CUCグループ(以下、CUC)は、株式会社シーユーシーと連結子会社からなるグループ企業です。医療機関向け経営支援事業やホスピス事業、居宅訪問看護事業などを展開しており、国内だけでなくアメリカ・ベトナム・インドネシアとグローバルに事業を拡大。
自社のグループ企業、そして支援する医療機関を「CUCパートナーズ」と名付け、「CUC Partners Philosophy」のもと、ミッションである「医療という希望を創る。」の実現を目指しています。
また、医療現場の声をもとに生まれたはたらき方支援やキャリアアップ研修など、CUCグループが実施する医療従事者のウェルビーイングを支える取り組みが評価され、2025年3月に朝日新聞社などが主催する「WELLBEING AWARDS 2025」の「組織・チーム」部門にて、最高賞であるグランプリを受賞しました。
医療・看護・介護業界のなかで、どのように“はたらくWell-being”を実現しているのか。株式会社シーユーシーの取締役CHRO・松浦さん、訪問看護事業を担うソフィアメディ株式会社(以下、ソフィアメディ)の宮地さんに聞きました。
プロフィール:
株式会社シーユーシー 取締役CHRO 松浦 俊雄
ソフィアメディ株式会社 管理本部 人事グループ ウェルビーイング推進担当 宮地 麻美
目次
「CUC Partners Philosophy」を策定。拡大する組織に共通の言葉を
——まずは、CUCグループがどのような事業を行っているのか教えてください。
松浦さん:2014年に母体となる株式会社シーユーシーが創業し、在宅医療機関の経営支援事業からスタートしました。今では在宅医療機関だけでなく、総合病院や透析医療機関、眼科・小児科・婦人科といった単科クリニックなどへも支援を拡大し、約150拠点ほどの医療機関のご支援をしています。
その後、グループ会社を増やし、がん末期や難病の方のケアに特化したホスピス事業、居宅訪問看護事業、介護事業を展開。さらに、昨年1月からはアメリカでも足病クリニックの運営・経営支援も開始しました。
——医療・看護・介護といった領域で、幅広く事業を展開されているのですね。
松浦さん:そうですね。現在、国内外で約40の連結子会社でCUCグループが構成され、各事業において支援や運営を行う国内の拠点数を合わせると300を超えます。こうしたグループ企業とご支援先の医療法人様を合わせた共同体を、私たちは「CUCパートナーズ」と定義しています。そして、すべての従業員に共通するミッション「医療という希望を創る。」を軸に、ステートメントと、5つのWayを総称して「CUC Partners Philosophy」を掲げているんです。
——CUC Partners Philosophyは、2021年4月に完成されたと伺いました。どのようにして策定されたのでしょうか?
松浦さん:2014年の創業以来、ご支援先やグループ企業が増えていくなかで、組織が拡大し、足並みを揃える必要性が出てきました。というのも、多様な価値観や文化を持つ方々とともにCUCパートナーズを形成するため、「医療という希望を創る。」というミッションを実現していくためには、共通言語が必要だという課題意識が生まれてきたんです。
代表の濵口が「一度、理念についてじっくり考えてみよう」と口火を切り、そこから株式会社シーユーシーの役員をはじめ各部の部長、医療職らも参加し、「医療という希望を創る。」という使命をどのように浸透させていくべきか、各事業や組織でどんな課題があるのか、それをどう乗り越えるか、半年にわたり議論が交わされました。
議論の中では、たとえば「短期的な成果を追うあまり、患者視点の医療が置き去りになっていないか」「患者の気持ちを考える前に、仕事をこなすだけの作業になっていないか」「そうしたなかで、疲弊している従業員はいないか」など、現場のリアルを率直に話し合いました。
——かなり真に迫った議論が交わされたのですね。
松浦さん:白熱した話し合いを経て、「医療という希望を創る。」というミッションを軸に、患者視点の医療の普及を諦めないステートメントとして「もっと 寄り添う。きっと できる。」を、そして行動指針として5つのWayが定められました。「『自分の立場』ではなく、『患者様の気持ち』で考える。」「『できない理由』ではなく『できる方法』を探して実行する。」「『既成概念』にとらわれず『理想』を追求する。」「『専門性』の前に『人間性』を重視する。」「『上下』ではなく『ひとつのチーム』として手を重ねる。」これらを総称して「CUC Partners Philosophy(以下、フィロソフィー)」とよんでいます。
