エンジニア育成とは?具体的な方法や成功のポイントを解説

エンジニアの育成がうまくいかないというIT企業は少なくありません。効率よく人材育成を行い、企業に成果を還元させるためには、重要なポイントを押さえて指導を行いましょう。この記事では、エンジニア育成の概要をはじめ、理想的な人材の特徴や育成方法、成功させるポイントなどについて解説します。

【無料DL】ITエンジニアを育成するポイントを公開中

ITエンジニアの不足によって採用市場は激化しているため、自社でITエンジニアを育成する企業が増加しています。

・ITエンジニアの育成プロセスが知りたい
・ITエンジニア育成のポイントを押さえておきたい

そのような方に向けて、【ITエンジニア育成のプロセスと成功のコツを公開しています。
ITエンジニアの採用・育成にお悩みの方はぜひご活用ください。

資料をダウンロードする(無料)

目次

エンジニアの育成が重要な理由

現代においては、従業員や企業の未来を見越したエンジニア育成が必要です。労働力としてのエンジニアを育成するだけでなく、今後管理職や指導者にキャリアアップすることを考えた組織づくりが求められます。そのためには、長期的な視野をもって、ステージに応じた育成の機会を設けなければなりません。

今後企業で長期的に活躍できるエンジニアを育成しなければならない理由は、3つあります。

企業成長やビジネス機会の獲得につながる

新しい技術を持ったエンジニアを育成することで、企業の成長につながります。現在では、オープンソースでさまざまなツールや言語が開発されています。常に最新のスキルを身につけていくことで、他社にはないビジネスチャンスの獲得にも結びつくでしょう。

一方、多くの企業でDXが進むなかで、発注する企業のITリテラシーも向上しつつあります。受注するIT企業側に高度な対応を必要とする状況が増えているため、エンジニアが旧来のシステムの保守を行うのみの企業では、今後さらに機会損失を引き起こしやすくなると予想されます。

自社の環境や企業理念に合った人材を育成できる

エンジニアを育成することで、自社にマッチした人材を獲得できます。高いスキルを持った人材は、中途採用や業務委託で獲得する方法もあります。しかし自社の環境や企業理念に適応できていないと、能力が高くても適切な問題解決の手段を選べず、かえって業務効率が低下する恐れがあります。

エンジニア育成とともに自社の企業理念や文化を共有していくことで、長期的に活躍する人材を育てられます。とくに新卒採用では複数人が同時期に入社してくるため、効率よく人材を育成できます。また、他社の環境に染まっていないため、自社のやり方を吸収しやすい点もメリットです。

自社の育成ノウハウが蓄積される

エンジニアの育成によって、指導者側のスキルアップが見込めます。企業の育成ノウハウが作り上げられることで、教育体制の整備につながります。

また指導を行う従業員がエンジニアの育成業務に従事するためには、指導者として十分な能力を身につけ、若手と意思疎通する必要があります。これにより、指導を担当する分野の知識を深めつつ、コミュニケーション能力を高める機会が得られます。

AI時代を勝ち抜く高度IT人材の強化と非IT人材へのリスキリング戦略

Chat GPTの急速な普及で、AI活用が非常に身近なものになってきました。データとデジタル技術の戦略的活用が、生産性向上のみならず企業価値の創造にも大きく寄与します。こうした変化に対応していくためには、全社単位でのDXを進めていく必要があります。

本冊子では、全社DXの過程で生じがちな人材面の課題として、非IT人材のリスキリングと高度IT人材の強化について取り上げました。
取り組む際のポイントや事例についてご紹介しています。

資料ダウンロードはこちら

エンジニア育成で企業が直面する課題

企業がエンジニアを育成する際に、直面しがちな課題は主に2つ存在します。

育成にあてる人材が不足している

エンジニアの育成には、専門的な知識と高いコミュニケーション能力が求められます。現在は、エンジニアやIT業界そのものが人員不足に悩まされている状況であり、企業としても指導できるほどの能力を持った人員を教育に割けないケースは少なくありません。あるいは、適切な指導を行えるハイスキルな指導者が社内に在籍していないこともあります。

