「どん底があったから、今がある」年齢を重ねたからこそ得られた“自分への信頼感”~はたらくWell-being AWARDS 受賞者の素顔~

シニアインフルエンサーとしてSNSやYouTubeなどで発信を行う、きょうこばぁばさん。8.5万人ものフォロワーがいるInstagramの投稿では、毎日手料理と晩酌の様子をアップしているほか、YouTubeではファストファッションを華麗に着こなす様子を披露し、11万人超の登録者からの注目を集めています。

「お金を掛けなくても、工夫次第で豊かに生活できますよ」と話すきょうこばぁばさん。その姿には幅広い層からも憧れの視線が向けられています。

今回はきょうこばぁばさんがどのようなはたらき方を経て、シニアインフルエンサーになったのか、また年齢を重ねたからこそ感じる“はたらくWell-being”について伺います。

プロフィール:

きょうこばぁば
1956年生まれ、60代のシニアインフルエンサー。Instagramのフォロワー数は8.5万人、YouTubeのチャンネル登録者数は11.3万人。夫と次女の3人家族。長女はモデルの吾紗さん、娘婿はミュージシャンで俳優のハマケンこと浜野謙太さん。日々の簡単レシピや、ファストファッションの紹介などをInstagramとYouTubeで発信し、グレーヘア情報も好評。著書は、『きょうこばぁばの ちょっとの工夫でいつものごはんが「わぁ!ごちそう」になるレシピ』(ワニブックス刊)、『きょうこばぁばの 人生キラメクおしゃれマジック』(主婦と生活社)。

インフルエンサー=「自己表現」。自分の活動で誰かの生活に彩りを与えたい

――グレーヘアがとてもお似合いのきょうこばぁばさん。失礼ですが、ご年齢をお聞きしてもよいでしょうか。

ありがとうございます!私らしいグレーヘアはとってもお気に入りなので、褒めていただけてとても嬉しいです。1956年生まれ、今年でいよいよ60代もラストの69歳になります。

――きょうこばぁばさんはシニアインフルエンサーとして、Instagramのフォロワーは8.5万人、YouTubeのフォロワーは11.3万人(2025年3月現在)と活躍中です。

本当にありがたいことです。自分の「楽しい」という感覚に素直にしたがって活動していて、その結果たくさんの方とつながることができている今の状況に感謝しています。

ただ私は、インフルエンサーを「仕事」として捉えていないんですよ。YouTubeの撮影にしてもInstagramの発信にしても、「はたらいている」という実感はあまりなくて。あくまで自分の「楽しさ」を追求して、その中でできることをひとつずつ積み重ねていたら、ここにたどり着いていた……という感覚が近いかな。「はたらくぞ!」と思って取り組むというよりも、毎日、「今日はこんなことができて楽しかったな」「充実していたな」と思える毎日を過ごしてきた先に、今の活動があるという感じです。

――自己表現の1つというか。

そうそう!「仕事」というのは、頑張ってはたらいて得たお金で生活することだと私は思っています。もちろん今の活動でお金をいただくことはありますが、私の中では「インフルエンサーとして稼ごう!」「お金を得よう!」とはあまり強く思っていなくて。自分の好きなもの、お気に入りのもの、楽しかったことを、私目線でお裾分けしています。

実は娘からもよく「お母さん、インフルエンサーってなに?」と聞かれるんですけど、「なんだろうね」と一緒に頭を抱えていて(笑)。私の活動を端的に表せる言葉としてインフルエンサーを使っているだけで、もっと良い言葉がないかなあと思っているんです。

――きょうこばぁばさんにとって「インフルエンサー」は、どういった活動だと考えているのでしょうか?

そうですね、広い意味で「人に良い影響を与えられること」でしょうか。Instagramも、YouTubeも、最近始めたブログでも、見たり読んだりした方が、「きょうこさんのお料理美味しそうだから真似してみました」とか「こんなに可愛いコーディネート、私も着てみたい!」とか言ってくださると私も嬉しいんですよ。そういう、自己表現をした先で誰かの行動の後押しになったり、生活に彩りを与えられたりすることを、「インフルエンサー」と言うんだろうなと思っています。そういえば、「グランフルエンサー」って知っていますか?

