新宿区に東京本社を構える、日清食品株式会社。1948年に創業者・安藤百福氏により設立され、1958年には世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売。以降も独自の食の創造を続けてきました。
2008年には、日清食品ホールディングスとして、「EARTH FOOD CREATOR(食文化創造集団)」をグループ理念に掲げ、常に新しい食の文化を創造し続け、環境・社会課題を解決しながら持続的成長を続けています。
そんな歴史と挑戦を重ねてきた日清食品株式会社では、Well-being推進部が旗振り役となり、はたらくことを通して、社員やステークホルダーなど、日清食品グループに関わるすべての人々が感じる幸せや満足感=Well-beingの向上に取り組んでいます。
今回お話を聞いたWell-being推進部 コミュニケーション戦略室が特に注力しているのが、グループ全体での施策として展開している「感謝の輪」という企画。感謝の言葉を可視化し、「投稿」という形で届け、職場の心理的安全性を高めていく取り組みについて、担当者にお話を伺いました。
プロフィール:
日清食品株式会社
Well-being推進部 コミュニケーション戦略室
室長 柴田 和浩(写真左)
内山 奈奈美(写真右)
この記事でわかるポイント
- 日清食品グループは、グループ理念「EARTH FOOD CREATOR」に基づき、社員のWell-beingを重視した経営を推進しています
- 社員同士の感謝を可視化し、つながりと心理的安全性を高める施策「感謝の輪」を展開しています
- 感謝を投稿しやすくする工夫として毎月キャンペーンを実施、その1つが「#これ誰にありがとう言ったらいいですか」です
- 社内での感謝の連鎖は、部署を超えたコミュニケーションや挑戦を後押しするカルチャーの醸成につながっています
- 今後は、商品ブランドに関連した企画展開や、さらに気軽に感謝を表現できる工夫を通じて、感謝が自然に生まれる職場づくりを目指しています
「感謝の輪」が生んだ、つながりの可能性
──はじめに、日清食品グループが掲げる理念「EARTH FOOD CREATOR(食文化創造集団)」について教えてください。
柴田さん:創業者・安藤百福が「食足世平(食が足りてこそ、世の中が平和になる)」という思いで世界初の即席麺「チキンラーメン」を発明したのが、当社事業の始まりです。2008年には常に新しい食の文化を創造し続ける「EARTH FOOD CREATOR(食文化創造集団)」を掲げ、環境・社会課題を解決しながら持続的成長を果たすことを目指しています。また、先ほど挙げた「食足世平」のほか、「食創為世」「美健賢食」「食為聖職」の4つの創業者精神は、変わることのない日清食品グループの価値観です。
──お2人が所属されているWell-being推進部とは、どういった部署なんですか?
柴田さん:Well-being推進部は、社員と社会のWell-beingを高めていくことを目的に、2022年に新設された部署です。DX推進部、キャリアサポート室、Well-being企画室、コミュニケーション戦略室の4つの組織で構成されています。
当社グループは、「新たな食の創造」で世界の課題をスピーディに解決し、人類をもっと健康に、もっとHAPPYにしていくことを掲げています。それを実現するためには、当社グループの社員やステークホルダーの皆さま一人ひとりなど、日清食品グループに関わるすべての人々が幸せにはたらける状態を整えることが欠かせません。
内山さん:DXの活用による業務の効率化、社員のキャリア自立、社員個人や組織全体のWell-beingの向上は、はたらきやすさに繋がります。
4つの組織が施策を行い、従業員のエンゲージメントやはたらきやすさの向上に取り組んでいるという形ですね。
──その中でお2人が所属しているコミュニケーション戦略室では、どのような施策を行っているのでしょうか?
内山さん:私たちが所属しているコミュニケーション戦略室は、主に「挑戦し、成長できる組織風土」を醸成していくための取り組みを行っており、今、力を入れている1つが、社員同士のつながりを生む仕掛けである「感謝の輪」です。
内山さん:これは、当社グループの中で、会社や部署を超えて社員同士が気軽に感謝を伝え合うことを目的としており、2023年から行っている施策です。「ありがとう」の気持ちを可視化することで、次の誰かへと伝播し、感謝が輪のように広がっていくことを願って「感謝の輪」と名付けました。社内向けのコミュニティツールを活用しており、社員はSNSに投稿するように、はたらく中で感じた「ありがとう」の気持ちを簡単に投稿できる仕組みになっています。感謝を「された人」と「伝えた人」だけでなく、その投稿を「読んだ人」にもポジティブな感情が波及していくことを目指しています。
柴田さん:内山が担当になってからは毎月投稿を促すキャンペーンを企画・実施してくれていて、参加者は増え続けています。一方で、投稿するには少し勇気がいるという声や、名指しで感謝を伝える時に「読んでもらうには、きちんと文章を書かなければ」とハードルの高さを感じている社員も少なくありませんでした。パーソルホールディングスさんが実施していた「#これ誰にお礼言ったらいいですか」という企画を知ったのは丁度その時でした。
八王子にある研究所の池にも、感謝の言葉が届いた
──何がきっかけで、「#これ誰にお礼言ったらいいですか」を知ったんですか?