新人を採用しても育成が遅れれば、結果的に業績向上につながらないといった状況に陥りかねません。

育成した従業員が自社に定着しない

時間と手間をかけて育成した従業員が、早期退職してしまうことも課題のひとつです。身につけた知識やスキルを企業に還元する前に退職すると、企業としては無駄なコストを育成に費やしたことになります。

従業員の退職理由は、「収入アップ」や「会社や業界の将来性に不安を感じて」などで転職先に求める事としては「給与や待遇の向上」「やりたい仕事ができる環境」などが挙げられていました。育成したエンジニアを定着させるには、待遇面での配慮や労働環境の整備などが求められます。

【出典】レバレジーズ株式会社「エンジニア転職意識調査

企業で育成すべきエンジニア人材

それでは、企業はどのような人材をエンジニアとして育成するべきなのでしょうか。もっとも力を入れるべきなのは、AIでは実施できないような業務を行える人材です。AI生成ツールが普及した現代において、一定レベルのコード作成はAIが代行できると言われています。

そのため、人間との対話力、クリエイティブ性、思考力など、AIにはないスキルを身につけた人材が求められます。そういった人材でなければ、AIを前提としたキャリアの構築は困難とされます。

コミュニケーション力

コミュニケーション力は、AIに代行できないスキルの代表格です。クライアントとの交渉やチームメンバーとの情報共有などを円滑に行うためには、一定の対話スキルが求められます。

また、文章の読解力や、相手の感情を汲み取る想像力も、コミュニケーション力として重要な要素です。仕様書の読解や、交渉時に相手の出方を予想しながら対話を行えることがエンジニアの業務においては重視されます。

論理的思考力

AIにないスキルとしては、論理的思考力も挙げられます。問題発生時には、飛躍した考え方や画一的な方法に固執せず、最適な解決方法を判断する能力がエンジニアにとって必要不可欠です。

論理的思考力が高いと、開発した技術の応用や新技術の考案にも役立ちます。スケジュールの決定や再発防止の策定にもつながるため、身につけておいて損はないスキルです。

ChatGPTで変わるエンジニアのスキル・採用・組織作り

ChatGPTの登場は、様々な業界に大きなインパクトを与えました。

本資料では、ChatGPTの活用事例や、IT業界へのアンケート結果も交えて、AI時代におけるエンジニア組織のあり方を具体的に解説しています。 業務フローや組織づくりを検討する際にご活用ください。

資料ダウンロードはこちら

エンジニア育成の進め方

エンジニアの育成では育成計画や育成計画者の選出を先に行うのではなく、まずは育成の目的を策定しましょう。育成の対象者やカリキュラムは、エンジニア育成の目的によって変わります。育成の目的別に人材の特徴やキャリアアップの内容を定義し、決定した内容を研修に落とし込んでいきます。

ここからは、さらに育成計画の実施を6ステップに分け、各ステップの内容を紹介します。

1.育成の目的を策定する

最初に「エンジニアを育成することによって、どんな目的を達成したいのか」「何を実現させたいのか」について設計し、企業全体のエンジニア育成におけるビジョンを統一します。

現状の課題や今後の目標などを話し合ったうえで、エンジニア育成にどのような効果を期待するのかを決定しましょう。

2.人材の要件定義を行う

目的を達成するために必要な人材の特徴を洗い出します。例えば、「AIを活用した新サービスを開発し、他社と差を付けたい」という目的に対しては、「機械学習やディープラーニング、データサイエンスなどの知見と技術に長けた技術者」といった人材像が挙げられます。