――グランフルエンサー……?初めて聞きました。

SNSで発信を行うシニアたちを、海外では「グランフルエンサー」と言うそうなんです!私、気になったことや分からないことがるとすぐに調べる癖があって、「インフルエンサー」以外で私の活動を伝えられる言葉がないかなと思っていたら、「インフルエンサー」と「グランドファザー・グランドマザー」を掛け合わせて「グランフルエンサー」という造語があると知って。「これ、私のことだ!」と思ったんです(笑)。

30代スタッフとの出会いをきっかけにYouTubeを開始

――スマホやSNSなどに抵抗感のあるシニアもいらっしゃいますが、きょうこばぁばさんはそう言ったお気持ちはなかったのでしょうか?

なかったですね。40代の頃から好きなアーティストの推し活をするためにファンサイトを作るなど、インターネットを使って発信していましたから。日記を書いたり、ファンの方々とつながってお友達になったり、ライブ会場で実際に会ったり、そうしたインターネットならではの楽しさを昔から感じていたんです。

その流れでmixiやアメーバブログなども利用するようになり、2013年ごろに自然とInstagramに移行しました。趣味の一環として、料理の投稿を続けていたところ、ありがたいことに4〜5年でフォロワーが3万人を超えて。

――趣味で楽しんでいたら、いつのまにか自然と活動が広がった。

そうなんです。当時はまだ、“インフルエンサー”という言葉もない時代。今はYouTubeの発信も行っているんですが、これもInstagramでの発信がきっかけではじまったんですよ。

――どんなきっかけがあったのですか?

私のInstagramを見た30代の男性ディレクターの森田から突然「一緒にシニア向けYouTubeをやってくれませんか?」とDMをもらったんです。当時は「こんなおばあさんに会いたいだなんて、なんだか怪しい……」と思ってしまい、何度か断っていました。しかしそれでも何度も連絡があり、あまりの熱意に負けて会ってみることにしました。すると、私と同じく「シニア層に向けて情報を発信したい」という熱い思いがあることを知ったのです。

――熱い思い……?

実は私は、15年ほど介護士としてはたらいていたのですが、森田も理学療法士として医療・介護現場ではたらいた経験があったんです。その経験から、私たち2人は共通して「高齢者が生き生きと暮らす世の中にしたい」という思いを持っていました。

介護現場にいるとシニアの方から「私が遊びに行けるのはデイサービスくらい。あとは家でテレビを見て過ごすくらいしかない」という話を聞くんです。楽しいことや場所は世の中にたくさんあるはずなのに、そうした情報は若者にしか届けられていない。高齢者が人生を楽しむための情報発信が世の中にあまり見当たらないのです。「そんな環境だからこそ、シニア世代の楽しい情報発信をきょうこばぁばさんからしてほしい」と森田に誘ってもらい、YouTubeでの情報発信を始めました。

――なるほど、“きょうこばぁばさんだからこそできる情報発信”を始めたと。

はい。今は私が自宅で一人で撮影を行って、編集は全面的に森田に任せながら、二人三脚でYouTubeのコンテンツ作りに励んでいます。

過去の経験が、今の自分に自信を与えてくれる

――きょうこばぁばさんが活躍される姿は、年下世代の憧れでもあるように感じます。

今となっては「きょうこばぁばさんみたいに楽しく暮らしたい!」なんて言ってもらえることもありますが、実は生活にとても苦労した時代もあって……。過去、夫の事業が立ち行かなくなり、娘2人を抱えた4人家族で無一文になってしまった経験があります。一時は、明日のご飯に困るほど困窮したことも。今思い返すと人生のどん底の時期ですよね。

それまで外ではたらいた経験はありませんでしたが、背に腹は代えられません。「私が頑張る番だわ!」と一念発起し、近所のスーパーに就職しました。ところが、全てが初めてのことばかりで、何をやっても失敗続き。毎日スタッフに迷惑をかけていました。「明日は頑張ろう」と思うのに、次の日も同じミスをして挽回できず、自分が嫌になった時期もありましたね。

――きょうこばぁばさんにも、自分が嫌になったご経験があるのですね。

そうですね。あの時は一日一日を生きるのに必死でしたし、とても辛かったです。

ちょうどそのころ、たまたまスーパーの同僚から介護士という仕事を教えてもらい、手に職をつけるつもりで有料介護施設に転職することにしました。ハードワークではありましたが、利用者さんとの交流などにやりがいを感じていて、結果的に介護福祉士の資格を取得し、同じ職場で15年も継続してはたらくことができました。

