マニュアルなしの多様なサービスで1万5,000人が躍動する「街」。来場者数世界第3位のユニバーサル・スタジオ・ジャパンが実践する「NO LIMIT!」な組織づくり

大阪府大阪市でユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営する、合同会社ユー・エス・ジェイ。2001年のパーク開業以来、非日常の感動を提供し続け、現在は世界第3位(※1)の入場者数を誇り、今年25周年を迎えました。同社は「超エンターテイニングな創造力で、人と社会に『目覚め』を。」を存在理由に掲げ、エンターテイメントの力を信じる想いを実現し続けています。

そんなユー・エス・ジェイでは、「多様性を尊重し、私たちで最高の職場を創ります」という使命のもと、クルーと呼ばれる従業員の“はたらくWell-being”向上に取り組んでいます。

今回お話を聞いた人事部が特に注力したのが、全社を巻き込み展開したクルーへの感謝を伝えるプロジェクトの数々。約1万5,000人の主体性を引き出すカルチャーや、職場のつながりを深める愛にあふれた施策について、パーク開業当初から25年にわたり会社の進化を見つめてきたお2人に伺いました。

(※1)米テーマエンターテインメント協会(TEA)調べ

プロフィール:

合同会社ユー・エス・ジェイ
人事本部 人事部 課長 伊藤 資晃(写真左)
人事本部 人事部 課長 安積 絵里(写真右)

この記事でわかるポイント

  • ゲストに提供する「常に新しい発見」という価値は、クルーの「はたらく体験」にもリンクしています
  • 従業員約1万5,000人の主体性を生むキーワードは、オーナーシップと寛容さです
  • 人材確保の問題は、「本気の感謝」と「つながり」で乗り越えました
  • 2026年に25周年を迎え、ユー・エス・ジェイは、パーク内にとどまらず大阪・関西の地域社会を巻き込んだ価値貢献へとビジョンを拡大しています

ゲストに対してだけじゃない。クルーにも「常に新しい発見がある」職場

──はじめに、ユー・エス・ジェイの根幹にある理念について、教えていただけますか?

伊藤:ユー・エス・ジェイは、存在理由として「超エンターテイニングな創造力で、人と社会に『目覚め』を。」と掲げています。ただ楽しい場所を提供するだけでなく、ゲストの期待を常に上回るワールドクラスの体験を提供し、世界のエンターテイメント・リーディングカンパニーを目指すという明確なビジョンを持っています。

そのビジョンを実現するためのミッションは、3つ。 1つ目は、「ありえない“ワクワクドキドキ”で明日へ向かう元気をゲストに届けます」。2つ目が、今回お話しする「多様性を尊重し、私たちで最高の職場を創ります」。そして3つ目が、「会社を成長させ社会の発展に貢献します」です。

──「多様性を尊重し、私たちで最高の職場を創ります」というミッション。私たちで、という言葉がついているのは、なぜですか?

伊藤:これは、自分らしくはたらいてもらいたいという強い想いが込められた言葉なんです。ユー・エス・ジェイにおける「多様性の尊重」とは、単にさまざまな雇用形態や年齢、国籍の人がいる状態を指すだけではありません。与えられた役割や責任の中で、それぞれのその人らしさを存分に発揮してもらう環境を自ら作ることです。

一言で「テーマパーク業」といっても、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下:USJ)を運営するためには、エンターテイメントをはじめ・飲食、IT、建築などのテーマパークそのものの運営を担う役割、ビジネスを発展させる役割、我々のような組織を運営するバックオフィスの役割など、幅広い分野のプロフェッショナルが必要です。雇用形態も様々で、社員は約3,000人、アルバイトであるバリアブルクルーは約1万2,000人、総勢約1万5,000人によって成り立っています。

──街レベルの規模ですね!

伊藤:おっしゃる通りで、人数も職種の多様さも、ひとつの街なんです。ただ、担う役割が違うだけで、全員がこの街を創る対等なクルーとして尊重し合っています。365日ずっと高いクオリティのサービス、プロダクトを提供し続けることが全員の役割です。とすると、それぞれの与えられた役割や責任のなかで、その人らしさを存分に発揮してもらいたい。会社としても、その人らしくはたらける環境を作ることが重要なんです。

──1万5,000人が、365日ずっと高いクオリティを保ち続ける。めちゃくちゃ難しそうです...!

伊藤:そこに、USJの強みが活きているんです。USJでは1年間を5つのシーズンに分け、常に新しいシーズナルイベントを行っています。これはゲストの皆さまに「いつ来ても新しい発見がある、違う体験ができる」という価値を提供し続けるためですが、実はこれ、クルーに対しても同じことが言えるんです。

──常に新しい発見や体験があるということですか?

