統合から多様性へ。明治が目指す“社員の力が発揮できる場づくり”の現在地

明治製菓と明治乳業が経営統合し、2011年に明治ホールディングス傘下の食品事業会社として誕生した株式会社 明治は、「明治ミルクチョコレート」をはじめとする製菓事業、「明治おいしい牛乳」や「明治プロビオヨーグルトR-1」といった乳製品・飲料事業、さらには栄養・健康食品事業など、日本を代表する食品メーカーです。

2018年に、2026年に向かって目指すべき企業グループ像として「明治グループ2026ビジョン」を策定しました。「2026ビジョン」では3つのビジョンを掲げており、そのうちの1つ「経営基盤ビジョン」の実現に向けて、「一人一人の力が発揮できる環境・仕組み・風土づくり」を推し進めています。約1万人に上る多様な社員が在籍する同社は、どのように環境・仕組み・風土づくりを行っているのでしょうか。

プロフィール:

株式会社 明治
写真左:人財開発部 DE&I推進グループ 塩見 真紀
写真右:人財開発部 DE&I推進グループ グループ長 石井 健二

この記事でわかるポイント

  • 株式会社明治は経営統合後、「2026ビジョン」に基づき社員一人ひとりが力を発揮できる職場づくりを進めています
  • 東京五輪を契機にDE&I推進グループを設立し、多様性のある組織づくりに注力しています
  • 活躍の機会を推進するため、女性社員のエンパワーメントを目的とした「かがやき塾」をスタートしました
  • 社内には8つのERG(従業員グループ)があり、育児や介護、LGBTQ+など多様なテーマでの活動が広がっています

東京2020オリンピック・パラリンピック1つの契機に。明治が描く組織づくりのビジョン

——「明治グループ2026ビジョン」で掲げられた「一人一人の力が発揮できる環境・仕組み・風土づくり」について、どういったアクションを行っているのか教えてください。

石井:当社は、変化し続ける社会や毎日の暮らしの中で、常にお客様の気持ちに寄り添い、日々の生活充実に貢献することを使命として企業活動を行っています。

現在は、2018年に策定した「明治グループ2026ビジョン」に基づき、『明治グループ100年で培った強みに、新たな技術や知見を取り入れて、「食と健康」で一歩先を行く価値を創造し、日本、世界で成長し続ける』という企業グループ像の実現に向けて、第1〜第3ステージに分けた中期経営計画を進めているところです。

(引用:https://www.meiji.com/investor/vision/management/

石井:「明治グループ2026ビジョン」の中には、「経営基盤ビジョン」として「一人一人の力が発揮できる環境・仕組み・風土づくり」が掲げられています。これを実現するために、私たちが所属する部署ではさまざまな取組を行いながら、DE&Iの推進に力を入れています。

——そもそもなぜ、「一人一人の力が発揮できる環境・仕組み・風土づくり」が「明治グループ2026ビジョン」の中に盛り込まれたのでしょうか。

石井:当社が、東京2020オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナーだったことがきっかけの1つでした。オリンピック・パラリンピックは、人種や国籍、年齢などを超えて多様な人々が集う大会です。そのパートナーとして、当社内でもオリンピック・パラリンピック・レガシーを根付かせようという機運が高まりました。会社をつくっているのは、「人」です。ビジョンを実現するためには、社員一人ひとりが最大限に力を発揮し、生き生きとはたらきがいを持って取り組める企業風土が必要だと考え、2022年にDE&Iを専任で推進するチームとして、D&I推進グループ(現:DE&I推進グループ)が設立されました。

社員をより一層輝かせる。女性社員がエンパワーメントされる「かがやき塾」

——しかしながら、「DE&I」という言葉は、明治の社員さんたちにとってはあまり聞き馴染みのないワードだったのではないかなと推察します。どのように浸透をはかっていったのでしょうか。

石井:おっしゃる通り、当初は「D&Iってなに?」という困惑の声が社内でも多く聞かれました。そこでまずは、「DIAMOND(ダイヤモンド)プロジェクト」と称して、社内への浸透に向けた取組をスタートさせました。

塩見:「DIAMONDプロジェクト」は、「Diversity、Equity&Inclusion Activities〜Meiji's Open & New Directions〜」の頭文字をとって名づけています。オリンピック・パラリンピックを担当していた部門と人事、サステナビリティ、経営企画からメンバーが集まりプロジェクトを立ち上げ、「社員のみなさんにどうすれば親しみを持ってもらえるか」「どうしたら伝わりやすくなるか」を議論しながら、このプロジェクト名にたどり着きました。また、社員一人ひとりがすでに価値あるものを持っていて、磨けば輝く原石であるとの想いも込めています。現在ではDE&Iの取組は、「DEI+one(デイワン)」として、明治グループ全体のプロジェクトとして展開されています。

