エンゲージメントスコアが、40から67に大幅上昇。「制度」と「社内報」の両輪で叶える“はたらくWell-being”

株式会社ペンシル(以下、ペンシル)は、福岡県を拠点に、BtoBのウェブコンサルティング事業を展開する会社です。1995年の創業以来、「インターネットの力で世界のビジネスを革新する」を理念に掲げ、デジタル戦略の企画・立案から、サイトの制作・構築・運用、プロモーションといった実行面、施策を行った後の結果の検証・解析・分析まで、売上を上げるためのサポートを一気通貫で行っています。

2016年4月に代表取締役社長が倉橋 美佳さんに交代し、新たな体制へ移りました。倉橋さんは2003年にペンシルに入社し、14年間培った現場経験を経営に活かそうと奔走。その結果、55を超える制度の整備、社内報の活用で、就任当初は40.9だったエンゲージメントサーベイのスコアの大幅なアップを達成し、現在も右肩上がりを続けています。そんな倉橋さんに、どのようにメンバーの“はたらくWell-being”を高めているのか、“はたらくWell-being”を高めるうえで大切なことを聞きました。

プロフィール:

株式会社ペンシル
代表取締役社長 倉橋 美佳

「人」を重視するダイバーシティ経営への転換

——御社の事業内容について教えてください。

株式会社ペンシルは、大手企業を中心に、幅広いクライアントの業績に直結する研究開発型ウェブコンサルティング事業を展開している会社です。インターネット黎明期の1995年、ドメイン取得やサーバー導入などのインターネット関連事業から始め、今年で創業30年を迎えました。有難いことに20期連続で黒字を達成し、最近では「DX経営コンサルティング」「推し活コンサルティング」といった新たな領域のコンサルティングの提供も始めています。

当社は創業当時から、「どうすればクライアントの利益に貢献できるか」を常に念頭に置き、社会情勢や時代の流れを見ながら自社のあり方も変化させてきました。大きく分けると、これまで3度の変革がありましたね。まず、1995年から2015年までの20年間は「研究開発経営」を掲げていました。インターネットが登場し、多くの企業がデジタルを取り入れるなかで、システムの導入や整備、新しいマーケティング理論の研究や独自分析ツールの開発を行っていた時期です。そして、創業20年を迎えるタイミングで、海外のテックカンパニーでは「人」や「個人のスキル」に重きを置く企業が急成長していることに気がつき、2015年からは「ダイバーシティ経営」を打ち出しました。

——今でこそ「DE&I(Diversity、Equity and Inclusion)」の考え方が浸透してきましたが、2015年当時の「ダイバーシティ経営」はかなり先取りだったのではないでしょうか?

そうですね。しかし、我々が主戦場としているウェブ業界は移り変わりが速い業界です。多くの企業がデジタルを導入することが当たり前になれば、次は「どう差別化するか」「どうクライアントの強みを引き出すか」という点に焦点が置かれるのではないかと感じていました。人的資本とも言われますが、会社というのはつまるところ「人」が集まって形作られています。社員の多様性に目を向けることが、今後ますます重要になると考えたのです。

そして、「ダイバーシティ経営」を掲げるのであれば、自社も変わらなければなりません。2015年に「ダイバーシティ経営推進方針」を打ち出し、年齢・性別・職位に関わらず、誰もがはたらきがいとはたらきやすさを感じられる会社を目指すために、まずは環境づくりから始めました。実は、それまでのペンシルは残業や長時間労働が常態化してしまっており、その状態では持続可能な企業運営は難しいと感じていました。そこでまずは、はたらきやすい環境づくりに向けた制度改革をスタートしました。

「はたらきやすさ」と「自己研鑽」の両軸で

制度改革の初期の頃にまず作ったのが「メイト制度」でした。これは、子育てや介護などでフルタイム勤務が難しい人材をパートタイムで採用し、レポート作成や調査、チェック作業といった非属人的で工数管理がしやすいオペレーション業務を担当してもらう仕組みです。オペレーション業務を切り出すことで多様な人材の活躍につながるだけでなく、コンサルタントのメンバーがより業務に集中できる環境を整えました。