現場の声から生まれた、従業員との約束「CUC Partners Promise」
——さらに御社は、「働くみなさまとの約束」としてCUC Partners Promise(以下、プロミス)も定められていますよね。
松浦さん:はい。フィロソフィーが2021年4月に発表され、その後、2023年8月にプロミスを策定しました。プロミスの出発点は、実はフィロソフィーなんです。きっかけは、フィロソフィー策定後、人事部門が現場ではたらく従業員と理念の浸透具合について対話していたときに、若手社員から「会社は理念の体現を従業員に求めますが、一方で会社(経営陣)は我々(従業員)に具体的に何をしてくれるんですか?」という声をいくつかいただいたのです。こうした声が出てきた背景には、組織の規模が大きくなり、拠点も増えて物理的な距離も遠くなってきたことや、多様な価値観を持った従業員やパートナーが増えてきたこともあったのだと思います。そこで、人事部門としていわゆる人事ポリシーを作ろう、というのがプロミスの発端になりました。
——現場のリアルな声が起点だったのですね。
松浦さん:人事部門で話し合うなかで、「これは人事部だけのテーマではなく、経営全体で向き合うべきことだ」という意見が生まれました。フィロソフィー同様、役員・部長陣・医療職らも参加して議論を重ねるなかで共通認識となったのが、「医療という希望を創る。」ためには、従業員が身体的にも精神的にも健全であることが不可欠だ、ということです。
宮地さん:医療・看護・介護の業界ではたらく方々の多くは、往々にして自分を後回しにしがちです。なぜなら、私たちのサポートを必要とする患者様やご利用者様が目の前にいますから、多少体調が悪くても「なんとかしてケアをする」という職業人としての姿勢を優先する方が多いんですね。しかしながら、「医療という希望を創る。」というミッションを実現するためには、私たち自身が資本であり、私たち自身が崩れてしまっては、継続して患者様を支えることも、ミッションの実現も遠のいてしまいます。
松浦さん:そこで、会社として従業員とどう向き合い、何ができるかを整理し、経営からはたらく皆さんへの約束として「一人ひとりが働きがいを感じ、夢や理想に挑戦できる環境を実現する。」というCUC Partners Promiseを策定しました。それに紐づいて、育成・キャリア支援やはたらき方支援、理念浸透の3カテゴリーでそれぞれ具体的な施策を定めています。グループ全体で行っている施策もあれば、個社ごとの施策もありますね。
——現場ではたらく従業員は「目の前の方のために」との考えが身についているなかで、自分自身のことも大切にするという考えに戸惑いはなかったのでしょうか?
宮地さん:そうですね。なかにはまだ「自分よりも患者さんを」と考える従業員もいると思います。やはり目の前の患者様・ご利用者様をサポートするのが私たちの使命ですから、切り替えるのは簡単ではありません。ですが、CUCグループに属し「医療という希望を創る。」というミッションのもと集う中で、「あなた自身も大切だよ」「あなたの人生も大切にしてね」と伝え続けることが大切だと私は感じています。
理念を日常に。「フィロトク」と「アワード」で育む“はたらくWell-being”
——プロミスに紐づいて、さまざまな施策を実施されているとのお話がありましたが、印象的な取り組みがあれば教えてください。
松浦さん:私は、2023年から実施している理念浸透施策の一つ「フィロトク」ですね。名前の通り「フィロソフィーをトークする」という取り組みで、初年度は年間約75回、昨年は80回近く開催しました。毎回4〜7人の従業員がオンラインで集まり、1時間ほどフィロソフィーについて語り合います。
——参加者はどのように選ばれているのでしょうか。
