2024年11月26日
2025年05月30日
新規事業を成功させるには、事業の最終的な目標を立てることに加え、途中経過を適切に評価し、目標達成に向けて行動することが必要です。
新規事業の途中経過を評価するに当たって設定するべき指標がKPIです。KPIは最終的な目標達成のための中間目標のことで、KPIがあれば、目標達成に向けて何をすべきか明確になります。しかし、どのようなKPIを立てるのが適切か分からない方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、KPIの重要性や設定方法を解説し、新規事業の立ち上げ時に設定するKPIの具体例などを紹介します。新規事業を成功に導くため、ぜひ本記事の内容を参考にしてKPIを設定してみてください。
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KPIはKey Performance Indicatorの略で、最終的な目標達成に至るまでの、各プロセスの達成度合いを計測する指標です。日本語では「重要業績評価指標」といいます。KPIの達成状況を確認すれば、目標までの距離を把握できます。
KPIと混同されやすい言葉の一つがKGIです。ここからはKPIとKGIの違いを見ていきましょう。
KGIはKey Goal Indicatorの略で、最終目標の指標です。日本語では「重要目標達成指標」といいます。KGIの設定により、経営目標が明確になり、目標の達成度を管理・分析できるようになります。
KPIとKGIは、どちらも新規事業の成果を評価する上で重要な指標です。しかし、KPIは最終目標に至る過程を評価する指標で、KGIは最終地点を評価する指標である点が異なります。KPIを計測することで、KGIの達成度合いを把握できるという関係性です。
例えばKGIを「売上高1億円達成」とした場合、KPIは売上高1億円を達成するために重要な過程を設定するので「新規顧客数200人」「リピート率20%」といった内容になるでしょう。

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新規事業を成功させるには、KGIの達成度合いを数値で把握できるKPIの設定が重要です。KPIの必要性について、4つの観点から解説します。
KPIの設定は、目標達成に向けて何から取り組むべきかを明確にするために必要です。事業の最終目標の指標であるKGIだけが存在していても、その目標に向かって具体的に何をしたらよいのか分かりません。また新規事業を立ち上げる際は、新規顧客の開拓やプロモーション活動、組織編成などするべきことが数多くあり、どれから着手するべきか悩むこともあるでしょう。
KPIを定めていれば、目標達成により深く関連する重要な事柄を見極めやすくなり、行動の優先順位が付けられます。優先順位が付いていれば、悩むことなくスムーズに着手でき、結果的に目標達成までのスピードが速くなるはずです。
人事評価の面でも、KPIの設定は必要です。KPIをもとに個人目標を設定し、その達成度合いを評価基準とすれば、組織全体で基準を統一でき、公平性のある評価ができるようになります。またKPIは定量的な指標なので、目標をKPIベースで立てると達成率が計算しやすくなります。
加えてKPIをベースに個人目標を立てると、成果だけではなく過程も評価できます。KGIのみをメンバーの評価基準にしていると、そのメンバーが目標達成に向けてどのような行動をしていたかを測れません。適切な評価のためには、結果だけではなく過程も評価指標に入れることが重要です。
KPIの設定により、PDCAサイクルをスピーディーに回せるようになります。全体的な目標だけを立てていると、目標達成ができていない場合に、原因は何で、どうしたら解決できるのかを考えるのに時間がかかります。KPIを設定していれば、各指標の達成率を分析することで、どの部分を改善すべきなのかが明確になり、改善に向けて迅速に動き出せるでしょう。
新規事業から撤退するかどうかを判断する際にもKPIは役立ちます。新規事業が思うように伸びないとき、撤退基準がなければ事業を続けるかどうかの判断に時間がかかり、その分経営資源を無駄にしてしまいます。新規事業の撤退判断を迅速に行うことができれば、損失を抑えられるでしょう。
迅速な撤退判断を行うには、改善すべき部分を洗い出した上で、今後投資を続けることでその部分を改善できるのかどうかを見極める必要があります。KGIの達成に向けて改善すべき部分を見つけやすくするには、やはりKPIを設定しておくことが重要です。
ただし、KPIの達成度合いだけを撤退基準に設定するのではなく、KPIをどのタイミングで評価し撤退を判断するのか、誰が撤退を判断するのかも決めておく必要があります。
KPIを適切に設定することで、最終的な目標達成につながります。ここからは、適切なKPIをどのように設定すべきか解説します。
まずは最終的な目標であるKGIを定めましょう。KGIがあいまいだと、後にKPIを定める際に何を指標にしたらよいのか見えてこないため、KGIは定量的に達成度合いを表せる指標にすることが重要です。
新規事業で定めるKGIの例は以下の通りです。
・1年後に売上1億円達成
・1年後に売上20%アップ達成
