企業の会議にギャルを送り込み、ギャルとともに新たな可能性の「タネ」を見つける新感覚ブレスト「ギャル式ブレスト®︎」。大手鉄道会社や行政機関などでも導入され、最近では生まれた「タネ」を芽吹かせる取り組みも広がっています。
このギャル式ブレスト®︎を開発したのが、合同会社CGOドットコム 総長のバブリーさん。2023年にForbes JAPAN「NEXT100」に選ばれ、2024年にはPERSOLグループが主催する「はたらくWell-being AWARDS2024」を受賞しました。受賞から1年が経ち、どんな変化があったのでしょうか。改めて「はたらく」と向き合い、気がついた“はたらくWell-being”を聞きました。
プロフィール:
バブリー(竹野 理香子)
1996年、山梨県生まれ。高校中退後、大阪でギャルカルチャーに触れた経験から、大学在学中の2020年に「ギャル式ブレスト®︎」事業を立ち上げる。人材系企業に就職後、独立して2022年に合同会社CGOドットコムを設立。Forbes Japan「世界を救う希望100人」、日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社」に選出される。あだ名の「バブリー」は、本名の「竹(バンブー)」と「理香子」に由来。「はたらくWell-being AWARDS 2024」受賞。
目次
受賞をきっかけに、「ギャルマインド」と「Well-being」がリンク
――昨年「はたらくWell-being AWARDS2024」を受賞してから、はたらくことに対する意識や考え方に変化はありましたか?
めちゃめちゃありました!まずは自分自身の変化として、逐一立ち止まって自分の状態を見つめるようになりましたね。私はギャルと企業の間にいる立場なので、どちらの感性・感覚も持っていたいと思っています。ですが、大手企業や行政と相対していると言葉遣いや姿勢を取り繕ってしまうことがあるので、そんなときに「今の私、バイブスOK?」と自問自答するようになりました。
それから会社としても大きな変化があって、受賞いただいたことでギャルマインドとWell-beingが近い領域であることを示せるようになりました。CGOドットコムでは、ギャルマインドを自分軸・直感性・ポジティブ思考の3つで定義しています。ですが抽象的で伝わりづらく、受賞以前は「何の役に立つの?」と聞かれたときに表現しきれない部分がありました。
――「ギャル式ブレスト®︎」を体験すれば分かるけど、そうではない人には伝わりにくい。
そうそう。でも、Well-beingが社会的に浸透し、受賞という形でギャルマインドを評価いただいたことで、ギャルマインドとWell-beingがつながったんです。審査委員を務められていた前野 隆司教授から「ギャルがギャルらしく活躍することは、ウェルビーイング向上にも寄与するでしょう」「ギャルビーイングだね」とコメントをいただき、それがすごく腑に落ちました。
――その他に、昨年の受賞から変化したことはありますか?
日本酒「YUICHU(ゆいちゅ)」を、2025年2月下旬から販売をスタートしたことですね。「YUICHU」は日本酒「南部美人」を製造している岩手県の酒蔵、株式会社南部美人と弊社のコラボで生まれた商品です。
もともと、蔵元の久慈浩介さんが「日本酒の美味しさを、渋谷の若者と一緒に世界へ届けたい」という想いを持っていたことからお声がけをいただきました。実は久慈さんご自身が、多世代に日本酒を広めるために様々な取り組みをしていたのですが、若者世代にはなかなか届きづらい現状があったそうです。そこで私自身が日本酒好きということもあり(笑)、意気投合して、ギャルの文化や訴求力とのコラボレーションが相乗効果を生み出すのではないかとプロジェクトがスタートしました。
――反響はいかがでしたか?
