ユタコロジー株式会社(以下、ユタコロジー)は愛知県を拠点に、ビル環境事業を行う会社です。「人々のために、技術を伝播し、わくわく感を共創する」を経営理念に掲げ、1959年の創業以来、清掃業務を中心にサービスを展開、現在では建物修繕や害虫・害獣防除、除草まで担う総合ビルメンテナンスとして事業を拡大しています。
そんなユタコロジーは2024年から、ビル環境事業に加え、Well-being事業も行っています。2030年に向けた中期ビジョン「2030VISION」では、ビルメンテナンスはWell-beingの根幹を担うものと定義し、幸福を高める5つの要素「PERMA※」の考え方も事業方針に取り入れています。
※Positive Emotion(ポジティブ感情)、Engagement(エンゲージメント)、Relationships(関係性)、Meaning(意味・意義)、Achievement(達成)から成るWell-Beingの5つの構成要素。
なぜ、ビル環境事業を展開していたユタコロジーがWell-being事業を立ち上げたのでしょうか。また、Well-being事業に関わる社員の“はたらくWell-being”はどのように変化したのか。Well-being事業部に携わる久米さんと池川さんにお話を伺いました。
プロフィール:
ユタコロジー株式会社
総務部 総務部長/Well-being事業部 部長 久米 明日樹(写真左)
Well-being事業部 平岩 美里(写真中央)※取材は欠席
Well-being事業部 池川 蓮華(写真右)
目次
ビルメンテナンスの未来を見据え、たどり着いた「Well-being」という活路
――御社は「ビルメンテナンス=Well-beingの根幹」と定義し、主軸事業であるビル環境事業の他にWell-being事業も展開されています。Well-being事業を立ち上げた背景について教えてください。
久米さん:ターニングポイントとなったのは、「ユタコロジー株式会社」への社名変更でした。当社はもともと「豊興業株式会社」として建物の清掃事業からスタートし、清掃業務だけでなく、エアコンなどの設備メンテナンスや修繕など、総合ビルメンテナンス事業を展開してきました。しかし近年、DXやAIの発展によって、ビルメンテナンス業務がテクノロジーに代替される可能性が高まってきたんです。
――業務用の清掃ロボットや、AIが点検タイミングを教えてくれるサービスなどもありますよね。
久米さん:まさにそのとおりです。さらに、人口減少が進めば建物を利用する人も減り、いずれは建物そのものの需要も下がっていく。急激な変化ではないにしても、ビルメンテナンス業界は将来的に需要が縮小する“斜陽産業”になり得るという危機感がありました。こうした背景から、今後を見据えて新たな事業の柱を検討する必要があると考えるようになったんです。
そんなとき、あらためて当社の歴史を振り返ってみると、清掃業務は多くの女性スタッフに支えられてきたことに気づきました。いわゆる「掃除のおばちゃん」と呼ばれるような、清掃を担うアルバイトクルーは約400名、その約9割が女性、そして約6割が70歳以上のシニア世代です。勤務歴が長いクルーだと、20年〜30年近く当社ではたらいてくださっているクルーもいます。彼女たちはそれぞれ自身のライフプランや体調と向き合いながら、当社ではたらくことを選んでくれている。だからこそ、これまで会社を支えてくれた女性たちに、何か還元できるようなビジネスをつくれないか、そんな想いが出発点でした。
――女性活躍の文脈からスタートしたんですね。
久米さん:はい。そこから女性活躍の具体的な取り組みを探るなかで、「Well-being」という言葉を頻繁に目にするようになりました。世界保健機関(WHO)では、Well-beingを「個人や社会にとって良い状態。健康と同じように日常生活の一要素であり、社会的、経済的、環境的な状況によって決定される」と紹介しています。少し遡りますが、当社はコロナ禍の時期に事業を「快適さの維持・進化・創造」と再定義しました。そして「快適さ」を追求していく中で、「私たちが行ってきたビルメンテナンスは、『建物で過ごす快適さ』という形で人々のWell-beingに貢献してきたのではないか」と思い至りました。年齢も性別も関係なく多様な人々が集うビルの衛生環境を整え、美観を維持することは、健康面だけでなく、「ここにいると心地よい」と感じられる空間づくりにつながります。つまり私たちは、本質的な意味で「Well-beingの根幹」を支えていたのではないか。そう考えたとき、「私たちだからこそ、Well-being事業に取り組む意義がある」と思うようになりました。
――「Well-being」という言葉を最初に口にしたのは久米さんだったのですか?
