“はたらく幸せ”を企業とともに。商工中金の変革と展望~はたらくWell-being AWARDS 受賞企業の素顔~

株式会社商工組合中央金庫(略称/商工中金)は、中小企業専門の金融機関です。「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」とのパーパスを掲げ、日本の全企業数の約99.7%を占める中小企業に対し、企業のライフステージにマッチしたオーダーメイド型のソリューションや、豊富なノウハウと多様な情報を活かした新規事業の立案・事業再生などをサポートしています。

そんな商工中金は2018年から社内改革を進め、2020年に中小企業の従業員の幸福度を可視化し、幸せ経営を実現する「幸せデザインサーベイ」というサービスをリリースしました。どのように社内改革を進め、なぜ「幸せデザインサーベイ」が生まれたのでしょうか。

今回、商工中金からスピンオフし、「幸せデザインサーベイ」を提供している株式会社商工中金ヒューマンデザインで代表取締役を務める松下 泰之さん、マネージャーの岡﨑 正和さん、アソシエイトの德永 郁未さん、株式会社商工組合中央金庫のDE&I推進部次長(取材当時)の滝柳 雄大さんの4名にお話を伺いました。

写真左から、德永 郁未さん、岡﨑 正和さん、松下 泰之さん、滝柳 雄大さん

プロフィール:

株式会社商工組合中央金庫
1936年設立の「中小企業の中小企業による中小企業のための金融機関」。設立して85年超にわたり、一貫して中小企業を支援してきた。2018年に社内で開催したビジネスコンテストにて、従業員の幸福度を可視化する「幸せデザインサーベイ」のアイデアが誕生し2020年に事業化。以降、同サーベイや従業員参加型のワークショップ等を通じ、中小企業ではたらく人々のWell-being向上をサポート。2024年11月、人財サービス子会社「株式会社商工中金ヒューマンデザイン」を設立。今後も、中小企業、また中小企業ではたらく人々に対して、「気づき」を与え「幸せ」を考えてもらうきっかけを提供する。「はたらくWell-being AWARDS 2025」FR(Future Generations Relations)部門を受賞。

「幸福度」を数値化する。企業の未来を変える「幸せデザインサーベイ」

――御社は、2020年に中小企業の従業員幸福度を可視化するサービス「幸せデザインサーベイ」をリリースされました。どういったサービスなのか教えてください。

德永さん:「幸せデザインサーベイ」は、従業員の幸福度調査サービスです。「幸せ」に関する約100項目のアンケートを行い、従業員、ひいては会社全体の幸せを可視化します。アンケート結果は当社独自の分析ツールを活用し、組織に関する「コミュニティ・コミュニケーション」「チームパフォーマンス」「マネジメント」の3要素と、個人に関する「カラダ」「マインド(幸福度)」の2要素の計5つで点数化し、会社の幸せを示したレーダーチャートをレポートにまとめます。

德永さん:レポート調査に留まらず、希望があればレポートをもとに「どうしたら会社が幸せになるのか」を一緒に考え、ワークショップやアフターフォローまで一気通貫して行い、幸せ経営の実現を支援しています。

――実際に調査をされた企業からは、どのような声があるのでしょうか?

德永さん:現状、約1300社がサービスを利用しています。例えば、ある企業では「企業のブランディングの一環としてサーベイ実施をホームページに掲載したところ、採用力が向上した」といった声や、別の企業では「結果を見た従業員からの組織改善に向けた提案も増え、一緒に会社の未来を考えてくれていることが分かり頼もしく思った」といった明るい声をいただいています。また、中小企業の中には、これまで従業員アンケートを実施したことがない企業も多く、漠然とした状況を数値として可視化できることに価値を感じてくださる方もいらっしゃいます。

株式会社商工中金ヒューマンデザイン アソシエイト・德永 郁未さん

――そう思うと、中には「思ったより結果が奮わなかった」という企業様もいらっしゃることも……?

德永さん:そうですね。想像した結果よりも点数が低く、落ち込まれる経営者さんも0ではありません。ただ、中小企業の中には先代から事業を継承し、自分の代で前向きに組織改革を進めていく方も多く、そうした方々にとっては会社の現状を知るために実施する場合もあります。調査結果をもとに、組織風土をより良い方向に導くための具体的なアクションに落とし込むことができるんです。

新しい商工中金のカルチャーを。社員発のアイデアで生まれ、事業化

――そもそも、どうして「幸せデザインサーベイ」というサービスが生まれたのですか?