多様な人財の融合を会社のイノベーションにつなげていこうと、女性活躍、グローバル人財、LGBTQ+、シニア、チャレンジド(障がい者)の重点5領域を設定しています。

——具体的にはどういった取組があるのでしょうか。

石井:最も注力している取組の1つが、女性活躍の領域です。技術職や研究職が多い当社では社員の男女比にどうしても偏りがあり、事業所によっては女性が1割に満たないということも。そのような環境では、なかなか手を挙げづらかったり、意見しにくかったりして、気がつかないうちに女性社員の活躍の機会を見逃してしまっているのではないかという課題意識がありました。そこで、社内の社員ネットワーキングと自主性の育成を目的として「かがやき塾」をスタートしました。

塩見:「かがやき塾」は、さまざまな部署から手挙げで女性社員が集まり、月に1回のペースで毎回1つのテーマに沿ってディスカッションをしたり、外部の講師をお呼びして講義をしたりしています。昨年度は初の社外交流として、他社で活躍している女性社員の方と話せる場を設けたんですね。
5月から翌年の3月までの1年間で構成され、2024年度の最終回では「この1年でどんな変化があったか」「今後どうしていきたいか」をそれぞれ行動宣言として発表してもらいました。

実は私も、「かがやき塾」の卒業生なんです。育休明けに新たな部署に異動する不安を抱えていたところ、当時主催されていた方に誘われて手を挙げ、「かがやき塾」へ参加しました。それがきっかけでDE&Iに興味を持つようになり、「もっと社員のみなさんのためにはたらきたい」という想いが芽生え、もともとは技術職だったのですがDE&I推進グループへの異動を希望しました。今では卒業生であり、かつファシリテーターとして運営に関わっています。控えめだった方が回を重ねるごとにどんどん積極的に発言できるようになり、最終回ではみんなが自信を持って未来を語っていて……本当に感動しました。

石井:塩見さん、昨年度の最終回でも感極まって涙していたよね。

塩見:そうなんです(笑)。本当に、原石が輝いていく瞬間を目の当たりにした気がして。実際、「かがやき塾」で得た気づきを行動に移した方も多いんですよ。たとえば、「工場見学を企画したい」と社長に提案した社員や、キャリアセミナーに自ら応募した社員もいます。また、これまでは関東圏が中心でしたが、関西から参加した社員が声を上げて、関西支社でも女性活躍の新たな取組がスタートするなど、いろんな場所で小さな芽が出始めています。

——まさに、一人ひとりの自主性が育まれ、活躍の輪が広がっているのですね。

石井:「私もやってみよう」とスイッチが入った社員が増え、「こんなことをやってみました!」という報告も数多く届いています。

——ちなみに、「かがやき塾」1期生はどれくらいいらっしゃったのですか?

塩見:1期生は約40名ほどだったと聞いています。当初は「それほど集まらないのではないか」との懸念もあったそうですが、社員ネットワーキングを広げたいという女性社員の潜在ニーズがあり、こうした場を求めていた社員も多かったのだと思います。トップダウンの施策ももちろん大切ですが、明治は社員発のボトムアップの取組が盛んで、社内ERGも8つあります。

同じ価値観を持った社員同士の輪を。明治の社内ERG活動

——ERGとは、Employee Resource Group(従業員リソースグループ)の略で、企業内で同じ価値観や思いを持つ社員による自主的な活動のことですよね。

塩見:はい。1つ目は、工場ERG「みんなのko-jo- プロジェクト」です。明治は食品メーカーなので、北海道から九州、さらには海外にも工場があります。拠点ごとに労働環境の改善や女性活躍の推進など、それぞれ異なる課題があるんですね。そこで、工場の基幹職社員(地域を限定して働いている社員)自ら事務局となり、工場でのやりがい・はたらきがいの向上に取り組むERGが生まれました。2つ目は、介護ERG「かいごのささえ」。こちらでは、明治版「オレンジカフェ」の開催などを行っています。「オレンジカフェ」とは、一般的には認知症の方やそのご家族、地域住民、介護職員などが集い、気軽に悩み相談や世間話などができるコミュニケーションの場として知られているかと思います。明治版「オレンジカフェ」では、仕事をしながら介護に向き合っている社員の情報交換や交流ができる場として開催しています。

塩見:3つ目が、育児ERG「めいじのいくじ」、4つ目は、チャレンジドERG「パッチワーク」です。チャレンジド当事者(障害を持った社員)と支援者の両者がいきいきとはたらけるよう、意見交流会やセミナーなど実施しています。5つ目は、ERGの中でも最大規模のLGBTQ+アライERG「Marble」です。名古屋の「PRIDE PARADE2025」や「Tokyo Pride2025」にも参加しました。6つ目がグローバルERG「Globridge」、7つ目が50代以上限定のリスキリングERG、8つ目が風土・カルチャー変革ERG「meiji維新」です。