また、「エンジニア全体の折衝能力を高めたい」のであれば、「コミュニケーション力が高く、交渉に長けた人材」など、具体的に求める人材の要件を決定します。

3.人材のキャリアパスを立てる

人材の要件が決まったら、現状の従業員と要件を比べてどのようなスキルが不足しているのかをまとめます。そして、実施すべき研修内容を具体的に定義していきます。現状の各従業員のスキルを可視化するには、スキルマップを作成する方法がおすすめです。

スキルマップとは、個々の従業員が持つスキルのレベルを表にまとめて可視化したものです。それぞれのスキルは、達成するべき基準ごとにいくつかの段階に分けられています。各人がどの段階にいるかを表すことで、個人・チームのスキルレベルがわかります。

4.育成対象者を選出する

ここまでの3ステップが完了したあとは、策定した人材の定義にあわせて育成対象者を選定します。対象者の特定は「育成の内容を活かす機会を提供できるか?」という観点を軸に実施しましょう。

5.育成計画を立てる

育成計画を立てる際にまずは育成対象者がどのような姿になっておくべきか、育成ゴールを明確にしましょう。明確になったゴールをもとに、会社の現状を踏まえて段階的な育成カリキュラムを検討していきます。

育成計画では、実践ワークの比率が多くなるようにカリキュラムを作成しましょう。難易度は簡単すぎず、難しすぎない成長を続けることができるストレッチゾーンを意識して設定することが理想的です。また、研修後のアンケートでカリキュラム内容が「やや難しい」の回答が多いほど研修満足度も高くなっているため、受講者自身が成長を感じることができるような内容と難易度になることが重要です。

6.研修後のアクションプランを設定する

研修や勉強会を終えたあとのアクションプランも設定しましょう。以下のような方法でアクションプランシートを作成し、知識のインプットと実践を繰り返すことが重要です。

なお、アクションプランを設定する際は、該当部署の責任者(上司)とDX担当者で意見を重ねてください。複数人でプランを設定すると、より現場の声が届いた内容になります

エンジニアの育成方法

企業に長期的な還元が見込めるエンジニアを育成するには、企業側が積極的に教育制度を整えることが必要です。Off-JTで知識を蓄え、OJTで実践的な経験を積ませるという流れを何度も繰り返しましょう。そして、オープンソースの情報にも触れていれば、社外とのつながりをスムーズに作ることも可能です。

Off-JTを実施する

Off-JT(Off the Job Training)とは社外研修を指します。従業員ごとに知識をばらつかせず、一括で学習できる点がメリットです。

プロの指導者に依頼するため、相応の費用がかかりますが、質の高い学習が可能です。また、企画段階からサポートを受けられるため、ほかの方法と比べて準備の手間が少なく済みます。

OJTを取り入れる

OJT(On the Job Training)は、実際の業務を通じて、先輩や上司から直接的な指導を受けることを指します。新人に対し、現場に出なければ伝わらない教育内容を指導できるため、効率よく育成できます。例えば、新人研修としてビジネスマナーや基礎的な業務知識、企業理念などを身につけるのに向いています。

効果的な教育が可能な一方で、厳しい指導を行ったり、体制の整備が不十分なままでは、新人に過剰な負担がかかりやすく、成果を出す前に退職してしまう恐れがあります。アドバイスは1対1で行うようにするなど、双方が相談しやすい環境を形成しましょう。

OJTについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事「OJTとは?|効果的な運用ポイントや失敗の原因を解説」を見る

勉強会の実施

従業員同士で情報を交換し合い、積極的な疑問の解消やスキルアップを行います。実際に現場で使われている知識や技術を共有できるので、直接的な業務手順の効率化などに役立つほか、社内のコミュニケーションの活発化にも期待できます。

オープンソースの情報を学ぶ

オープンソースとは、利用者が自由に使えるように一般公開された開発言語やツールのことを指します。オープンソースの情報を学び、改良内容を社内外に発信することも有効な育成方法です。