松下さん:「幸せデザインサーベイ」は、「10年後の商工中金のビジネス」をボトムアップで考えることを目的とした、商工中金社員によるビジネスコンテストのアイデアをもとに事業化されました。

株式会社商工中金ヒューマンデザイン 代表取締役・松下 泰之さん

滝柳さん:このコンテストが開催された背景には、2016年に危機対応業務における不正行為が発覚したことがありました。上意下達、いわゆるトップダウン型の組織、ボトムアップで風通し良く等、組織風土を変えていく必要に迫られていました。

松下さん:役職関係なくボトムアップで意見を言える環境を目指し、旧態依然とした組織に風穴をあける改革の一環として、手挙げ制のビジネスコンテストを開催しました。いくつかのアイデアが出たなかで、「従業員の幸せを考える」というものがあり、それをもとにつくられたのが「幸せデザインサーベイ」です。コンテストは5〜6人の職員がチームを組み、約7チームほどがプレゼンしましたが、確か「幸せデザインサーベイ」のベースとなるアイデアを出したのは岡﨑さんのチームだったよね。

岡﨑さん:はい。初回のビジネスコンテストに参加し、役員賞をいただきました。実は大賞を獲得したのは別のアイデアだったのですが、事業化に向けた3アイデアの1つとして選ばれ、結果的に「幸せデザインサーベイ」として走り出したのは感慨深かったですね。

株式会社商工中金ヒューマンデザイン マネージャー・岡﨑 正和さん

――そう思うと、「幸せデザインサーベイ」は御社の組織改革のシンボルの1つでもあるのですね。

松下さん:ただ、サービスをリリースした直後にコロナ禍に突入し、事業化して間もない頃はマンパワーも限られていたため、事業の拡大は地道に行ってきましたね。2022年に德永さん、2023年に岡﨑さんが参画してくれたことで推進力も強まり、導入企業数も増え、2024年にスピンアウトする形で子会社としてスタートしました。

――ちなみに、松下さんが代表取締役になられたのは、何かきっかけがあるのでしょうか?

松下さん:辞令が出た時は驚きました。直近は前橋支店ではたらいておりましたが、それ以前は組織風土の改善計画の立案や、組織全体のガバナンス改革を役員と一緒に遂行していました。もしかしたら、そうした改革の中心にいたことが影響しているのかもしれないですね。

今は代表取締役として、自社の社員が幸せだと感じられる組織作りを心がけています。「幸せデザインサーベイ」を展開する会社として自社を省みたとき、何よりもまずは当社自身が幸せな会社であることが大前提だと考えています。さらに、私自身は“はたらくWell-being”を、「周りが笑顔でいること」と捉えています。自分が楽しむことも大切ですが、周りが楽しんではたらいていることが、私にとっての幸せなんですね。

自ら手を挙げ、自律的に歩む人材を。商工中金の組織改革

――他に、全社で推進してきた取り組みはありますか?

滝柳さん:商工中金全体としては、まずボトムアップでパーパス・ミッションの策定に取り組みました。各支店や部署ごとに「商工中金のパーパスとは何か」を話し合い、出た意見やアイデアを集約し、2022年3月に「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」というパーパスが生まれました。

次に、そのパーパスを自分事として捉えてもらうフェーズとして、全社員にはたらくうえでの羅針盤となる「マイパーパス」を策定するプロジェクトをスタートしました。これは、商工中金が掲げるパーパスと、一人ひとりの人生における価値観や成し遂げたいことの重なりを探し、それをマイパーパスとして言語化していく取り組みです。2022年からは毎年継続してパーパスワークショップを実施しており、入社して間もない社員はマイパーパスの策定を、すでに策定している社員は見直しを行う機会として定着していますね。

株式会社商工組合中央金庫のDE&I推進部次長(取材当時)の滝柳 雄大さん

滝柳さん:また、特徴的な施策としては、2023年4月から研修体系を大きく刷新し、企業内大学「人づくりカレッジ」を開校しました。それまでの研修は人事から声が掛かるアサイン型が中心だったのですが、「人づくりカレッジ」では手挙げ型に切り替えました。講座はいわゆる銀行業務だけでなく、ヒューマンスキルやキャリアオーナーシップを高めるような内容で構成しているのが特徴です。社員は上司との1on1などを通じて、自らが成長したい分野、目指したいキャリアを認識し、必要となるスキルを身に着けるため受講したい講座に自ら応募するスタイルです。

――旧態依然の組織体系から大きく方向転換されてきたと思いますが、現場とのギャップや葛藤などはありませんでしたか?

