従来の人事を刷新する、タレントマネジメントで戦略実現に向けた人事を<インタビュー後編>

「人事データの活用」をテーマに、パーソル総合研究所の佐々木におこなったインタビューの後半部分をお届けします。

前編はこちら

“システムありき”ではなく、何をしたいかが重要

――いまピープルアナリティクスを導入されている企業というのは、やはり上場企業など大手企業が多いんでしょうか。

佐々木 そうですね。対象人数が多い企業でないと課題感が出てこないんです。組織が大きくなり、一人当たりのマネジメント対象人数も多く、組織数も多く、複雑・煩雑になっているような組織には、課題が強く出ますね。これまでご支援した企業さまは、誰でも知っているような日本を代表する企業です。

――特に職種とか業界というのは関係ないのでしょうか?

佐々木 関係ないですね。パーソル総研のお客さまも飲料メーカーや通信会社など様々です。

タレントマネジメントというのは本来何をしたいかがありきで、そのためにシステムを導入するのですが、タレントマネジメントシステムだけ導入して「うまく活用ができない」と言うケースが多くあります。ツール、システムありきの発想が残っており、「システムさえあればいろんなことが自動的にできる」「データを入れれば何でもできる」と思われがちですが、実際は設計が重要です。すなわち、ピープルアナリティクスが重要で「人事を戦略的に考える」「科学的に考える」ことが重要なのですが、考える人がいないという課題もあります。

大事なのは設計であり、優秀な人材が活かされていないということを防ぐために、また、より活かすためには、どのようなデータが必要で、データをどう分析して方程式をつくるのか、方程式ができたら運用に乗て、あとは検証を行うといった、PDCAを回して精度を上げていく、というような話をお客さまにしています。

――ニーズとしては、採用よりも、むしろ継続性や持続性といった課題感が強いんでしょうか?

佐々木 はい。人材獲得競争が激化しており、優秀な人材ほど採用が難しいため、

採用で競争力をもたせること自体が限界なんですよね。採用にコストをかけてもすぐにやめてしまい、投資効果がないんです。今いる人材をいかに有効活用するか、に視点が移っているため、「適所適材」がとても重要に

なってきています。適所適材ができていないと離職にもつながります。離職の要因は他にも日々のマネジメントや育成・研修を行っていない、評価処遇も不十分など、さまざまですが、適所適材に着手している企業は少ないのです。

データがあっても壁、なくても壁

佐々木 グーグルさんと「G Suiteを活用したピープルアナリティクスができないか」ということで、G Suiteを導入している百貨店さまとパーソル総研の3社での取り組みの話がありました。

百貨店さまも新規事業を積極的に行っているのですが、例えば保育園事業を提案した人がいて、どのような人が考えたのかを知りたい場合、個人のログを全部拾い上げていけば分かってしまうんです。G Suiteでその人の履歴をたどっていくと、3年前にこんなことを着想していたとか、そのために社内の誰とコンタクトをとって、こんな会話をしていたといったことまでわかるんですね。

しかし、それらは完全に個人情報ですので、一人ひとりが人事に渡していいよとなるのは大きな壁ですよね。いろいろな壁があるんです。データがあったとしても壁、なくても壁。それを乗り越えなければならないことが、大きな課題です。

――結局、人材を管理するためではなくて、人材を活かすためのデータはどうあるべきか、ということでしょうか?他にも企業がデータを活用する上での障壁はありますか?課題意識が乏しいだとか。

佐々木 課題意識はだいぶ上がってきていると思います。なんとか活用できないかとは思ってはいますが、やはり先ほどの壁ですよね。データを蓄積していないとどうしようもない、これから集約しようとなると何年も先になってしまう。

――パーソル総研のような外部にご相談をされるのは、やはり社内では解決しづらいということでしょうか?

佐々木 そういうことだと思います。

――外から来て、音頭をとってくれというような。

佐々木 まず、知見がないとできない、ということだと思います。人材のアセスメントであることを理解していないと。つまりデータの見える化というのはアセスメントツールのことです。組織サーベイやエンゲージメントなどもそうですが、アセスメントというものに対する知見がある程度ないと、活用の発想が難しいです。正確にいうと「人材アセスメント」です。「どのような角度でどういうところを見るか」「どういう特性が人にはあるのか」という知識がない限り、データの活用・取得方法はわからないんです。何をもって何をみればいいのかがわかる人材はなかなかいないですよね。

――そこはやはり経営層が中心になって、こういう人材が今後の経営戦略上必要だからこうしてください、とリーダーシップをとってやらないと変わらない気がしますが、いかがでしょう。

佐々木 変わらないと思います。結局、人事だけだと動かないことも多いです。データ活用に対する経営のリーダーシップはもっと必要ですね。

課題に対して人事戦略をどう描くのか?

――ツールじゃないということですが、体制なのでしょうか?戦略に対してどういう人が必要なのか、ということをもっと考えていくという。

佐々木 そうですね、上位概念で「人事戦略をどう描いているのか」というところが大事だと思うんです。人事戦略は事業戦略を推進するためにあるので、たとえば、事業変革だとか、これまでやってきたことを新しくするとか、いろいろあると思うんですが、結局は“イノベーション人材”ということですよね。イノベーション人材を選んで育てることが必要なのですが、「自社にとってのイノベーション人材とは何か」という定義がないんです。

とある企業さまから、既存の事業では立ちいかなくなったため、新しい技術を用いて、新しいソリューションを開発する会社をつくるというご相談を受けたのですが、「新しい事業を作りだす」という事業戦略があっても、実現させる人・組織がないんです。これから立ち上げるのですが、人事戦略のシナリオが必要なんです。

そこで、まずはイノベーション人材を定義しました。「どういう人材が必要なのか」ということで数百人分のデータを取得し分析しました。その過程でバイネームも出てきましたので、「どうですか?」と経営者に尋ねたところ、納得されていました。イノベーティブな事業を創造していくといっても、それを支える・実現するための人事というのは脆弱なんですね。

人事とともにあるべき人事戦略のグランドデザイン

――これからピープルアナリティクスを導入しようと検討されている企業さまにメッセージはありますか。

佐々木 まずは、今あるデータがどこまであるのかの把握が重要です。パーソル総研でも、データリストというのを作成しており、初回は“あるあるチェック”をします。データが豊富にある場合は今あるデータを使い、データが全然ない場合はこれから蓄積していきましょうということで、データがあるかないか、からスタートしています。データというものは、より多く取った方が良いですし、既にあるなら活用したほうがいい、そういう発想をしたほうが良いですとお伝えします。

タレントマネジメントシステムの“箱”だけ導入しても、使いこなせないというお悩みを頻繁に聞きますが、「人事戦略をどう描いて、どうシステムを活用するのか」に尽きます。本来シナリオありきのはずが、箱ありきになっている点は改善していきたいです。

――まずは課題を明確にしないと、ということですね。

佐々木 そうですね。何を実現したいのかということと、それに対して人事がどう近づけていくのかという、グランドデザインがないと何も進みません。そこから一緒に考えてほしいというご相談もいただくので、そこはぜひ一緒に額に汗をかきながら進めていければと思っています。

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