1899年の創業以降、健康に関する社会課題に応え続けているロート製薬株式会社。胃腸薬、目薬、皮膚用薬の発売を皮切りに、現在ではスキンケアや再生医療事業、食に関わる事業など多岐にわたる分野へと展開しています。その根底にあるのは、創業当初から続く「人を大切にする文化」。この企業姿勢が評価され、「はたらくWell-being AWARDS 2025」組織・団体部門を受賞しました。
今回は、人事総務部 人材開発グループのマネージャー・矢野 絢子さんに、ロート製薬株式会社が実践する“Well-beingなはたらき方”について伺いました。
プロフィール:
ロート製薬株式会社
大阪府大阪市に本社を置く製薬会社。1899年創業。医薬品、スキンケアのほか、現在は再生医療事業や食に関わる事業にも領域を拡大。「健康寿命の延伸」を目指し、製薬事業で培った技術をライフサイエンスやライフスタイル分野に活かしている。「はたらくWell-being AWARDS 2025」組織・団体部門を受賞。
目次
創業時から変わらぬ姿勢。社会課題の解決には、社員のWell-beingが不可欠
――ロート製薬さんは、Well-being経営を実践し、2019年から毎年「Well-being Report(2021年に名称変更)」を発表されていますよね。
はい。弊社は長年、「“人財”を起点に、新しい価値を創発したい」という考えのもと、人を中心に置く経営を貫いてきました。今回その姿勢を評価いただき、大変嬉しく思います。
――「人財を起点に価値を創発するべき」という考えについて、詳しく教えてください。
ロート製薬は、今から125年前に創業者が胃腸薬の販売を開始したことからスタートしました。当時、明治維新の影響で食生活に変化が起き、胃腸の病気で亡くなる人が増加するという社会課題を解決するべく、製薬会社としてのスタートを切ったのです。それから現在に至るまで「企業の存在意義は、社会課題の解決にある」という考えが受け継がれています。
そして、一企業が社会課題に立ち向かうためには、社員一人ひとりの個性や力を最大限に活かせる環境を作ることが大切だと考え、「人財を活かしきるために、戦略や組織を作る」という開かれた循環型の経営モデルを重要視しているのです。
――創業当時から「社会課題を解決するために、はたらく個人を大切にする」というベースがあるのですね。
はい。それを言語化したのが、私たちがはたらく上で大切にしている価値観・行動規範である「7つの宣誓」です。
6つめの「まず人がいて、輝いてこそ企業が生きる。主役は人、一人ひとりが自らの意志と力で自立し、組織を動かして行きます」は、社会課題の解決のためには、個人と企業の成長が不可欠という意味合い。まさしく“はたらくWell-being”につながるように感じます。
――なるほど。企業として社会課題を解決する前に、社員自身の“はたらくWell-being”も大切だという考えですね。
はい。ヘルスケア企業として世の中にWell-beingを提供する以上、まずは我々自身がWell-beingを実現することが大切です。社員がやりがいをもってイキイキとはたらけば、結果的にビジネスは成長し、お客様からの評価や売り上げにもつながる、そう考えています。
そのため、弊社には個人のチャレンジや成長を応援する文化が根付いているんです。
まるで経営にとっての通信簿!年に2回の「Well-beingポイント」チェック
――さもすると、Well-beingという言葉が使われるようになる前から、御社はWell-beingな取り組みをされていたということですよね。
そうですね。社員に向けたWell-beingを実現する取り組みは、長年力を入れてきましたが、今後は社外やステークホルダーの皆様にもより貢献したいと考えています。
詳しくお話しすると、これまでヘルスケア企業として体の健康に注力してきましたが、同じくらい心の健康にも気を配り、「生きること」そのものの質の向上にフォーカスしていきたいという目標があります。そのために2030年までに達成したい経営ビジョンとして「Connect for Well-being」を掲げているんですよ。
――へぇ!経営ビジョンにまで「Well-being」という言葉が使われているんですね!
実は、経営ビジョンを検討している段階では「Connect for Health」という案があがっていました。しかし「Health」という言葉だと、どうしても「身体の健康」のイメージが強くなってしまいます。
「心身ともに健康であり、いきいきと生きる」という概念を表すためには「Well-being」という言葉が最適なのではという提案がプロジェクトチームと経営陣との議論中にあがり、2019年にこのビジョンが生まれました。
――2019年だと、「Well-being」という言葉は今ほど社会には浸透していなかったと思います。社員の皆さんの反応はいかがでしたか?