情報発信によってフィードバックが受けられ、社外の組織と接点を作ることもできます。技術力の向上に加え、積極的に情報に触れて自ら発信する姿勢が身につけられるため、理想的な人材への育成が見込めます。まずは、オープンソースに関する最新情報や、ほかのユーザーによる発信を調べるよう学習を促すことが重要です。

エンジニア育成を成功させるポイント

将来的に活躍できるエンジニアを育成するためには、企業側が親身になってさまざまな施策を実施する必要があります。ただ目的を押し付けてタスクを割り振るのではなく、従業員自身が自ら行動できるような土壌を、企業が提供しなければなりません。また、結果はすぐに出ないことを理解し、長期的な目線で管理を行うことも必要です。

ここではエンジニアの育成を成功させる3つのポイントを解説します。

自律的に学ぶカルチャーを作る

まず企業は、従業員自身が自律的に学習しようとする環境を作り、提供することが必要です。現在、多くのIT企業は、人材不足による過密スケジュールで、新しいスキルを取得する風土の形成が進んでいない傾向です。学習意欲にあふれているカルチャーを作ることは、新たな技術の習得につながりやすく、結果的に他社との差別化にもなります。

そのためには、積極的な学習を促すマインドシフトを進めることが必要です。具体的には、新たな技術領域を学ぶ従業員に対して昇給を行うなど、学習の評価制度を整えることで従業員のモチベーションの向上が見込めます。

長期的な視点で育成を進める

エンジニアを育成する際には、長期的な目線で取り組むようにしましょう。人材育成は、基本的に長期間を必要とします。もしスピード重視で短期間の詰め込み教育などといったハードな育成を進めてしまうと、過度なプレッシャーから従業員が疲弊し、かえってモチベーションを低下させる恐れがあります。

さらに、情報は日々アップデートされ、エンジニアのマインドも常に変化しています。長期計画であっても毎年同じ内容を繰り返し実施するのではなく、カリキュラムを常に見直したり、研修生のメンタル・モチベーションの変化を把握したりしながら、研修内容をブラッシュアップし続けることも重要です。

進捗管理やフィードバックの機会を設ける

育成計画に取り組んでいる間は、進捗に関する報連相(報告・連絡・相談)の機会を作りましょう。指導者と育成対象者の間に認識の食い違いはないかを確認し、予定通りに育成が進んでいることを双方が把握しておく必要があります。もし想定よりも早く計画が進んでいたら、スケジュールを前倒しすることも有効です。

これに加えて、フィードバックの機会も設けてみましょう。今後対策すべき内容が理解できるため、人材の成長を早める効果があります。

【無料DL】ITエンジニアを育成するポイントを公開中

ITエンジニアの不足によって採用市場は激化しているため、自社でITエンジニアを育成する企業が増加しています。

・ITエンジニアの育成プロセスが知りたい
・ITエンジニア育成のポイントを押さえておきたい

そのような方に向けて、【ITエンジニア育成のプロセスと成功のコツを公開しています。
ITエンジニアの採用・育成にお悩みの方はぜひご活用ください。

資料をダウンロードする(無料)

まとめ|エンジニア育成のポイントをおさえ、企業の戦力となる人材の育成・定着を

エンジニアを育成することは、企業力を高めるために重要なプロセスです。目の前の業務を完了させることだけではなく、組織の人材がいずれ指導者や管理職になるまでの長期を見越し、ステージに応じた育成の機会を作りましょう。企業にとって戦力となるエンジニアを育成するには、「自律的に学ぶカルチャーを作る」「長期的な視点で育成を進める」といった組織づくりが重要です。

インタビュー・監修

パーソルイノベーション株式会社
TECH PLAY company 事業責任者

武藤 竜耶

2011年、インテリジェンス(現、パーソルキャリア)に新卒入社し、約4年間デジタル人材領域の採用支援を担当。
その後、デジタル人材領域の採用支援部門責任者として2年間部門立ち上げに取り組む。
2017年に『TECH PLAY』にジョインし、現在はTECH PLAYの事業責任者として全体を管掌。