「健康は、事業の基盤」。自社の製品や強みを活用した“サラヤらしい”健康経営とは

1952年に創業したサラヤ株式会社は、創業以来「世界の衛生・環境・健康の向上に貢献する」を企業理念に掲げ、植物性洗浄成分を使用した食器用洗剤「ヤシノミ洗剤」や植物由来の甘味料「ラカント」をはじめ、“ひとと地球にやさしい”製品の製造・販売、サービスの展開を行っています。

2019年には「サラヤグループ健康経営宣言」を行い、「従業員やその家族の健康は会社の健全な成長を支える大切な基盤である」との考えから、健康経営をスタート。サラヤ株式会社にとって“Well-being”とは「人として豊かな自己の能力や個性を実現できること」であり、“健康”とは「病気にかかっていても健やかに安心して暮らせること」。従業員を“Well-being”な状態へと導く環境整備を推進しています。

今回は、「健康経営」を進める総務人事本部 総務部 総務企画課の岩原さん、相奈良さんに、サラヤらしい「健康経営」の歩みをうかがいました。

プロフィール:

サラヤ株式会社
写真左:総務人事本部 総務部 総務企画課 課長補佐 相奈良 聖子
写真右:総務人事本部 総務部 総務企画課 係長 岩原 秀平

「健康経営」が言葉になる前から、はたらきやすさを追求してきた

——まずは、サラヤ株式会社について教えてください。

岩原:当社は1952年に、更家 章太によって創業されました。当時の日本は、戦後間もない状況下で衛生環境が芳しくなく、赤痢などの感染症の拡大が頻発していました。その現状を目の当たりにし「誰もが感染病の脅威から逃れる方法はないだろうか」と考えた更家 章太は、日本ではじめて手洗いと同時に殺菌・消毒ができる、ヤシ油を原料とした薬用石けん液と専用の押し上げ・押し出し式容器を開発・販売しました。これが当社の歴史の始まりです。

そして1971年には、現在も主力商品の一つである植物性洗浄成分を使用した食器用洗剤「ヤシノミ洗剤」を開発。これは、石油系合成洗剤の排水による水質汚染が問題視されていたことを受け、更家の生家が太古の自然が息づく熊野の山奥にあったため、豊かな自然の恵みを守っていきたいとの思いから環境を汚さない洗剤の開発に至ったそうです。さらに高度成長期に増加した糖尿病が、病者だけでなく未来の医療制度への負担になると考え、砂糖に代わる甘味料を開発しました。植物由来でカロリーゼロの甘味料「ラカント」です。以来、互いに密接な関係にある「衛生」「環境」「健康」という3つのキーワードを事業の柱とし、70年以上にわたって“ひとと地球”にやさしい製品の開発・販売、サービスを展開しています。

近年では「衛生・環境・健康」に多様な視点から向き合い、「ヤシノミ洗剤」などの植物原料の一つでもあるパーム油の主要原産国であるマレーシア・ボルネオ島での環境保全活動「ボルネオ環境保全プロジェクト」、アフリカ・ウガンダの衛生環境を改善する「100万人の手洗いプロジェクト」など、関連団体とのパートナーシップによる事業推進や、NPOや教育機関と連携した「いのちをつなぐ学校 by SARAYA」といった教育支援プロジェクトも行っています。

相奈良:そうした取り組みが評価され、ありがたいことに2023年には、従業員とその家族、外注先や仕入先、顧客、地域社会、株主という“5つの人を幸せにする「五方良し」”の会社を顕彰する「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の経済産業大臣賞を受賞しました。

——SDGsやサステナブルという言葉が生まれる前から、「衛生・環境・健康」を軸に事業を展開されてきたのですね。そこから、どういったきっかけで「健康経営」を始められたのでしょうか。

岩原:「衛生・環境・健康」に貢献する企業として、まずは従業員やその家族の「衛生・環境・健康」こそが企業成長の基盤であるとの思いがあり、それが「健康経営」という言葉と結びついたことで2019年から本格化しました。

ですが実は、2008年頃から「従業員は会社にとっての財産であり、企業成長に欠かせないもの」といった考えはありました。というのも、当時の当社は女性管理職比率の少なさと、男女ともに平均勤続年数が短いという2つの課題を抱えていたんです。企業成長を見据えたとき、従業員一人ひとりがやりがいを持ち、はたらきやすい環境を作らなければならないと感じていました。しかしながら、当時は今ほど「健康経営」や「人的資本経営」といった言葉が浸透しておらず、「従業員がはたらきやすくなるための環境づくり」として取り組みを行っていきました。

相奈良:初めにダイバーシティ委員会を設立し、今でいうワーク・ライフ・バランスを目指した取り組みをスタートしました。たとえば、産前産後の休暇制度や在宅勤務などの制度の充実、役員層との対話の機会や研修の拡充なども行いましたね。その結果、2009年に「くるみん」の愛称で知られる次世代育成支援企業認定マークを関西拠点のサラヤ株式会社が取得し、続いて2014年に東京サラヤ株式会社でも取得しました。

