2025年03月24日
オフボーディングとは、退職や育休、産休などによる欠員発生の際、業務を引き継ぎ、後の成果につなげるための一連の取り組みです。オフボーディングを実施することで、退職者・休職者にとっても、欠員が発生した組織にとっても、良い影響が期待できることから、近年注目が集まっています。
本記事では、オフボーディングの概要や実態、取り組むメリット、具体的な施策を解説します。オフボーディングの意義を理解し、自社で行う施策を検討してみてください。
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オフボーディングとは、退職や育休、産休などによる欠員発生の際、業務を引き継ぎ、後の成果につなげるための一連の取り組みです。退職する従業員に対するサポートだけではなく、欠員が発生する組織全体への働きかけも含まれます。
オフボーディングと対になる施策が「オンボーディング」です。オンボーディングは、新規採用者を組織に受け入れ、戦力とし、成果につなげるための一連の取り組みを指します。
このようにオフボーディングとオンボーディングは、実施するタイミングや目的が異なります。

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オフボーディングは、オンボーディングに比べると自覚的に取り組んでいる企業は少ないものの、欠員の発生に伴う引き継ぎや、退職者・休職者との関係作りといった面から注目されるようになってきています。
ここからは、オフボーディングが注目を集める背景を具体的に見ていきましょう。
オフボーディングが注目される背景の一つは、労働市場の変化です。
労働力人口が減少する中で企業が競争力を維持するためには、新卒一括採用や終身雇用といった従来の形にとどまらず、多様な人材を確保する必要があります。さらに、個人のキャリアへの意識が変容し、転職に対する心理的なハードルが低下しています。このような状況で欠員が発生した際、組織の成果を落とさないよう、業務の適切な引き継ぎを行う必要があります。
しかし、マニュアルがなく業務が属人化していたり、リモートワークの浸透やツールの導入などにより退職者・休職者の業務を間近で見られていなかったりすると、前任者がどのように仕事をしていたのかが分かりません。
引き継ぎの実態については後述しますが、多くの企業で欠員が発生した後の組織課題を抱えているため、オフボーディングが重要視されるようになっています。
アルムナイ採用を導入する企業が増えたことも、オフボーディングが注目される背景の一つです。
アルムナイ採用とは、一度退職した従業員(アルムナイ)を再び雇用することです。再雇用された従業員は、企業の文化や価値観を理解しているため、即戦力として活躍できる可能性が高いといえます。そのため退職者との良好な関係を構築し、退職後も継続的なコミュニケーションを図る重要性が増しています。
では、実際にオフボーディングはどのように行われているのでしょうか。パーソル総合研究所の調査をもとに、オフボーディングの各プロセスにおける実態を見ていきましょう。
欠員が発生した際の補充状況について、77.0%の組織で欠員補充がなされていないことが分かりました。
欠員補充ができていない理由としては、採用予算が確保できていないことや、採用活動は行ったものの決定に至らなかったことがあげられます。退職者・休職者の穴を埋めずに残されたメンバーで業務を回すとなると、当然、後任者や上司の負担が増加し、残業時間も増加します。
その結果、疲弊や燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高まり、最悪の場合、後任者までもが退職してしまうという負の連鎖に陥る可能性もあります。
欠員が発生した場合、まず行うべきことは「誰に引き継ぎをさせるか」を決めることですが、業務の割り振りについて指示している上司は77.6%で、およそ5人に1人は指示を出していません。
また、欠員発生時の割り振り指示は、類似業務の担当者に引き継がせる「横滑り」や、部下の業務量がおおよそ均等になるようにする「均等割」が多いことが分かりました。
引き継ぎ担当が決まったら、前任者から後任者への業務の引き継ぎが始まりますが、約5人に1人は業務を引き継がないまま組織を離れていることが分かりました。
引き継ぎが行われない理由としては、「誰に引き継ぐかの指示がなされていない」「退職までの期間が短く対応が追い付かない」などが考えられます。
引き継ぎをスムーズに行うためには、業務マニュアルを整備することがポイントです。引き継ぎ時はもちろん、退職者・休職者の発生状況にかかわらず、誰かが急に欠けても業務が回るような環境を整えておくことで、欠員が発生してもチームのパフォーマンス低下を軽減できるでしょう。
引き継ぎ方法は説明が中心となっていますが、伝えて終わりではなく、後任者と一緒に業務を行ったり、後任者に行ってもらった業務に対してフィードバックをしたりすることが望ましいでしょう。
調査によると、後任者の約半数は引き継ぎ時間に不足を感じているという結果が出ています。引き継ぎ時間が不足すると、後任者は業務内容を十分に理解できないまま業務を開始することになり、ミスやトラブルのリスクが高まります。
また、暗黙のルールが重視される「ハイコンテクスト文化」の傾向が強い組織や、トップダウン志向が強い組織、休みが取りにくい組織ほど、引き継ぎ時間の不足感が高いという関係が見られました。組織の文化を見直し、引き継ぎをスムーズに行うために組織全体で協力することが重要だといえます。
企業がオフボーディングに力を入れることで、さまざまなメリットを享受することができます。
