1961年の創業以来、パーティション専業メーカーとして事業を展開してきたコマニー株式会社。現在は自らを「間づくりカンパニー」と定義し、空間づくりを通じて「はたらく」をより良い状態にすることを目指しています。
2026年に創業65周年を迎える同社は、経営理念の冒頭に「全従業員の物心両面の幸福(しあわせ)」を掲げ、2030年に向けて「Empower all Life ~一人一人が光り輝く社会に貢献~」というビジョンを推進。ハード、ソフトの両面から徹底して”はたらくWell-being”を追求する同社の取り組みについて、専務執行役員の塚本さんと、ウェルビーイング経営推進担当の有江さんに聞きました。
プロフィール:
コマニー株式会社
取締役 専務執行役員 間づくり研究所 所長 塚本 直之
経営企画室 有江 晴花
この記事でわかるポイント
- コマニー株式会社は、「全従業員の物心両面の幸福」を掲げ、空間と人づくりの両面から“はたらくWell-being”を追求しています
- 男性を含む育休の義務化や、定年後も給与が下がらない「SS制度」など、個々のライフステージに寄り添った柔軟な仕組みを整備しています
- 匿名チャットを活用した毎月の従業員総会や部門横断の「間づくり研究」を通して、社員の声を起点とした制度改善・文化形成につなげる組織文化を醸成しています
- 社員一人ひとりが自分らしく輝ける組織を目指し、2030年までに「ザ・ウェルビーイング・カンパニー」への進化を掲げています
目次
全従業員の幸福が第一。創業の苦難から生まれた経営理念
──まずは、コマニー株式会社がどのような事業を行っているのか教えてください。
塚本さん: 私たちは1961年に創業したパーティションメーカーです。オフィスはもちろん、工場・病院・学校などの施設において、企画開発から製造、施工して据え付けるまでを一貫して行っています。最近では自分たちを「間づくりカンパニー」と申し上げています。私たちがお客様に提供しているのは、モノとしての壁ではなく、それによって得られる「間」だからです。
──単なる空間設計ではないという考えなのですね。
塚本さん: いい先生がいる学校で生徒が育ち、いい医師がいる病院で患者さんが救われるように、そこではたらく人がどれだけいい状態でパフォーマンスを発揮できているかは、社会全体にとって重要だと考えています。しかし日本の幸福度調査を見ると、はたらくことに充実感を持てている人はまだ多くはありません。私たちは空間を基軸にした「環境づくり」と「人づくり」を通じて、この現状を変えたいと考えています。
──御社の経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」とのことです。理念の冒頭に「全従業員の幸福」を掲げているのにはどういった背景があるのでしょうか?
塚本さん:実は、創業期に従業員が大量に辞めてしまうという社内分裂を経験したことが原点です。創業者は「魅力のない会社だった」と猛省し、従業員に信頼され、彼らが幸せになれる会社でなければ存続する意味がないと考えるようになりました。そのため、理念には「全従業員の物心両面の幸福」を明確に表明しています。はたらく人たちが幸せになるために会社は存在し、その幸せは世の中に貢献をすることで得られるという考えが私たちのベースになっています。
──はたらくことと幸せについて、突き詰めて考えていらっしゃいますが、御社にとって”はたらくWell-being”とはどんな状態ですか?
塚本さん:「人道と友愛に生きること」がコマニーの幸福観であると、はっきり定義しています。人のために貢献し、貢献するために成長していくことが「人道」であり、自分自身を含むすべての人を愛する心、つまり仲間とのつながりを実感していくことが「友愛」です。これは、何かを達成するから幸せ、というゴール型ではありません。成長し、貢献し、仲間と支え合って生きていくプロセスそのものが幸せだと考え、それを全社員にしっかり伝えるようにしています。
育休義務化に定年退職後も給与変化がない「SS制度」。個人の輝きを支えるハード面の仕掛け
──具体的な制度についても伺わせてください。育休を「義務化」されているそうですね。
塚本さん:2022年4月から、子供が生まれた社員には男女問わず1ヶ月の育休取得を義務付けました。私たちは「全ての人が光り輝く」というビジョンを掲げています。はたらく一人ひとりが輝くためにも、子育てというライフイベントの機会を仕事によって失ってしまうのは本人にとっても、組織にとっても大きな損失になると捉えています。1ヶ月間は給与を100%保障するほか、1週間ごと計4回まで分割して取得できるようにしたのは、仕事の都合ではなく家族と話し合ったうえで最も良いタイミングで取得できるための工夫です。
──育休義務化にあたって、社内の反応はいかがでしたか?
