NECソリューションイノベータ株式会社は、NECグループの顧客業務を分析し、課題解決に向けたシステムの企画・構築・運用などを請け負うシステムインテグレーター企業です。
国内トップクラスの1万人を超えるエンジニアを抱え、従業員の成長が事業成長に直結する同社。2022年4月に社長に石井力氏が就任以降、Well-being経営の推進を一挙に進めてきた中で、その中核として活動されてきた上浜さんと山口さんに、Well-being経営に関する定義と、推進に向けた具体的な施策を伺いました(※以下敬称略)。
プロフィール:
NECソリューションイノベータ株式会社
執行役員 兼 CHRO
上浜 敏基
NECソリューションイノベータ(株)の人事・人材育成を統括。アパレル企業から同社に入社。COE、HRBPと様々な立場で人事全般を幅広く経験。2018年より2年間、経済産業省産業人材政策室に出向リスキル、キャリア教育、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)等に従事復帰後、2024年4月より現職。
パブリック事業ライン エグゼクティブプロデューサー
デジタルヘルスケア事業推進室 エグゼクティブエキスパート
山口 美峰子
ヘルスケア・健康経営事業を中心に自社事業のWX(ウェルビーイングトランスフォーメーション)と、従業員Well-beingを重視した人的資本経営の活動を通した経営へのウェルビーイング実装に取り組む。Well-being Initiativeなど外部団体でも活動。
この記事でわかるポイント
- NECソリューションイノベータは1万人超のエンジニアを抱えるSIerで、人材成長を重視する企業です
- 2022年の社長交代を契機に、Well-being経営を本格始動しました
- 「健康・成長・働きがい」の3本柱のもと、「My Way」による個人の価値観の可視化と連携を進めています
- 社員の成長支援としてキャリアオーナーシッププランを導入し、実施率は8割超を達成しています
- 社員の共感を得るため、情報発信や中間層の巻き込みも重視しています
目次
Well-being経営を推進するNECソリューションイノベータ流「働きがい」の定義
――Well-being経営に取り組むきっかけ、その源となる「人的資本経営」に対するお考えを教えてください。
上浜:当社は約1万3,000人の社員がおり、その多くがIT技術者としてNECグループのプロジェクトに従事しています。技術者の成長が企業の成長と直結するIT業界特有の傾向かもしれませんが、私が入社した約20年前にはすでに「人への投資」といった考え方は根付いていて、具体的に「売上の何%を教育に充てる」という仕組みもありました。なので、「人的資本経営」という言葉が世間一般に広がり当社もそちらへ舵を切る過程でも大きな反発はなく、まずは今までの施策を整理することからはじまりました。改めて設定した方向性は2つ、1つは経営戦略と人材戦略とをリンクさせること、もう1つがWell-beingの探究ですね。
――何が推進のきっかけになったのでしょうか?
上浜:一番は、社長が変わったことですね。これまでも文化の土壌としてはあった考え方を、「Value creation cycle(バリュークリエーションサイクル)」と名付けて改めて社員に宣言し、浸透させていきました。事業で生み出した利益を源泉に、人への投資を強化する。それによって個人の価値を高め、一人ひとりの価値が結集することで、社会やお客様に提供する価値が高まっていく。この利益の循環を、2023年の1月に経営メッセージとして大きく打ち出しました。
山口:その後、人への投資について「健康・成長・働きがい」の3つの柱が掲げられ、全社横断のタスクフォースが立ち上がったのが、2024年の1月。「健康」は総務分野の事業部長、「成長」はHR分野の事業部長とアサインされた中で、なぜかヘルスケアを専門としていた私が「働きがい」のリーダーにアサインされました。
――「働きがい」に関して、山口さんは何か知見を持っていたのですか?
上浜:特に専門というわけでもないですよね。
山口:アサインの理由は、社長のみぞ知る感じです(笑)。
――その3つの中でも特に「働きがい」は指標が難しいと思うのですが、どのように定義したのですか?
山口:まず「働きがい」の一般的な定義から調べました。ある考え方では「働きやすさ」と「やりがい」から構成されると定義されていました。その上で当社のそれぞれの制度がどうなっているかを見ていくと、「働きやすさ」に関しては働き方改革によってすでに制度を整えられていて、結構充実していることがわかりました。一方で、「やりがい」は発展途上。定義も含めて、我々働きがいのチームとしてはここに注目をしようという方針になりました。
やりがいって、結局はモチベーションが大切なんですよね。はたらくことを楽しめているか、自己実現できているのか。各自の「はたらく」ことへの価値観があって、それらはこの会社の在り方と合っているのかということにかなり影響される話です。とすると、即ち「社員が幸せなのか?」という話につながっていくよね、という考え方に至りました。それならば、まずは社員のWell-beingを真ん中に置いて取り組もう、というのが3つの柱のリーダの間での総意です。
我々がゴールとして設定しているのは、「会社としての目標と個人の幸せが一緒に実現していける関係性を築く」ことですね。
――その関係性を築いていくために、具体的にはどのような取り組みをしているのですか?
まずは社員一人ひとりのWell-beingの実現に向けて、人生や生活、仕事の中で何を大切にしているのか、を考えてもらうことから着手しました。NECグループが共通で持つ価値観であり行動の原点である「NEC Way」がありますが、まずは個人のパーパスを表す「My Way」を考えてもらうこと。そしてそれをベースにキャリアプランを作ることまでがセットになっています。NEC WayとMy Wayの合うところがあれば、幸せな状態に近づくと仮定しました。
「実施率80%越え」個人の価値観と企業の成長をリンクさせる“連携”技
――経営戦略と人材戦略をリンクさせるというのは、そういうことなのですね。ちなみに、お2人の「My Way」はどういったものなのでしょう?