・2025年3月までに利益率10%達成 など
KGIが決まったら、次にKGIを達成するために重要だと考えられる要因を特定します。この要因のことをKSF(Key Success Factor)といいます。
例えばKGIが「1年後に売上1億円達成」であれば、「顧客数の増加」「リピート率の増加」などが重要だと考えられるでしょう。これらがKSFとなります。
KSFが定まっていれば、具体的な行動目標であるKPIをスムーズに考えられます。KGIの達成に向けて何を行うべきか不明瞭なままKPIを立ててしまうと、戦略の方向性がバラバラなKPIを並べてしまうかもしれません。新規事業に携わるメンバーが同じ方向に進むためにも、KSFの設定が重要です。
KSFを定める際は、まずKGI達成に向けて必要な業務プロセスを洗い出します。そのプロセスの中で、KGIの達成に最も重要な要素をKSFにします。
KSFの設定においては、市場分析が重要です。市場分析を行うことで、業界のトレンド、競合環境、顧客ニーズをもとに自社が重点を置くべき領域が明確になるためです。市場分析の際は、3C分析やファイブフォース分析などのフレームワークの活用がおすすめです。
また、設定したKSFが、KGIの達成に連動するかどうかも必ず確認しましょう。
【関連記事】ファイブフォース分析とは?具体例を用いて分かりやすく解説
KSFが定まったら、KPIの設定に移ります。
KPIは、考えれば考えるほど多くのアイデアを出せてしまいます。しかし、新規事業の場合はリソースに限りがあるため、KPIの数は絞ることをおすすめします。可能な限り、最小限かつシンプルな項目にしましょう。後述する「SMARTの法則」を意識すると、適切な指標を立てやすくなります。またKPIを決める際は「あった方がよい」ものではなく「なくてはならない」ものを選ぶように意識しましょう。
特に新規事業では、KPIは一度設定して終わりではありません。事業の成長段階に応じて、柔軟に変えていく必要があります。事業の特性にもよりますが、最短で1カ月程度のスパンでPDCAを回し、KPIが適切か検討を続けることが大切です。
SMARTとはSpecific、Measurable、Achievable、Relevant、Time-boundの頭文字を取った言葉で、目標設定の際に意識すべき要素です。これら5つの要素を考慮して目標を立てれば、目標達成に向けて動き出しやすくなります
Specific(具体的である)
あいまいなKPIを設定してしまうと、達成に向けて何を行うべきかが明確になりません。誰が見ても向かう先が分かるような、具体的なKPIを設定しましょう。例えばKPIを「1日の行動量を2倍に」と設定するのではなく「1日の架電数50件」と設定すれば、どのような行動をすべきか明確になります。
Measurable(測定可能である)
測定可能なKPIを設定していれば、KPIの進捗を確認する際に、達成までに残りどれだけの行動が必要か、何を改善するべきかが見えやすくなり、具体的な行動計画に落とし込みやすくなります。
Achievable(達成可能である)
達成できないようなハイレベルなKPIを立ててしまうと、KGIの達成にもつながらず、新規事業を成功に導けないでしょう。
Relevant(関連性がある)
KPIにおける関連性とは、KGIとの結び付きです。KPIが最終的な目標にどう関連しているのか、メンバーが理解できなければモチベーションにつながりません。KPIを達成した先に何があるのかを示せるような指標を設定しましょう。
Time-bound(期限がある)
KPIを設定していても、期限が設けられていなければ、行動が後回しになってしまう恐れがあります。期限があることで、期限の近いものから集中して取り組めるでしょう。
ここからは、新規事業を始める際に設定するべきKPIの具体例を紹介します。
顧客に関連するKPIには以下があげられます。
・新規顧客数:一定期間中に獲得した顧客数
・顧客維持率:一定期間に製品やサービスの購入を継続した顧客数
・顧客の平均購入額:顧客一人当たりの購入金額
・リピート率:複数回購入した顧客の割合
・解約率:解約に至った顧客の割合
・顧客満足度:顧客の製品やサービスへの満足度
・NPS(ネットプロモータースコア):顧客の他者への推奨意欲を測るスコア
これらの指標で顧客との関係性を測り、より強固な関係を築けるように必要な施策を検討しましょう。
財務に関連するKPIには以下があげられます。
・売上高:一定期間の売上金額
・利益率:売上高に対する利益の割合
・LTV(顧客生涯価値):顧客一人が生涯にわたってもたらす利益の総計
・ROI(投資対効果):投資した分に対し利益がどれだけ生まれたかを測る指標
・損益分岐点:収益がコストを上回るポイント
新規事業を成長させるに当たり、利益を追い求めることは重要です。これらの指標を定期的にチェックし、健全な事業運営をしましょう。
業務プロセスに関連するKPIには、以下のようなものがあります。
・業務効率:コストに対する成果を表す指標
・サイクルタイム:業務プロセスの開始から終了までの時間
・リードタイム:顧客が発注してから納品できるまでの時間
・改善提案件数:品質改善に関する提案の件数