さらに、この「メイト制度」には思わぬ副次的な効果もあったんです。子育て中の方や介護をしている方々は、我々が支援しているクライアントのサービスのエンドユーザーにもなり得るため、その視点がコンサルティング業務に活きました。「子育て中だとここに課題を感じるんだ」「こういう心配事が生まれるのか」といった発見があり、さまざまなバックグラウンドを持つ方々が会社に関わることの重要性を肌で感じましたね。

その後、在宅勤務・時短勤務・始業時間や終業時間を繰り上げて勤務できる「家ペン・短ペン・早ペン」制度や、パートタイムや派遣社員が正社員・直接雇用に転換できる「キャリアアップ制度」などを整え、徐々にはたらき方を改善していきました。

(引用:https://www.pencil.co.jp/about/benefits/

——はたらき方に関する制度が、徐々に機能し始めてきたのですね。

すると時間に余裕が生まれ、その時間をどんなふうに過ごしてほしいか考えたときに、私はメンバー一人ひとりがより自身の成長にコミットすることに使ってほしいと思ったんですね。そして会社は、成長し合うメンバーたちが切磋琢磨し、ともに高め合える場でありたいと。以来、外部講師を招いて幅広い学びの機会を提供する「おとな塾」、おすすめしたい書籍を集めて文庫としてスタッフに貸し出す「ペコ(ペンシル文庫)」といった制度を導入しました。

なかでもメンバーから好評だった制度が、「匠(たくみ)制度」です。スタッフの専門性向上を目的に、自己研鑽にかかる費用を会社が負担する制度で、たとえば書籍購入や外部セミナー・勉強会への参加、また、資格取得にかかる費用などを補助しています。2023年には利用件数が200件を突破し、多くのスタッフがそれぞれ自分の業務に関連するさまざまな資格取得に挑戦しています。

——資格があることで、日々の仕事の新たな一面が見えてきて、結果的に“はたらくWell-being”を育むきっかけになりそうです。

制度は“使われてこそ”。見える化と改善で進化させ続ける

——サイトにも掲載されていますが、御社はかなり多くの制度がありますよね。それらは、どのように管理しているのでしょうか?

ペンシルでは、制度のマッピング表を作っています。横軸に「安心」と「挑戦」、縦軸に「感情報酬」と「金銭報酬」の4つの象限を置き、今ある制度がどの役割を果たしているのかを可視化しているんですね。現在では40を超える制度があるため、どんな制度があり、自分が利用できるものは何か、制度を俯瞰して見えるマッピング表を社内で共有しています。

——マッピングされていると、制度の全体像がとても分かりやすいです。

我々はコンサルティングを主事業としているので、普段から現状を表やグラフで可視化する手法を用いているので、同様に制度も可視化してみたんですね。ペンシルでは「制度はたくさんあっていい」との考えのもと、全員のためにひとつの大きな制度をつくるのではなく、一人ひとりのために多様な制度を用意することを心がけています。ただ、使われなければ意味がありません。定期的にマッピング表を見直し、利用されていない制度は廃止することもありますし、制度の内容を改善することもあります。

——ということは、これまでに廃止された制度もあるのですか?