おかげさまで大きな反響をいただきました。渋谷のクラブへ「YUICHU」を卸し、若者たちが日本酒で乾杯する光景を見たときは「おお!」と思いました。そういえば、開発過程でも感慨深い出来事があって。ギャルたちと一緒に、岩手県の酒蔵で酒造りに参加した日の夜、地元の方や職人さん、米農家さんたちと食卓をともにして、お酒を酌み交わしたんですよね。一見すると、異色な光景じゃないですか(笑)。でも、「ああ、私はこのシーンがつくりたかったんだな」って思ったんですよね。
ギャルが媒介になることで、これまで縁のなかった人や文化がつながり、新しい価値が生まれる。ギャル式ブレスト®︎は会議の場でその価値を届けていましたが、今回は日本酒造りの場でそれが叶いました。視野を広くとらえれば、伝統の日本酒文化と令和のギャル文化、岩手という地方と渋谷という都市が結びついたとも言えると思います「遠いものをつなげることで新しい価値を生む」が私たちの根本にあるんですよね。
ギャルと出会って、“ウチら”にたどり着いた
――バブリーさんは、2022年に合同会社CGOドットコムを立ち上げられたんですよね。そもそも、どうしてギャルに…?
ギャルとの出会いは、16歳のときでした。学生時代の私は、生徒会長や部活の部長を務め、勉強にも真剣に取り組む「真面目」なタイプ。両親をはじめ、親戚の多くが教員だったこともあり、高校生になるまでいつかは自分も教員になるものだと思っていました。でも高校に進学して「自分はなんで教員になるんだっけ?」とふと考えたとき、「なんで」の先がなかったんです。明確な答えが見つからなかった。以来だんだんと勉強に身が入らなくなり、結果的に2年生のときに中退しました。
環境を変えるために実家を出て大阪に行き、そこで出会ったのがギャルだったんです。彼女たちの真っすぐでポジティブな価値観に触れる中で、内に籠っていた自分自身を解放できるようになりました。それで「ギャル超いいじゃん!」と感じたんです(笑)。
――ギャルマインドに触れたんですね。
だからギャルは、私の救世主なんです。でも同時に、ギャルは社会的マイノリティであることにも気がつきました。「怖い」「頭悪そう」といった偏見を持たれることも多いし、家庭環境に悩む子や周囲とのギャップに苦しむ子も少なくありません。当時の私は、そうした状況は社会構造の問題だと思ったんですよね。一人ひとりに素晴らしい個性や価値観があるのに、評価する側の多様性がないから彼女たちの魅力が生かされない。そんな社会をどうにかしたいと思った時に、両親の後押しもあって大学への進学を決意しました。ギャル式ブレスト®︎は、大学生のときにベースを作ったんです。
――大学生のときに!大学卒業後は、一度就職されていますよね。
経済的な不安もあったのでまずは就職し、本業と並行してギャル式ブレスト®︎に取り組んでいましたね。大手ビジネスメディアに取り上げられたことをきっかけにお問い合わせが増え、結果的に独立。実は会社は、ギャル式ブレスト®︎を広めるための基盤として立ち上げたんです。プロジェクトベースだと、契約などで壁があったから(笑)。
――設立から3年。心境の変化はありますか?
めっちゃ変わったなと思うのは、「ウチ」から「ウチら」になったこと。立ち上げ当初は完全に私主体でしたが、今はギャルちゃんたちが30人ほどいて、バックオフィスで支えてくれるメンバーもいる。そして「ギャルマインドが良い」と言ってくださるクライアントや協力パートナーも増え、組織としての広がりを実感しています。
当然ながら「WE」にしたプレッシャーもあります。でも、自分一人でできることには限界があって、天井が見えてしまうじゃないですか。私たちが目指しているのは、「~しなければならない」「~である」といった固定概念への挑戦です。そのためには「WE」であるほうが強いし、より大きなインパクトを与えられるんじゃないかなと思っています。
アゲがあれば、サゲもある。ギャルマインドがくれたバランス感覚
――はたらくなかで、バブリーさん自身のギャルマインドが薄れてしまったと感じたことはありますか?
