2021年03月19日
2024年01月17日
「営業成績が伸びない」「自分の気持ちをうまく伝えられない」といった悩みがあるならば、「非言語コミュニケーション」について考えてみましょう。アメリカの心理学者が導き出した「メラビアンの法則」を学ぶことで、1つの解決策が浮かび上がってきます。
本記事では、メラビアンの法則とはなにか、ビジネスにおける活用法を解説します。
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「メラビアンの法則」はカリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者であるアルバート・メラビアンが1971年に提唱しました。
言葉に対して感情や態度が矛盾していた際、人はそれをどう受け止めるのかについて実験をした結果、メラビアンが導き出したのが「7-38-55のルール」とも呼ばれる「3Vの法則」です。
表情や視線など見た目や仕草による「視覚情報(Visual)」が人に与える影響度は55%、
声の大きさや話すスピードなどの「聴覚情報(Vocal)」は38%
会話そのものの内容である「言語情報(Verbal)」は7%
たとえば、「好き」といいながらも怒ったような表情で声のトーンも低かったら、相手は「本当は嫌いなのではないか」と受け取ってしまうということを表しています。
人がメッセージを伝える際には以下2つのパターンがあるといわれています。
・言語コミュニケーション(バーバルコミュニケーション)
直接的に話したり書いたりする言語情報を指す
・非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)
視覚情報や聴覚情報など言語に頼らない
異文化交流のシーンでよく用いられる「ボディランゲージ」など、言葉が通じない場合には、相手の表情をはじめ、話すトーンや声の大きさで「この人は多分こう言いたいのだろう」と理解しようとするでしょう。
このように、言葉以外の情報からもコミュニケーションを図るのが「非言語コミュニケーション」です。
メラビアンの法則は、よく「人は見た目が重要」や「会話の内容よりも話し方や表情によって人の心は動く」などといった見解の根拠として用いられがちですが、この解釈は間違っています。メラビアンは言語コミュニケーションよりも非言語コミュニケーションを大切にするべきだといっているわけではありません。
メラビアンの実験内容を見れば一目瞭然です。
実験では、まず「好き」「嫌い」「普通」からイメージされる単語を3つずつ選び、それら9つの単語をそれぞれ「好き」「嫌い」「普通」の声色でテープレコーダーに録音、その後、「好き」「嫌い」「普通」を想起させる表情をした顔写真を1枚ずつ用意しました。
そして、被験者は写真を見ながら録音した音声を聞きます。ここで、たとえば怒った顔の写真に優しい声で「好き」という言葉を聞いたとき、被験者が「嫌い」と判断したならば、視覚からのインパクトのほうが大きい、という解釈になります。
その結果、「視覚情報」「聴覚情報」「言語情報」の3つがどれか1つでも一致しない場合には、視覚情報>聴覚情報>言語情報の順番に優先されると示したのが「3Vの法則」です。
メラビアンはあくまで「矛盾した情報を与えられた人は何を優先して相手の感情や態度を判断するのか」ということを調べたのであって、「人は見た目が重要」だということを立証しているわけではありません。
このことについては、メラビアン自身も「私の研究は誤解されている」と訴えています。
コミュニケーションの第一歩は、話し手が受け手にメッセージを伝えようとすることから始まります。しかし、メッセージ(言葉の意味)を伝達しただけではコミュニケーションは成立しません。受け手がメッセージの内容を正しく理解して、ようやく成立したといえるのです。
この際に、受け手は話し手から発せられるあらゆる情報にアンテナを張って内容を判断します。
たとえば「面白いね」というメッセージを、顔が見えない電話による言語コミュニケーションだけで伝える場合、相手はその言葉からしか感情を読み取れないため、もしかしたら話し手の意図とは違う解釈をしてしまう可能性があります。一歩間違えば、受け手が「バカにされた」などと憤慨してしまうこともありえるでしょう。
このように、受け手が誤解してしまい、コミュニケーションがうまくいかないケースは日常的にもよく見受けられます。
メラビアンの法則をコミュニケーションに活かすとすれば、視覚だけを重視するのではなく「視覚」「聴覚」「言語」の3つの情報をすべて一致させることが大切です。
たとえば「その考えは正しいと思う」というメッセージを相手に伝えるとします。