ありますね。たとえば、社員とそのパートナー、家族の誕生日を休暇にできる「バースデー休暇」制度は廃止しました。なぜなら、自分だけが休みでも、パートナーや家族は結局仕事や学校があるため休暇をうまく活用できなかったからです。「バースデー休暇という形ではなく、有休を取りやすくしたほうが良い」という意見もあり、制度を廃止しました。

制度設計は社員の声をもとにつくることもありますし、人事を担当するDE&I推進室が社内の状況を見て提案する場合もあります。後者の例でいうと、データを分析したところ、社会人として仕事に慣れてくる入社3年目頃はモチベーションが下がりやすいという結果が出たので、3年目からチャレンジできる制度を新たに作ったことがあります。我々は数百人規模の会社なので、まず制度を作ったらガイドラインをまとめ、マネージャー層との会議で共有・協議をし、問題がなければおおよそ1ヶ月ほどで社内にリリース。その後3年ほどをかけて利用状況や見直し、改善を繰り返しています。

社内報が生んだ一体感。危機を変えたコミュニケーション

——次に、社内報の活用について教えてください。御社は社内報を戦略的に活用することでエンゲージメントスコアに変化が出て、離職率も下がったと伺いました。

社内報を活用しようと思ったのは、まさに社員のエンゲージメントスコアの低さがきっかけでした。今でこそ高いスコアですが、実は私が社長に就任した2016年頃のエンゲージメントスコアは40.9pt。私は14年間の現場経験を経て叩き上げで社長に就任したので、気持ちとしては「みんなを代表して社長になった!」という感覚で、勝手にみんなが付いてきてくれると思っていたんです。しかしながら蓋を開けてみると低スコアで、その理由の一つは「経営陣への信頼感の薄さ」でした。ショックでしたし、孤独を感じましたね。

——付いてきていると感じていた分、孤独感もあったのですね。

そこから「どうしたら信用してもらえるのか」と、試行錯誤の日々がスタートしました。経営の情報をオープンにしたり、「ダイバーシティ経営」などの経営方針を朝礼で伝えたりもしました。ところがなかなか手応えを得られず、2019年頃に施策の一つとして社内報の取り組みを始めました。ちょうど「ダイバーシティ経営」に区切りをつけ、2020年から「DX経営」に舵を切ろうとしていたタイミングだったこともあり、社内でウェブの社内報に取り組むのは良い契機だろうと考えたんです。そんなときにちょうど新型コロナウイルスが流行し、出社できなくなったことで、情報発信の手段を社内報にせざるを得なくなりました。

——社内報を推進するタイミングと、社会的な情勢がちょうど合っていた。

まさにです。まずは私から、社内報で毎週発信を行いました。未曾有の事態で、クライアントも自分たちもどうなるか分からない。不安な日々のなか、励ましの言葉をはじめ投稿を続けていたところ、徐々に社員からも「在宅勤務のはたらき方の工夫」や「部署でオンラインランチをしました!」といった記事投稿がされるようになったんですね。2020年4月入社の新入社員紹介の投稿には多くのコメントが集まり、テキストコミュニケーションが活発化しました。本来なら対面でできていたことができなくなったからこそ、社内報が社員の拠り所になっていったのだと思います。

オフィスにいないのに会社の一体感を感じられたことで、「ああ、社内報ってすごくいいな!」と活路を見出した気持ちになりましたね。そしてコロナが明けた6月に、定期のタイミングではなかったのですがエンゲージメントサーベイ調査を行ったところ、数値が55.4ptと大幅にアップしました。

——コロナ禍で仕事へのエンゲージメント数値が下がる傾向にある時期に、ペンシルは右肩上がりを果たしているのですね。

この伸びを見て、私としては「あ、見えたな」と感じ、より戦略的に社内報を強化するようになりました。コロナ禍から引き続き社員の記事投稿も促し、朝礼では社内報に上がっている記事を紹介する時間も設けています。また、部門・役職・入社年度などで閲覧状況のデータを細かく分析しています。

実は社内報の取り組みを進めるうちに、閲覧状況とモチベーションには相関関係があることが分かってきました。つまり、閲覧状況が芳しくない場合、モチベーションが下がっている可能性があるんです。それは、忙しくて社内報を見る余裕がないのかもしれないし、読む心持ちではないのかもしれない。そういったときは、業務量の調整を行うことはもちろん、社内報を担当しているチームにその部署が興味を持つ記事を出してもらう、あるいは「関係者が記事に登場すると読みたくなるだろう」と仮説を立てて関係性が近い社員に記事の投稿を依頼するなど、働きかけを行っています。

ペンシル社内での様子。オフィスの内装にもこだわっているそう。

進化した社内報。一人ひとりが成長し続ける組織を目指して

——社内報を活用する前、エンゲージメントスコアにショックを受けたとのお話がありましたが、そのお気持ちに変化はありますか?

