングに取り組むことで、若手や中堅層が変化を前向きに捉えやすくなるという効果も期待できます。
企業がアンラーニングに取り組むことで得られる効果は、単なる意識改革にとどまりません。人材育成、業務改善、組織文化の変革など、多岐にわたるメリットが期待できます。
アンラーニングを導入することで、従業員は自身のキャリア形成を見直し、再構築する機会を得られます。これまでの知識やスキルに固執せず、変化の激しいビジネス環境や業界のニーズに応じた新たなスキルを柔軟に習得できるようになります。
また、アンラーニングを促進する職場環境は、従業員の自己成長意欲を高め、学び続ける姿勢を育む土壌となります。その結果、組織全体の人材育成力が強化され、成長志向の文化が醸成されます。
技術革新や市場環境の変化が激しい現代において、従来のやり方や知識だけでは十分に対応できない場面が増えています。アンラーニングを実践することで、従業員は自身の固定観念から脱却し、新しい価値観や手法を受け入れる「変化対応力」を身につけることができます。
過去の成功体験や前提を見直すことで、マインドセットがアップデートされ、新たなチャレンジや役割変化にも前向きに対応できるようになります。こうした柔軟性の高い人材は、組織の競争力向上にも貢献します。
アンラーニングを定着させることは、単なる人材育成にとどまらず、組織全体の文化変容につながります。特に、「変化を歓迎し、学び続ける姿勢」を価値観として共有できるようになると、企業全体の柔軟性が大きく高まります。
従業員が過去のやり方や固定観念を手放すことに対して、心理的抵抗を感じなくなることで、チャレンジや試行錯誤が許容されやすくなります。「失敗=悪」ではなく「学びの機会」として前向きに捉える風土が育ち、イノベーションの土壌が整います。
アンラーニングを進める中で、従業員同士が価値観の違いや思考のギャップを認め合い、学び合う姿勢が育まれます。これにより、組織内のコミュニケーションや連携が活性化し、上下・部門間を超えた協働が進みやすくなります。
このように、アンラーニングを通じて育まれる柔軟で前向きな組織文化は、変化の激しい時代をしなやかに乗り越えるための強固な基盤となります。
アンラーニングを実践することで、既存の枠組みや思い込みにとらわれない自由な発想が生まれやすくなります。思考や行動をアップデートすることで、従業員が新しいアイデアを生み出しやすくなり、結果として組織全体のイノベーション推進につながります。
その結果、新しい製品やサービスの開発や業務プロセスの革新が促進され、市場における競争優位性を高めることができます。イノベーションを求める企業にとって、アンラーニングは不可欠な仕組みといえるでしょう。
アンラーニングは、業務の中に潜む非効率なプロセスや、時代に合わなくなった習慣を見直すきっかけにもなります。古い価値観ややり方を手放すことで、最新のツールや柔軟なはたらき方を取り入れやすくなり、業務効率が大きく向上します。
例えば、アナログで行っていた業務をデジタルツールで代替したり、属人的な判断をデータ分析に基づくものへ転換したりすることで、より迅速かつ的確な意思決定が可能になるでしょう。
アンラーニングは、一度身につけた知識や価値観を見直し、より良い行動や思考へとアップデートしていくプロセスです。企業でアンラーニングを促進するためには、以下の3つのステップで段階的に進めるといいでしょう。

アンラーニングの最初のステップは「内省」です。従業員が自分自身の知識やスキル、価値観が、現在の業務やチームにどのような影響を与えているかを振り返ることから始めましょう。「これまでのやり方は、今も最適か」「変化に対応できているだろうか」という問いを通じて、無意識に続けてきた行動や思考パターンに気づくことが、アンラーニングの出発点になります。具体的には以下のような取り組みが効果的です。
こうした内省によって、手放すべき「古い前提」や「固定観念」に気づくことができ、次のステップへの準備が整います。
内省によって自分の課題や改善点が明らかになったら、次は「取捨選択」のステップです。従来のやり方や知識、習慣のうちこれからの業務にとって「残すべきもの」と「手放すべきもの」を整理していきます。
例えば、過去の成功体験が現在の業務に適応していない場合、それを手放す決断が求められることもあります。一方で、今後必要となるスキルや価値観を新たに選び取り、リスキリングへとつなげていくことが大切です。このステップでは、以下のような支援が有効です。