伊藤:その通りです。パークが常に進化し続けるということは、現場ではたらくクルーたちにとっても、常に新しい課題や挑戦の機会が生まれ続けるということです。

新しいイベントが始まるたびに、現場では異なる専門性を持ったプロたちが意見をぶつけ合い、協力しながら改善し、ひとつのものを創り上げます。ゲストに非日常のワクワクを届けるのと同じように、クルー自身もワクワクしながら新しい仕事や仲間に出会える。ゲストに提供している価値が従業員にとっての価値にもなっているところは、USJらしさかもしれないですね。

従業員約1万5,000人が主体性を持つ。大切なのは、採用基準とNO LIMIT!な環境

──そうした環境はもちろんのこと個々人の素養も気になるのですが、採用ではどのような点を大切にしているのでしょうか。

安積:このテーマパークを365日運営するためには、実は、毎年年間数千人規模の採用活動を行っています。そして、採用においても育成においても、私たちが特に重視していくべきキーワードは、「オーナーシップ」と「寛容さ」です。

仕事の意味を作るのは、最終的にはその人自身です。ですから、言われたことをただやるのではなく、「より良くするために自分はどうしたいのか」を考えられるオーナーシップは、持っていてほしい。そして、さまざまなプロが集まるUSJだからこそ、自分と異なる意見が出るのは当然です。それぞれの立場と意見をしっかりと受け止め、建設的に議論できる寛容さも大切にしています。この2つの素養を持つ方は、USJのカルチャーにフィットし、自分らしく輝けると考えています。

──1万5,000人が一人ひとり自分らしく輝く。それを実現するために、どのようなサポートをしているのですか?

伊藤:私たち人事の役割はクルーをガチガチに管理することではありません。クルーが「挑戦したい!」と思ったタイミングで、NO LIMIT!な環境と機会を提供することに徹しています。

安積:一般的には、雇用形態によって任せられる役割に一定の線引きがされてしまうこともあるかもしれませんが、USJではそこに限界を設けず、挑戦できる風土を大切にしています。その象徴となる取り組みは、新しく入社した従業員のオリエンテーションを、現場で活躍するバリアブルクルーが担当するというもの。オリエンテーションを受ける社員がたとえ部長クラスの相手だったとしても、です。毎日ゲストと最前線で接し、USJのミッションを最も体現している彼ら・彼女らの生の言葉や圧倒的なウェルカムの姿勢に触れることが、何よりの教育になると考えています。

マニュアルなき「ポジティブ・インターアクション」がUSJを押し上げた

──現在は「USJではたらくことに誇りを持っている」というクルーが約9割いらっしゃると伺いました。この高い職場満足度は、25年前の開業当初からずっと根付いていたのでしょうか?

伊藤:いえ、そんなことはありません。過去には、そもそもビジネスとして非常に厳しい時期も長く続いていました。その中でパークのあり方やコンテンツ、サービスを変え、企業そのものがチャレンジを促す文化へと徐々に転換していったと感じています。

──そのターニングポイントは何だったのでしょうか?

安積:1つの例として挙げられるのは、ゲストへのサービススタイルの転換です。従来の日本のサービスは「声をかけられたら、礼儀正しく要望にお応えする」という受け身のものでした。そうではなく、自分から積極的に声かけをする「ポジティブ・インターアクション」へと変えました。実は、USJにはガチガチの接客マニュアルがありません。各部門に目的に応じたトレーニングが設けられ、 ゲストと接する上で大切にしているのは、「目の前にいるゲストが何を求めているのか、自分自身で考えて行動してください」ということ。

自分で考えて、良いと思ったサービスを実行する。すると反応が返ってきて、経験になりますよね。さらには感情的なつながりが生まれ、ゲストの期待を超えていける。この行動の積み重ねや多様な取り組みによってビジネスがしっかりと伸びてきたとき、クルーたちも「自分たちがやってきたことは正しいんだ」と実感でき、企業としての自信や誇りに繋がっていったのだと思います。

伊藤:社員が教え込むのではなく、クルー自身が現場で新しいことに挑戦する姿勢を体現し、自分たちの手で世界トップクラスのパークを創り上げた。その事実とプロセスこそが、現在の高い職場満足度と揺るぎない誇りになっていったのかもしれないです。

人材確保の問題は、「本気の感謝」と「つながり」

──クルーのはたらく幸せを高めるために、具体的にどのような施策を行っているのでしょうか?

