地方企業のためのノウハウ満載!「攻めの採用のコツ」レポート①~採用と定着に苦戦する理由とは?マクロ統計から採用課題を「自分事」化する

その他 経営者・役員

2019年2月27日、宮崎県と宮崎県プロフェッショナル人材戦略拠点の主催(共催:宮崎銀行)による「人材採用ワークショップ - 採用課題を明確にし、解決方法へと導く『攻めの採用のコツ』」が開催された。

当日、JR宮崎駅前の会場には、50名を超える宮崎県内の企業、団体の人事担当者、経営者が詰めかけ、採用活動における「意識改革」のためのワークショップが展開された。3つのパートに分けてレポートする。

目次


開催に先立ち、宮崎県商工観光労働部 商工政策課 経営金融支援室長 石田 渉氏が挨拶。

「”人材確保と育成による中小企業の成長”をテーマに、①全国の現状 ②今後の日本、宮崎県のヒント ③日々の採用、人材活用の気づきが得られる、有意義な時間としていただきたい」と開催主旨を説明した。

続いて、講師であるパーソルホールディングス株式会社 グループ営業本部 シニアマネージャー 市野 喜久が登壇。

「私はいま、全国で同様のワークショップを開催しています。その中で『とにかく採用ができない』『なにが起きているのか、本当のことを教えてほしい』といった声が多く寄せられます。地方企業が採用市場でしっかり戦える準備づくりのために参りました」と語り、ワークショップがスタートした。

市野は冒頭、パーソルグループの紹介の中で転職サービスdodaにおいて、毎月の転職希望登録者は約8万人いると紹介し、「全国規模の転職サイトは4つ、単純計算で毎月数十万人もの雇用流動性が今の採用市場にはある。結論から申し上げると、地方企業が人材採用・社員定着ができない理由は大きく2つ。1つは自社課題が不透明であること、もう1つは解決方法が不明確であることです」と語る。

そのうえで、今回のワークショップの目的については「自社の採用課題を自分事化して、解決策を明確にすることで、『守りから攻め』の採用に体質を変える、意識変革のための学びの場です」と宣言した。

採用課題を明確にする

市野は「この時点で正解は求めていません」と前置きしたうえで、受講者の本音を引き出すべく、ワークシートを使った作業を実施。自社の採用課題について思いつくままに書き出し、2名1組となって互いに共有するよう促した。受講者はそれぞれ熱心に書き込み、ほとんどが初対面のため最初こそぎこちなさがあったものの、同じ悩みを抱える立場としてすぐに盛り上がりを見せ、10分ほどの時間終了後も、会話がやむことがない活発な意見交換が行われた。

共有後、テーブルごとに代表者が発表。受講者からは「給与や福利厚生、休日、エリア」といった条件面から、「自社の知名度がない、PR不足」「人材採用にかける予算がない、上司の理解がない」といったものが挙がった。これを受けて市野は、外的要因が多い企業は採用成功に遠く、内的要因が多いと採用成功に近い(図1)として、その要因を分析する。

図1)採用における「外的要因」と「内的要因」認識

市野によれば、課題認識が「外的要因」とは評論家的で「~だから仕方がない」で認識が終わっている状態を指すと話す。それに対し「内的要因」は自社の課題が自分事として把握できており、対策が立てられる状態にあるという。会場ではこの時点で、およそ9割が外的要因であり、内的要因まで踏み込めているのは約1割程度だった。地方中小企業の採用はハローワークや地縁血縁頼りで、外部の情報も少ないため客観視ができておらず、解決策も不明確な企業が多いという、市野の指摘が改めて浮き彫りとなった。

今が「攻めの人材採用の好機」

市野は、実はプロフェッショナル人材採用は、今が絶好のチャンスだという。だが、多くの企業では「体感がない」のではないだろうか。市野が絶好のチャンスとする理由は、大きく次の4つだ。