久米さん: 私です。ただ当初は、今ほど一般的な言葉ではなかったので会議の場で発言したときは、「Well-being?」と戸惑う社員も多くいました。でも、そこで大切だったのは、社員みんなが積み上げてきたビルメンテンスの歴史自体が新規事業としての「Well-being」に繋がっているというストーリーでした。社長にも協力してもらい、これらを全体へ浸透させていくうちに理解や共感が広がり、2024年1月から正式に事業としてスタートしました。
はたらく女性たちの姿を、社外へ発信することで
――事業が立ち上がってからは、どのような取り組みをされているのでしょうか。
久米さん:まずは、クルーのみなさんに光をあてようと、弊社が年末にお取引先様へ配布するカレンダーで、活躍する女性を取り上げる企画を実施しました。椙山女学園大学と共同で取り組み、学生が話を聞きたい女性を11名選出。最後の1枠には、弊社で長年はたらいているクルーを取り上げました。
というのも実は、当社のクルーは9割が女性である一方、20名ほどいる正社員はその9割が男性なんですね。そのため、クルー向けの制度整備や改革をしようにも実際は何が彼女たちのWell-beingに寄与するのかがわからなかったんです。そこでまずは、他の女性がどういったことにWell-beingを感じるのか聞かせてもらいつつ、クルーの活躍を社内外に向けて発信することで「Well-beingに力を入れている会社」という印象を定着させようと考えました。そうしてできたのが、このカレンダーです。
コンセプトは「一隅を照らす」。ビル清掃の仕事は決して花形ではなく、いわば縁の下の力持ちです。しかし、それこそがユタコロジーが積み上げてきたアイデンティティでもあるとして、クルーの方々の活躍を見える化しました。
――2024年版のカレンダーでは、どんなクルーの方々が登場されたのですか?
久米さん:人選は、当社の営業担当が行ってくれました。2024年に登場いただいたのは、なんと親子三世代で当社に勤めてくださっているご家族です。右が娘さん、左がお母様で、そのお母様の代からユタコロジーで長年はたらいていただいています。インタビュー時には、お母様が「生涯現役で、体が動く限りはたらきたい」と話され、それを見ていた娘さんも「母が元気に頑張っているから、私も負けていられない」と笑っていらっしゃいました。そんな微笑ましいエピソードから、この回のタイトルは「絶対に負けられない競争」になったんです(笑)。
現在はカレンダーではなく、就活応援マガジン「WORK IN BEAUTIFUL LIFE」として活躍する女性を取り上げる取り組みを続けています。
「はたらきがい」から「生きがい」まで。選択肢を増やすことで、Well-beingを高める
――社外に向けた取り組みから始めたとのことですが、こうした活動を通じて、社内にはどのような変化がありましたか?
久米さん:女性社員の割合が増えてきましたね。以前は片手で数えられるほどでしたが、現在は7名にまで増えています。Well-being事業部の池川もそのひとりです。
池川さん:私はもともと派遣社員としてユタコロジーに入社しました。最初は営業事務を担当していましたが、そこから社内のペーパーレス化や勤怠管理のデジタル化など、DX関連の業務にも携わり、今年4月に正社員としてWell-being事業部に配属されました。現在は、「WORK IN BEAUTIFUL LIFE」の取材調整や同行といった業務に加えて、もう一つ、シニアクルーさん向けにスマホ教室も開催しています。
池川さん:クルーさんのデジタル化を促進しようと企画したのですが、とはいえ「会社がデジタル化するので、皆さんもお願いします」と伝えるだけでは、二の足を踏んでしまう方もいらっしゃいます。そこで、「会社のデジタル化をきっかけに、スマホを楽しく使えるようになりませんか?」と呼びかけて、スマホ教室を開いたんですね。私たちにとってスマホは当たり前のツールですが、シニアの方にとっては、スマホが使えることで社会とのつながりも広がりますし、たとえばお孫さんや遠方に住んでいるご家族とのやり取りもできるようになります。クルーの希望者を募り、4月に配属されてから3ヶ月の間に計8回ほどスマホ教室を開催しました。
――「仕事」という枠組みに留まらず、シニアクルーのみなさんの生活の質向上にも寄与しているんですね。
久米さん:スマホ教室を開催して感じたのは、こうして集まる場があることの大切さです。業務上、クルーのみなさんは基本的には一人で指定の現場へ行き、仕事を終えたら直帰する場合がほとんど。でもスマホ教室で集まっていただいたら、まるで女子大生のようにお喋りが止まらなくて、大盛り上がり(笑)。会社からお茶菓子と飲み物を用意し、当初は2時間の予定が、気づけば1時間延長して3時間の開催になりました。
パンフレットに出演することやスマホ教室など、ただ仕事だけで会社とつながるのではなく、今までにない新しい形で会社との接点ができ、クルーのみなさんにとっても社会とのつながりができたのではないかと思っています。有難いことに「身体が動かなくなるまではたらきたい」と言っていただけることも多く、当社としても1日でも長くその時間を持っていただけるようなお手伝いをしていきたいと思っています。いろんなきっかけをこちらから用意することで、クルーのみなさんのはたらきがいはもちろん、生きがいも創出し、「ユタコロジーではたらいているから人生楽しい」と感じていただけるような取り組みを続けていきたいんですよね。
――クルーのみなさんの“はたらくWell-being”につながっているんですね。
久米さん:Well-being事業をはじめてから私は、「Well-beingとは選択肢を増やすこと」だと考えるようになりました。これから社会に出る学生さんも、ユタコロジーではたらいてくださるクルーのみなさんも、それぞれの人生があり、仕事や“はたらく”ことへの捉え方も人の数だけあります。そのなかで、活躍している女性の事例に触れてもらったり、こちらから機会を提供したりすることが、一人ひとり異なる“はたらくWell-being”を高める可能性を広げることになるのではないかと思っていますね。
「ありがとう」が飛び交う職場に。Well-being事業で生まれたやりがい
――Well-being事業に携わるお二人にとっての“はたらくWell-being”についても、ぜひ伺いたいです。久米さんはいかがですか?
