プロ人材活用のススメ①「課題先進県のトップバッター」宮崎県が挑む“新しい稼ぎ方”とは?

急激な人口減少が進む中、地方創生と東京一極集中の解消が大きな課題となっている。その課題を解決する施策として平成27年度よりスタートしたのが、内閣府による「プロフェッショナル人材戦略事業」(以下、プロ人材事業)だ。各地域の企業が「攻めの経営」を実践していくために必要になる「プロフェッショナル人材」の活用を促していくこの取り組みには、パーソルグループも「登録民間人材ビジネス事業者」として支援している。宮崎県におけるプロ人材事業への取り組みを通じて、地方における新たな人材確保と定着へのチャレンジを追う。

県民所得44位、県内就職率45位、労働生産性46位...
~宮崎県の現状と課題

宮崎県商工観光労働部
商工政策課 経営金融支援室 室長
石田 渉 氏
※肩書は取材時(2019年2月)のもの

宮崎県商工観光労働部 商工政策課 経営金融支援室 室長の石田渉氏に、宮崎県の現状と課題についてお聞きした。石田氏は総務省入省後、兵庫県庁、再び総務省での勤務を経て、2018年4月に宮崎県庁に赴任。柔和で朗らかな雰囲気の中にも、宮崎県の地方創生について、熱い意欲と志を感じさせる人物だ。

「宮崎県は地方の中の地方、日本における課題の先進県です」と前置きしたうえで、石田氏は現状をこう分析する。「宮崎県は企業数の99.9%、従業員数の93.5%を中小企業が占めます。上場企業は5社のみで、売上高10億円以上の企業数は九州でワースト2位。売上高1,000億円以上の企業がなく、地域経済を牽引する企業が少ないのが現状です。また、1人あたりの県民所得が44位、労働生産性が46位といずれも全国下位で、経営者が人に投資をして企業を成長させようという意識が低く、あるいは意識はあっても実現しにくい状況にあります。事業承継に関しても休廃業、解散率が全国2位と非常に高く、自分の代で廃業する、または後継者をまだ決めていない企業が約半数あります」

加えて、宮崎県は伝統的に東京、大阪といった都会に人材を輩出し続けてきた“人材供給県”であり、働き手の不足は深刻な課題であると語る。「宮崎県の人口は約107万人、出生率は回復傾向にありますが、出生数は大幅な減少を続けています。加えて、15~24歳、次の親となる世代の流出抑制が急務です。高校生の県内就職率は56.8%で全国45位、県内の大学生の約3分の1が県外に就職しています」

これらの状況を踏まえ、宮崎県では県内で働く人々の賃金を上げることを目標に掲げている。さらに、暮らしやすさに加えて働きがいのある環境を整えることで、若者が県内に残り、あるいは一度県外に出た人々がまた戻ってくる、戻ってきたくなる仕掛けが必要である。

石田氏は総務省および他県での経験から、県庁ならではの役割と、宮崎県の特長を次のように語る。「各省庁の役割が縦割りである霞が関に比べ、県庁は総合行政主体。教育から警察まで、組織を横断して何でも取り組むことができます。中でも宮崎県では、知事が “課題解決先進県”として、全国の地方における課題にいち早く取り組み、成果を出すことを掲げていますので、我々もチャレンジしやすい。加えて、宮崎県は他県に比べ、行政、金融機関、商工団体、民間企業が大同団結しやすい、という特徴があります。課題に対して同じテーブルについて、足並みを揃えて進められることは、大きな強みです」


“新しい稼ぎ方”への挑戦
~「適正なえこひいき」で成長期待企業を支援

宮崎県では平成28年度から30年度までの3カ年で、『みやざき産業振興戦略(みやざき流の新しい稼ぎ方への挑戦)』を推進している。この戦略は、『宮崎県総合計画 未来みやざき創造プラン』をベースとした、『宮崎県まち・ひと・しごと創生総合戦略』の商工業分野推進のための実行計画である。現在は、戦略終期を見据え改定に向けて協議を続けており、新たに目指すべき全体像を検討している最中だ。

持続的な経済の連鎖と循環を作り出すための基本方針は、大きく2つある。

1つは企業による経済活動の活性化だ。具体的には、国内外から「外貨」を獲得し、県内の経済循環に寄与する中核企業の育成であり、小規模企業の競争力、経営力の強化、商業、サービス業の振興などが含まれている。そしてもう1つは、県の特性や強みを生かした成長産業の育成。温暖な気候と設備施設を活用し、プロスポーツチームや学生チームのキャンプ誘致や、豊かな農畜水産物産業の振興などである。

石田氏は、宮崎県の商工業振興施策のキーワードを「適正なえこひいき」と語る。「一度に全体を押し上げるにはものすごいエネルギーが必要になり、時間もかかります。まずはいくつかの成長期待企業に支援を集中して成果を上げ、それを県内外の多様な主体と繋いで、持続的な事業生態系を生み出す、ネットワーク巻き込み型支援へと発展させていく考え方です」

それらの取り組みの中核となるのが、やはり「人」だ。一例として、宮崎県では産業人財育成プラットフォーム「みやざきビジネスアカデミー(MBA)」を開設、運営している。これは経済団体、金融機関、行政機関が連携、体系的なセミナーなどの実施を通じて、将来の宮崎県を担う経営幹部、中堅若手社員、起業、創業を目指す人財に対して、マネジメントや実務、ヒューマンスキル、リカレント教育を行うものだ。

もう一つ、将来の宮崎県を担う「人」の採用と育成において、大きな原動力となるのが「プロ人材事業」である。「プロ人材活用のススメ②③」では、宮崎県プロフェッショナル人材戦略拠点における具体的な取り組みと成功事例について紹介する。

プロ人材事業の概要

プロ人材事業の目的は、若者から見て魅力的な仕事が地方に乏しく、都心部への人口流出が止まらない「地域しごと問題」の解消と、地域経済を牽引する「地域企業の成長の後押し」にある。具体的な施策として、潜在成長力のある地域企業に対し、プロフェッショナル人材(以下、プロ人材)の採用支援活動を行う「プロフェッショナル人材戦略拠点(以下、プロ人材拠点)」が、東京都を除く全国46道府県に設置されている。この拠点には、知事からの委嘱を受けたマネージャー1名と、数名のサブマネジャー等が在籍。地域企業の経営者を対象に、各企業から個別に相談を受け、経営者に「攻めの経営」を促すことを第1のミッションとし、平成28年1月頃から拠点活動を本格的に開始している。企業からプロ人材に関する要望が出された際には、拠点に登録されている人材紹介事業者を通じて企業と人材のマッチングがなされる。プロ人材拠点は、地域金融機関や各種支援機関等と積極的に連携するほか、平成28年秋からは大企業等と連携した人材交流(出向・研修)といった取り組みも行っている。

宮崎県におけるプロ人材拠点の取り組み

 

【出典】宮崎県プロフェッショナル人材拠点「業務内容」
  • 毎月1回の定例会議
    室長、主管、主事、拠点全スタッフ 状況の共有、対応策の協議
  • 県内外でのイベント、九州ブロック協議会の共同開催
  • 拠点の企業訪問に県担当者が同行
  • 県と拠点が一体として今後の出口戦略を検討

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