① 転職市場の特性:好景気時には流動性が向上する(やりがいを求めて移る)
② 大手企業の選択と集中による構造改革:事業部縮小、カンパニー廃止など過去提起雇用された専門人材の流出が増大
③ 首都圏ポスト不足:部下なし管理職、高スキルだがポストなし人材が増える
④ 年金制度改革、労働活躍年齢の延長:60歳以上の有能人材が存在

ただし、これらの人材の多くはいずれも現職中であり、失業者が登録するハローワークにはいない。「いかにしてこれらのチャンスを掴み、“採用マーケットで勝つ”には、まずは知識格差をなくすことが重要」であると説いた。

マクロ雇用統計を知り、「自分事」に

ここからは大手企業ではあたり前の知識であるマクロ雇用統計を知るセクションへと移行。マクロでの動きが自社の採用にどういう影響があるのかを、紐づけて考えるのがテーマだ。

①需要(雇用統計、不足人材数)~2020年以降は東京でも人口が減少する

最初に示されたのが、パーソル総研による雇用統計データ。6年後、2025年には583万人、今の2倍の人材が不足し、宮崎県では13万人が不足すると予測されている(図2)。興味深いのが、東京都でも2020年以降は減少に転じるという点だ。市野は「東京の人口が減少すると、宮崎県では何が起こりますか?」と問いかける。その答えは、東京の大手企業が地方からの採用を強化するため、さらに採用競争が激化するというものだ。

図2)労働市場の未来推計

②採用難易度(有効求人倍率、有効求人数)~求人倍率は“金利”と心得よ

続いて示されたのが「有効求人倍率」のデータ(図3)である。2015年現在、バブル期の1.44倍を大きく超える1.63倍を示している。また、「有効求職者数/求人数」のデータによれば、「求人数」は9年連続で増加しているが「救職者数」は減少している。これらが意味することを市野は「宮崎県では今後、さらに採用に費用がかかり、“敵”が増えることでもっと“勝てなく”なる」と指摘する。加えて「有効求人倍率は金利と同じです。社長・役員、人事部内で毎月共有されている状態を作ることが肝要」であると説いた。

図3)有効求人倍率/有効求人数

③完全失業率 ~“引き抜き合い”は自社の社員にもおよぶ

「完全失業率」データ(図4)では、2017年に2.8%と3%を切っており、これは1993年以来、24年ぶりの低水準であるという。この見方を市野は「採用ターゲットは失業者ではなく現職者にも及ぶことが予想され、自社の社員も引き抜かれる可能性がある。いわば“引き抜き合い”の様相です。そのため、これまで以上に社員と向き合う必要が高まります」と指摘する。

図4)完全失業率

④宮崎県有効求人倍率 ~県外を狙う必要が高まる

続いて、宮崎県の数字も示された(図5)。宮崎県における「有効求人倍率」は1.47倍(2018年12月度)と高倍率が続いている。これについて市野は、「県内の倍率が高いと、県外を狙う、越境型の採用活動が必要になる」と語った。

図5)九州・宮崎県の需給ギャップ

市野はここまでのまとめとして、「マクロ雇用情報は景気と共に変動するため、常に把握しておくことが重要です。そして単に数値を眺めるのではなく、それが自社にとってどのような影響を与えるのかを考えることが『自分事』に繋がるのです」と説いた。加えて、「情緒的にマイナスに受け止める、自信をなくすのではなく、まずは事実を受け止めたうえで、自社が『できていないこと』を知り、『〇〇ができていないから、それをやればいいんだ』という、自分事にして欲しい」と訴えた。

▼まとめ

求人倍率とは…
・採用難易度を示す数値
・資金調達でいう「金利」原料調達でいう「調達コスト」
・0.1ポイントの変化で採用コストが上下する ⇒社長、役員、人事部内で毎月共有される状態を!

完全失業率とは…
・採用難易度を示す数値
・高い→市場からの調達コストが下がる
・低い→失業者がいないため「現職者がターゲット」⇒引き抜き合いが起こっている!

レポート②では「新卒」「中途」「UIJ地方移住転職」の3つの市場別の最新データをもとに、有効な対応策についてご紹介する。

レポート②はこちら
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