このとき、とても真剣な顔で力強くいわれるのと、目を合わせずに笑いながらいわれるのでは、相手の捉え方は大きく異なります。前者は「この人は本当にそう思っている」と感じる一方で、後者は「口ではそういっているけど、本心では思っていないのかもしれない」と感じる人がほとんどでしょう。
受け手は言語だけではなく、非言語コミュニケーションのなかから相手の見えない感情を受け取ります。だからこそ、3Vを一致させて気持ちを伝えることが重要です。
非言語コミュニケーション研究のリーダーの1人であるレイ・L・バードウィステルは、次のように話しています。
二者間の対話では、ことばによって伝えられるメッセージ(コミュニケーションの内容)は、全体の35パーセントにすぎず、残りの65パーセントは、話しぶり、動作、ジェスチャー、相手との間のとり方など、ことば以外の手段によって伝えられる
もちろん、言語情報は大前提として情報を伝えるための大きな役割を担っています。しかし、コミュニケーションを円滑にするためには、言語以外の視覚や聴覚などの非言語の大切さをしっかりと理解することが重要です。
では、ビジネスにおいて「メラビアンの法則」はどのように活用できるのでしょうか?前述のとおり、非言語コミュニケーションは、特に「自分の気持ちをしっかり伝えたい」という際にとても役に立ちます。話す内容自体にどんなに価値があったとしても、自信がなさそうな弱々しい声のトーンであれば、それだけで「この人の話は聞く価値がない」と思われる可能性があります。逆に、自信に満ち溢れた表情でハキハキと話す姿が相手の目に映れば、一気に印象は変わるはずです。
大切なのは「伝えたい」という熱意です。まずは表情や仕草、声のトーンに気をつけると良いでしょう。
また、話すときだけではなく、聞き役にまわる際にも非言語コミュニケーションが重要な役割を果たします。話を聞く際、髪の毛を触りながら視線があちこちに動いていたら「真剣に聞いてくれない」と思われてしまいます。一方、相手と同じような声のトーンと表情で相槌を打つ姿は「ちゃんと話を聞いてくれている」と、受け止めてもらえるでしょう。
ビジネスにおけるオンライン会議が一般的になりましたが、「オンラインは疲れる」という声もあがっています。
理由の1つとして、オンライン会議では実際に会うよりも、非言語コミュニケーションがとりにくいことが考えられます。身振り手振りで話す様子が見えづらいことが多いため、コミュニケーションの多くを言語コミュニケーションが占めています。そのため、直接会って話すよりも意識を言語に集中させて「この人は今、こう考えているのだろうか」と思考を巡らせる必要があるので、疲れやすいと考えられます。
このことからも、非言語コミュニケーションをうまく活用することがコミュニケーションを円滑にするために大切だということがわかります。
たとえば、顧客に営業へ行く際には「自信をもっておすすめします」ということを伝えるために声のトーンや身振り手振りを意識すると、相手は説得力を感じてくれるはずです。
加えて、髪型や服装などの外見にも気を配ると良いでしょう。アイロンがかけられていないシャツを着てボサボサの髪の毛で営業先に行ってしまうと、どんなに話し方がしっかりしていても「この営業マンは本気で売る気がない」と思われてしまう可能性があるためです。
また、ビジネスシーンでは欠かせないプレゼンテーションの場でも、非言語コミュニケーションが活きます。
たとえば、今まで落ち着いた声で話していたのに、突然大きな声が出たら相手の意識は一気にこちらに向けられます。つまり「重要なポイントです」と言葉にしなくても、声のトーンを変えるだけで相手に「ここをわかってほしい」と思ってもらえるのです。
「メラビアンの法則」でいうところの「3V」を一致させることが、コミュニケーションを円滑にするうえでとても重要です。また、非言語コミュニケーションを上手に使いこなすことでビジネスの幅が広がる可能性は十分に考えられます。
メラビアンの法則を正しく理解し、ビジネスシーンをはじめとするあらゆる場面でお役立てください。
A1.コミュニケーションにおいて、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%のウェイトで影響を与えるという法則です。アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが1971年に提唱しました。
>>「メラビアンの法則」とは?
A2.視覚情報だけを重視するのではなく「視覚情報」「聴覚情報」「言語情報」の3つの情報をすべて一致させることが大切です。
>>非言語コミュニケーションを使いこなす