松浦さん:人事部門から無作為に声をかけています。なので集まるメンバーは、事業や職種、年代もバラバラ。人事部門のメンバーがファシリテーターとして入り、まずは自己紹介から始めます。その後、フィロソフィーを体現したと感じた瞬間や、現場でのエピソードを共有します。「こうしたら患者様に喜んでもらえた」「ご利用者様の要望を形にできた」など日々の出来事を語り合ううちに、理念が自分ごととして腑に落ちていく。お互いの仕事に触発され、「そんなやり方も理念につながるんだ」と新しい発見にもつながっています。また、事業によって患者様の状況や課題も異なるため、ケアやサポートの方法を共有する場としても一役買っています。
——部門を超えた交流の機会にもなりそうですね。
松浦さん:まさにです。CUCパートナーズでは、現場ごとに理念を体現する取り組みが数多くあります。そして、理念を体現したチームを表彰する場として年に一度「CUC Partners AWARD」を開催しています。2025年の開催で4回目になるのですが、毎回国内外から多数のチームがエントリーし、理念「医療という希望を創る。」を体現した道のりを5分間のプレゼンテーションで共有します。

昨年は、産婦人科病棟に家族も宿泊できる「ファミリールーム」を開設し、地域で安心・安全な出産環境づくりに貢献したベトナムのHOAN HAO KEI MEI KAI GENERAL HOSPITAL(ホアンハオ ケイメイカイ ジェネラルホスピタル)チームが、今年は、医療法人におけるコスト削減・効率性の推進を進めたバックオフィスのチームが、それぞれ最優秀賞チームに選ばれました。
宮地さん:ソフィアメディでも同様に、90以上あるステーションのなかから優秀ステーションを表彰するアワードが年に1回あるのですが、毎年号泣必至です(笑)。どのステーションもこのアワードで最優秀賞になることを目指し、日々患者様第一の看護を提供しています。最優秀賞に選ばれたステーションには金色の特別ワッペン付きユニフォームを贈呈していて、それを誇らしげに着るスタッフの姿を見ると、本当に嬉しくなりますね。
——現場の一人ひとりを大切にする仕組みがあると、従業員の“はたらくWell-being”も高まりそうです。
松浦さん:他にも、ホスピス型住宅「ReHOPE」を運営する株式会社シーユーシー・ホスピスでは、現場のケアエピソードを共有し合う「エピソードキャンバス」という取り組みを行っています。
印象的だったのは、2023年のエピソードキャンバスで共有された、ある終末期の患者様の「最後にアイスクリームを食べたい」という願いを実現したお話です。入居当初は病気の進行を受け入れられず、スタッフがコミュニケーションを取ろうとしても怒鳴られてしまう状態が続いていました。チームで何ができるかを話し合い、少しずつ信頼関係を築いていったある日、「死ぬ前にアイスクリームが食べたい」と打ち明けてくださったそうなんです。スタッフは、少しでも長く味わっていただけるようスプーンで小さくすくって凍らせる工夫をしました。そのアイスを見て、患者様は涙を浮かべて喜ばれたそうです。
——現場レベルの出来事は、日々のなかで埋もれてしまう可能性がありますが、こうした施策で光をあてることで、自分のはたらき方に自信を持てそうですね。

「あなた自身も大切にしてね」。現場の“はたらくWell-being”を育むために
——今後の目標を教えてください。
松浦さん:フィロソフィーを策定して以来、理念は少しずつ浸透してきたと感じています。一方で、CUC Partners Promiseの浸透にはまだ伸びしろがあります。そこで今年から「CUC Partners Promiseサーベイ」を実施し、各法人・現場ごとの理解度や課題を可視化しています。結果を踏まえながら、どうすればより自分ごととして考え、行動に結びつけられるか。今まさに、具体的なアクションを検討している段階です。
宮地さん:私は、「あなた自身も大切にしてね」というメッセージをこれからも伝えていきたいです。私自身も現場出身なので、どうしても無理をしてしまう、自己犠牲的にはたらけてしまうメンバーがいることも感じています。でも、患者様やご利用者様に寄り添い続けるためには、まず自分自身が健やかであることが大切。アワードやエピソードキャンバスのような取り組みを通して、「ケアをするあなたという存在が、誰かの安心につながっている」とご本人たちが実感できる機会をもっともっとつくりたい。そして「誰かのWell-beingを支えるあなた自身も、Well-beingでいてほしい。」その想いを私は、これからも届け続けます。