山口:私、実はなかなか作れなくて困ったんです。なので、一度原点に立ち返ろうと研究開発の部長をしていたときのスタートアップのプレゼン資料を見直してみて。すると、2018年当時「誰もが“健康”に自分らしくいられる社会の実現」と書いてありました。私はもともとバイオライフサイエンスが専門なので、「健康」というキーワードには馴染みがあります。一般的に、健康というのは病気がなく、体の調子が良いと認識している人が多いように思うのですが、その研究の中で「病気がない、ということだけが大切ではないのでは?『自分らしく生きられる』ということが大事なのでは?」という疑問を持ち始めた頃だったのだと思います。この想いは今もブレていないと感じて、My Wayに掲げるようになりました。
上浜:個人の価値観を言語化するって、やってみると難しいんですよね。僕も最初は格好つけて「XXでナンバーワンの会社にする!」みたいなことを思いついてしまって。たしかに本音でもあるのだけど、自分個人の価値観からはずれちゃうというか。
山口:はたらくことへの価値観=仕事の目標? と、混在してしまいがちですよね。
上浜:そうなんですよね。「My Way」に取り組む中で労働組合とも話し合ったことがあって、皆さん口を揃えて「信念やパーパスっていう崇高なものは考えにくい」と言うんですよ。それならば、表現を「あなたの考え方や大切にしているもの」に読み換えて、ライトな感じで考えていこう!という働きかけは大事だった気がします。ちなみに僕は恥ずかしながら非常にパーソナルな話に辿りつきまして、「自分と自分の家族が幸せであること」なんです。きちんとはたらけてお給料がいただけている限りは、何があっても会社の事業戦略と繋がっていますね(笑)。
――崇高になってしまっている概念を、従業員が理解しやすく噛み砕く、という姿勢も大事なのですね。先ほど「My Way」がキャリアプランにもつながっているとのお話でしたが、その2つをつなげたのはなぜですか?
山口:「My Way」で自分のパーパスの言語化を進め、同時に「どういった時に仕事へのやりがいを感じるか」の調査を進めていったのですが、「成長」と答える人が非常に多かったんです。それならば社員の成長を会社がサポートしていければ、本当の意味での「やりがい」を生み出していけるのではないか?と仮説を立てました。
この時に活用したのが「キャリアオーナーシッププラン」という施策です。社員一人ひとりが今後のキャリアプランとそれに向けた学びを自分で設計する施策なのですが、これと「My Way」を繋げました。さらに社内人材公募の仕組みも発展し、ますます「はたらく」ことを自分でも選べるような仕組みになっています。
上浜:これは山口さんの受け売りですが、Well-beingであるためには、選択肢と自己決定であると言うじゃないですか。なので、会社としてはいかに社員に対してマッチした選択肢を増やしていくかが課題になってきましたね。
山口:具体的な流れとしては、まず「My Way」で自分の大切にしていること、成し遂げたいことを言語化して、それを上司との1on1で共有してくださいとお伝えしています。この取り組みは好調で、現時点で83%以上(1万人以上)の社員が実施してくれています。その後、成長WGのキャリアオーナーシッププラン策定の施策につなげています。
――83%以上はかなり高い実施率ですね!
この施策を広めるにあたって、様々な社員「My Way」を語る動画も作ってもらいました。常務以上は全員作り、社員も20名ほど参加してもらったんですね。それを社員だけが見られるWebサイトに公開したところ、閲覧数はユニークで1万を超える結果になりました。当社は社員数が1万3000人なので、かなり多くの社員が見てくれているという結果です。そのサイトに施策の進め方などの参考情報、フレームも置いてあるのでその影響もあるかとは思うのですが、きちんと社内の情報インフラを整える、ということは重要だなと感じました。
「その取り組みを社員は喜んでいるのか?」Well-being経営推進の鍵となる情報発信とは
上浜:Well-beingに関する取り組みを進めていて一番のキーとなるのは、実は「社員に情報が伝わらない」というところなんです。我々としてはたくさんの施策を考えていますし、会社として制度改革には手を抜いていないのですが、社員は知らない。というより、情報発信をしてはいるのですが「自分とは関係ない」と思われてしまうことが問題ですよね。
そういった問題を踏まえて、社員1万3000人が情報を取りに来るインフラを整えようと運営しているのが「きらねす(人的資本で輝くNES(当社社内略称):当社Well-being推進の一連の活動)」です。ここはまだあの手この手で試行錯誤中ですね。
山口:社員への浸透は、大きな課題ですよね。社長に活動報告したときに問われたのが「我々が盛り上がっているのはいいけれど、社員たちの反応はどうなの?」ということ。そういった部分では、まだ現場に浸透しきっているとは思っていません。賛否あって当たり前ですし、人によっては「やることが新しく増えた」と捉えることもあると思うんです。だからこそ、ストーリーが必要で、魅力的な情報として発信していくことは意識していかないといけない。そして、コーポレートとしての発信はもちろん、中間層のメッセージングが悪いとそれも浸透には繋がらないので、中間層がきちんと社員に伝えられるように上手にサポートしていく必要もありますね。社員からの共感を得るためにやらなきゃいけないことは、まだまだたくさんあります。
上浜:現場をちゃんと巻き込むというか、現場の納得感を得るというか、共感を得ることを目指さないといけないですよね。理想としては、「きらねす」というプラットフォームを社員全員が認知してくれて、「そこから発信されるということは自分たちにとっておそらく良いことだ」という認識まで持っていくことが今後の目標ですね。