正直、最初はあまりピンと来ていない社員も多かったと思いますね。しかし、長い時間をかけ、施策を実行していく中で「Well-being」の考えが徐々に浸透してきているように感じます。
社内に浸透させる取り組みとして、2019年に「Connect for Well-being」を発表した際は、経営トップから社員に向けてメッセージを発信しました。また2月22日の創業記念日には、本社や全国の工場を含めて業務をストップし、約1,700人の社員が数名ずつのグループになって、「自分たちにとってのWell-beingとは?」というディスカッションを行ったこともあります。こういった取り組みにより、社員一人ひとりがWell-beingについて考える時間を持つことができました。振り返ると、非常に価値ある取り組みだったように感じますね。こうした創業記念日に自社で大事にしている価値観を共有し、対話をする取り組みは毎年テーマを少しずつ変えながら継続しています。
他にも社員一人ひとりが、今どのような状態で仕事と向き合っているのかを把握するために、経営理念や価値観、行動規範に関連した5つの質問に10段階の自己評価を行う「Well-beingの振り返り(Well-beingポイント)」を2021年から年に2回実施しています。
「Well-beingの振り返り」は、「7つの宣誓」の思想をもとに生まれました。この振り返りは社員にとっては自分自身のWell-beingを振り返り、これからに向けてのヒントとするものですし、経営にとっては重要な経営指標の一つとして取り扱われ、このスコアをもとにWell-being向上をサポートさせるような施策を企画・実施しています。
――開始から4年経ちますが、スコアはいかがですか?
嬉しいことに、これまでの評価は右肩上がりです。社員一人ひとりが様々な施策を機に自分自身のWell-beingに向き合ってきたことで、Well-beingポイントは徐々に上昇していて、2023年度のスコアは平均で6.89点。
より高いスコアを目指し、社員一人ひとりがWell-beingな状態で仕事をしてもらうために「仕事やプライベートを含め、人生をまるごと豊かにしてほしい」というメッセージを経営層から出すことも。半期に一度実施することで、Well-beingを自分事として振り返るきっかけを創出し続けています。
ボトムアップで生まれた「社内ダブルジョブ」制度
――社員のWell-beingを向上させるための具体的な取り組み例がありましたら、教えてください。
「社内ダブルジョブ」や「社外チャレンジワーク」という取り組みが好例です。「社内ダブルジョブ」は部門の枠を超え他部署でも働くことに本人の意思でチャレンジできる制度です。例えば、広報を担当しながら、経営企画部と兼務しているメンバーもいるんですよ。「社内ダブルジョブ」は、多数の部署で業務を行うことでキャリアを広げ、仕事の質の向上、個人の成長を促進する狙いがあります。現在は、192名が社内ダブルジョブにチャレンジしているんですよ。
「社外チャレンジワーク」は、社外での副業を認める制度です。本業を大切にしながらも、ロート製薬という枠を超えて社会のために貢献したいという社員のために生まれました。こちらも好評でこれまでにのべ165名がこの制度を利用しています。
――個人の力を最大限に発揮できる仕組みが整えられているんですね!
そうですね。このような制度の多くは、社員が自発的に立候補し全社が抱える重要課題に向き合う「明日のロートを考えるプロジェクト(ARKプロジェクト)」の一環で誕生したんですよ。有志の社員が具体的な施策を考え、経営層に直接プレゼンし実践に移されました。
ロート製薬は個人の裁量が大きいぶん責任も伴いますが、自らのキャリアを考え、活躍の場を広げていけるチャンスが用意されていると感じます。こうした仕組みは”はたらくWell-being”の実感を高め、ドライブさせる一つの要因になっていますね。
――社員の”はたらく人Well-being”を叶えつつ、そのうえで企業成長をしていくことも大切だと思います。両立していくために、何か工夫していることがあれば教えてください。
一例ですが、「社内ダブルジョブ」の制度を利用している社員は、本所属している部署と兼務している部署の2部署間で話し合いの機会を持ち、それぞれの場所で求められている役割を果たせているかということを評価時に確認するようにしています。
またロート製薬では、在籍している約1,700人の社員の評価を幹部がつけることになっています。経営幹部が人一人の社員をみていきたいという姿勢が表れている一つ事例かもしれません。
私たちは、キャリアのフレームに「本人のやりたいこと・志(WILL)」と「できること(CAN)」、そして「社会や顧客などから必要とされること(NEED)」の3つの軸があると考えています。この3つの円を大きくして、重なる部分を大きくしてほしいと願っていますが、その原動力になるのがWell-beingなのではないかと思っています。
個人の可能性を信じ、引き出せる環境を作ることがWell-beingにつながる
――「Connect for Well-being」のビジョンを掲げてからの6年は、どんな期間でしたか?
あくなき追求の連続だったように思いますね。Well-beingの実現というのは、仕事はもちろんのこと、人生にも関わる大きなテーマです。外部要因に大きく影響されるものなので、きっと「満点」がとれることもないでしょうし、「正解」があるものでもありません。終わりなく、追求していくべきものなのだろうと感じています。
今後「Connect for Well-being」を実現するためにも、より多くの社内のメンバーや社外のパートナーとコネクトしていきたいと考えています。
――最後に、御社が考える“はたらいて笑う”ために必要なことを教えてください。
可能性を限定せず、自らキャリアを切り開いていくことができる環境です。実現のためには個人の可能性を信じ、マルチに活躍できる社内の土壌づくりが大切です。これからもWell-beingにはたらける環境づくりに邁進していきます。