今の活動の大きなきっかけになったのも介護職ですが、正直なところ、当時は「生きていくための仕事」という認識が強かったように思います。ただ、利用者さんから「ありがとう」「あなたのおかげよ」といった嬉しい言葉をいただくこともあって、それを糧に仕事を頑張っていました。今振り返ると、とても尊い仕事だったなと感じます。もし機会やタイミングがあれば、また介護職に携わるのもいいかもしれないですよね。肉体的には厳しい部分もあるので、交流するようなボランティアなどになるかもしれないですけれどね。

――時を重ねてお仕事の内容が変わるにしたがって、きょうこばぁばさん自身の「仕事観」にも変化が起きたのですね。

そうですね。苦しい時代を支えてくれた介護職には、すごく誇りを持っています。人生のどん底を味わいましたが、今があるのは、あの時の経験のおかげ。人生を“引きの構図”で見た時に、「あの経験があってよかった」と今は素直に思えますね。

新しいことにチャレンジできる、今の自分が好き。

――きょうこばぁばさんは、今のご自分はお好きですか?

好きです!嫌いになっちゃったら、何もできないし、意欲もわかなくなっちゃうじゃないですか(笑)。
くじけずに前を向いて進んできた経験が、今の私の自信になっています。「あんなに大変な時だって、私は乗り越えた!だからこれから何があっても、ちょっとやそっとのことではへこたれない!」と思えるんです。過去の自分の努力が、今の自分の自信を作ってくれている。年齢を重ねたからこそ、自分を認めて、褒めてあげられるようになったのかもしれないですね。

――人に良い影響を与えるインフルエンサーのやりがいを教えてください。

挑戦しがいがあるところですかね。SNSはコントロールが難しくて、私と森田が一生懸命考えた企画でも、なかなか視聴者さんに届かないこともあります。だからこそメディアを研究して、試行錯誤を重ねる工程が本当に楽しいんです!

心を込めた発信を通じて、フォロワーさんから「真似してみました」「私もきょうこばぁばさんと同じお店に行ってみますね!」と言ってもらえることに、心からの喜びを感じます。特に、私と同じ世代の方からの反応には勇気と活力をもらえますね。「シニアの方の生活を楽しくしたい」という願いに少し近づいているのかなと思うと、さらにワクワクして自然と力が湧いてくるような気分になります。

――多くのファンは、きょうこばぁばさんご自身が楽しそうにされている姿に心惹かれていると感じます。

そうなら嬉しいですね!情報の発信をすることは私自身の生活にもハリを与えてくれているんですよ。身なりに気を付けてファッションを楽しんだり、仕事で知り合う若者世代と話をしてトレンドを掴んだりと、毎日刺激をもらっている実感があります。シニア世代になると、つい慣れ親しんだ行動を繰り返してしまう人が多いもの。私もそうですが、苦手なものはなるべく避けて通りたいと思ってしまいます。でも意外に、若い頃苦手だったものも今こっそりやってみると(笑)、あっさりできて、長生きすると今までとは違った自分の発見にもなるんだ!と、最近思うようになりました。大きな挑戦をするのではなく、小さな挑戦をちょっとだけしてみる。それを繰り返しているうちに自然と自分を少しずつですが、アップデートできるように思います。

――今後の目標を教えてください。

日本は今後も高齢化が続いていくと言われています。今は「人生100年時代」なんて言われていますが、ややもすると「人生120年時代」がやってきてもおかしくないんじゃないかとすら思うんですよね。
最近はコロナの影響もあり、シニア層のSNS参加が増えてきました。しかし、シニア層に向けた情報発信はまだまだ足りないのが実情です。私は実際に自分が楽しんでいる、お金を掛けなくとも生活を豊かにするヒントを発信することで、シニア層の方の生活をより楽しくしていきたいです。今はファストファッションもありますし、手ごろなスーパーだって身近にある。時間がたっぷりあるシニア世代には、工夫さえすれば人生をより楽しくできる可能性があると思うんです。シニア世代のちょっとした挑戦や楽しい生活に貢献出来たら嬉しいですね。

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