——御社の取り組みが、外部指標でも評価されたのですね。

岩原:はい。その後、2017年に「健康経営優良法人認定」制度が始まり、企業経営において「健康経営」の重要性が社会的に高まっていきました。そうした潮流も汲みつつ、「健康」は当社の事業領域であると同時に、従業員が長くいきいきとはたらくために欠かせないものということから、「健康経営」への取り組みにシフトしていったんですね。

——15年も前から社内の課題解決に向けたはたらきやすい環境づくりの流れがあり、それが2019年から「健康経営」という言葉に集約されていったのですね。

自社事業を生かした、サラヤらしい「健康経営」を模索

——2019年からはじまった「健康経営」は、まず何からスタートしたのでしょうか?

岩原:まずは、「健康経営」という言葉の社内認知をあげることからはじめました。企業理念に「健康」を掲げていますが、「健康経営」となると改めて従業員一人ひとりに「健康」について意識してもらう必要があります。そのため、社内広報として社内イントラに「健康経営に舵を切る」といったトップメッセージを発信し、我々推進チームから「健康経営とは」「なぜ、健康経営に力を入れていくのか」というお知らせを定期的に発信したんです。……ところが、従業員からの反応は今一つ得られなくてですね。

相奈良:社内イントラには日々たくさんの情報が掲載されますから、テキストだけの情報では目に入りづらく、内容も「健康経営とは」といった固い印象なので、なかなか読んでもらえなかったんです。そこで、一目見て「健康経営」についての情報だと分かることが大切だと思い、社内PR用に「健康経営」をロゴマーク化し、オリジナルのキャラクターを作りました。

「健康経営」の社内PRロゴ(初代)
「健康経営」の社内PRロゴ(二代目)
「健康経営」の社内キャラクター。右から丸山さん、百田さん、細田さん、水島さん。

相奈良:「健康経営」に関する情報では、必ずロゴマークを記事の一番上につけ、キャラクターたちに吹き出しをつけて会話形式で掲載することで、よりラフに「健康経営」を伝えるように工夫しました。おかげで、徐々に「健康経営」という言葉の認知度があがり、リアクションも得られるようになったんです。

——確かに、ロゴマークやキャラクターがあると親しみやすさがあり、「何が書かれているんだろう?」と気になります。社内認知度があがってからは、どういった取り組みをされたのですか。

岩原:「健康経営」が本格化した2019年度時点では、外部の方にコンサルティングいただきながら具体策を模索してきました。しかしそれだけではあまりしっくりこず、「どうしたら“サラヤらしい健康経営”になるのか」を推進チームのみんなでとにかく必死に考えましたね。

話し合うなかで生まれた取り組みの一つが「ロカボチャレンジ」です。これは、1日2食、主食をサラヤや関連会社のロカボ食品、つまり低糖質食品に置き換える取り組みです。植物由来の甘味料「ラカント」をはじめとした低糖質食品を活用し、体重や体脂肪率、骨格筋量を改善しようと、実際に従業員にチャレンジしてもらいました。すると数値はもちろん、「健康意識が高まった」との声があがりました。

——自社製品がある御社ならではの「健康経営」のあり方ですね。製品の価値を感じるきっかけにもなりそうです。

相奈良:他にも、うがい薬「コロロ」の製造・販売や、グループ会社に歯科医院があることから、口腔ケアイベント「うがい啓発キャンペーン」をしました。また、無理のない運動を継続してほしいという思いから、スマホアプリを利用したウォーキングイベント「てくてくウォーク」を実施しています。「てくてくウォーク」は、今年もすでに200名以上の従業員が参加してくれています。

岩原:なかでも特に好評だったのは、卒煙支援イベントでした。もともと世界禁煙デーに合わせて社内で禁煙ポスターを掲示するといった啓発活動を行っていたのですが、あるとき従業員から「卒煙支援をしてほしい」という声があがったんですね。その声をもとに、2022年度から卒煙したい従業員に有志で集まってもらい、禁煙外来通院に補助を出す仕組みを整えました。2022年度は、チャレンジした従業員の33%が卒煙に成功しています。

——自社製品や御社の強みを活かしながら、従業員のみなさんと一緒に進められる参加型の「健康経営」ですね。

岩原:まさに、参加型の「健康経営」こそが、サラヤらしい健康経営の進め方でした。当社は、全社的に人と人の絆やつながりをとても大切にしている会社なんです。だからこそ、推進チームだけで一方的に進めるのではなく、従業員一人ひとりが主体的に参加できるようにしようと取り組んできました。
社内イントラで、社長が毎週トップメッセージを発信しているのですが、その最後には必ず「今週も元気で、愛想よく、笑顔と挨拶を忘れず、頑張ってやって行きましょう。」「心身共に健康に気を付け、笑顔とあいさつを忘れず、お互いに思いやりながらお仕事をしましょう。」といった言葉で、ともにはたらく仲間同士の「絆」を呼び掛けています。
こうした日々の声掛けや文化があるからこそ、健康経営も「一人で頑張るもの」ではなく、「みんなで支え合いながら取り組むもの」だと考えているんです。