このように取捨選択を組織的にサポートすることで、従業員が自ら納得感を持って行動変容に取り組めるようになります。
最後のステップは「実践と振り返り」です。選び直した価値観やスキルを、実際の業務で試しながら、都度振り返ることで行動を定着させていきます。
例えば、改善提案の仕方を変えてみるなど、小さな行動の変化から始めることが効果的です。そのうえで、実践後にレビューやチームでの対話を設けることで「うまくいった点」「改善が必要な点」を明確にし、次の改善へとつなげていきます。振り返りを効果的に行うために、以下のような取り組みを実践するとよいでしょう。
こうしたサイクルを回し続けることで、アンラーニングは一過性の取り組みではなく、組織文化として根付いていきます。
アンラーニングを効果的に進めるためには、単に「知識を手放すことが重要」と伝えるだけでは不十分です。従業員一人ひとりの心理面への配慮や、組織全体での取り組みなど、いくつかの押さえておくべき注意点があります。ここでは、企業がアンラーニングを導入・推進するうえで、気をつけたいポイントについて解説します。
アンラーニングの難しさのひとつは、長年積み重ねてきた固定観念や成功体験を手放すことにあります。特に、これまで一定の成果を挙げてきたベテラン従業員や管理職にとっては「これまでのやり方を否定される」と感じるケースも少なくありません。知識やスキルの再評価には、相応の心理的負担が伴います。
パーソル総合研究所の調査によると、役職に就いてから3カ月~半年未満の時期にアンラーニングはピークに達し、その後は低下する傾向にあるとされています。一定期間が経過すると、役職者としての「慣れ」が生まれ、再び固定観念に縛られるリスクが高まるともいえます。
こうした背景を踏まえ、企業としてはアンラーニングを安全に行える職場環境を整備することが重要です。正解のない問いに向き合い、新しい視点を受け入れるには、安心して試行錯誤ができる土壌が欠かせません。
アンラーニングが必要だと強調しすぎると、従業員の中には「これまでの努力が否定された」と感じてしまう人もいます。これは、従業員のモチベーションや自己肯定感を損なう要因となり、逆効果になる可能性があります。
アンラーニングを進める際は、過去の経験を否定するのではなく、「より良い未来をつくるためのステップ」であることを明確に伝えましょう。ポジティブなメッセージや成功事例を共有することで、従業員の前向きな意欲を引き出すことができます。
アンラーニングを成功させるには、個人だけでなくチームや組織単位で取り組むことが重要です。個々の従業員が単独で固定観念を手放そうとするよりも、チームで共通の目標に向かって変化に取り組むことで、行動変容の定着と成果が得やすくなります。具体的な取り組みとしては、以下のような方法が効果的です。
このように、チーム単位での実践が広がることで、アンラーニングは一過性の取り組みではなく、組織全体の文化として根付く可能性が高まります。
これからの時代、企業や組織が持続的に成長していくためには、これまでの成功体験や既存の前提を見直し、より柔軟で進化し続ける組織づくりが求められます。その出発点となるのが、アンラーニングです。
アンラーニングは、単なる知識の上書きではなく、従業員一人ひとりの価値観や思考パターンを見直し、より良い行動や意思決定につなげるための重要なプロセスです。個人任せにせず、組織全体で戦略的・計画的に取り組むことがアンラーニングを定着させる鍵となります。
今こそ、変化に強い人と組織をつくるために、アンラーニングの視点を人材育成や組織開発に取り入れてみてはいかがでしょうか。
【お役立ち資料】未来を切り拓く組織に必要なのは、新しい学びと手放す勇気
ビジネス環境の変化は待ってはくれません。新しいスキルを身につけるだけでなく、過去の成功体験や固定観念を手放す「アンラーニング」が、これからの企業成長に欠かせないポイントです。
「組織と社員を強くするアンラーニングを促進する3つの原則」では、アンラーニングを促進するための具体的な方法や阻害要因を解説し、組織全体で変化を受け入れる風土を構築するための実践的なヒントを提供します。従業員の成長を後押しし、組織の競争力を高めるためにぜひダウンロードしてご活用ください。