——活動の多様性に加えて、「工場」と「向上」を掛け合わせたり、歴史上の近代改革「明治維新」にちなんだり、ネーミングも印象的ですね。

石井:ありがとうございます。これらのネーミングも「DIAMONDプロジェクト」と同様に、どうしたら親しみを持ってもらい、参加のハードルを下げられるかと社員が自ら考え、名付けています。我々DE&I推進グループはリードしたりサポートしたりしながら、各ERGに社内イントラなどへ発信をしてもらうことを呼びかけていて、活動の輪を広げるのはもちろん、部署間や職種間、さらには事業所間を超えてコミュニケーションの活性化を促しています。少しずつ、企業価値の向上につながった事例も出てきているんです。

塩見:たとえば、育児ERG「めいじのいくじ」では、会社の男性の育休取得を推進したいという目的ともリンクしているため、男性育休経験者の座談会などを実施し、男性の育休取得を促しています。

石井:また、最近は天災が多い状況もあり、育児ERG内で「子ども向け防災リュックづくり」にも挑戦しました。子どもと一緒に買い物をして、賞味期限を確認しながらリュックに詰めていく、そんな防災リュック作りの体験を企画したんです。この取組は社内でも大きな反響があり、今後は、自社工場社員のご家族様向けイベントや、自治体のイベントでも実施が検討されています。

塩見:LGBTQ+アライERG「Marble」でも、あるメンバーの「メーカー社員として、商品を通して私たちの活動を伝えたい」という発言をきっかけに、当社の商品の1つでもある明治ミルクチョコレートCUBIEと掛け合わせたダイバーシティデザイン商品の開発がスタートしました。バレンタインシーズンに、誰もがチョコをきっかけにコミュニケーションを楽しんでほしいという想いを込めて、2024年1月には企画当初から希望していた「マーブルパウチ ダイバーシティパッケージ(全5種)」を発売したんです。

マーブルパウチ ダイバーシティパッケージ ※2025年版

——ERGの自発的で多様な動きが、社員同士のつながりを強めるだけでなく、企業としての価値や発信にも結びついているのですね。

歩みを止めずに未来へ。“はたらくWell-being”に終わりはない

——多種多様な取組が進んでいますが、一方で課題に感じていることはありますか?

石井:そうですね。さまざまな活動が展開されてはいますが、「一人ひとりの力が発揮できる環境・仕組み・風土づくり」という意味では、まだまだ道半ばだと感じています。取組の幅は広がってきましたが、どうしても参加する社員が固定化されてしまう傾向もあるんです。我々の取組に賛同して参加する社員も多いですが、理想は、社員一人ひとりが自然と「やってみたい」と自ら一歩を踏み出してくれること。その空気をどう醸成するかが、これからの課題だと思います。

私は、DE&I推進グループに異動する前は、東南アジアで菓子を製造販売する海外グループ会社へ出向していました。最初は不安でしたし、計画通りにならず悩んだことも多かったですが、振り返るとそれでも思い切って一歩踏み出してみて得られた経験は大きかった。明治の良さは、チャレンジして仮に失敗してもリカバリーのチャンスがあることだと思っていて。だからこそ、会社としてそうした一歩を後押しできるような場づくりや機会の提供を、今後も続けていきたいです。

塩見:2011年に経営統合された当時は「one meiji」を目指していたと聞いています。組織文化の融合が進み、社内の結束力が高まるなど一定の成果は出ましたが、その反面、一人ひとりの個性が薄れてしまい、価値観の同質化が進んでしまったという側面もあったそうです。社長からも「脱同質化」というメッセージがあり、今はまさに次のフェーズに入っていて、これからは企業理念を指針にしながら、社員一人ひとりの個性を尊重し、それを活かしてビジョンの実現につなげていくことが求められていると感じています。

——統合から多様性へ。社員のみなさんの“はたらくWell-being”のために歩みを進めているところなのですね。

石井:2022年にDE&I推進グループが発足してから、今年で4年目。DE&Iをはじめ、社員のはたらきがいを高める取組にはゴールがありませんし、点数化や数値化も難しい領域です。それでも振り返ってみると、数年前と比べて確実に進歩している実感が確かにあります。たとえば、これまで話題にのぼることさえなかったようなテーマが議論されるようになったり、新たな制度や施策が生まれていたり。今の取組は「明治グループ2026ビジョン」のもとで行っていますが、2026年で終わるものではありません。これからも、社員一人ひとりが力を発揮できる環境をつくるために、地道に、丁寧に、一歩ずつ取組を続けていくことが大切だと思っています。

【2025年5月取材時時点】

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