安積: 実は昨年、私たち人事にとって大きな危機がありました。近隣での大阪・関西万博の開催が決定し、「貴重なクルーたちが一斉に流出してしまうのではないか」という、これまでにない危機感に直面したのです。

──万博は、確かに強力な競合になりますね。

安積: そうなんです。でも、大阪で暮らすクルーたちにとって、万博のような世界的イベントに参加し関われる機会は一生に一度あるかないか。「そこではたらきたい」と思う気持ちは痛いほどわかりますし、無理に引き止めることはできないと受け止めました。だからこそ私たちは発想を転換し、「それでもUSJではたらき続けたい」と選んでくれたクルーたちを、とことん大切にしようと決めたんです。

伊藤: キーワードは、USJらしさ。そこで我々は、単なる金銭的な引き止めではなく、「USJだからこそ体験できるメリット」と「本気の感謝」を届ける全社プロジェクトを1年がかりで立ち上げました。

──具体的にはどのようなことをされたのですか?

安積: 最も反響が大きかったのは、クルーの大切な家族や友人をパークに招待するイベントです。「こんなにすごいパークではたらいてるんだ」ということを、大事な人に対して話せる、そして一緒に体験できる印象的な取り組みで、クルーの皆さんがすごく喜んでくれて。当日は、部門長やマネージャーも現場へ赴き、クルーやご家族に直接「いつもありがとうございます」と感謝を伝えました。伊藤さんも現場に出られていましたよね。

伊藤: 授業参観みたいな雰囲気だったんですよ。あったかい感じ。会社とクルーだけじゃなくて、クルーの大切にしている人たちとのつながりが醸成できた。すごく楽しかったですね。

安積:そのほかにも、パーククローズ後の深夜にはたらく清掃やメンテナンス、セキュリティなど他にも多くのクルーがいるので、その方々向けに楽しんでもらえるミニイベントの開催や、軽食の無料提供を行いました。私たちから感謝を伝えるはずが、「人事部さんありがとう」という言葉も多くいただき、それも嬉しくて。この1年間、規模の大小を問わず、さまざまな施策を行いました。多様なはたらき方をする1万5,000人に対し、24時間一人でも多くのクルーに確実に感謝を届けたかったんです。 その結果、1年間で参加してくれたクルーの数は延べ40万人にのぼりました。

伊藤: この施策の最大の成果は、人材の流出を防げたこと以上に「会社とクルー」「クルー同士」の間に強烈なつながりが生まれたことです。お金での報酬ももちろん大切ですが、すぐに慣れて当たり前になってしまいがちです。心と心が触れ合う本気の感謝体験は、色褪せることのないつながりを生むのだと勉強になりましたね。

25年働き続ける理由と、「Discover U!!!」で拡がる地域社会への貢献

──お2人は約25年もの間、USJではたらき続けていらっしゃいますよね。なぜ、そこまで情熱を持ち続けられるのでしょうか?

伊藤: 私が長くはたらき続けられた理由は、どのキャリアのフェーズにおいても「自分がチャレンジしたい」と思える環境があったこと、そして一緒にはたらく人たちの存在です。これまで出会った上司たちは、ただ優しいだけでなく、時には本当に厳しく、建設的で愛のあるフィードバックを本気でぶつけてくれました。そうやって引き上げてもらったからこそ、今があります。

安積: 私は現場からスタートし、目の前でパークが進化していく過程が純粋にずっと面白かったんです。そして、会社が大きくなっても、この会社にいれば多様なプロフェッショナルに揉まれながら常に世界レベルを目指せる。これが最大のモチベーションですね。

──最後に、今年25周年を迎えるUSJのこれからの展望をお聞かせください。

安積: 25周年のテーマは「Discover U!!!(ディスカバー・ユー)」。この「U」には二つの意味があり、1つはゲスト自身の「YOU」、一人ひとりの想像を超えた“知らないジブン”にパークで出会い、自分らしく楽しんでほしいという願いです。もう一つは、USJの「U」。パークの25年の歩みを振り返り、エンターテイメントの力を再発見してほしいという思いです。これは、クルーにとっても非常に意味のある言葉です。背伸びをしてチャレンジを続けることで、新しい自分が見えてくる。個々の成長が、パーク全体の成長に直結していくと信じています。

伊藤: 外部の調査データにはなりますが、USJは世界第3位の来場者数を誇るパークにまで成長しました。今後はパークの中にとどまらず、大阪・関西という街の価値を上げていくことにも挑戦していきます。具体的に、すでに大阪公立大学様と連携して「観光マーケティング学」の講義を行うなど、会社を通じて地域社会とつながりはじめています。

OUR SPIRIT(私たちの精神)として掲げている「私たちは、エンターテイメントの力を信じ、自分たちに限界を設けず、昨日の自分を超えてゆきます。」という言葉。この通り、これからも限界を設けず、1万5,000人のクルーとともにさらなる飛躍を目指していきます。

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