松下さん:当時、社員がすぐに切り替えられたかというと、そうではなかったと思います。たとえば、年に2回行われる全支店の支店長を集めた営業店長会議を「双方向に意見を交わす場にしよう」といっても、それまではトップダウンで経営方針を伝える場だったため、なかなか声があがりませんでした。他にも、ノルマ主義の脱却を図り、業績評価を撤廃した際には「何を目指し、どう動けばいいのか」という戸惑いの声も上がりました。

滝柳さん:これまで何十年と培ってきた組織風土を変えるのは、並大抵のことではありません。ですが、1つポイントになったのは、2018年に社長が交代し、トップのコミットメントが強力だったことが挙げられます。社員に対して、社長自ら「本気で組織を変えていくんだ」と根気強く伝えていきました。

ビジネスコンテストや「人づくりカレッジ」のような手挙げ制の施策も追い風となり、一人ひとりが自ら動き「自分に必要なことは自分で掴み取ってもいいんだ」と感じられるようになっていったと思います。

2022年からは毎年、社員のエンゲージメント調査を行っているのですが、2024年度の結果では、商工中金グループ全体の職場推奨度「eNPS(Employee Net Promoter Score)」が-45.7でした。数値がマイナスなので分かりづらいかもしれませんが、金融・保険業界の平均は-62.9です。比較すると、業界平均を大きく上回る水準となっています。

岡﨑さん:私は商工中金に勤続して約17年になりますが、2018年からの組織改革の成果を肌で感じています。それまでは目の前の成果・成績を追い求めていましたが、今では長期的な視点でお客様と向き合い、すぐに結果が出なくても“種まき”として評価される風土が根付いてきました。だからこそ自然と「どうするのがお客様のためになるのか」「足りないスキルをどう補っていくのか」を自律的に考えられるようになっていますね。“はたらくWell-being”を高めるにはどうしたら良いのか、ということを会社としても個人としても考える風土が構築されているように思います。

中小企業から日本全体へ。“はたらくWell-being”を広げる挑戦

――最後にこれからの展望をお伺いさせてください。まず、「幸せデザインサーベイ」はどのような展望を見据えていますか?

松下さん:今後は、さらにサービスを広げていくことが目標です。先ほど德永さんから話があったように、これまで約1300社に「幸せデザインサーベイ」を受けていただきました。「幸せデザインサーベイ」は基本的に商工中金とお取引のある企業様へ提供していますが、対象となる顧客は数万社にのぼります。日本企業の約9割を占める中小企業に対して幸せ経営や、“はたらくWell-being”が広がれば、結果的に日本社会全体にも良い影響をもたらすと考えています。はたらく人がより良くはたらける未来に貢献していきたいですね。

――次に、商工中金の組織全体の展望を教えてください。

滝柳さん:私なりに“はたらくWell-being”を解釈すると、「自分の想いを仕事の中でどう実現していくか」だと考えています。社員一人ひとりが自身のマイパーパスを持ちながら仕事に取り組み、その先に「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」というパーパスの実現があるはずです。

そのために今後は、DE&Iの推進をさらに加速し、多様な人材が活躍できる組織づくりに力をいれていきたいですね。その中で女性活躍という観点では、近い将来のリーダーを目指すための学びや自己変革に取り組む、「チャレンジカレッジ」という研修を導入し、バックオフィス業務を担当する社員が法人営業の分野にキャリアを広げるための機会を提供する「営窓キャリアプログラム」なども整備しています。こうした我々のDE&Iの取り組みを評価いただき、2025年3月には特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワークが主催する「2025 J-Winダイバーシティ・アワード」において、「ベーシック部門準大賞」を受賞しました。

松下さん:今、商工中金はこれまでの組織風土から脱し、まさに過渡期の最中にあると思います。「幸せデザインサーベイ」を提供する企業として、まずは私たち自身が“はたらくWell-being”を体現し、その価値を中小企業のみなさまへ広めていきます。

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