いや~ありますね!ギャルと企業の間にいるので、仕事に夢中になると「今の自分、ギャルマインドを持てていなかった」と思うことがあります。ただ、ギャルちゃんたちから言われた「最高のアゲを知るためには、サゲを受け入れよう」という言葉を指針にしていて。はたらいていると、いつでも自分らしくいられるわけではないし、落ち込むことだってあります。だけど、それはそれで自分の波の1つとして当然のことで、「サゲ」を表現できているということ。だから私は、そういう状態も否定したくないんですよね。
「サゲ」を表現しなくなったら、ポジティブな感情だけになって、強い自分を演じ続けることになります。それこそ「強くあらねば」という固定概念化されてしまう。ポジティブな自分もいれば、ネガティブな自分もいる。感情面でもいろんな自分を行き来しているから、仕事でもビジネスパーソンとギャルの間を行き来できているんだと思いますね。
――そんなふうに気づきをくれるのも、やっぱり“ギャル”の存在なんですね。
先日、友達のギャルちゃんの誕生日パーティーに参加したんですけど、そのときの熱気やエネルギーが本当にすごくて(笑)。彼女たちの言葉遣いや感情表現に触れて、「仕事で視野が狭まっていたかも」と感じましたね。やっぱり私の原点は、「ギャル超いいじゃん!」という気持ちです。
私たちは固定概念に“振動”を与える存在だと思っているので、それが個人になったとしても揺れ動いていいし、変わっていってもいいと思っています。
人間くさく生きていく、はたらいていく。それが“はたらくWell-being”
――「固定概念への挑戦」というお話がありましたが、変革の兆しは感じていますか?
この3年で、確実に変化は生まれてきていると思います。実はギャル式ブレスト®︎は当初、「ギャルマインドを教える」という設計をしていたんです。ですが実際に企業に入ってみると、面白いアイデアを持っている社員の方がたくさんいることに気がつきました。しがらみや規律を取っ払えば、誰もがギャルマインドを発揮できる。
それにギャルたちの「私たち」の輪の作り方って、本当に巧妙なんですよ。ある企業の空き時間で、ギャルと社員の方が隣同士に座っていた時に、ギャルちゃんが「ウチら今、気まずくね?」と話しかけたことがあって。
――“気まずい”という空気を作っているのは、「私たちだよね」という一言!
そうそう!その一言で、「空気を作っているのは私たち」って自然と伝えていた。一人ひとりがその企業の空気を作る一員で、ギャルマインドを持っていても周りの空気や肩書きに飲まれて「自分を表現すること」を控えてしまう。そんな控えめになってしまった自己表現をギャル式ブレスト®︎で引き出すことが私たちの役目だと気づき、今の形があります。嬉しいことにさまざまな企業に「ギャル式ブレスト®︎」を導入いただき、さらに最近では「ギャル式ブレスト®︎」で出たアイデアから実際にプロジェクトとして進行している取り組みもあるんです。
――一過性の取り組みではなく、持続的なプロジェクトに。
はい。一例として昨年12月から、JR貨物さんと廃材を活用したアップサイクル商品開発プロジェクト「KAMOTSU UPCYCLE」をスタートさせました。2024年9月に行ったギャル式ブレスト®︎でのアイデアをもとに2025年秋冬を目安に商品化を進めているところです。
一般的な新規事業はニーズや市場調査、収益性が出発点になることが多いですが、ギャル式ブレスト®︎は「ぽっ」と生まれたアイデアや想いが出発点となり事業が生まれていくんですよね。
――アイデアを起点にして、マーケット調査、そして収益性の順。
CGOドットコムもそうなんです。「ギャル超いいじゃん!」という私の想いから始まったものが、今ビジネスとして走り出している。そうやって人の想いやアイデアから生まれた事業ってちゃんと熱量が籠っているから社会へのインパクトも大きいはず。会社にとっては思いから事業を始めていいという成功体験になりますし、社員にとっては「自分の言ったことが実現するんだ」と会社への愛着を深めることにつながります。
DX化やAIが進化する時代において、これからは「人間くささ」が重要になると思うんですよね。同じサービスやプロダクトが並んだときに、どれだけ思いがこもっているか。それについて語れる人がいるだけで、「こっちのほうがなんか良さそうじゃん」と感じてもらえる気がします。欲望、欲求、醜さも含めて人間くさくあることが、多くの人にとって“はたらくWell-being”につながると思っていますね。