そうですね。社内報が功を奏してから、私の発言がきちんと伝わっていると感じることが増えました。社員を代表して前を歩いているつもりが、実は後ろに誰もついてきていない状況だったところから、今ではありがたいことに「社長、こうしましょう!」といった意見もあがってくるようになり、むしろ社員のみんなに追い越されているのではないかと感じる日々です(笑)。振り返ってみると、就任当初の私は社外にベクトルが向いていたり、創業者からの引継ぎに気負っていたりして、社内に向けて発信している“つもり”になっていたなと。気づいたときには社員との距離がだいぶ開いてしまっていたんですね。

——そうだったのですね。

社内の情報伝達は経営層、マネージャー層、そしてメンバーと段階を経て伝わっていくため、私からメンバーに届くまでには距離があります。そうしたことに気づいてからは、マネージャー層の研修や育成にかなり力を入れました。彼らはプレイヤーとしても業務を抱えていますから、効率的なマネジメントのための支援を行っています。その一つとして、マネージャー層だけが閲覧できる「管理職版社内報」も作りました。そこではマネジメントの方法や、1on1での話すことチェックリスト、キャリア面談のやり方などを掲載しています。

もちろん私もメンバーと話す機会がありますし、そこでは好意的な意見をもらえます。ただ、それが本音かどうかは別問題です。私が社員全員と本音で話せる関係を築くのが理想ですが、メンバーがそれぞれ信頼する直属の上司や近い先輩と関係を築けていれば、私の真意を彼らから伝えることができます。今ではオープンな社内報で一斉に配信しつつ、管理職版社内報でマネージャー層がそれぞれ自分の言葉に置き換えてメンバーに伝えてくれているので、より伝達力が強化されたように思いますね。40.9ptだったエンゲージメントスコアも、直近では67.3ptまで上がりました。このようにエンゲージメントスコアが右肩上がりに伸びているのも、経営層、マネージャー層、そしてメンバーへと順に想いが伝わり、同じ方向を向いてはたらけているからだと考えています。

——倉橋さんは、社員の“はたらくWell-being”を高めるためには何が大切だと思いますか?

私ははたらくうえで、「誰と一緒にはたらくか」がすごく大切だと思っています。職人のように一人で黙々と作業する仕事でない限り、クライアントやお客様、社内のメンバーなど、必ず誰かと一緒に仕事を進めていきますよね。アメリカの有名な起業家、ジム・ローンの言葉に「あなたは、最も多くの時間を過ごしている5人の平均である」というのがあります。会社という組織においては、コミュニケーションのとりやすい仲の良い関係性はもちろんですが、一人ひとりが自立的に成長し、刺激し合うことで新たなストレッチが生まれると考えています。「自分にない発想だから真似してみよう」「この人のもとで頑張ろう」と思えれば、自然と自分自身の視座も高まっていき、それに周りがまた触発され、と好循環が生まれると思いますね。

——そうすると、自然と会社全体の地力も底上げされていくような気がします。

はい。そうした成長の先で、「こういう課題を解決したいからサービス化したい」とか、「この事業に携わりたい」とか、社員自身から世の中に貢献する手がかりを見つけてほしいと思っています。そして、それをどうビジネスに組み込んでいくのかが私の役目です。先ほど、社員のみんなに追い越されていると話しましたが、社員の自主性を重んじ、それを後ろから支えていくのが、これからの目標ですね。

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