久米さん:そうですね。Well-beingと向き合うなかで感じているのは、Well-beingとは何か新しいものを上乗せしていくというより、人としての本質や、根っこの部分にどれだけタッチできるかだと考えています。そして個人的には、「ありがとう」という言葉が人間の本質的な部分を支えてくれると考えています。
奇しくも私は、Well-being事業部長と総務部長を兼任しており、会社の“外”と“中”、両方の視点が求められるポジションにいます。お客様や学生さん、クルーのみなさんに対して、どうはたらきかけたら「ありがとう」が増えるだろうか。総務として、社員同士が自然に「ありがとう」と言い合える環境をどうつくるか。そして何より、自分自身が「ありがとう」と言える自分でいられているか。「ありがとう」は誰にでも言える言葉ですが、同時に、心の大きな支柱にもなり得る言葉だと思っています。だからこそ、社内外で「ありがとう」が飛び交う関係性を、これからも丁寧に築いていきたい。それが、今の私のミッションです。だからこそ「ありがとう」が交わされた瞬間に、やりがいを感じますし、それが私にとっての“はたらくWell-being”にもなっていますね。
――池川さんはいかがですか?
池川さん:私は正直なところ、派遣社員として入社した当初は、仕事にはたらきがいを求めるタイプではありませんでした。しかし事務職としてはたらく中で、だんだんと仕事が作業のように感じてきて……その頃にちょうど「DX担当をやってみない?」と声をかけてもらったんです。もちろん最初は「私で大丈夫かな」と不安にもなりました。でも、任せてもらえたからには前向きにやってみよう!と思って挑戦してみたんですね。
すると、「DXは自分が主担当なんだ」という自覚が生まれ、仕事がどんどん面白くなっていったんです。やりがいも湧いてきて、仕事に対するモチベーションも高まっていきました。Well-being事業部になってからは、より仕事への面白さを感じられるようになっていて。負荷がかかっていたとしても「これを乗り越えたら自分のためになる」と考えられるようになり、それは“はたらくWell-being”を感じているからだと実感しています。
――最後に、今後の目標についても、お聞かせください。
久米さん:先ほどお話しした内容とも重なりますが、やはり「ありがとう」が飛び交う環境づくりを、これからも目指していきたいと思っています。弊社の経営理念には、「人々のために、技術を伝播し、わくわく感を共創する」とあります。ビル環境事業とWell-being事業、両事業を通して「ユタコロジーと関わると、何か楽しいことができるんじゃないか」「ユタコロジーではたらくのが楽しい」と感じてもらえるような、人生の彩りを増やせる存在でありたいと思っています。
池川さん:私は、つながりをもっと広げていきたいと考えています。1つは、シニアクルーさんとのつながりです。スマホ教室のとき、みなさんが私のことを孫のように可愛がってくださって、旅行に行った際にお土産を持ってきてくれた方もいらっしゃったんですね。会社としても、そうしたつながりは貴重な接点づくりになっていると思いますし、これからもコミュニケーションを絶やさずにいたいなと思っています。
もう1つは、「WORK IN BEAUTIFUL LIFE」を通じた学生さんや出演企業の方々とのつながりです。学生さんと話していると、かつての私のように、はたらくことに対してやりがいを求めていない方もいらっしゃいます。それもひとつの考え方だとは思いますが、やはり自分の成長を実感できる環境に身を置くことは、大きなモチベーションになると私自身が感じています。また、ご出演いただく方にとっても自分のキャリアについて改めて話すことで、もう一度自分の仕事を誇りに感じたり、はたらくことを見直すきっかけになっているのではないかと思います。だからこそ、私が感じたこの気づきを、Well-being事業を通じて、もっと多くの人に届けていきたいです。