塚本さん:「育休を取るのは当たり前」という空気は当初からありましたし、制度開始についての理解は得やすかったと思います。一方で、忙しい時期に人が抜けることに対して現場や育休取得者の葛藤がないわけではありませんでした。ただ、そうしたなかでも、素晴らしい送り出し方をするリーダーも出てきました。たとえば、育休に入る社員の業務用スマートフォンを他のメンバーの面前で預かり、「何かあったら私が全て対応するから安心して」と伝えたことがあったんです。これは「あなたが安心して休めるように、チーム全体で了承しサポートしている」というメッセージになりました。ほかにも復帰時に「おかえり!」と大歓迎で迎えるなど、小さな好事例がいくつも生まれてきました。
私たちは、あえてそれらの事例を従業員総会などでシェアすることにしています。社長の口から「こういうリーダーがいた」と紹介されると、「こうしたやり方が会社として『○』である」と伝わります。まだ課題もありますし、「休みにくかった」という声もゼロではありません。でもだからこそ、ポジティブな例を意識的に拾って、経営メッセージとして伝えることで、少しずつ文化になってきている感覚があります。
──従業員のライフイベントに対応する施策に、積極的ということですね。
塚本さん:不妊治療や介護をするにあたっての特別休暇も設けています。これも私たちのビジョンが元になっていて、本人が輝きたいと思っているのに関わらず、何かが制限になって輝けなくなることがないように環境を整えていこうというスタンスです。休暇に関しては「その他事情がある場合は、人事の承認があれば認められる」と、あえて曖昧にしています。結果的に、長期にわたる治療が必要になった社員が、数年の特別休暇を取得したこともありました。このようにして、あらゆるライフイベントに際しても、はたらくことに不安がない状態にしていきたいと考えています。
──定年後のキャリアにも制度があると伺いました。
塚本さん:2年ほど前から「SS(スペシャルステージ)制度」というものを設けました。定年後も現役時代と同じパフォーマンスを発揮できる人は、現役時代と同じ給与を維持したまま、はたらいてもらう仕組みです。元々、若手社員の給与カーブを早めに立ち上げる施策があったのですが、ベテラン社員から「若手ばかりではなく、私たちのことも考えてほしい」という声が上がったんです。実際、定年後に嘱託になると大幅に給与が下がる現状に対し、「同じ仕事をしているのに不公平ではないか」との指摘もありました。人生100年時代、定年後もまだまだ活躍できる方が多くいます。だからこそ、能力や意欲に応じて、変わらずはたらける道を用意しました。
有江さん:もちろん体調やはたらき方の希望は人それぞれなので、契約によって柔軟に変化させられるようにしています。フルタイムで活躍される方もいれば、週3勤務の嘱託を選ぶ方もいます。選択肢を持てるようにすることで、自分の人生に対する所有感を高めていけたらと考えています。
本音が行き交う組織へ。従業員総会、朝礼、社内研究所による対話の仕組みづくり
──コマニーが目指す組織文化や理念を共有するために、どのような工夫をされていますか?
塚本さん:2022年の上場廃止を機に、経営の透明性をより高めるため1,400人の全従業員が参加する、2時間の「従業員総会」を月に1回のペースで始めました。ここでは月次の採算から新しい施策、部門ごとの取り組みまで、リアルタイムの情報をすべて公開し、ガラス張り経営を目指しています。1時間は会社からの情報発信が主ですが、一方的な場にならないように、もう1時間は対話の時間にしています。1400名の従業員を、オンラインのブレイクアウトセッション100ルームにわけて、自由に話す時間を設けています。
──社員が自由に話す機会を設けることで、どのような変化や効果を期待されているのでしょうか?
塚本さん:社員が自分の考えを自然に言える雰囲気をつくること、そして理念などの会社からのメッセージを、押しつけではなく社員自身の気づきとして受け止めてもらえるようにすることが目的です。会社として理念の浸透は必要なことなのですが、それを一方的に伝えるだけでは意味がありません。社員一人ひとりが納得感を持ち、自分の言葉で理解し、自分ごととして捉えられる状態を目指しています。
かつては毎朝の朝礼で「理念手帳」を輪読し、挙手制で感想を共有していましたが、それも今は3人1組で話す形式に変えました。たとえば理念手帳の19番には「常に明るく」というものがあるのですが、それについて「最近こんなことがあって…」と具体的な出来事をもとに話すことで、仲間と対話しながら自分なりの理解を深めていく。それが、理念を「自分の言葉で語れる」ようになるプロセスにつながっていると感じています。
──とはいえ、現場で本音を出すのが簡単ではないこともあるのではないでしょうか?