柴田さん:弊社が参加している日本経済新聞社主催の企業コンソーシアム「Well-being Initiative」で、パーソルさんが独自の取り組みとして発表されていたのがきっかけです。
内山さん:柴田からこの企画について聞いた時に、「誰かはわからないけれど、感謝している相手に向けて確実にメッセージを贈る」というところが素晴らしいなと思いました。投稿する際に、相手の名前や部署がわからなくても良いので、感謝の気持ちを正直に、気軽に投稿できる。これなら、小さな気づかいや行動にもスポットが当たると思い、「感謝の輪」への参加を促すキャンペーン施策として、「#これ誰にありがとう言ったらいいですか」という施策を始めました。
内山さん:初回から大好評で、普段に比べて1.3倍の投稿が集まりました。投稿されたエピソードの内容もバリエーション豊かで、会ったことのない誰かへの感謝や、これまで見過ごされがちだった貢献への感謝が多く寄せられたのが印象的でしたね。社内の反応としても「すごく素敵な企画だった」「今後も継続してほしい」というコメントがたくさん届きました。
柴田さん:非常に効果があったことも含め、パーソルさんにご報告・お礼をお伝えさせていただきました。それがきっかけで、今後は一緒にコラボ企画も実施させていただけることになり、大変楽しみです。
──運営されてみて、お2人の所感はいかがですか?
内山さん:大変楽しいです!投稿されたエピソードの中からいくつかピックアップし、お礼を送られた「誰か」を見つけ出して、投稿者の代わりに直接お礼を届けに行っています。インタビューでは普段なかなか接点のない部署の社員に会うことができますし、「自分のしていた些細なことに、知らない誰かが感謝してくれていたと知って、すごく嬉しかった」という声を聞けるのもとても嬉しくて。その様子は社内報でも伝えており、その記事の反響も大きいです。
特に印象的だったのは、八王子の研究所に勤務する社員に感謝を届けに行った時のことです。お礼の内容は「研究所の敷地内にある生態池がいつも綺麗に整備されていて、魚が気持ち良さそうに泳いでいる姿を見るのが癒しになっている」というものでした。窓がない部屋での研究に従事することもあるそうで、投稿者は休憩時間に外に出て、生態池や魚を見ることが癒しになっていたそうなんです。
柴田さん:「生態池を整備しているのは誰だろう?」というところから調査を進めていき、整備をしている社員ご本人に経緯とともに伝えたところ、最初は「そんなことを思ってくれている人がいるの?」と、とても驚かれていました。思いがけない感謝の言葉だったそうですが、インタビューを通して、綺麗な生態池を保つために人知れずいろいろな工夫をされているということが分かりました。
内山さん:そういった表に出ることが少ない貢献や配慮にも光が当たり、感謝のメッセージが送られるのは、この施策の良いところだと思います。
柴田さん:「ありがとう」の気持ちをメッセージとして可視化し、相手に届けること。そのやりとりを社内に共有し、感情を伝えられること。一つの感謝が、個人間のコミュニケーションにとどまらず、まさに輪となっていくつもの温かいつながりを生んでいます。
感謝の文化が、心理的安全性と挑戦を支える土壌になる
──「感謝の輪」や「#これ誰にありがとう言ったらいいですか」といった取り組みを通じて、どのような成果を感じていますか?
柴田さん:会社や部署を超えたコミュニケーションが生まれていること、そして心理的安全性が高まっていることですね。誰かに感謝される、感謝するという行為が日常にあることで、「ここではたらいていていいんだ」「自分の仕事を見てくれている人がいる」と感じられることが、仕事への前向きな気持ちにつながっているのではないかと思うんです。そして、そうした心理的安全性があるからこそ、失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる空気が生まれると感じています。
──今後の展望を、お聞かせください。
柴田さん:これまでの取り組みを通じて、感謝の文化が少しずつ根付いてきた実感があります。今後は、さらに日清食品グループらしさを組み込んだ施策も増やしていきたいですね。
たとえば、当社グループでは「チキンラーメン」のバースデーである8月25日に社内でイベントをしたり、社員が店頭販売を行ったりしているんです。そういった機会に掛け合わせることで、商品や会社へのエンゲージメントを高めるような施策になるのではと考えました。そこで、「チキンラーメン」にたまごをのせやすくするためにある「たまごポケット」のように、「ちょっとした気遣いに助けられたエピソード」を募集するコラボレーション企画も実施しました。今後もこのような当社グループらしさを感じられる施策に力を入れていきたいです。
内山さん:当社グループでは、近年キャリア採用の社員も増えてきています。そうした中で、「自分もこの組織の一員なんだ」と実感できることは非常に重要です。感謝を伝えることだけでなく、社員同士がお互いのことをより深く知ることができる工夫を取り入れ、社員同士のつながりをさらに広げていきたいですね。
直近の課題としては、まだ「メッセージを送るなら、きちんとした文章で書かなければ」と構えてしまう方が多い点です。ささやかな感謝を、いかに気軽に発信できるようにするか、たとえば「20文字で感謝を伝えよう!」といったような、参加のハードルが下がるキャンペーンにも挑戦したいです。今後は、「タメ口で感謝を伝える」など、よりカジュアルに参加できるテーマも検討していきたいですね。
柴田さん:企画そのものへの愛着から「ずっと続けたい」という気持ちもあります。一方で、最終的に目指しているのは、この企画を「きっかけ」として、日常の中で自然に感謝が交わされる文化を根付かせることです。企画の期間中だけでなく、日々顔を合わせる中で「ありがとう」が今以上に飛び交う状態を作りたい。そうした文化の定着に向けて、これからも取り組みを続けていきます。
※この記事の内容は、2025年12月に取材したものです。