業務プロセスに関する指標をKPIに設定し、効率や生産性を追い求めることで、新規事業の成功につながるでしょう。
新規事業の成長やメンバーのスキルに関連するKPIの例は、以下の通りです。
・モチベーション指数:メンバーのモチベーションの高さを示す指標
・満足度:メンバーが新規事業・組織に対して感じている満足度
・能力向上率:メンバーのスキルアップの程度を示す指標
・資格取得数:メンバー一人当たりが取得した資格の数
・特許取得数:新規事業で取得した特許の数
事業自体の成長に加え、新規事業に携わるチームメンバーのスキルアップも図り、今後の利益拡大につなげましょう。
最後に、KPI設定でつまずきがちなポイントと解決策を紹介します。
KPI設定で悩む原因の多くは、KGIがあいまいなことにあります。効果的なKPIを設定するためには、まずKGIを見直し、KSFを再定義しましょう。KGIとKSFが明確になることで、おのずと設定すべきKPIが見えてくるでしょう。
また、KGI・KSF・KPIが連動しているかを確認したい場合は、KPIツリーの活用が有効です。KPIツリーとは、KGIからKSF、KPIまでの関係性をツリー状にして可視化した図です。KPIツリーを作成すれば、KGI達成までの流れが確認できます。「KPIは達成したのにKGIが達成できなかった」という事態も防げるでしょう。

KPIを設定する際に、設定したいと思ったKPIを数値化できず、定性的なKPIのまま進めてしまう方もいるかもしれません。しかし、数値化できないと、具体的な行動計画に落とし込みにくくなります。また数値化できていれば「KPI達成率80%」などと達成度合いを明確にできますが、数値化できなければ成果を確認しにくく、モチベーションの低下につながる可能性があります。
KPIが定性的になっているときは、KPI達成に必要な行動に着目したり、KPI達成後に生じる影響を考えたりするのがおすすめです。例えば「サービスの質を高める」ことを実現したいのであれば、サービスを提供するメンバーのスキルアップに着目すると資格の取得率や業務時間の削減を、質が向上した結果に着目すると解約率の低下やリピート率の増加をKPIとして設定できます。
経営層や事業責任者のみでKPIを決める際、現場のニーズに合致していないKPIを設定してしまうのも、つまずきがちなポイントです。実際の業務フローを理解せずにKPIを設定すると、現状と設定したKPIとの間にギャップが生まれ、メンバーのモチベーションが保たれません。
現場のニーズにマッチしたKPIにするためには、リーダークラスのメンバーを交えて設定するとよいでしょう。ただし、現場のニーズを意識し過ぎてしまうと、新規事業のKPIとして適切ではない、既存事業と同じようなKPIになってしまうかもしれません。KGIとの関連性がなくならないよう、注意しましょう。
また、顧客のニーズに合致していないKPIを設定してしまうこともあるでしょう。その場合は、そもそもKGIが適切ではない可能性があるため、KGIを見直す必要があります。
複数の要素を一つにまとめたり、成果の計算が煩雑であったりと、複雑過ぎるKPIはおすすめしません。さまざまな要素を取り入れることで多角的な分析は可能になりますが、その分管理が難しくなります。また現場のメンバーがKPIの意味を容易に理解できず、指標として機能しなくなってしまうかもしれません。
KPIは誰もが理解できるようなシンプルな内容にし、達成度をリアルタイムで確認できるほど容易に測定できるものにしましょう。
【お役立ち資料】新規事業立ち上げノウハウ完全ガイド
マーケットの成熟やビジネスの多様化に伴い、既存事業のみに頼っていては企業の持続的な発展が厳しい時代となりました。 そこで狙うは新規事業の立ち上げですが、新規事業立ち上げに積極的に取り組んでいる企業は約半数、そのうち軌道に乗せられた企業は1割程度という結果があり、一歩を踏み出すことも成功させることも難しいのが現実です。
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新規事業を始めるに当たって、KPIの設定は事業の目標達成のために重要です。KPIを設定する際は、まずKGIを設定し、KSFを設定した上でKPIの設定に入りましょう。KPIはSMARTの法則に従って内容を考えることで、KGIの達成につながりやすくなります。
本文でご紹介したように、KPIとして設定できる指標は数多くあります。KPIを定める際は、その中から新規事業のKGIと関連性が高い指標に絞り、可能な限りシンプルな内容にしましょう。新規事業では使用可能なリソースに限りがあるため、注力すべきKPIを絞ることが重要です。
また新規事業では、KPIを短いスパンで見直すことが求められます。早いサイクルでPDCAを回し、結果をもとにより適切なKPIにブラッシュアップし続けましょう。

パーソルキャリア株式会社
新規サービス開発統括部 マネージャー
白石 浩二
複数社での新規事業立ち上げ経験を経て、2022年にパーソルキャリア株式会社に入社。新規事業におけるBizDev責任者/事業責任者を歴任。現在は社内の複数の新規事業を横断的に支援する組織を率いると共に、新規事業創出プログラム『OWNERS』の設計/運営も務める。新規事業家として、起業や、様々な企業でアドバイザーも務めるパラレルワーカー。