従業員とその家族をつなぐ「絆」の取り組み

——「絆」が従業員の“はたらくWell-being”を高めるキーワードのように感じます。

岩原:そうかもしれません。先ほど、平均勤続年数の短さが課題だったとお話しましたが、その当時から永年勤続表彰というのを当社では取り入れているんですね。「健康経営」とは少し文脈が異なりますが、それこそ従業員の“はたらくWell-being”を高めるための取り組みで、会社として長く勤めてくれた従業員に感謝の気持ちを伝えようと、10年勤務した従業員から5年刻みで表彰を行っています。

先日も、高校卒業後に入社し、勤続40年を迎えた従業員の表彰がありました。長年当社を支えてくださった従業員なので盛大にお祝いをしたいと思い、推進チームと所属部署で話し合って、どうしたら喜んでもらえるかを考えました。そこで、寄せ書きとして社長にメッセージをいただけないか相談したところ、「ぜひメッセージを書きたい!」「そういう取り組みなら、どんどん相談して」と言って、すぐに長文のメッセージをくれたんです。当該従業員に寄せ書きを渡したときも、とても喜んでくれました。

相奈良:社長自ら従業員を大切にしてくれていることが伝わり、私自身も「サラヤではたらけてよかったな」と実感しました。
永年勤続表彰では副賞としてサラヤの関連会社の宿泊券や、オリジナルのギフトカタログから好きな副賞を選んでいただいています。家族とともに旅行に出かけたり、副賞を家族みんなで話し合って決めることで家族との会話のきっかけになったり、家族間での感謝にもつながっているそうです。

——表彰された本人はもちろん、家族にまで目を向けてくれているのですね。

岩原:ほんとうにそうで、サラヤの「絆」は従業員だけでなく、その家族まで含まれています。たとえば、従業員のお子様が小学校に入学する際には、「子女入学のお祝い」という取り組みがあります。これは会社からのメッセージと、手洗い石けんや消毒液、うがい薬「コロロ」などの製品一式をプレゼントするものです。加えて、従業員からお子様の入学式の写真を共有してもらい、「〇〇さんのお子さんが小学校に入学しました!」と社内イントラに掲載しています。

相奈良:実は私も娘が小学校に入学したときに写真を社内イントラに掲載しました。数年前に産休・育休を取得していたこともあり、一緒にはたらく同僚たちから「もう小学生になったんだね」「おめでとう!」「可愛いお子さんだね」とたくさん声をかけてもらいました。育休中は、慣れない育児での孤独感や仕事復帰への不安を感じることもありましたが、同僚たちも娘の成長を見守ってお祝いしてくれていることが、とても嬉しかったです。

岩原:相奈良も話しましたが、「子女入学のお祝い」はコミュニケーションの活性化にもつながっています。家族のあいだでは、お父さんやお母さんの仕事や会社について話す機会になり、社内でも同僚のお子さんの成長を知ることができる良いきっかけになっているんです。

——お子様を通して、自身の会社に誇りを持てる瞬間にもなりそうです。

岩原:そうなんです。こうした取り組みが功を奏し、勤続年数も徐々に伸びてきました。そのおかげで、従業員のライフプランの変化に立ち会える機会も多くなり、“はたらくWell-being”を育む環境整備の一助になっていますね。

「衛生・環境・健康」を広げる攻めの一歩

——今後の目標を教えてください。

岩原:当社の「健康経営」は、今まさに転換期を迎えていると感じています。それは、社内で一定の成果が出たことで、今後はこのサラヤの「健康経営」を社外にまで広めていく段階にあるからです。「衛生・環境・健康」を中心とした事業展開をする当社には、それらに関する豊富なノウハウや知見があります。これまでは社内の従業員、そしてその家族のために活用してきましたが、社外にも広めていけるのではないかと発想の転換をしているところです。当社は、各事業本部が健康に関する商品サービスを企画し商品展開しています。今年度は、各事業本部の方々にも協力いただきながら、健康診断と同日に体験イベントを行い、広く従業員自身が健康を見つめ直す機会を設けました。

手探り状態から始めた取り組みが、今では自社製品の活用や関連会社との連携、イベントの運営方法なども形になりつつあります。今後はお取引様にも良い影響を与えられるように、より広い視野で取り組んでいきたいです。

岩原:6年にわたり「健康経営」に向き合ってきた当社だからこそできる、攻めの「健康経営」を今後は展開していきたいと思います。

相奈良:それらが結果として、日本社会全体、そして世界全体に広がっていけば、おのずと企業理念にも結びつくはずです。これからも「衛生・環境・健康」という企業理念を体現しながら、社内外へ貢献の輪を広げていきたいです。

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