オフボーディングによって、退職者・休職者の業務や知識をスムーズに引き継ぐ環境を整えることで、退職による業務の停滞を最小限に抑え、組織のパフォーマンスを維持できるようになります。マニュアルやドキュメントが整理されていれば、後任者へのスムーズな引き継ぎが可能になるでしょう。
退職者・休職者との良好な関係を築くことで、将来的な再雇用につながる可能性が高まります。退職者・休職者が企業を離れた後も、企業とのつながりを維持できていれば、スキルアップやキャリアチェンジを経て、再び企業に戻ってくるケースは少なくありません。オフボーディングにより、退職者・休職者の抱く企業イメージを向上できていれば、将来的な再雇用につながるでしょう。
では、オフボーディングは具体的にどのように取り組めばよいのでしょうか。オフボーディングのプロセスで押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
前述の通り、組織にとって業務の引き継ぎは重要です。スムーズな引き継ぎを実現するためには、以下の施策を実施するとよいでしょう。
まずは漏れなく業務を引き継げるよう、マニュアルやフローチャートを作成し、業務内容を可視化することが必要です。将来の欠員に備え、日常的に進めておくことが理想的です。実際に引き継ぐ際は、前任者と後任者のスケジュールを数時間確保しておくなど、管理職が引き継ぎを主導し、決められた期間内に引き継ぎが完了するように工夫することも一案です。組織によっては、引き継ぎよりも通常業務を優先してしまい、引き継ぎが進まないケースがあります。引き継ぎの予定を作っておくと、それまでに業務の可視化を進めようという意識も向上するため、スムーズに引き継ぎやすくなります。
また、引き継ぎは説明だけでなく、後任者が業務を進めた後のフィードバックまで実施することも重要です。特に、同じ職種の場合では、「なんとなくできそう」と思っていても、実際にやってみると細かな部分が分からず悩んでしまうケースがあります。そのため、フィードバックの時間まで含めて引き継ぎの時間を確保するとよいでしょう。
退職の意向を表明した従業員と面談を実施することは、オフボーディングの最初のステップです。面談では、退職理由や今後のキャリアプラン、会社や組織への要望などを丁寧にヒアリングしましょう。面談を通して、
などを把握することができます。また従業員の退職理由を分析することで、会社や組織側の課題や改善点の発見にもつながります。
退職者は、将来的な顧客やビジネスパートナー、あるいは再雇用の人材となる可能性を秘めています。そのため退職者と継続的な関係を築くことは、企業にメリットをもたらします。退職者とのネットワークを構築するためには、以下のような施策があります。
アルムナイ採用が広がってきたことで、企業が公式のコミュニティを提供することが増えています。交流の場や情報発信の場を持ち、定期的にコンタクトを取りやすくするとよいでしょう。
オフボーディングは欠員発生時だけに行うものではなく、日常的に進めなければうまくいきません。オフボーディングを成功させるためには、以下の2つのポイントを押さえましょう。
従業員の退職意向を早期に把握するためには、管理職がメンバーと日頃からコミュニケーションを密に取り、定期的な面談を実施することが重要です。面談では、仕事の進捗状況や悩み・不安、キャリアプランなどをヒアリングし、従業員の状況を把握します。もし、従業員が退職を考えている兆候が見られた場合は、その理由を丁寧に聞き取り、組織としてできる限りの対応を検討しましょう。
スムーズな業務の引き継ぎは、オフボーディング成功の鍵です。そのためには、組織全体で協力し、引き継ぎしやすい環境を整えることが重要です。日々の情報共有の促進や、相互に助け合う組織文化を醸成しましょう。日頃から誰でも業務を理解しやすい状態を作っておくことで、いざという時にスムーズな引き継ぎができるはずです。
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近年、大企業を中心に、人材を「資本」と捉えて、採用や育成などの人材施策に投資を行うことで、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」の動きが加速しています。
パーソルグループでは、企業の経営層ならびに人事に携わる人を対象とした全国調査の中から、大企業の経営層・人事業務従事者の「人的資本経営」「キャリア採用」「デジタル人材育成」「リスキリング」に関する回答を1冊にまとめました。大企業の動向や取り組み状況がわかるほか、調査結果と合わせて、各施策におけるポイントについても解説しています。
自社の人事戦略を検討する際にぜひご活用ください。
オフボーディングとは、退職や育休、産休などによる欠員発生の際、業務を引き継ぎ、後の成果につなげるための一連の取り組みです。オフボーディングに積極的に取り組むことで、欠員発生時のスムーズな引き継ぎや、チームから離れる方との良好な関係構築につなげることができるでしょう。
オフボーディングを成功させるには、コミュニケーションの取りやすい環境を作ることや、業務内容の可視化を進めることが重要です。オフボーディング施策を検討しているのであれば、まずは組織文化の見直しから行い、いつ欠員が発生してもパフォーマンスが落ちない体制を目指しましょう。

株式会社パーソル総合研究所 研究員
今井 昭仁
London School of Economics and Political Science 修了後、日本学術振興会特別研究員、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科助手を経て、2022年入社。これまでに会社の目的や経営者の報酬など、コーポレートガバナンスに関する論文を多数執筆。