塚本さん:そうですね。やはり立場や状況によっては、なかなか本音を出しづらいこともあります。そうした声も拾っていけるように、最近では「匿名チャット」を導入したりもしました。以前よりも率直な声が集まるようになったと感じています。
たとえば従業員教育に関して「研修も大切だけれど、それよりお客様に向ける時間をもう少し確保したい」といった声があり、それをきっかけに研修を選択制にするなどの見直しを行いました。ウェルビーイングの観点からも「自分で選べる」「自分で決められる」ということはとても大事だと考えていて、制度づくりにおいても、社員の声を反映しながら、柔軟に設計していくことを大切にしています。
──ほかにも、社員の声を起点に生まれた取り組みは他にもあるのでしょうか?
塚本さん:「間づくり研究所」という社内プロジェクトがあります。私たちが提供しているのはパーティションという「モノ」ではなく、そこで行われる会議や教育の質を高めることだと考えており、そのための研究を行っています。
この研究所では、全従業員を研究員と位置づけ、時には部署を超えたメンバーでチームを組み、自社を実験場にしてさまざまな試みを行っています。たとえば、工場内のコミュニケーションを活性化させるために、リラックスできるレイアウトのブースをつくり、コーヒーマシンを設置しました。これは工場ではたらく社員の声から生まれたものですが、コーヒーを飲みに様々な部署から社員が集まる場所になり、部署を超えた交流を生みだすことに成功しました。今ではお客様からも「同じものを導入したい」という依頼が来るまでになったんですよ。実際に提案した工場の社員が「私たちも営業ができた」と喜んでくれていて、それがまた嬉しいですね。
「きれいごとがまかり通る世界を」。社員の幸福度向上を目指して
──お二人が今の仕事を通して感じる「自身のウェルビーイング」についてお聞かせください。
有江さん:「はたらくことを通して幸せになる人を増やしたい」という想いを持つ会社ではたらけていること自体が、私にとってのウェルビーイングだと思っています。そう感じる原点には、父の存在があります。小さい頃、はたらく父の姿があまり楽しそうに見えなかったんです。そうした境遇でも懸命に育ててくれたのですごく感謝しているのですが、当時の父の姿がずっと心に残っていて。だからこそ今、ウェルビーイング経営に携わるなかで本当に目指したいのは、従業員だけじゃなくて、その子どもたちが「大人になるのって楽しそう」「自分もはたらいてみたい」と思えるような社会をつくることが、私の目指す姿です。
塚本さん:私が仕事を心から楽しめているのは、自分の人生のミッションが、コマニーでの仕事と重なっているからです。私のミッションは、「きれいごとがまかり通る世界をつくること」。はたらくことは本来、貢献や喜びを感じられるものであるべきなのに、そこに苦しんでいる人がいることも事実です。だからこそ、コマニーでともにはたらく人には「この仕事を通じて生きている」と思ってほしいですし、そんな会社をモデルにしてくれる企業が増えたら、社会全体のウェルビーイングにつながると信じています。
──最後に、今後の目標を教えてください。
塚本さん:私たちは「ザ・ウェルビーイング・カンパニー」になろうと本気で思っています。目指しているのは、事業や品質、環境、ガバナンス、業績などすべてにおいてしっかりと成果を出しつつ、その土台に「従業員の幸福」がある経営。社員の幸福度80%以上という状態をつくったうえで、持続的に社会に価値を届けていける組織作りを、2030年までに実現したいと思っています。
有江さん:3月20日にはコマニーとして「COMANY SWGs(Sustainable Well-being Goals)宣言」を発表する予定です。ウェルビーイング経営ができている企業として、2030年には多くの方々に見ていただけるような企業になることを目指して、取り組み続けていきたいと思っています。
2026年3月20日の国際幸福デーにあわせてコマニーが「SWGs宣言」を発表 | ニュース | コマニー株式会社
https://www.comany.co.jp/news/2026/03/24/27061/